グレモリー家の白龍皇   作:alnas

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みなさん、お久しぶりですalnasです。
なんとかこの作品にも復帰できたので進めていきます! 久々なので全部読み返してくれてもいいんですよ? では、短めですがどうぞ!


この会話は不毛

 こちらには目もくれることなくソーナへと近づく訪問者――ライザー・フェニックス。

 彼女の眷属も話の場であることは承知しているのか、それを阻む者はいない。

「さっそくだが時間が惜しい。まずは式の会場を見に行こう。こう見えて日取りは決めてあるんだ。早め早めが好ましい」

 ライザー・フェニックスはソーナの腕を掴む。

 どうやらよほど拒まれているようで、彼はすぐにでもソーナを連れ出したいらしい。

 もちろん、それにソーナが応じることはなく、背後に控える匙元士郎はと言えば、ライザー・フェニックスを睨み続けている。やはり気に食わないか。最も、これが政治的関心もない、誰の思惑もない場であれば俺は手を出していただろう。

「今回は俺がやるべきことではないらしいがな」

 ただ聞いているだけでいい。

 危害を加えるようであれば叩き潰すが、これはもうソーナと彼女の眷属たちの戦いだ。部外者が口を出すのは無粋をいうもの。匙元士郎の邪魔をするのも悪いしね。

「ヴァーリ先輩、あいつが例の?」

 静かに話を聞いていようとしたところ、イッセーが小声で尋ねてくる。

「ライザー・フェニックスのことか?」

「はい。どうも、あんな女誑しみたいな奴が上級悪魔の一人には見えなくて」

「悪魔の見方はいつくもあるが、あれもまた悪魔らしいと言えばらしい。なにより欲に忠実だ。力量も……恐らく上級悪魔としての格には見合っているさ」

 低く見積もっても、現段階のソーナよりは圧倒的にライザーが上。

 正面からぶつかればソーナは眷属全員と挑んだところで勝ち目がない。なによりフェニックス――不死鳥の名は伊達ではないのだから。

「イッセー、いまのキミでもライザー・フェニックスの相手は中々に堪えるだろう。不死身の相手を叩くのは存外厳しいぞ?」

「うへぇ……でもなんで倒す話になっているんですか?」

「なんとなくだ。ソーナの様子をよく見てみればわかるさ」

「はい?」

 イッセーがソーナへと目線を移し、俺も釣られるようにそちらへと目をやる。

 必要以上にソーナに触れるライザーと、お茶を入れてきた彼女の『女王』である椿姫まで口説く様子に目つきの鋭くなるソーナ。

 見ているだけでも険悪な様子がよくわかる。しかもだ。

「あなたと結婚するつもりはありません。ライザー、私はもうあなたにうんざりしているの。古い家柄の悪魔にも、相手を決める権利はあるわ」

 結婚するつもりのライザーと、するつもりのないソーナでは致命的なまでに話が合わないときた。

 結果、その言葉を聞いたライザーの機嫌が悪くなった。目元が細まり、舌打ちまでするとは。

「……俺もな、ソーナ。フェニックス家の看板背負った悪魔なんだよ。この名前に泥をかけられるわけにはいかないんだ。こんな狭くてボロい人間界なんか来たくなかったしな。というか俺は人間界があまり好きじゃない。この世界の炎と風は汚い。炎と風を司る悪魔としては、耐え難いんだよ!」

 直後、ライザーの周囲を炎が駆け巡る。

「俺はキミの下僕を全部燃やし尽くしてでもキミを冥界に連れ帰るぞ」

 殺意と敵意が室内全体に広がる。

「これはダメみたいですね」

「だろうな。どう考えても相性が悪い。なによりソーナの好みそうな男でない時点でこうなるのはわかりきっていた」

 知恵ある者を好みそうなソーナのことだ。こうも直情的かつわかりやすすぎる相手というのでは釣り合わない。

 ソーナの眷属たちはライザー・フェニックスにあてられて震えているようだが、俺の眷属は臨戦態勢に入りそうな勢いだ。仕方ない、止めるか。

「そこまでにしてもらおうか、ライザー・フェニックス。紛いなりにも、キミが会談の場に使っているこの旧校舎は俺の拠点だ。あまり無用な力を使わせないでくれ」

「はぁ?」

 声をかけた直後、俺に殺意と敵意が集中する。

「貴様、ヴァーリ・グレモリーか。ハッ、おまえみたいな奴の言葉を、どうして俺が聞かなければならない? 魔王様の力がなければ生きていられない雑魚悪魔が、俺と同列で物を言えると思うなよ!」

