東方春風駘蕩(完)   作:綾禰

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 本日二話分投稿。1/2になります。


生きている限り成長するんです

 

 

 

 

 

 風邪を引いてしまいました。

 

 理由としましては……。

 

 

「昨晩は暑かったから汗をかいていただろ? 朝方には反対に涼しくなったから汗で冷えた体に、汗を吸って冷たくなった布団が原因で体調を崩したのだろうな」

 

 

 らしいです。

 

 しかし、仮にも半妖。普通の人間よりかは体が強いとは思っていたけれども……何故だろう、僕の周りの皆に比べて体調を崩しやすい気がする。人里の子達もそうだけど、霊夢ちゃんや魔理沙ちゃん、それに咲夜よりも……。

 

 風邪を引いた事を理解したのは朝の事だった。目が覚めたにも関わらず頭が覚束無い。そして体が痛く、動こうにも怠かった。

 

 いつもなら起きて着替えて布団を片付ける流れなのに、それが出来ず、更に汗で湿っている寝巻きと布団が気持ち悪い。

 

 幸いな事に寝てるだけなら吐き気は無いけれど、頭を動かそうとするとズキッと痛み。動くのを辞めれば良いけれど、我慢して動こうとすると頭痛が原因で吐きそうになる。

 

 紫お姉ちゃんか藍お姉ちゃんか……気づいてもらえるまで何も出来そうにないな……と思ったその時。

 

 

「太助ー? まだ寝てるの?」

 

 

 ヌルンと出てきた紫お姉ちゃん。家の中で位歩いて移動しようよ……。

 空中に出来た穴から出てきた紫お姉ちゃんは未だ横になったまま動かない僕を見つけると笑顔から一転、その表情は強ばった。

 

 

「もうちょっと我慢してね。今藍を呼ぶわ」

 

 

 そう言うやいなや、足元に穴を開いて紫お姉ちゃんはストンと落ちていった。

 

 この移動方法を霊夢ちゃんらへんが「急に落とすな!」とか言うけれども、あれは嫌がらせでも楽しもうと言う事でも無く、相手が穴に入る手間をどう省くかを考えた結果一番効率的なのが足元に穴を作って重力に任せての出入りだったとの事。要は紫お姉ちゃんなりの気遣いだったりする。

 

 前に良かれと思って行動した時にそれが余計な事だったらしく怒られてしまったと落ち込んでいる事があった。

 

 きっと判りづらいだけで、紫お姉ちゃんは不器用なんだなって……思いました。

 

 そう言えば、不器用って訳では無く逆に器用な幽香(ゆうか)さんは元気だろうか。花を求めて季節毎に移動をする彼女は、特に近隣の人達と問題を起こさずにふらっと現れてはふらっと去っていく。

 

 器用だからこそ付き合いを無難に(こな)して、器用だからこそ問題を起こさない人だから花に興味が無い者にはそんな人居たなぁって印象が残る位で色々と遊んでもらった僕としては聞いた時にはそんなに印象が薄いものなのかと驚いた。

 

 そのかわり、長い付き合いのお姉ちゃん達や、文さんらへんでは怒らせてはいけないと言わせる位に強大な力を持っている。敵対するには怖い存在だとも聞いた。

 

 まぁ、そんな話を聞いた当時の幼い僕は「それじゃあ友達だったら何も怖くないね」と本人に面と向かって言ってしまったのだ。

 

 藍お姉ちゃん曰く僕の隣でどうなるかと動揺してしまったらしいけど、僕の記憶では幽香さんは笑顔で「私の友達で居てくれるの?」と答えてくれていた覚えがあるので今思えば心配のし過ぎだったんだろうなと思う。

 

 思い出したら幽香さんに会いたくなったな。さて、彼女は今どこに居るのだろうか……風邪が治ったら探してみようかな。

 

 そこまで考えた所で、空間に穴が生まれた。横向きに出来た穴から紫お姉ちゃんが水桶と吸飲みを持って出てきた。

 

 

「太助、お待たせー。喉渇いてる?」

 

 

 肯定の返事を返すと僕の隣に腰を下ろした紫お姉ちゃんに上半身を支えられ、吸飲みで水を貰った。

 

 

「ありがと」

 

「気にしないで。藍は今楽に食べられる物を用意しているわ。それまで横になっていましょ」

 

 

 そう言われて横になった僕は、特に考えもなく紫お姉ちゃんを眺める。

 

 紫お姉ちゃんは多分気づいているだろうけど、僕の視線を気にせず水桶で水に浸っていた布を絞り始めた。

 

 その姿は以前僕が風邪を引いた時のぎこちない動きとは違い、様になっていた。

 

 絞った布を畳んで僕の額に乗せてくれる様子を眺めながら、何故か、日々成長なんだなぁと思ってしまった。

 

 

 

 

 




 いつも読んで下さる方、新しくお気に入り登録してくれた方、どちらも等しくありがとうございますー。
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