東方春風駘蕩(完)   作:覆面装備中

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 無学な私は白玉楼を、ちゃんとした読み方を知るまで「しらたまろう」と読んでました。(´ºωº`)

 たぶん、今作史上最もご都合主義独自設定が出た内容で太助の出番も無いのでご注意を。

 2018/09/10 サブタイトルを番外編から外伝に。


外伝 保護者、未来の超越者と出会うの巻

 

 

 

 冥界、白玉楼(はくぎょくろう)

 

 縁側で私と幽々子が座り、広い庭では少し遠い所で妖夢は橙に追いかけられている。涙目で。

 

 

「……橙を相手にして泣いちゃうなんて、妖夢も全然成長しないわねぇ。ねぇ紫、暫く橙をここに居させても良い? 妖夢が情けなくて」

 

「私は構わないわよ。だけど、橙の主は一応藍だから、藍に一言伝えてね?」

 

「それ位何も問題無いわ」

 

 

 見ていない間に橙に何をされて妖夢は泣きながら逃げてるのかしら?

 

 そんな、たあいない事を考えながら、幽々子と同じ時機(じき)で藍が淹れてくれたお茶を飲む。

 

 

「ふぅ……それで、太助君を連れないで此処に来たと言う事は何か理由があって?」

 

「そう、あってねぇ。太助本人としてはそんなに気にしないかもしれないけれど……太助を目の前にすると何となく話辛い内容だからお留守番してもらっているわ」

 

「そう。それで藍でさえも台所に追い出して、話辛い事を聞かせてくれるのね」

 

「ええ」

 

 

 そこまで話をした時、白玉楼で家事手伝いをしている幽霊が私がお茶請けにとお土産に持ってきた羊羹を切り分けて持ってきてくれた。

 

 それを受け取るとまた幽々子と同じ時機で一口。うん、太助が気に入っている店の羊羹なだけあって美味しいわ。

 

 

「話辛いと言うと大げさって言われそうだけど……太助のご両親は何があってどうやって辿り着けたのか。私の屋敷の裏の森の中で捨て置かれていた赤ん坊。太助を拾ってからこれまで。才能……と言うには私の経験と予想を上回る速度で成長しているわ」

 

「成長が早いって良い事じゃない。同じ半人の妖夢なんて太助君の何倍も生きているのに全然未熟よ。半分は妖怪だけど半分は人間、妖怪と比べて限りなく短命な人間の成長は妖怪とは比べ物にならない速さよ? 別に不思議では無いと思うけれど、違うの?」

 

「その理由にしても、よ。例え才能に恵まれた人間でも一年と経たずに元々僅かにとは言え使えた妖気に対して一から身に付け始めた気と霊力を均整を保たせながら一纏めにして出力できるものかしら?」

 

「そう言えば、幻想郷に帰って来てからだったっけ? 紅魔館の門番に武術を習い始めたのは」

 

「そう。いくらなんでも異常な成長速度なの。……まるで、誰かが太助の能力(ちから)を意図的に引き上げているみたいな……」

 

「……そんな事、紫以外に出来るの? 紫の能力を使う以外の方法で」

 

「正直言って、最近になって判らない事が起きててそれも何かに影響しているのか悩んでいるの。私のスキマに何者かが干渉してい――!?」

 

 

 今まで会話していた幽々子が、目を伏せた瞬間に消えた……? 会話中に急に相手が消えるってどう言う事よ……。周囲を警戒しながら縁側から庭へと移動する。

 

 幽々子だけじゃない……橙も妖夢も見当たらない。白玉楼の敷地内で飛び回っている幽霊の姿も見ない。そして、台所に居る筈の藍との繋がりが……判らない。

 

 これは何者かの作り上げた状況と見るのが妥当よね……。しかし、景色は変わらず私しか居ない世界……何とも寒気がする世界ね。

 

 

「抵抗する気はありませんわ!! 気づかれない内に私だけを世界からずらして孤立させ、それに能力を封じられていては何も出来ません。姿を見せてくださらない!?」

 

