太助が結界の外から幻想郷に帰って来て三年。
外で言えば成人、中で言えば働き盛り。妖怪で言えば卵の殻の破片がこびりついて取れきれてない様なヒヨっ子と言われる年齢になった。
「殻も取りきれていないヒヨっ子なんだけど、太助も立派になったわねぇ。肉体的に」
「はい。感無量です」
肉体的に立派と言う事は性的にも……まぁそれは良いとして。妖怪としての成人なんて概念は無いけれど、人として成人になったのならお祝いをしなくちゃねぇ。
縁側に腰掛けて空を見上げながら、今日は幻想郷の結界の端を回って把握すると出かけた太助の広くなった背中を思い出しながら呟くと、我が従者であり、式神であり、そして友である藍がお茶を持って横に立って返事を返してきた。
……独り言のつもりだったから少しドキッとした。
「紫様、ご一緒しても?」
「良いわよ。少し、会話がしたかったわ」
「私もです」
近くに居た事に気づいていたわよと誤魔化す様に了承する。
隣に座った藍から受け取ったお茶を一口啜りすでに決まっている予定をまとめる様に口に出す。
「さて、太助の大人になる儀式は済ませました」
「はい、短いながらもとても永く感じていた機会でしたが満足しました。全てにおいて知識無く、一つ一つに対しておっかなびっくりでしたが……私達の先導の許、少しずつ慣れていく姿は可愛かったものです」
「幸い人里の男達にその様な方向に走る者は居ないけれど、秩序を乱し法を犯してまで行動する者も居るみたいよ」
「免罪符とは言いませんが太助の場合は妖怪ですからね。外の世界の法を当てはめるのもおかしいです……が、あれ以来様子を見ていれば求められればと言う考え方をしていますね。外で耳にした草食系と言う事でしょうか」
「太助は別に無欲でも無いのだけどね……ふふ、もし太助が積極的に子を欲しがったら……迫られちゃうのかしら」
「その時が楽しみですね……フフフ」
「ってそんな下な話をしたかった訳じゃないのよ!!」
勢いよく立ち上がり大声で話をぶった切る。そんな動作でもお茶をこぼさないコツは一子相伝の秘密。
深呼吸を一つ、びっくりした顔で一時停止している藍に顔を向ける。
「……えー、紫様?」
「…………判らない?」
質問に質問で応えると藍は少し考えて、すぐに首を横に振る。
「すみません、いくつか思い当たりますが正解まで辿りつけませんでした」
うん、ここが藍の好ましい所。判らない事をいつまでもウダウダ悩まず、自分の持っている情報から正解に辿りつけるかどうかをすぐに判断出来る所。
「ふふ……難しい事でも無いし、貴女の中の選択肢にもあったと思うわ。単純に、皆を集めて成長した太助の自慢をしてやろうじゃないって事を思いついたのよ」
「なるほど。裏を考えすぎてしまいましたか。ええ、とても素晴らしい事かと思います。不満なんぞある訳も無く、自慢しか思い浮かばない子に育ってくれましたからね」
同意してくれる藍。でしょ? でしょでしょ? 藍もそう思ってくれていると信じていたわ!!
「さぁ! どう言った形で太助のお披露目会をやりましょうか」
「別にやらなくて良いからね?」
びくぅ! と心臓が一瞬止まった感覚が……。見れば藍も驚いた表情で固まっている。
冷や汗を少し垂らしながら、振り向けば空中に浮かぶ太助。
「た、太助? そんな気配を消したまま声をかけないで? 凄くびっくりしたわ」
「いやね、何か怪しい気配を感じたものだから……ごめん」
とりあえず、幻想郷の管理者としての視察から帰ってきた太助を歓迎しましょうか。
前はいつの時もお気に入りだった書生姿だったけれど、今は平時に着るだけとなり仕事には……なんだっけ? まじん? 軍服にマントを羽織り、白い手袋と言った感じの格好をしている。
……うん、強そう。強そうだけどたぶんそれ悪役よね太助? え? ベガの元になった人? ごめんなさい、知らないわ。