東方春風駘蕩(完)   作:綾禰

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 本日三話投稿。3/3
 振り仮名で「ほうらいびと」と書いてますが某所の大百科から。コメント見ると「びと」か「じん」か未確定みたいだったので知っている方みえましたらお知らせ下さい。


自分の事を有名人だと思って接したら相手は自分の事を知らなかったと言う恥ずかしさ

 

 

 

 

 妹紅さんに誘導してもらい竹林の安全な道を通って永遠亭に来ていた。

 

 玄関前で丁度良くてゐさんと出会った際、僕を見た瞬間にビクッと反応していたけれど敢えて無視して輝夜さんに会わせてもらえる様に頼んだ。

 

 奥まで通されて入った部屋で目的の人物こと輝夜さんが出迎えてくれた。全力で殴ってしまったのに笑顔で迎えられた事に少しだけ複雑な気持ちになりながら挨拶をして、本題を伝える。

 

 

「輝夜さん、妹紅さんから話を聞いて決闘について理解はしました。妹紅さんを傷つけられた時の横槍についてですが、僕がお二人にとって了承済みの決闘だったと知らずに邪魔をしてしまいすみませんでした」

 

 

 頭を数秒下げる。ついて来てくれた妹紅さんが太助がそんなに謝る事じゃないよとは言ってくれたけれども、やはり謝罪の一言は伝えるべきだと思った。

 

 そして頭を上げてもう一つ、どうしても言いたかった事を告げる。

 

 

「ですが、蓬莱人(ほうらいびと)だから大丈夫では、やはり納得仕兼ねます。事情がどうあれ、目の前で大切な友人が大怪我をした事を見過ごす事は出来ません」

 

「……まぁ、それは別に良いわ。あれは妹紅と私にとっては合意の上での決闘だけれど、貴方の感情にまで譲歩しろとは言わないわ。それにしても、妹紅に里の教師以外の友人が出来ていたのねぇ」

 

 

 永遠亭に来る前の事。

 

 妹紅さんにはボロボロの服を着替えてもらってから家に上げてもらった。僕は妹紅さんが襲撃を受けていたと思い話を聞いてみたら、妹紅さんと輝夜さんは長い付き合いだったらしく、二人にとってはいつもの事だと言われてしまった。

 

 元々は過去にあった事情で、妹紅さんの復讐から始まった蓬莱人ならではと言うべきか終わりの無い命のやり取り。

 

 何度も戦っていくうちに当時の恨みも薄れてきていた事を理解しながらも惰性で戦いを続けていたところ、永遠亭の皆が起こした異変こと『永夜異変』を気に(わだかま)りに区切りを付けて和解したとの事だった。しかし、以前よりも頻度は低くなったとは言え限りない命の蓬莱人の暇潰しと言った軽い気持ちで決闘はやり続けていたと言う事だった。

 

 いくら死なないとは言え軽い気持ちで殺し合いされてしまっては妹紅さんの友人と自称している僕としてはたまったものではなかったが、それでも長く続いている半ば伝統芸にもなっていると言う二人の決闘を僕は邪魔してしまった事に変わりなくまずは妹紅さんに謝罪した。

 

 妹紅さんは僕に教えなかった自分が悪い。伝えていれば僕が気に病む必要も無かったと言ってくれたけれど、一言だけ邪魔してごめんねと謝る。そして、邪魔どころか一撃殴ってしまった輝夜さんにも一言謝りたいと言う事になり、妹紅さんに案内してもらって永遠亭に向かう事になったのだ。

 

 輝夜さんと少しばかりだけれども話をしてみて、判った事があった。

 

 事情を知らなかったとは言え一度怒りに任せて輝夜さんを殴ってしまったけれど、そんな僕を笑顔で迎えてくれた輝夜さん。変な事(姫様がやる事)に巻き込んでごめんなさいねとしょうがないと言った表情で謝ってくれた永琳さん。今回はちょっと運が悪かっただけですから気にしないで下さいと励ましてくれた鈴仙さん。

 

 性善説は絶対とは決して言わないけれど、輝夜さんも、永琳さんも、鈴仙さんも良い人だった。てゐさんはよっぽど霊夢ちゃんが怖かったのか僕を見ると逃げてしまうから正直判らないけれど。

 

