グレモリー家の白龍皇   作:alnas

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こんばんはalnasです。
とうとう始まったコカビー戦。原作では強キャラ(この時点でのイッセー視点では)でしたが、今作ではどうなるのでしょうか。
では、どうぞ。


この開戦は共闘

 駆け足で校庭に来てみれば、校庭の中央には五本の聖剣が光を放ちながら浮遊し、それを中心になんらかの魔法陣が校庭全体に描かれていた。

 浮かぶ剣のうち二本は彼女たちから奪ったものか。ソーナの推測は正しかったようだな。

「なんですか、これ……」

「五本の聖剣をひとつにするのだよ」

 兵藤一誠の疑問に、魔法陣の中央に立つ初老の男性が答える。

「バルパー・ガリレイ。まさか貴方の手が回っていようとは。いえ、よく考えればそうおかしなことでもありませんか」

 アーサーが納得したように頷くが、俺たちからすればいまいちピンとこない話だ。

 バルパー・ガリレイ。どこかで聞いた名だが、あいにく興味のない事柄だったのだろう。そう簡単に思い出せる記憶の中にはないか。

「あの、アーサーさん。あいつのこと、知っているんですか?」

「ええ、知っていますとも。彼は過去、聖剣計画という聖剣使いを生み出そうとした計画で被験者のほとんどを失敗したという理由で殺した人間ですよ。ヴァーリや赤龍帝が首を傾げるのももっともでしょう。私は聖剣に関する事柄の大凡を把握していますが、彼ほどのゴミはいまだに会ったことがありません」

 普段ならまず聞かない言葉が彼から出るとはな。

 聖剣に関してはアーサーも人の子か。

「ほう。悪魔側に私を知る者がいるとは。だが心外だな。失敗作を廃棄してなにが悪い? その失敗は次に活かされる。名誉あることだろう」

 おかしいことなどひとつもないと言いたげな目を向けながら話すバルパー・ガリレイ。

 なんということだ。強者は確かに必要だ。自分の望む力を求めるのも理解できる。ただひとつ。理解できないことがあるとするのなら。

「貴様のような弱者のために消える命など、あってはならない」

 犠牲を払わねば手に入らない願望など成立しないということだ。

「聖剣をひとつにすると言っていたな」

「それがどうした? 私の長年の聖剣研究による成果だ。貴様らごときに止めれはせんよ」

 勝ち誇った顔。

 本当に止められないと、そう思って嘲笑っている笑みだ。

 ああ、久しぶりに感じるな、嫌悪感というものを。

「おまえの思い通りにさせるわけないだろ!」

 バルパー・ガリレイに向かっていこうとする兵藤一誠を留め、

「アーサー、ルフェイ」

 代わりの二名の名を呼ぶ。

「はい」

「ええ」

 一歩前に出た彼らは聖王剣を引き抜き、もう一方は杖を掲げる。

 一向に手を出してこない存在が気になるが、兵藤一誠が言ったように思い通りにさせる必要はない。

「バルパー・ガリレイの聖剣の術式を崩せ。聖剣ごとな」

「「了解」」

 聞くが早いか、その場から駆け出すアーサーと、地面を杖で突くルフェイ。

「貴様、その剣は――ッ!?」

「貴方程度の研究では触れることさえ叶わない代物ですよ。所詮、貴方に本物は作れな――命拾いしましたね」

 バルパー・ガリレイに肉薄しようとしたところで、大きく後退しこちらに跳んでくるアーサー。そのままルフェイの前で剣を構え、上空より飛来する光の槍を弾く。

「ほう。あまり期待していなかったのだが、反応は悪くないようだな」

 声のした方向――上空を見上げれば、月をバックに浮かぶ漆黒の翼を生やした者が一人。

「はじめましてかな、グレモリー家の男。忌々しい父君の紅髪と被らないとは気が利いているじゃないか。一目見るだけではあの男の息子とは気づかなかったよ」

 装飾の凝った黒いローブに、十翼の堕天使。

 向けられる重圧は上級悪魔のそれを遥かに凌ぐ、か。

「無論はじめましてになるな、堕ちた天使の幹部――コカビエル。俺の地で問題を起こしている以上、弁明は必要ない。政治的やり取りに付き合おうとも思わん」

「元より交渉などするつもりはない。まあ、息子を殺して手土産にすればサーゼクスとは戦えるかもしれんな。それは悪くない。悪くはないが、どうせこの地で暴れればあいつも出てくるだろう?」

 狙いはサーゼクスか? それとも……。

「聖剣を奪い聖剣使いも退け、挙句俺たち悪魔に喧嘩を売ろうとは。戦争でも起こす算段か?」

「最終的にはそれもいい。最初は聖剣を奪いミカエルを刺激しようとしたが、寄越したのは雑魚の聖剣使いが二人。片方は奥の手を隠してたが、残念なのはその力に振り回されてまるで相手にならなかったことか。だから、サーゼクスの息子の根城まで来たのさ! ここでおまえを相手にすれば、いずれサーゼクスは来る! ほら、最高に面白いことになりそうだろう?」

