魔理沙が夢をみます。果たしてどんな夢なのかな?
というあらすじなんて大層なものはない短編です。
ちなみにタグにレイマリがついていますが百合百合はしてません。

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夜中のレイマリ。
あ、そっちの意味じゃないです。期待した方、ごめんなさい。
一言で言ったらこうなりました。

それでは、どうぞごゆるりとお楽しみください。


魔理沙の見た夢

幻想郷。そこは、全てを受け入れる残酷な地。 天才も努力家も、働き者も怠け者も、どんなものでも受け入れる。強者と弱者の圧倒的な強さの差、戦略の差、そして才能の差、そんなものでも受け入れる。それ故時折、自分がどれだけちっぽけな存在なのかを、どれだけ無力な存在なのかを、知ってしまうときもある。

 

 

 

ーー夜。

 

街灯の少ない幻想郷では、夜は月明かりに頼るしかない。しかし、今日の幻想郷はいつも闇に包まれているあの妖怪でさえそのまま歩くほど暗い。そう、今日は新月である。

 

深夜と言える時間になった頃、神社で暮らしている巫女、博麗霊夢は未だ布団の上に座り込んでいた。寝巻きにも着替えず、いつもの紅白の肩出し巫女服を着用している。

 

「ふわあ……」

 

眠そうに欠伸をしていることから、どうやら眠れない訳ではないらしい。では、何故霊夢は起きているのだろうか。

 

しばらくして午前一時、霊夢はうつらうつらと眠りかけていた。時々首がカクッと落ちている。

そのときーー

 

ーーザッ

 

わずかな物音がした途端に霊夢の意識は覚醒した。流石は博麗の巫女であると言える。

 

霊夢は音を立てないよう、静かに障子を開ける。するとそこでは、霊夢の友人にしてくされ縁の普通の魔法使い、霧雨魔理沙が縁側に座っていた。なにやら顔を手で拭いている。

 

「魔理沙」

 

霊夢が声をかけると魔理沙はビクッと肩を震わせ、恐る恐るといった様子で振り返った。

 

魔理沙の目はわずかな月光でもわかるほど腫れている。恐らく、先ほどまで泣いていたのだろう。目元に残った涙がキラリと光っている。

 

「……」

 

「魔理沙ってば」

 

「……なんだよ」

 

魔理沙はやっと霊夢に返事を返す。ところが、霊夢は何も言えない。そもそも、無意識に声をかけてしまっただけでなにかを話すわけでもないのだから。

 

しかし、霊夢はとにかく魔理沙が心配だった。泣いているなんて魔理沙らしくないと思ったし、泣いているのが本当の魔理沙で、いつものバカ正直に真っ直ぐな魔理沙は見せかけであるとしても、泣いているより笑って欲しいと霊夢は思った。

 

それならば素直にそう言えば良いのにと自分でも思うが、それはできない。魔理沙という少女は外面に反して繊細なのだ。まるで氷でできた彫刻のように。乱雑に扱えば簡単に壊れてしまうが、そのくせ壁は氷のように硬く、厚い。

 

霊夢は気遣いというのを言葉で表すのがあまり得意ではない。霊夢の一言で魔理沙は簡単に脆く、儚く壊れてしまうかもしれない。そうなれば自分も魔理沙も傷つく。霊夢は何もできない。

 

笑ってほしいと言ったり、励ましたり、何故泣いているのかを問うことさえ、できない。

 

霊夢は迷いに迷った。何か言葉をかけるべきか、否か。そして霊夢は、迷った言葉よりも、行動で表すことにした。

 

霊夢はゆっくりと立ち上がる。魔理沙は霊夢を見つめたままだ。霊夢は魔理沙の隣に腰掛けると、ゆっくりと、優しく魔理沙の頭を撫で始めた。急に撫でられ、体を固くしていたと魔理沙だったが、次第に力が抜けていく。魔理沙の瞳から涙が流れ始めた。

