東方春風駘蕩(完)   作:綾禰

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 昨年の内に投稿したかったけど、出来上がらず残念。超鈍足ですが今年も宜しくお願いします。


たまには早起きだってします

 

 

 

 

 

 幻想郷(げんそうきょう)に移り住んでから幾つかの日々を過ごし、もう見慣れた天井を見上げながら目を覚ます。

 

 何故か高確率で(らん)お姉ちゃんだったり(ゆかり)お姉ちゃんだったりが僕の部屋の中に居て目覚めの挨拶をしてくれるのだけど、どうやら今日は僕一人での起床みたいだった。

 昨日の夜は少しのお酒ながらも眠気に抗えず、紫お姉ちゃんか藍お姉ちゃんのどちらなのかはっきりしないけれど部屋まで付き添ってもらい就床(しゅうしょう)

 

 と言うか。何故か僕はお酒を飲んだ次の日は目覚めが早い。

 いつの間にか着ていた寝巻きからシャツ、着物、袴と所謂(いわゆる)書生姿(しょせいすがた)に着替える。

 幻想郷の外では現代風に洋服を着ていたけれど、幻想郷に来てから内心ずっと着てみたいと思っていた明治時代の若者に着られていたこの格好。

 

 おねだりするつもりは無かったのだけれど、つい着てみたいって口を滑らせてしまったらはい終わり。

 紫お姉ちゃんがもの凄く張り切って僕の手元に届けてくれた。わがままを言ってごめんなさいだけど、反対にとても嬉しかったです。

 お礼を言ったら何故か紫お姉ちゃんと藍お姉ちゃんが鼻血を出したのには驚いたけど。

 

 襖を開けるとまだ早朝の為か肌寒い空気に少し体が強張る。同じ建物の中なのに部屋の中と廊下の温度差がある事を感じずにいられない。

 あるいは、眠り呆けていた感覚が活動を開始した。と言う事なんだろうかな。

 

 そうそう、最近僕に妖力が生まれました。いや、生まれたでは語弊があるね。妖力が成長したと言うか容量が増えたと言うべきか。

 元々種族は知らないけれども半妖だから妖力は存在していたけど、殆ど無いに等しかった。

 

 だけれども、最近紫お姉ちゃん直伝の空間に穴を開く術を練習なり実用なりで何度も人間には出来ない妖怪らしい事を繰り返してきたおかげか妖力が増えた。

 これにより穴を開く回数や距離も少しずつ伸びてきたので僕としては嬉しい限りである。

 

 ただ、練習とは言え頻繁に霊夢(れいむ)ちゃんの所に行っていたのは流石に迷惑だったろうな。ここ最近は練習の為にと言う形では控えてる。

 全然迷惑じゃないからどんどん来てくれて良いのよって言ってくれた霊夢ちゃんは本当に優しい子だと思うよ。

 

 さてさて、何で妖力が増えたかって話をしたかと言うとその増えて自由に使える様になってきた妖力を使って、少し発光させて陽が昇る前のこの暗い廊下を照らしているから。

 いやー、霊力でもその気になれば出来るらしいけど、妖力って本当に便利だね。まだ上手く出来ないけど、そのうち空も自由に飛びたいものです。

 

 玄関まで辿り着き、土間に揃えてある雪駄を履く。特に雨が降っている訳でもないので、足駄にはお留守番でもしてもらいます。

 

 外に出た僕は外の冷たい空気から外套(がいとう)でも着れば良かったと反省しつつ空間に開いた穴を通り屋根の上へ。バランスを崩すと落ちてしまうので気を付けないといけないのだけど、もう慣れたもので平然と腰を下ろす。

 

 この八雲(やくも)の家は幻想郷の誰にも知られていない場所にあると言われている。それでも、屋根に登ればそれなりの高台(たかだい)にあると判る。

 なので屋根に登った僕の目には幻想郷と言う土地の様子がよく見えるのを知っている。

 

 少しばかり待っていれば徐々に陽が昇り、幻想郷を照らし出す。

 自然豊かな土地。いくつもの山が見え、いくつもの森が見え、そして目覚めたばかりの動物達の声と全身を包む様に優しく通り過ぎていく風。

 

 

「おはよう。幻想郷」

 

 

 これが、早起きした時限定の僕の楽しみ。

 

 

 

 

 

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