「慧音。お土産に肉を持ってきたよ。基本的な処理は終わらせて捌いてきたからすぐに使えるよ」
「ああ、ありがとう妹紅。早速調理しようか。今日の集会は名ばかりで、有力者の親睦会みたいなものだからなぁ。食べ物があって困る事も無い」
そう言って子供達が帰った後の寺子屋で私は妹紅を出迎えた。妹紅は私の所へ顔を出す度に食材を持ってきてくれるので、人数が増えても食事で困る事が無いのがとてもありがたい。
太助君曰く食は尊い物であり、満足出来る食事は幸せの一つらしい。確かに、食べられる事はとても幸せな事だと私も思う。飢餓に苦しむ人達を見てきた分、尚更尊いと言う言葉が心に残る。
「さて、まだ誰も来ていないが上がってくれ」
「うん。まぁ、集まってから食材持ってきた所で手遅れだものね。早めに来る様にしているからまだ誰も居ないのは逆に安心したよ」
相変わらず真面目だなと笑うと、からかうなと軽く睨まれてしまった。別に怒らせるつもりも無いのでこちらも軽く謝っておく。
妹紅と教室まで一緒に移動し、そこから台所へ。寺子屋での集会の際に使う部屋は教室を利用している。
小さな子供達が使うだけあって小さな机なので、そう労せずに部屋の隅に片付けて中央に必要な分並べ直しておいた。
調理場にたどり着いた私は、今日はそう暑くもないので適当に野菜を見繕い鍋物にしようと行動する。
今日来るのは永遠亭の
風見さんは植物に関して助言をくれるのだが、積極的に里と友好関係を深めようとはしていない。まぁ聞いた話だが季節毎の花の観賞の為に移動を長期でするらしいので人付き合いに重きを置かないだけらしい。また、居合わせれば害する妖怪も返り討ちにしてくれる事もあるが里の防衛にそこまで関心がある様でも無い。
……まぁ、敵対している訳でもなし。太助君の友人でもあるし警戒する事も無いか。
寺子屋の先生としての仕事の予定を考えたり少しボーッとしたり料理の味見を少ししたりして過ごしていると、調理場に妹紅が来て声をかけてきた。
「お医者さん方がみえたよ。あと、別に悪くは無いんだけど……風見
ちょっと引っかかる言い方をする妹紅。……そう言えば風見さんも太助君の事を特に贔屓していたな。そう言う訳か。
「みえたか……ちょうどこちらも出来上がったところだ。まず鍋じきをしいておいてもらえるか? その後に食器を運ぶのも手伝ってほしいのだが」
「構わないよ」
手伝いも長くさせてきた事もあり勝手知ったる他人の家と言ったか。淀みなく動く妹紅に笑みがこぼれる。
余裕を感じさせる八意殿と、ある方向をチラチラと見て少し怖気づいている鈴仙さん。そんな様子に我関せずな風見さん。とは言え仲違いしている訳でもないので簡単な挨拶をしてから食事を済ませて食後の休憩。
集まって話と言っても、専門では無いので詳しくは判らないが季節ごとに必要な薬があるらしく、改良したり新しく出す薬なんかの説明や病気の予防についてまず私が教わる為に薬師の八意殿自ら出向いてくれている訳だ。何だかんだ言っても里の者達はまず私の許に相談に来るからな……。まだまだ引退するつもりは無いが跡継ぎも考えないといけないか……。
「――色々里に関わる様になってから立て込んでいたけど、改良して普通の人間に扱える虫除け香を弟子の鈴仙もようやく作れる様になったの。だから、
そう言って線香の様な物を机の上に置く八意さん。虫除け……この時期とすれば蚊や蝿対策だろうか?
