本日投稿1/3
空中で戦う博麗霊夢と
流れ弾で地面が吹き飛び、木は折れ、戦いの舞台となった妖怪の山は戦闘の余波で所々抉れていく。
そのあまりにも激しい二つの力の衝突に八雲紫、藍の両名は急いで特殊な結界を展開。二人の妖力が途切れるまで維持されるその効果は結界内のあらゆる存在の耐久度を跳ね上げ、これ以上の破壊を和らげる事に成功した。
しかし、耐久度を上げたとは言えそれ以上の力が加わればやはり無事ではすまない。
紫に藍、早苗に諏訪子にとっては太助にも避難をしてもらいたい所であったが、霊夢が本気になって戦う姿を初めて目にする事で興奮してしまった太助は最後まで見届けるとその願いを固辞。
珍しくも他人の心配よりも自身の好奇心を優先する太助の姿ではあるが、どうしてまた周囲に
原因は……やはり太助であった。
幻想郷の外で太助と出会っていた神奈子は幻想の血を受け継ぐ太助を早苗の婿に欲しいと考えていた。勿論、神奈子から見て性格も好ましく、早苗も憎からず思っているからこその考えであった。
太助との予期せぬ再会と合わせて道中少なくない戦いを乗り越え、自身の許までたどり着いた霊夢を目の前にし戦いの血が激ってしまいある種の爆弾どころではない発言をしてしまったのだ。
「私が勝った際にはあんたの所の神社の解放に人里の信仰に加えて、太助も頂こうかしらねぇ」
太助も頂こうかしらねぇ。
太助も頂こうかしらねぇ……。
霊夢、今世紀最大の激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームである。
人の身でありながら、雷踊る嵐を呼び、草木飛び跳ねる大地を震わせ、辺りに笑い声を響かせながら暴れる姿は神奈子に恐怖させた。
さて、ここまで書いた所でいつも通りに騒動の結果だけ示唆しようと筆者は思う。
博麗霊夢大勝利。負けた時の条件を考えると心底ほっとした紫と藍であった。
そして博麗神社と守矢神社の衝突を霊夢の勝利で締めてから、数日後の太助の視点へ移る。
「太助先輩、太助せーんぱーい」
不定期ながらも寺子屋で慧音先生の手伝いに来ていた僕は、事務室で子供達に出した計算問題の採点をしていた所で部屋の入り口からの声にそちらに目を向けた。
声と呼び方で判っていたけど、やっぱりそこに居たのは外の世界でお世話になった東風谷さんちの早苗ちゃんだった。外の世界では普通に洋服を着ていて、その姿をずっと見ていたので今着ている白と青を基調にした守矢の巫女服が新鮮に見える。
「こんにちは。寺子屋の中まで来たんだね。何か用事が?」
「いえ、用事があったから来たんじゃないですよ? 守矢神社の布教をと思って里に来たら、先輩がここに居ると聞いたものでついつい顔を出しちゃいました」
大事な用があった訳じゃなかったようで、そっか、と返す。
特に面白い事を言った訳でもないけど、早苗ちゃんは嬉しそうにニコニコしながらパタパタと側に寄ってきて僕の横に腰を下ろした。
僕の手元の手書きの答案用紙を覗き込み、予想はつくけど……と言った感じで早苗ちゃんが疑問の声をかけてくる。
「上白沢先生から事務室で作業をしているって聞いていましたけど、何をやっていたんですか?」
「算術の採点だよ。勉強の内容はさすがに外よりは簡単だからね。僕でもこんな感じで先生みたいな事もやれるんだ」
「簡単……足し算と引き算ばかりですね。あー! この問題懐かしい感じですね!! りんご三個とみかん五個を買いました。財布の中身は残りいくらでしょうって、小学生時代を思い出しますねー」
「まぁ、寺子屋に通ってる子供達の年齢を考えたら妥当じゃないかな?」
「言われてみればそうかもですね。来年度あたりは掛け算割り算もやるんですか? 四則演算コンプリートってやつですか?」
「んーどうなんだろうね。僕も幻想郷に帰ってきてから一年も経ってないから人里ではどこまで教えられているのか……乗算と除算を教えてるのかすら知らなかったよ。後で確認しておこう」
そう言って、ニコニコと嬉しそうな、楽しそうな顔をしている早苗ちゃんを見てふと思い出す。