 

 言った通りに境界を操る程度の能力も抑えられた状態で、こんな状況を作り出せる相手に抗えるとは思えない。最悪……太助ともう会えないかもしれない。

 

 そう思と、太助の笑顔が脳裏に浮かび泣きそうになる。

 

 

「太助……ごめんね……」

 

『その心配には及びません。貴女はこの時間軸の未来にて私の協力者であり、何よりも太助様の家族でありますから』

 

「っ!?」

 

 

 小さく呟いたその時、頭に声が響いた! ……女性? それに未来では協力者? 相手は時間を超越していると言う事? 何よそれ。下手な神でも不可能な事をしていると言う事じゃない。

 

 心配に及ばないと一方的に言われた所でそのまま信じる事も出来る筈無く、現状唯一使える体の内から生み出される妖力で身を包み、どれほどの抵抗が出来るか判らないけれども防御力を高める。

 

 こちらが今出来る最低限の準備が整うのを待っていたのか、目の前の地面に半球形の光の力場が形成される。目を逸らさないで済む程度の光が現れ、その半球形の光から細かい稲妻がいくつも生まれていてとても近づけそうにない。

 

 暫く様子を見ていると光は少しずつ弱まっていき、光の中に人型の何かが立っているのが判った。そして、光が消えてはっきりと相手を認識する。

 

 十六夜咲夜のよりも露出が控えられており気持ち質素ながらも気品あるメイド服。頭にはひらひらとしたのが付いた……アリスバンドと言った物かしら。腰まで伸びた綺麗な金色の髪。そして青い目。

 

 

「……? 貴女は……人形ね……。それもとてつもなく高度な技術で造られた」

 

『その問には肯定で答えます、八雲紫。私は造られた当時のアリス・マーガトロイドの最高傑作と言われました』

 

「アリス……そう、貴女はアリスが造ったのね。私の名前を知っている事も理解しましたわ。それで、未来での協力者と言っていましたわね」

 

 

 向こうは私を知っていて、私は向こうを知らない。言葉通りに受け止めれば攻撃の意思は無さそうではある……。

 

 参ったわね。こうも一方的な状況を作り出された事なんて初めてだわ。

 

 

『協力者、八雲紫。警戒は無理に解かなくても障害とならない故構いません。ですが、貴女の疑問を解決する事も必要だと判断した為、今この時間軸に参上しました』

 

 

 直接頭に語りかけてくるから、目の前の人形の口は動かず表情は変わらない。何とも不思議な感じね……!

 

 

「私の疑問を解決する為……? 今の私にとって、今この状況全てが謎であり脅威と認識しています。それを貴女は答えてくれる……と?」

 

『はい。それではまず私、名前をブリュンヒルドと言う存在について。私は未来において、太助様の護衛兼側使えを目的としてアリス・マーガトロイドを主軸として、十六夜咲夜、魂魄(こんぱく)妖夢、パチュリー・ノーレッジの四人によって作られた限りなく万能を目指した成長型自律人形です。名は、主である太助様に付けていただきました』

 

 

 太助の……護衛兼側仕え? どう言う事? まさか、それは……。

 

 

『私が作られた時点において今貴女が危惧した事は起きておりません。ですが、アリス・マーガトロイドは太助様が孤立無援の環境に陥る可能性を予知に近い予感を理由に私の作成を始めました。結果として、私は私の役割を果たす機会が訪れます』

 

「……そう。太助は無事なのかと言う疑問は、今貴女がここで私に話をしている事が証明。と言う事ですわね。何かあったならば貴女はここでのんびりと私とお喋りしていないでしょうから」

 

『はい。そして私は自身に与えられたエネルギーの吸収機能の副次効果である他者の能力、性質のラーニング機能を利用し未来の貴女の協力を得て、境界を操る程度の能力と太助様の異空間を独自に昇華させた事で並行世界の把握に成功。及び並行世界の私との連携をとる事に成功。十六夜咲夜の時間を操る程度の能力を本人の使用するレベルより高次元の域で利用する事で、過去の八雲紫。今現在の貴女に会う事で太助様の成長に関わる不確定要素を確定させる為に時間跳躍を実行しました』

