東方春風駘蕩(完)   作:綾禰

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 サブタイトルで遊び心が出る時もある……筈。


橙、野良猫、マヨヒガにて

 

 

 

「この前のお花見は楽しかったですね! 太助様!」

 

「え? うん、楽しかったね」

 

 

 こんにちは、僕です。今日はマヨヒガに来ました。ここは橙ちゃんが拠点としている場所であり、橙ちゃんの式神候補を見つける場所でもあります。

 

 今日の目的としては、家族みたいな存在である橙ちゃんにいつまでも苦手意識を持っている訳にもいかないので彼女の眼差しに慣れようと思い来ました。

 

 そんな事を考えていたら冒頭のセリフ。橙ちゃんは幽々子さんと妖夢とのなんやかんやは理解出来てなかったみたいだけれど、その後の花見は楽しめた様だった。

 

 いや、他人事じゃなくて僕も楽しかったよ? 妖夢の宴会芸。幽々子さんの命令とは言え凄く恥ずかしそうだったけど。これが従者の宿命(さだめ)なのだろうか……。

 

 縁側に座ってお茶を啜っている僕の返事を聞いてからまた猫達と戯れる……いや、式神に出来そうな子を見つけようとしている橙ちゃん。

 

 藍お姉ちゃんが言っていた。太助と橙は私の癒しだよ……と。僕が癒しかどうかは判らないけど、橙ちゃんは見ていると確かに和む。彼女に苦手意識を持っていたのが馬鹿らしい程に。

 

 

「いたっ!」

 

 

 あ、手をひっかかれたみたいだ。こりゃ和んでる場合じゃない。

 

 

「橙ちゃん大丈夫?」

 

 

 そう言って猫をかき分け橙ちゃんに近づきひっかかれた手を取る。

 

 

「あ、太助様。いつもの事ですから大丈夫ですよ」

 

 

 苦笑気味で確かに慣れたものなんだろうけど、こっちとしてはたまったものじゃない。

 

 消毒液も水もこの場に無いので傷口を舐める。

 

 

「ひゃ! 太助様!?」

 

「唾には殺菌作用もあるんだ。だけど過信せず後で処置しないとね」

 

「ひゃ……ひゃい」

 

「?」

 

 

 返事がちょっと変だった。それに顔が異様に赤い……まさか何かの病気になっちゃった!?

 

 

「大丈夫!? 顔が真っ赤だよ、家に入って横になった方が良いよ」

 

「ふぇぇ!? 違います違います! 大丈夫ですからそんなに見つめないで下さいぃぃぃ!」

 

 

 僕の手を振りほどいて走り去ってしまった橙ちゃん。……どうしたんだろ? けど、病気じゃないみたいだから良いか。

 

 にゃー。と足元から声がした。マヨヒガに橙ちゃんが配るエサに釣られて集まってきた猫達だ。

 

 

「お前達? 橙ちゃんは何も危害を加えてないだろ? ひっかいちゃ駄目じゃないか」

 

 

 人の言葉が理解出来るか判らないけど思わず注意してしまった。すると、一匹が返事するかのように、にゃーと鳴いた。

 

 その鳴いた一匹を抱き上げる。特に嫌がる様子は無いみたいだ。所々白に茶が混じった色した猫だった。

 

 

「僕の言葉判る?」

 

 

 そう言ったものの、今度は返事はしなかった。そのかわり僕の目をジーっと見ながら尻尾を右に左に振っている。抵抗するそぶりを見せない猫をしっかり抱きかかえて縁側に戻って座る。

 

 撫でるとくすぐったそうににゃーと鳴いた。と、少し離れた所に生えてる木に隠れてこちらを覗き込んでいる橙ちゃんを見つけた。

 

 

「す……凄い。私じゃあ餌をあげる時に触れるのがやっとなのに……」

 

 

 そんな言葉が聞こえてきた。そして、橙ちゃんから向けられる尊敬の眼差しがより強くなった気がした。

 

 

 

 

 

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