「会ったこともないはずだが、随分な言われようだな」

「会ったことがない? 当たり前だ、誰がおまえみたいな出来損ないと会おうと思う? 純血でもない、人の混じっただけの存在なら目も瞑ったさ。だがな、あろうことかおまえはあの魔王様の養子となった! この意味がわかるか、ヴァーリ・グレモリー!! おまえが魔王様たちにどれだけの迷惑をかけ、疎まれているかをなぁ!」

 やけに楽しそうに話すライザー・フェニックスだが、この場にいるほんんどが話についてこれていない。彼の言っていることを理解できているのは、ソーナと椿姫、そして白音くらいのものか。

 最近眷属になったみんなには話していなかったからな。後で説明だけはするか。

 まずは、ライザーの相手をしなくてはな。

「確かに、俺はサーゼクスに拾われた身だ。迷惑をかけている、ということに関しては申し訳なく思っているよ。だが、ひとつ訂正させてもらおう」

「ほほう、殊勝な心がけじゃないか。自分の立場をわかっているのはいいことだぜ。で、なんだって? 本来なら言葉をかわしたくもないが、おまえの心がけに免じて聞いてやるよ」

 ニヤニヤと嫌味ったらしく言い放つライザー・フェニックス。こういうところがソーナから嫌われているのだろうか? 俺にはよくわからないが、それでもこれだけは言わなければならないだろうな。

「ライザー・フェニックス。おまえの間違いは、サーゼクスたちの思いを貴様が誤って代弁しようとしていることだ。俺もね、もう結構長い時間を彼らと過ごしてきたせいか、サーゼクスやグレイフィアの考えていることくらいはわかるんだよ」

 俺に向けられる、多くの感情。

 あの場所にいたときは決して向けられることのなかった思い。

 際限なく注がれる優しさ、温もり。

「俺の目標を、大事な人の言葉を、貴様程度の悪魔が語るな」

 荒れ狂う、放出されそうになる感情を静かに、静かに心の内へと留める。代わりに、そのすべてをいっしょくたにしてライザー・フェニックスへの言葉として送る。

 瞬間、ライザー・フェニックスが俺から瞬時に距離を取った。

 その額や頬には汗が滲んでおり、目つきは険しさを増していた。

「貴様……どういうつもりだ?」

「俺と言葉は交わさないのではなかったか、ライザー・フェニックス?」

「どういうつもりかと聞いている! いまのは俺に対する宣戦布告と取っていいのか!?」

「……」

「答えろ、ヴァーリ・グレモリー!!」

 沸点の低い相手だ。これではソーナに手玉に取られるのも時間のもんだ――ああ、それもいい。冷静なままでは、どうあろうとソーナの経験不足が目立つ。

 ソーナへと目を向ければ、彼女も既に思いついていたのか、わずかに心配そうな表情を見せながらも、こちらへ頷いてみせた。

 俺は再度ライザー・フェニックスへと向き直り、よく聴こえるようにゆっくりと答えてみせる。

「あの程度の威嚇を宣戦布告と取るとは、フェニックス家の坊ちゃんは余程の温室育ちらしい。まさにと言わんばかりの臆病さだな。これでは不死鳥と言うよりも小鳥だな」

「貴様……ッ!!」

 顔を真っ赤にしたライザー・フェニックス。

 背中から炎が燃え盛り、いかにも怒っている様子だ。

 好都合。

 相手から仕掛けてくるのなら、倒しても問題ないだろう。俺が構えたことから意図を察したのか、アーサーとイッセーがそれぞれに前に出た。

「まったく、貴方も面倒なことをしましたね、ヴァーリ」

「顔が楽しいと語っているぞ、アーサー」

「おっと、失礼。つい笑みが溢れてしまいました」

「なんで二人とも楽しそうなんですかね……俺なんて挑もうとするだけで精一杯だってのに……」

 二人が別々の表情を見せる中、ソーナも決意を固めたのか魔力を全身から発している。隣には匙元士郎もいるが、彼の表情には既に決意があるようで。

「もはや、会談どころではなさそうだ」

 だが、始めよかと一歩を踏み出したところ、

「あら、そうでもないわよ、ヴァーリ」

 なにが起きたのかライザー・フェニックスが簀巻きにされ、床に転がされた。

 この手法、どこかで見た覚えがあるな。そう、俺がサーゼクスに拾われて間もない頃だったはず。あれはサーゼクスが職務を放棄して俺と湖に出かけたときだったか。

「以前にも増して鮮やかだったな」

「サーゼクスを捕縛するのによく使ったせいね。随分見ない間に、立派に成長したわね、ヴァーリ」

 声のする方へ振り返ると、やはり。

 そこにいくつかの書類を手に持ち、ライザー・フェニックスと同じように簀巻きにされた状態のサーゼクスに腰掛けながら笑顔を浮かべたグレイフィアがいた。

「――――とりあえず、まずはあいさつにしましょうか」

 

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