そう言えば早苗ちゃんって撫でられるの好きだったよなぁ……。
おもむろに上げた手をキョトンとした顔で無警戒に見る早苗ちゃんに特に説明しようと考えず、そのまま頭の上に置く。
「わわっ」
年齢だけだったら僕の方が上だったのに、外の世界では常に僕の世話を見てくれていた年下で、霊夢ちゃんより一つ上で咲夜よりも一つ下の早苗ちゃん。
「えへへー」
ふわふわとした髪の毛の感触を楽しむ様に撫でると、ふにゃっと力が抜けた様な感じで笑う早苗ちゃんは今も変わらず撫でられるのが好きみたいだった。
「外の世界で一番、僕を助けてくれたよね。ありがとう、また早苗ちゃんに会えて嬉しかったよ」
言って、早苗ちゃんの顔が段々と赤くなって、気づいた。僕をじっと見つめる早苗ちゃんの瞳が少し潤んできて、涙が今も溢れそうになる。
だけど、それは怒りとか、恥ずかしさとかじゃなくて。嬉しいって気配が僕の能力を使わずとも感じとれた。
そして、涙を堪えて、だけど堪えきれなくて。早苗ちゃんはしゃくりあげながら、僕に伝えようとしてくれた。
「……わ、私もっ! 太助先輩と離れ離れになって……、それでもっ、先輩にまた会えると思ってて……そしたら……かっ、神奈子様が……先輩を感じとれっ……感じとれなくなったって言われて……もう! 太助先輩に会えないだって思って!!」
「……うん」
不思議と、涙を見せる早苗ちゃんを前にしながらも僕の気持ちは落ち着いていた。
ゆっくりと頭の上に置いた手を動かし、安心してほしい気持ちで撫でる。
「初めは、神奈子様だけでしたっ! だけど、太助先輩と出会ってから、諏訪子様も姿を見せてくれる様になってっ」
そう言えば、諏訪子ちゃん……いや、神様だから諏訪子様だね。初めて会った時の諏訪子様は人に忘れられ、巫女にも忘れられ、力も減衰して無気力みたいな感じだったけど、後々に僕と神奈子様が出会った事をきっかけにまた世界に関心を持ち始めたと言っていた。
その時は小さな女の子みたいに見えていたんだけど、久々に出会ったら早苗ちゃん同じ位に背が伸びててびっくりしたもんだ。
曰く、純粋な信仰から生まれた神様に姿かたちは殆ど意味がなく、幻想郷に来てから全盛期程じゃないけど力が戻ってきたから大きくしてみたらしい。
「先輩のおかっ、おかげで! 私は、家族が増えたんです! なのに! なのに! 先輩の気配が消えたって! 神奈子様が! 先輩の気配が消えたって!!」
「……うん」
それは僕が幻想郷の結界の中に入ったからなんだろう。それが、僕の妖力を感じていた神奈子様すら欺いて。それが、早苗ちゃんを酷く、かわいそうな程に悲しませてしまったみたいで。
僕は早苗ちゃんの頭を撫でていた手を止めて、彼女の頭を出来るだけ優しく寄せる。早苗ちゃんの頭を僕の胸に。ごめんねと言う言葉は違う気がして、だから……。
「大丈夫だよ。僕は、ここに居るよ」
「先輩っ! 先輩っ!! あ、ああああああああああああああ!!!」
思えば、早苗ちゃんと出会ってから僕は彼女の両親を見ていない。友達と思われる子と一緒に居る所も見ていない。
当時の僕が思っていた以上に、特殊な立場だったのかもしれない。だから、目の前の早苗ちゃんは今ここで溜まりに溜まった感情が爆発したのかもしれない。
そんな彼女が落ち着く様に、そして施す様に、ほんの少しだけ抱きしめる力を強くした。
やがて少しずつ、声が、感情が、気配が落ち着いてきたのを感じた僕は言葉を紡ぐ。
「神奈子様や諏訪子様ほどずっと一緒には居られないけど、寂しくなったら伝えて。出来る限り早く会いに行くから」
「……はい」
「幻想郷は不思議な
「はい」
「僕が居るから。心配も、不安も、僕が居るから」
「はいっ」
「早苗ちゃんが笑っていける世界。一緒に作ろうね」
「はい!」
元気に返事をして顔を上げた早苗ちゃんの顔は、とっても可愛い笑顔に見えました。
霊夢の激おこぷんぷん丸の場面、静画も投稿出来る某動画サイトで「鬼巫女 Escape」で検索した際に聞ける曲が脳内で流れてた。