 

霊夢は魔理沙の頭を撫でる手を休めることなく、反対の手で魔理沙の手を握った。魔理沙の手は涙でぬれていて冷たく、細かった。

 

しばらくして魔理沙の涙がようやく落ち着いてきた。心なしか空も明るくなってきた気がする。

 

本当にわたしは弱い。無力だ。博麗の巫女とかいう大層な名前があるくせに、わたしは何もできない。弾幕ごっこでその辺の妖怪をなぎ倒しているくせに、わたしは何もできない。泣いている友達に言葉をかけることもできない。ただ、無意味に撫でてあげることしかできない。わたしは何の力も持っていない、ちっぽけな人間。

 

そのとき、魔理沙が急に立ち上がりクルリとこちらを向く。しばらく恥ずかしそうにしてうつむいた後、小さな声で『ありがとう』と微笑み、まだ残っていた涙を拭った。

 

涙が乾くと魔理沙の顔つきが変わった。ああ、いつもの魔理沙だなと霊夢は思う。もう大丈夫、そう思い部屋に戻ろうとすると、トントンと肩を叩かれた。霊夢が振り返るとムニッと霊夢の頬に魔理沙の指が触れる。引っかかったとでも言いたげなイタズラっぽい表情で魔理沙はニシシと笑った。

 

魔理沙のいつも以上に子供っぽい仕草に呆れたように霊夢は笑う。

 

「やっぱり、子供っぽくわたしにちょっかいかけるアンタの方がアンタらしくて素敵よ。そっちの方が私は好きだわ」

 

そう霊夢がいうと魔理沙は顔を真っ赤にさせて帰ってしまった。

 

はて、何かマズイことでもいっただろうか。そう霊夢は思いつつも、まあいいかと重い瞼を擦り布団に戻っていった。

 

「おーい、霊夢〜!」

 

太陽はすっかり上り、昼頃。元気いっぱいの何時もの魔理沙がザッと音を立て、神社に降り立つ。霊夢は未だ布団でゴロゴロしていた。

 

「ん〜、魔理沙〜?」

 

「お、霊夢も寝坊か?珍しいな。わたしも寝坊してさっき起きてきたところだぜ」

 

魔理沙がそう言いながら神社に上がり、お茶を淹れ始める。ちなみに魔理沙専用の湯のみだ。魔理沙は霊夢の分も淹れると一人で勝手に飲み始める。

 

霊夢も魔理沙が淹れたお茶を飲み始めた。

 

「あ、そういえば魔理沙」

 

「なんだ?」

 

「アンタさあ、昨日夢見た?」

 

「……急に変なこと聞くよなお前って。……まあ、見たけど?」

 

「あら、そう」

 

「んで、それがどうかしたのか?」

 

「いえ、別に」

 

「んだよー気になるだろー」

 

教えろよーと魔理沙はうりうりと霊夢を肘で小突く。

 

「あ、そうだ魔理沙」

 

「ん?」

 

「お昼食べたら弾幕ごっこしましょ」

 

「おう、いいぜ!……つーか霊夢から誘うなんて珍しいな。なんか変なもん食ったか?」

 

「何よ、魔理沙じゃあるまいし……。ほら、そろそろお昼準備しなくちゃだからアンタも手伝いなさい」

 

「はあい」

 

魔理沙は慣れた様子で台所に向かっていく。霊夢はその背中を見つめている。

 

「ふうん、夢ねえ」

 

そう呟くと霊夢は魔理沙の後を追っていった。

 

 

 

魔理沙はどうやら夢を見たらしい。その夢の内容は魔理沙しか知りえないものだ。

果たして、魔理沙はどんな夢を見たのだろうか?




いかがでしたか?

ちなみに作者はレイマリではなくフラマリ派です(殴

では、ご縁があればまたどこかでお会いしましょう。

※7/8 気になる箇所を変更


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