「戦争狂かよ……んな理由で、俺たちの仲間を、友達を、暮らす場所を、滅茶苦茶にさせるかってんだ!」

「同感だ。強者との戦いは心が躍るが、守るものがある以上、ここを戦場にはさせないさ」

 どうあれ、ここにいる全員が同じ気持ちでいるはずだ。

 俺たちグレモリー眷属だけではない。ソーナたちシトリー眷属も、すでに学園を結界で覆い始めている。校舎や他の建物までに気を遣うことはできないだろうが、おかげで普通に戦うことはできそうだな。

「バルパー、あとどれくらいでエクスカリバーは統合する?」

「五分もいらんよ、コカビエル」

 こちらを見下しているのか、大戦を生き抜いてきたからこその余裕か。俺たちを軽視しているのは確実……あくまで目的はサーゼクスやそれに連なる実力者ということか。

 バルパーから視線を俺に移したコカビエルはなんとも楽しそうな顔をして口を開く。

「サーゼクスを呼べ。もしくはセラフォルーでもいい」

「彼が出てくることはない。代わりに俺たちが相手に――チッ」

 風切り音がしたので、即座にそちらに一発魔力の塊を放つと、体育館の上空で小さな爆発が起きた。あのまま放っておけば、体育館が消し飛んでいただろう。

「ほう……つまらん相手かと思っていたが、余興以上にはなるか?」

 爆発で生じた煙が晴れると、俺の迎撃をいともたやすく弾いたと思わしき巨大な光の槍が空中に鎮座していた。

「先ほどのようにバルパーを狙われてもつまらん。地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうか」

 コカビエルが指を鳴らすと、闇夜の奥から十メートルはあろう三つ首の黒い巨体が姿をあらわす。 

「……犬?」

「ケルベロス。地獄の番犬の異名を持つ有名な魔物だ、兵藤一誠」

 隣に立つ彼の疑問に答えながら、やってきた怪物に目を向ける。残念だが、遊ぶには物足りないな。

『ギャオオオオオオオオオォォォォ――オ、オォオォォォ……――』

 三つ首が同時に吼えた瞬間。

 すべての首が地面へと斬り落とされていた。

「まったく、躾がなっていませんね。ペットというのなら、それなりに教育をしなければ。それが飼い主の務めでしょうに」

 聖剣を鞘に収めたアーサーがゆっくりとこちらに戻ってくる。やはり魔物に対しては絶大なダメージを聖剣は与えるようだな。

「え? ええっ!? アーサーさん、もしかしていまの間にケルベロスの首をぜんぶ斬ったんですか!?」

「当然でしょう。あのような不快な鳴き声をルフェイに聞かせるわけにはいきませんからね」

「いや、理由を聞きたかったわけじゃ……いえ、すごいんですけどね」

 兵藤一誠が呆れている中、背後でも轟音が響く。

「やあ!」

 白音の気合の入った声と共に繰り出される拳。それが、背後から迫っていたもう一匹のケルベロスに突き刺さる。

「――ッ!?」

 直後、絶叫をあげたケルベロスは、二歩、三歩と後ろに後退し、そのまま横に崩れ動かなくなった。

 仙術も使ったか。呆気ないものだったな。

「終わりました」

「ありがとう、白音。力のコントロールもだいぶよくなったな」

「日頃の特訓の成果です」

 笑顔を浮かべながら駆け寄ってくる白音。本当に、あの頃と比べてたくましくなったものだな。この状況でも落ち着いている。

「さすが、俺の最初の眷属だな」

「はい。そこだけは譲れませんから」

 ともあれ、これでペットの掃討は終わりだ。

「おまえのペットは大したことないようだな、コカビエル。これでは本人の実力も疑わしいものだ」

「言うではないか、サーゼクスの子息よ。ああ、確かにおまえたちの力は悪くない。だが、所詮は若い悪魔。俺と競うには早すぎる!」

「五分の足止めもできない男の台詞とは思えない言葉だな。このままなら、聖剣五本とも破壊させてもらうぞ」

「そう事は簡単には運ばせないものだ」

「どうかな?」

 手の平に魔力を集中させる。

 対してコカビエルは手を前に突き出し、待ちの姿勢を作った。

「面白い。古の戦いを生き延びた堕天使の幹部の力、見せてもらうとしよう!」

 コカビエル一人を優に呑み込めるほどの魔力の塊を撃ち出す。

「デカい!」

 兵藤一誠から驚きの声が出るが、普段の特訓のときと違い、手加減なしの一撃だからだろう。彼からすれば、感じる力は特訓のときの十倍かそれ以上にはなるはず。

 凄まじい速度で宙に浮かぶコカビエルへ迫る一撃は、彼に直撃したと共に、それ以上の変化を見せない。より詳しく言うのなら、彼の突き出された手に阻まれ、先には届かない。

「防いでいる、のか……ヴァーリ先輩のあの一撃を!?」

 コカビエルが手の平を上に向けると、放った魔力の塊は軌道をずらされ、闇夜の彼方へと消えていった。

「なるほど。若手かと思っていたが、予想よりいくばくか上をいったか。それに横にいる赤龍帝のおまけつき。摘み食い程度と思っていたが、面白い! 面白いぞヴァーリ・グレモリー!」

 完璧に防がれたか。

 この状態で撃てる最高だったんだがな……俺もまだまだ、上を目指せるということか!