 そして当事者の二人にとって何気ない日常の一コマの決闘。僕にとっての美鈴さんに稽古をつけてもらっている様な事なんだろう。ただ、かなり過激になってしまうけれど。

 

 

「妹紅さん、過去の事は僕には判らないけれど……妹紅さんの現在()は悪くないんじゃないかなって思います。生まれて十数年の感想だから、妹紅さんには戯言かもしれないけど」

 

「……ここまでの道のりは長かったけどね。まぁ、太助にも出会えたし、悪くないよ」

 

 

 僕の言葉に妹紅さんがやれやれと言った感じに返してくれた。それが嬉しくて頬が緩む。

 

 

「へぇー。結構面白そうな子じゃない。蓬莱人がした怪我の為に怒ったり、私の事を名前で呼んだり。妹紅の友人名乗ったり。昔じゃありえない事だわ」

 

「そう言えばまだお互い挨拶をしていませんでしたね。僕の名前は八雲太助。八雲紫に家族として引き取られ、それから八雲の姓を名乗っています」

 

「そう、よろしく」

 

 

 ん? それだけ? 妹紅さんの方を見ると隠そうとしてるけど、雰囲気でニヤついてるのが判る……どう言う事だろう?

 

 

「えっと、それだけ……ですか?」

 

「それだけって?」

 

 

 いや、輝夜さんそんな不思議そうな顔されましても……。

 

 

「僕は妹紅さんから貴女の事を『輝夜』と呼んでいた事しか知らないので……趣味とかまでは聞くつもりはありませんでしたが、せめて名前だけでも……」

 

 

 僕が『輝夜』と言う語句しか知らない事を伝えると凄く目を見張って驚いている。そんな反応にこちらはこちらでどうしたものかと困る……。

 

 

「はっ! えっ!? 私の事知らないで来たの!??」

 

「……? えっと、妹紅さん?」

 

 

 どう言う事だろうかと妹紅さんを見ると肩を震わせて笑ってた。ええ……そんなおかしな事してしまったのか……。

 

「くくくっ……太助、この幻想郷の住民にとって輝夜って言えば『なよ竹のかぐや姫』として人里では知らない者が居ないし、人里の外でも異変の主要人物として蓬莱山輝夜(ほうらいさんかぐや)の名前は結構知れ渡っていたんだが……良かったなぁ輝夜! 媚びる男の相手は面倒と言ってたじゃないか。太助はお前なんかこれっぽっちも知らないってさ。ははは! 自分の事は知ってて当たり前って態度だったけど笑いを堪えるのに必死だったよ」

 

「ぐぬぬ! 言ってくれるわね……直接会いに来た男が私に良い印象を持ってもらおうって全員が全員下心持ってたんだから、ある程度私の事を知っているのが当たり前になってたんだからしょうがないじゃない!!」

 

 

 あー何か輝夜さんの自負心を傷つけちゃったのかな……。

 

 

「えっと……決闘の邪魔をしてしまった事への謝罪をするつもりだっただけで……輝夜さんと仲良くなりたかったかどうかには興味無かったと言いますか、えっと輝夜さんの事全然知らなくてすみませんでした」

 

「ぶはぁ!」

 

「グフッ!」

 

 

 あ、妹紅さんが変な声出して顔を背けて輝夜さんが血吐いた。

 

 襖が開く音が聞こえ、そちらを見ると永琳さんが盆に茶飲み道具を乗せて立っていた。

 

 その永琳さんは、床に手をついて声を殺しきれずに笑ってる妹紅さんと顔を赤くして白目をむいて口から血を垂らしてる輝夜さん(恥ずか死)を見てから僕に視線を向けて疑問を口にした。

 

 

「貴方達、何をしていたの……?」

 

「えっと……自己紹介?」

 

「……はぁ」

 

 

 天才だと評判の永琳さんも流石に困惑したみたいだった。

 

 

 

 

 




 太助に蓬莱山さんと呼ばせて妹紅に「さんさん……語呂悪っププッ」って感じに嫌味っぽく失笑させようかと思ったら、自己紹介させてないから妹紅の呟きから輝夜って名前しか太助は知らない状態だったので没ネタに。
 軌道修正をするにしても名前呼び→教えてもらって苗字呼び→名前呼びって流れはそこまでしてやらなくても良いネタですしねw
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