見上げれば木々の枝と葉が視界を埋め尽くしながらも、木漏れ日のおかげで薄暗い程度に済む人の手が入っていない山の中。
過去に人にも使われていたであろう山道は、今では草木が生い茂り獣道を所々に見かけるのみ。
人工物が一切目に入らない場所を少しドキドキしながら歩く。
ところで、どうして僕がこんな所を歩いているのかと言うと、霊夢に先立たれた後の僕は周りの親しい人達には誤魔化しきれないどころか顔見知り程度の人にまで心配されてしまう程落ち込んでいた。
そしてそんな弱りきっていた僕を目にした長い付き合いの友人――逆から言えば好きだけど人間である霊夢の手前我慢していた女性陣――が少々暴走してしまった。
まぁ何と言うか、端的に言えば妻が亡くなって弱っている精神状態に付け込んで霊夢の後釜に座ろうと思った、思ってしまったらしい。
流石に妻を亡くしたばかりなのに次々と迫られてしまうのはかわいそうだと、各々の
ところで、暴走した顔ぶれに咲夜や早苗ちゃんが元気に存在している。
霊夢と魔理沙が老衰で亡くなったのに? と思うかもしれないけれど、何か咲夜は能力がパワーアップして老化の停止は勿論のこと若返ったり成長したり(年取ったり)する事が自由に出来る様になっていて、早苗ちゃんは神としての力が伸びてどれだけ経っても二十歳位の姿のままで不老となり寿命無くなりましたって言っていた。
人間の
まぁとりあえず、時間はたっぷりあるんだから焦らず友達からお願いしますと言う事で話を済ませた僕に味方してくれた方のメンバーから幻想郷はそんな広い場所じゃないから外の世界に傷心旅行に行ってきなさいと勧めてもらい、僕は旅に出た。
幻想郷内の通貨はたまーに迷い込んで来る人の持ち込むお金に対応出来る様に紫姉さん経由で最新の通貨が使われている。逆に言えば、人里の通貨は外でも使えると言う事。
なので始めの内は少しずつ貯めていたお金で過ごしていたが、使うだけでは増えはしないので移動費や食費、滞在費をバイトで稼ぎながら都道府県全てを旅して周った。もうちょっと細かい話をすれば各地で観光協会やら地元の通行人やらに話を聞いて、有名所は勿論地元の人だからこそ知っている隠れた絶景を見たりと無計画な旅を楽しんできた。
そんな旅の仕方は当然時間もかかる。始めてから数年経った旅もそろそろ帰る頃合だと思い内と外の境界である神社、博麗神社へと足を向けた。それが、僕が整備されていない山の中を歩いている理由であった。
暫く歩き進め、目的の場所に辿り着く。
数年ぶりに見る外側の博麗神社だ。
管理されず、老朽化が進んでいる。なのに、全く朽ちていない外見。山の上にある名前の判らない神社は取り壊しがされず、役所には認知されず、知っている人が居るのに知られていない謎の神社がある。そして、実際に見たと言う人は居なく、何故そこに神社があると言う
紫姉さんだろうな、と神社を見上げながら口元が緩む。
人々の認識からずらし、されどたまに居る勘が良い人間に蜃気楼の様に認識されてしまう。そんな忘れられている様で忘れ去られていない曖昧な状態は流石だと思う。
そして、足を動かす。
――結界をすり抜けて。
――外から内へ。
――境界を跨いで。
――景色が、変わる。
――瞳を閉じて、風を感じる。
――瞳を閉じて、草、土の匂いを感じる。
――瞳を閉じて、風になびく草の音が聞こえる。
――そして、瞳を開いた。
「あっ……太助……様?」
目の前に佇む女の子。見慣れた赤と白の色を見せ、知っている作りとはまた違った巫女服が着た、手には箒を持った今代の博麗の巫女。
「おかえりなさい、幻想郷へ」
優しく、嬉しそうに目を細めて微笑む巫女がそこに居た。
「ただいま。幻想郷」
そんな今代の巫女に僕は言い返してあげた。
「太助様の帰りを待っていた皆が、もうすぐ此処に来ますよ」
「うん、そうみたいだね。結界を通った瞬間にこちらに向かってくる気配をいくつも感じたよ。って、もう来たね」
僕と今代の博麗の巫女が空を見上げれば、見慣れた顔が居た。友が、仲間が、家族が居た。
「ただいま、皆」
皆の顔は、笑顔だった。
小説家になろうに第一話を投稿したのが2013年の六月三日。二話と三話の間に一年近い間が空いてますが約五年をかけてここまで書けました。
書き始めたきっかけは某所で見かけた『原作者であるZUNは登場人物が少女ばかりである理由について、遊びである弾幕ごっこを少女以外が真剣にやるのは不自然に見える為と発言している。』と言う一文。それを見た当初、私が読んできた東方二次小説の男オリ主が出ている作品は総じて弾幕ごっこに参加していて、その様子に手鞠遊びやおままごとに良い年した兄ちゃんが参加している様な違和感を感じてしまった事でした。
今となってはそうは思わないのですが、当時はそれが堪らなく不自然に思えて別に弾幕ごっこしない男主人公が居ても良いよね? そんなのが読みたいなぁ。見つからないなあ、じゃあ書くかって感じでキーボードをカチャカチャ叩き始めた結果が東方春風駘蕩。
今も昔も、投稿するには出来栄えに納得した状態。が座右の銘でして、幽々子と妖夢の初登場の時は悩みましたが……それでも確かに全力で書いた話でしたので納得しています。
そんな座右の銘ですので、投稿し始めた当初を振り返ってもこれ以上が書けるとも思っていないですし書こうとも思いませんでした。続きはともかくリメイクは蛇足にしかならないだろうなと考えてます。
……さて、最終話を書いた事で色々と言葉が心に浮かんできますが、全部書いていくと後書きが本編の量を超えかねないので、そろそろ終わろうと思います。
東方春風駘蕩はひっそりと存在していて、読んで下さった皆様の記憶には残らなくても暇潰しになったと思ってもらえていたら、それだけで私は嬉しく思います。
初期の頃からお気に入り登録してくれた方。終わり頃に存在をしってくれた方も、読んで下さりありがとうございました。