「ヴァーリ先輩……」

「そう不安そうな顔をするな、兵藤一誠。最高の一撃ではあったが、最大の攻撃手段ではなかった。ついでに、最強の状態でもない。そうだろう?」

「――はい!」

 しかし、参ったな。先ほどコカビエルに向けた言葉は撤回しないといけなくなった。

「アーサー」

「なんでしょう?」

「悪いが聖剣の統合は防げないだろう。だが、統合するということは、使用者がいるはずだ。相手は任せるぞ」

「ええ。剣士は剣士らしく、向こうの相手をしてきましょう」

 一人、眷属の輪から外れバルパー・ガリレイへと向かうアーサー。彼はこれでいい。止められないのなら、力で上回るまで。アーサーなら。俺の唯一と決めた「騎士」ならきっちり勝ってくる。

「――完成だ」

 バルパー・ガリレイの声。予想通り、校庭の中心にあった五本のエクスカリバーが重なり、一本の剣へと姿を変えた。

 七本に分かれたうちの五本がひとつに。その力はいかほどのものか、試したくはあるが切捨てよう。

「エクスカリバーが一本になったことで、下の術式も完成した。あと二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかない」

 いやらしい声音を上げるバルパー・ガリレイ。確かな事実なのだろう。現に、校庭全体に展開していた魔法陣に光が走り出した。

 だが、そうたやすく俺の町をどうにかできると思っているのなら甘い。

「俺の眷属をあまり舐めてもらっては困る。ルフェイ」

「はい、ヴァーリさん」

 俺たちから離れた位置に移動し、魔法陣の解析を始めたルフェイを確認しながら白音に目線を送ると、

「アーシア先輩、行きましょう。ここにいては危険です」

「は、はい。あの、イッセーさん!」

 俺の意思を汲み取りルフェイの位置まで下がろうとする白音は、アーシア・アルジェントも連れて行こうとするが、彼女は立ち止まり兵藤一誠を呼ぶ。

「イッセーさん、頑張ってください!」

「アーシア……ああ、俺に任せとけって!」

 どうやら、彼女の中でも兵藤一誠が残るのは確定しているらしい。おそらく言ったところで退かないだろう彼のことだ。俺が命令したところで折れる男ではないな。

 元から下がらせる気もないが。アーサーを聖剣に向かわせた以上、白音をアーシア・アルジェントや集中しているルフェイのために残す必要がある。ならば共に戦うのは兵藤一誠に他ならない。

 視界の端では、アーサーが白髪の少年神父と聖剣を構え合っていた。あちらも始まるか。

「兵藤一誠」

「は、はい!」

「戦えるな?」

「……もちろんです。俺、仲間のみんなも、友人も、家族も。この町だって、あいつの思い通りにはさせたくないですから」

「よし。ならば構えろ。行くぞ、兵藤一誠!」

「はい、ヴァーリ先輩!」

 籠手からは倍化を促す音声が流れ、俺の背中にも神器が出現する。

 いまの俺の全力で届かないのだから、出し惜しみはしない!

「――禁手化」

「いくぜドライグ、最初っから全開だ! 今日までの修行の成果を見せてやろうぜ!」

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!!!』

『Welsh Dragon defense specialized!!!』

 自分の体を白き全身鎧が包んでいき、最後にマスクが顔を覆う。

 隣の兵藤一誠は、先日掴んだ新しい進化形態を展開していた。

 赤龍帝の籠手が左右の腕を包み、左手には円形に広がる盾が、これまでと違い鋭利なフォルムとなってさながら剣のように展開されていた。前回の聖剣との戦い。あの一戦からヒントを得た、防御特化意識の兵藤一誠の新たな攻防一体の進化形態!

「これほど面白いことはない! 赤と白、本来なら交わるはずのない二天龍の共闘だと? フハハハハッ! 酷く面白いぞヴァーリ・グレモリー! いい、いいだろう! かかってくるがいい、今代の赤龍帝、そして白龍皇よ!」

 俺たちは一度視線を交差させ、直後。

 互いの一撃が、空中でぶつかり合った。

 




今回登場したイッセーの強化形態は禁手化ではありませんが、そのために辿る強化のひとつといったところです。前々から出ていた防御を両腕に展開できるようになり、盾が鋭くなっただけですが。
ちなみにこのコカビーはそれなりに強いです。強い……です!
では、また次回。
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