「今まで虫を寄り付かせない発想が無かったからなぁ。どう言った意図で使えば良いのですか?」
「私としては、花や花以外の植物の繁殖にも関わるから香の虫除けがどれほどのものか気になるわ」
「想定では遠ざける虫は蚊、蝿やコバエと言った病原体を媒介したり保存してある食べ物に菌を付着させる代表的な所を狙って配合して作ってあるわ。範囲は里の一般的な一部屋の大きさ。それ以上となると風で拡散されるし効果も薄くなるし、それに永久的に効果があるものじゃないから花やそれ以外の植物の近くで使っても効果的に害は無いわ」
いざ話始めると一応話は来ているけど理解しきれてないから口を挟まない妹紅。八意殿以上の説明が出来ないので口を噤んでいる鈴仙さん。……黙っていると思ったら、あちらはあちらで簡単な料理の話をしていたか。
「繁殖に問題が無いなら、その虫除けに関しては一切文句は無いわ。ああ、蚊に効果があるのなら私にも試供品もらえないかしら? 私は平気だけど、たまに家に遊びに来る太助には蚊が寄ってねぇ。たまに痒そうにしていてかわいそうだわ」
「む? それなら私も欲しいな。私自身いたんだ食べ物でも平気だけど太助はそうじゃないからね」
鈴仙さんとの話を一旦止めてこちらの話に加わってきた妹紅。っていたんだ食べ物ってなんだ。何そんな物を食べているんだ妹紅!?
「それは虫じゃなくて放置が過ぎたのが原因でしょう?」
「あー……それもそうか。まぁどっちにしろ、虫が鬱陶しいと太助もかわいそうだしな。やっぱ欲しい」
「はいはい。本当……太助君が大好きね」
人外の集まりだからか妹紅の食生活に疑問を持つ者が居ない……。いや、確かに妹紅の体質を考えれば問題無いのかもしれないがそれでも元人間だぞ? 気にしたのが私一人だけなのが余計に私がおかしいみたいな気持ちにさせる……!!
「そう言えば師匠。太助さんと言えば最近姫様も……」
「……輝夜が何だって?」
「ヒッ!?」
ひっ!? 妹紅の目が急に怖い!!? あれ? 太助君に聞いた話では仲が悪くて争っていた訳じゃない筈じゃ……?
「うちの弟子を怖がらせないでくれる? それで、輝夜ね……。それこそ今更じゃないかしら。初対面で殴られた時から太助君に興味を持っていたわよ」
「何ぃ!? あいつ太助に輝夜の事は知らないし興味無いって速攻で言われてたじゃないか!!」
えっ。確か蓬莱山殿の容姿は大変優れていると里の
「……ねぇ妹紅。それって、太助は女に興味が無いって事かしら?」
「んぁ? 違う違う。後々私も気になって性格はともかく見た目だけなら引く手あまただぞって聞いたんだけどさ。そしたらなー」
妹紅が急にニヤニヤしだした。それは流石に気持ち悪いぞ妹紅。女の子がする顔じゃない。
「ムカつく顔ね。で、続きは何?」
「いやなー聞いてくれよ風見さんよ。太助がな? 「蓬莱人にとって遊びの枠であっても、妹紅さんに大怪我を負わせた人の事は好きになれない」だってよ! いやー大事にされてるわー」
「……そう」
「そうって言いながら何頭を掴んでんだだだだだだ!!? 痛い痛い!!??」
「え、それって。それじゃあ姫様脈無いじゃないですか師匠」
「ウドンゲ……良い? この事は姫様に言っては駄目よ?」
「けど師匠……太助さんうちに来た時ってずっと師匠の事見てますよ? それって」
「「ああん!!?」」
「ヒッ!?」
「ちょっ! 私は何もしてないわよ二人共!!」
……太助君は年上が好きなのか? いや、それだと人間以外全員年上だな……あれ? 私も? …………。
「そこまで遅い時間では無いが、一応夜なんだぞ? ちょっと声を抑えないか皆」
「だって慧音! って何で慧音顔が赤いんだ?」
言うな! ……期待している私が恥ずかしいじゃないか。
ハーレムものも好んで読んだりするけど、自分で書くとこれが限界な私です。(´・ω・`)