東方春風駘蕩(完)   作:綾禰

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 本日三話投稿。1/3


日帰り出来ました

 

 

 

 

「……太助さん?」

 

「……あ、いや。うん……ごめんね、ボーッとしてたよ」

 

 

 永琳さんの顔を見てたら霊夢ちゃんに不審がられてしまった。凝視してしまった永琳さんにも一言謝って、とりあえず把握する所から始めよう。

 

 

「竹林に降りて、落とし穴だったのかな、それに落ちてから僕はどうなっていたのですか?」

 

「そうね、体の具合の確認をしながら質問に答えますね」

 

 

 そう言って永琳さんは助手の鈴仙さんに指示を出す。

 

 僕は鈴仙さんに体を委ねて、改めて答えを待った。

 

 

「まずは謝罪からね。あの落とし穴はこの屋敷の者が仕掛けた罠だったの。本来は外敵や、自然の動物を捕える目的だったのだけど……この屋敷に来る人は基本的に案内人に連れられてか空を飛んで来るかだったものだから私達にとって無害な人が罠に掛かる事を想定していなかったの。だからと言って無意味に怪我をさせて良いって事にはならないわ。永遠亭の代表として謝ります、本当にごめんなさい」

 

 

 そう言って頭を下げる永琳さん。正座しながら頭を下げたものだから、ぱっと見土下座をしている様にも見えてしまった。

 

 そして、そんな感想を抱いている間でも頭を上げない事から僕が声をかけるまでそのままで居るつもりなのかもしれない。

 

 霊夢ちゃんは思い出し笑いならぬ、思い出し怒りをしていてぶつぶつ言ってる……兎? やっぱり皮を剥ぐ? 何を言ってるんだ霊夢ちゃんは……。

 

 

「謝罪の件、確かに判りました。ですが、お気になさらないで下さい。だって……」

 

「……だって?」

 

 

 頭を上げた永琳さんの疑問に対して僕は霊夢ちゃんに視線を向ける。それだけで理解したみたいだ。まるで紫お姉ちゃんみたいに察しが良い。

 

 

「霊夢ちゃんから、もうすでに報復を受けていると思いましたので」

 

「ふふ……そうね。落とし穴の犯人は、橙と言う子に睨まれながらまだ庭で煙を上げてるわ」

 

 

 煙を上げていると言われて、霊夢ちゃんを怒らせた魔理沙ちゃんを思い出した。夢想封印と言う名の強力な霊力の嵐をその身に余す事無く受けた魔理沙ちゃんも全身真っ黒になってプスプスと煙を上げていたものだ。

 

 それに、ここで僕がはっきりと許したと言う言葉を口にする理由は他にもある。

 

 僕の(紫お姉ちゃん)()(藍お姉ちゃん)の暴走を防ぐ事。この永遠亭と呼ばれる場所の戦力がどれだけかはまだ知らないけれど、最悪は戦争と呼べる規模に。良くてここいらへんが吹っ飛ぶ位に成り得た未来。

 

 あの二匹は僕の言動を見ている。僕が持つ能力に意識を集中すれば、僅かな気配。

 

 目の前の永琳さん、助手の鈴仙さん、何より、勘に定評がある霊夢ちゃんですら気付かない、気づけない程度の気配でこちらを見ている。

 

 僕が気配を辿り始めた事に気付いたんだろう。二匹の気配はやがて消えていった事で安堵の溜息が思わず出てしまった。

 

 

「どうしたの? 太助さん」

 

 

 突然の溜息に霊夢ちゃんが反応した。永琳さんも会話の流れとしては不自然な行動だったから口にはしないながらも僕を見つめている。

 

 ……何だろう。霊夢ちゃんとかで無駄に見つめられる事に慣れていたつもりだったけど、この人に見られていると何かドキドキしてくる。

 

 

「この場に僕の保護者が来なくて、安心した所だったんだ」

 

「あー……アイツ等ね」

 

「保護者……そう言えば連絡をしていなかったわね。意識を手放す程の怪我をさせてしまったのにご家族の方にまだ伝えてなかったわ」

 

「問題無いわ、太助さんの保護者は紫と藍だもの。たぶん私達が気付いてなかっただけで、絶対様子を見てたわよ」

 

「紫? 藍? ってええー!?」

 

 

 霊夢ちゃん正解。そして僕の保護者の名前を聞いて驚いたのか大きな声を出して冷や汗っぽいのをダラダラ流してる鈴仙さん。あ、永琳さんも冷や汗流しながら顔色を悪くした。

 

 

「太助さん」

 

「ん?」

 

「動けそう? もし動けるなら早めに帰った方が良いわ。たぶん、今は我慢してるかもしれないけど太助さんが早めに帰らないと暴走するわよ」

 

「え? あ、うん。そうだね……永琳さん、すみませんけど帰ろうかと思います」

 

 

 僕が帰る事を伝えると永琳さんはすぐに鈴仙さんに指示を出した。指示を受けた鈴仙さんはすぐに部屋を出て行ったけれどまたすぐに戻って来た。

 

 そしてその手には小さめの布と何かしらの薬が二種類。両方共錠剤が入った瓶だ。

 

 

「太助君、これは化膿止めと痛み止めよ。飲む時機(じき)は瓶に貼ってある説明文にも書いてあるけれど、化膿止めは瓶に入っている分は必ず飲みきってね。半妖と言う事も考慮して師匠が必要な分を入れてあるわ。痛み止めの方は痛みを感じた時に飲んでね。食前、食中、食後や運動前運動後だとか時機は気にしなくて良い薬だから」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 おお、今まで余り喋ってなかったけど説明となるとスラスラと言葉が出てきた。会話下手(べた)なのか仕事中だから喋らなかったのかまだ判らないなぁ。

 

 僕がそんな事を考えていた事とは関係無く、丁寧に瓶を包んで渡してくれた鈴仙さん。化膿止めを飲み終えた頃合にでもお礼がてら遊びに来てみようかな。忙しそうだったら謝りつつ退散するけど。

 

 受け取った薬を、いつの間にか準備をしてくれていて待機していた霊夢ちゃんから渡された巾着に入れて僕が今着ている服に目をやる。

 

 さてと……。

 

 

「これ病衣でしたっけ? 僕の服に着替えたいんですけど」

 

「お着替え! 手伝うわ太助さん!!」

 

「永琳さんか鈴仙さんお願いします」

 

「何で!?」

 

 

 何か目が怖いからです。

 

 

 

 

 

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