 

 

 ……何かとんでもない事を聞いた気がする。

 

 

「……少し待っていただけるかしら。意味が判る事と理解する事とは別物ですの……そう、今はまだ意味が判るだけで……」

 

『現状それで問題ありません。ただ一つ。貴女にとっての不安を解消出来る事実があります』

 

「……それは?」

 

『並行世界の掌握は、あらゆる点においての超越です。そして、太助様のこの時間軸の成長スピードは私の能力の発展による影響で未来の太助様のレベルに引っ張られている副次効果です』

 

「……そう。並行世界の掌握なんて……私にはとても真似出来ない次元の能力(ちから)ですわね。……貴女が作られた時代の幻想郷と太助は……いえ。並行世界を掌握しているなら無意味な質問ですわね」

 

『はい。貴女が希望する未来の候補を語る事は出来ても、未来が無限に枝分かれする事を知った上で並行世界の掌握を実現出来ていない貴女に伝えた所で詮無き事です。ですが、意味が無いとは断言しません』

 

「……希望する未来に限りなく近い環境は私次第で作れる。と言う訳ですわね」

 

『はい。過去の貴女が、八雲藍と出会わなければ。伊吹萃香に協力者の相談をしなければ。幻想郷を作ろうと思わなければ。それ以外も含めた全ての偶然が重なり今があります。並行世界を見れば、八雲藍の説得を失敗している世界もあれば結界の作成せずただの良い環境の土地に住んでいるだけの世界もあります。更に言えば幻想郷に拘らず妖怪が日本全土の人間を支配した世界も。ある種、平和な今この瞬間そのものが奇跡なのかもしれません』

 

 

 今この瞬間が奇跡……ね。過去の私の行動が今の幻想郷を見事作り上げ、そして太助をこの手に抱きしめる事に繋がっていた。一つ違えば無かった今この瞬間。確かに……奇跡ね。

 

 もしもを追求していけば、私にとって見たくない世界……太助そのものが存在し……いえ。そこまで考えて頭を振る(かぶりをふる)

 

 それこそ、詮無き事でしょう。何はともあれ、わざわざこの時代の私に接触してくれた彼女にお礼を言わなければね。

 

 

「さて、ブリュンヒルドさん。本来の目的のついでではあったでしょうが、過去の私と接触してくれた事に感謝いたします。本当にありがとう。貴女のおかげで、太助に晴れぬ疑問を持たずに済みました」

 

『いえ。全ては主である太助様の為に』

 

 

 そう言って未来の人形師の最高傑作であるブリュンヒルドはカーテシーと言われる動作で優雅に頭を下げ、その身を現れた時と同じ細かな稲妻が走る半球形の光に包み姿を消した。

 

 ……限りなく万能を目指した成長型自律人形ねぇ。未来の太助は、なんとも頼もしい従者を手に入れるようね。

 

 ブリュンヒルドが消えて数瞬、一気に周囲に気配が増える。……元の世界に帰れたのね。

 

 

「あら? 紫、いつの間に移動したの?」

 

 

 後ろから幽々子の声。どうやらブリュンヒルドと接触していた世界は元の世界と時間の流れが違った様でこちらでは一瞬の出来事だったのね。

 

 

「ええ。少しばかりこことはズレた世界に居たわ」

 

 

 振り向いて答える。

 

 幽々子なら、今あった事を話しても問題無いだろう。特に口止めもされなかった訳だし。

 

 さて、友人と笑顔でお喋りが出来る今この瞬間の奇跡を楽しもうかしら。

 

 

「んん? 紫がズレてるのはいつもの事じゃない。何を言ってるの?」

 

 

 ……それはひどくない!?

 

 

 

 

 

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