グレモリー家の白龍皇   作:alnas

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どうもみなさん、alnasです。
思ったより読まれていることに驚いています。書き始めはどうなることかと思いましたが、ありがとうございます!
この話は今後、原作とはちょっと違った流れを辿るかと思いますが、ぜひついてきてください!
では、どうぞ。


お悩みの赤龍帝

 昨日は散々な目にあった。いや、いつもあってはいるんだけど……。

 特に悪友二人との覗き見の最中に置いてかれたり転ばされたりして囮作戦に使われるまである。

 だが、昨日はそんなレベルで済む話ではなかった。

 一歩間違えば、まさに死んでいたのだ……。

 俺――兵藤一誠は、久々に味わった死の恐怖を振り払うよう首を振った。

『確かに、危うい場面ではあったな、相棒』

 ドライグ……。

 おまえが多少なりとも力の使い方を教えてくれてなかったら、瞬殺だったと思うよ。

『だろうな。ヴァーリと言ったか。今代の白龍皇は歴代最強レベルになるかもしれないな。相棒も負けてられないぞ』

 いや、だから俺はヴァーリ先輩と殺しあう気はないからな?

 昨日だって、そこまでの話には発展しなかった。

『白いのが好戦的でなくて助かった。いや、好戦的ではあるのだが、ヴァーリという悪魔、あれは異質だな』

 そうか? 俺たちの話も聞いてくれたし、そりゃ、いきなり攻撃してきたときはビビったけど、いい人そうじゃないか。

 実際、話してみれば人間にも対しても一定以上の理解はあった。

 むやみやたらと人を襲う連中とは比べものにならない。

 ドライグの宿敵みたいに聞かされていたから、俺の正体がばれたら本気の本気で殺しにくるかと思った……。

『俺もだ。だが、違った』

 そうなんだよなぁ。あの人、強さを求めているみたいだったけど、暴力的なものじゃないし。

『これまでの白龍皇とは決定的な部分が違うんだろうさ。もちろんおまえもだ、相棒』

 はいはい、弱すぎて悪かったな。

 おまけに知識もないって言いたいんだろ? でもな。これでも、おまえの存在を知ってからはそれなりに頑張ってきたつもりなんだ。もちろん、まだまだなのはわかっているけど――。

『相棒、勘違いするな。おまえが弱いのはわかりきっていることだ』

 ぐっ……言い返せねぇ。

『だがまあ、弱いだけに、教えることは多いし、おまえはいろいろと聞いてくるからな。過去の所有者たちはあまり話すような奴らではなかったから、それなりに楽しくもある』

 ドライグ……やめろって。

 いきなりそんな言葉言うとか、思ってもなかったからさ。男のデレはなんにも嬉しくないです。

『訂正しよう。おまえといると気苦労が多い』

 なんて早い手のひら返しだ。

 それより、一番の問題はやっぱり、ヴァーリ先輩のあの言葉だよなぁ。どうするべきか……。

 俺の眷属にならないかって言われても、そりゃ嫌ってわけじゃないけど。

 人として暮らすいまも、簡単に捨てられるものじゃない。

 松田、元浜。よくいいように使われていたりするが、あいつらとつるむのは楽しいことだらけだ。あと、痛いことだらけでもある。でも、悪くない日々なんだ。

 いずれは、その日々からも、俺だけが取り残される……。

 父さんや母さんよりも、あまりに長すぎる時間を生きていくことになるんだろ。

『だろうな。悪魔の寿命というのは永遠に近い。数千、数万年はくだらないだろうな』

 だよなぁ。

 俺、どうしたらいいんだろう? なあ、ドライグ。

『それを決めるのは相棒だ。俺はあくまで、おまえの意志を尊重しよう』

 こういうときは意見のひとつくらい欲しいところなんだけど。

『自分の人生だろう? まあ、なんだ。後悔のないようにしろとしか言えん。たとえなにをしようとも、そのおこないに後悔がないのなら、その先も、割と楽しいものさ』

 そういうものかね?

『ああ。あとはそこに、一緒に歩んでくれる相棒やライバルなんかがいると、さらにいいな』

 ……そっか。

 多くの人、その人生を見てきたはずのドライグの言葉だ。

 一言一言には、重みがあった。俺では想像もできないような。でも、俺でもわかることがあって、少し気が楽になる。

 このままだと、いつか他の勢力や、下手したらヴァーリ先輩以外の悪魔に殺される可能性が高い。

 無理やり悪魔に転生させられることだってあるかもしれない。

 やっぱり、弱いままじゃダメだ!

 いつまでも防御と回避のみを磨いてはいられない、な。

『俺も、最低限生き延びる術しか教えてこなかったからな。フッ、またひとつ、大きく成長できそうだな、相棒』

 ドライグが楽しげな声を漏らすのを待っていたように、授業終了の鐘が鳴り響いた。

『今日はどうするんだ?』

 まだ答えを出すには早いかな。

 もう少し……そう。もう少し、考える時間が欲しい。

 とりあえずは、帰ろうか。

「おーい、イッセー!」

「今日こそは成功させようぜイッセー! なんと聞いて驚くな。今度こそ誰にもバレない秘密のスポットを発見したんだ!」

 カバンを持って立ち上がったところ、いつものように悪友たちの俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 そのまま帰ろうかとも思ったけど、そうだよな。

「よっしゃ、行こうぜ!」

 俺はこの関係を捨てれない。

 でも、たとえ人でなくなったとしても。それでもこいつらは、きっと、いつものように俺の名を呼んでくれるだろう。

 だからこうして、バカできる友人でいられるんだ――。

 

 

 

 前言撤回。

 女子の着替えを見れるって言うから来てみれば。

「今日も懲りないわね、あんたたち」

「覗き魔には相応の報いを!」

「この変態共はこれだから! 無駄にハイスペックなくせに!」

 ――思いっきりバレてるじゃねえか! なにが秘密のスポットだよ! 開始三秒でバレましたよ!? なに、秘密って意味知ってるのかおまえら!

「クッ、どうやら俺たちもここまでのようだな……」

 そうだよ元浜。おまえがこんなポイントに連れてきたせいでな。

「だがまだだ。こちらにもまだ、切れる手は残っている!」

 松田がやけに格好つけて言い放つが、どんな秘策があると言うのだろう?

 手にほうきや竹刀を持つ女子たちに包囲されながら、逃げ切る算段があるのだとしたら、それはいったい……。

 俺と元浜が唾を飲み込みながら見ている中、松田はゆっくりと膝を地面につけ、次いで頭の位置を低くし、やがて額を地面にこすりつけた。

「覗き見してすいませんでしたぁっ!!」

「……」

「…………」

 その姿勢で謝罪の言葉を口にするが、俺と元浜だけではなく、女子のみなさんまで哀れなものを見る目をしていた。

「なあ、元浜」

「ああ、言いたいことはわかるぞイッセー」

 ですよねー。俺も見ただけでわかったもん。だって、俺たちを取り囲むみなさんの殺気がまるで収まっていない。

「あんたたち、覚悟はいいのよね?」

 女子生徒の一人が、優しい声でそう言った。

 はあ……これはもう、ダメかな。

 静かに両手を挙げ、降参のポーズをとる。こうなっては逃げ場がない。

「イッセー、おまえ……」

「最初からこうなる気がしてたんだ。だから、言わせてくれ」

 せめて、みんなにもこのことだけは知っておいてもらいたいんだ!

「俺はこいつらに連れてこられただけで、決して見たかったわけじゃな――ゴハッ!?」

 いっつぅ……誰だよ、話してるときに顔面にたわし投げてきたの! せめてスポンジにしてくださいマジで痛いんで!

「兵藤、ごめんなさい。ここに来た時点で、あんたたち全員潰すに決まってるでしょ!」

 ポニーテールの子が叫ぶと同時。周りの女子が全員構えを取り、それ以上の弁明をする猶予もなく、俺たちはもれなく怒りの制裁を受けた。

 

 

 

 まったく、こいつらとつるんでるとこんなことばっかりだ。それが嫌と言えないのが、なんとも俺らしい……。

「にしても、これはちょっとやりすぎだろ」

 ある程度回避や防御に慣れてる俺はともかく、松田と元浜は間違いなく全部もらったな。

 おぼつかない足取りで先に帰って行った悪友たちのことを思い出す。

 とはいえ、自業自得か。

 俺は俺で、学校から場所を移し昨日ヴァーリ先輩が戦ったであろう場所を見て回っていた。それがひと段落したところなのだ。

「……帰るか」

 なんか、もう疲れ切った。帰ろう。帰って、ゆっくりするんだ。

 これ以上の厄介ごとが起きる前に帰ってしまえば、あとは家でお楽しみがあるからな!

「はわう!」

 ん? 後方から聞こえた声に振り向くと、ちょうど、そこにはシスターが転がっていた。

 手を大きく広げ、顔面から路面へ突っ伏している。なんとも間抜けな転び方だが、幸いにも今日は松田の哀れな姿を見ているため、それを思い出し、シスターの姿を笑うことはなかった。

「……だ、だいじょうぶっスか?」

 放っておくこともできずシスターに近づき、起き上がれるように手を差し出した。

「あうぅ。なんで転んでしまうんでしょうか……ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ」

 若そうな声だな。というより、幼い?

 手を引いて起き上がらせると、いい具合に吹いた風が、シスターのヴェールを飛ばした。

 スッとヴェールの中で束ねていたであろう金色の長髪がこぼれ、露わになる。ストレートのブロンドが夕日に照らされてキラキラと光っていた。

 そしてシスターの素顔へ俺の視線が移動する。

 ――っ。

 グリーン色の双眸が、あまりに綺麗で引き込まれそうだった。目の前にいる金髪の美少女に、俺は間違いなく見とれていた。

「あ、あの……どうしたんですか…………?」

 しばし見入っていると、訝しげな表情でシスターは俺の顔を覗き込んでくる。

 まずい、なにか話さないと!

 とりあえず飛ばされたヴェールが近くにあったので、拾いに行く間にせめて言葉が出てくるように心を落ち着ける。

 旅行鞄も持ってるし、よし、この線でいこう。

 ヴェールも渡し、改めて会話をする雰囲気を作る。

 日本人っぽくないし、ここは英語の方がいいだろう。さっきも女子の誰かが「無駄にハイスペックなくせに!」と言っていたが、たぶんこのことだろう。

 俺は英語だけは学年トップクラスなのだ。英語だけは。普通に話すだけなら、なにも問題なくいける!

「えっと……その、りょ、旅行?」

 かなりの時間をかけてやっと言葉になった声は震えていて、まるでうまく発音できなかった。これは恥ずかしい。

 だが、目の前の彼女は小さく微笑むと、ゆっくりと口を開いてくれた。

 ここからの時間を、たぶん俺は忘れない。

 この出会いを、忘れられない。この先、なにが起きたとしても、きっと――。

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