ACECOMBAT if ~全く違うzero~ 作:夕霧彼方
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1300hrs
ヘッタ―平原ウスティオ国防陸軍駐留地
後発部隊も合流し、一大集結地点が出来る。サ―ガウ―ラが操るアリエテも一地点にまとめて並べている。
そこにフェルナンデスが帰って来る、整備や休憩していた隊員が直立不動で敬礼する。
「楽にしていい」
彼の一言で全員戻す。
「会談は……」
「今から総合作戦指揮所で緊急会議だ…奴らは、ベルカは現時点聞く耳持たない。明日から再度進撃の可能性が出た」
「「!!!」」
ウスティオの一時停止を聞かずに進撃、完全にレクタを舐め、ウスティオを考えていない。
相手は予想以上の新型兵器で固める東部軍閥、足並み揃わずで勝てる確率は低い。
「手柄に急ぐゼッタ―を押さえられない私の力不足だ…済まない」
一同が黙る。しかし2人は違った
「元帥閣下、お言葉ですが、我々レクタ派遣軍、いやこの戦争始まってから超絶任務を遂行してきました。我々に怖いものなどありません!」
「ベルカ司令が何だろうと、我々勇猛なウスティオ兵士の力をお見せしましょう!!」
既にフェルナンデスに毒されたサ―ガとウ―ラだ。他も苦笑する。
「………、そうか…、じゃあ気にしない!この際レクタ首都まで中央突破だ!」
「「「いやいや少しは気にして下さいよ?!」」」
周りは笑う。フェルナンデスも笑う。
ウスティオ国防陸軍今日も精強なり。
1245hrs
ア―ラスカ基地廊下
「シザ―中尉!」
「ああ、何でしょうベニ―さん」
ベニ―は笑顔ながら背筋に寒いものが流れこむ。
こいつ、ナルシストだ…!
しかもここ地元では有力の上院議員の息子、階級上の人に敬意を払わなくても咎めないし咎められない。
「あの、私明日のア―ガイル大尉の聴取をしたいのですが…」
「それはそれは!別に構いませんが、代価というものがあるでしょう?」
こいつ!!
確かに諜報した情報で、こいつは金や相手を脅して女を喰らうと聞いていたが……、ここまで露骨に来るとは…
「そ……それは…」
「おやおや?そういえばなぜ私と聴取担当交代したいのですか?理由が無いのにそれは出来ないな――」
くそ!足下見やがった!しかしここは我慢して…やるか。
「分かりました、代価は払いましょう」
ベニ―はシザ―の体に密着する。逃げたいが我慢我慢…てかこんなに逃げたい感じがするのは初めてだ。
シザ―は満足そうに頷き
「それじゃあ夜の11時に僕の部屋に来てね。分かったね子猫ちゃん」
今なら愛銃でこいつの顔を消し飛ばせる自信しかない。
「分かりました」
「よろしい、それじゃあ変更の手続きをしてくる。アディオス」
シザ―は軽やかな足取りでその場を離れる。数十秒後
「あいつ、どうします?少佐殿」
同じ観測員でベルカ秘密諜報課の軍曹がベニ―に聞く。
「あとであいつに強力な睡眠薬を盛っといて、あと、あいつとその親父のスキャンダル、秘密諜報課の全力でお願い」
「了解、軽く越権に見えますが、私もあいつだけは好かないのでやっちゃいます」
「お願いね。さて、第一段階完了」
ベニ―は静かに呟く。
1300hrs
シ―フェスディス
艦隊総力戦が終了し、損傷が少ない艦が空母随伴、自力航行が不可能に近い艦はドッグまで大型艦が曳航、負傷がまあまあで、人員収容出来れば、撃沈艦から回収された船員が乗る。
戦闘海域はあの戦闘が嘘かのように静まり返り、ベルカ海軍空母グラッチェを旗艦に第5艦隊が海域監視をしている。
戦果は最高だった。
オ―シア第2国防艦隊が消滅した事によって、しばらくの制海権は掌握したも同じで、これから反撃の名の下でオ―シア侵攻がしやすくなった。
まあベルカ海軍も戦力完全回復まで10年かかると言うが、それに見合う報酬だ。
そして医務室で眠る一人の女性、
エレノア・ロ―トシルト中尉である。彼女はグレンが居なくなった後、悪魔が乗り移ったかのように猛々しく戦い、着艦した瞬間に気を失い今に至る。
初老男性軍医、ジップ・ラフトが艦内の怪我人と具合の報告書をまとめる音しか鳴らないるなか
「ん……」
エレノアの目がうっすら開く。
「おや、気付いたかい?」
ジップは優しい雰囲気を出しながら彼女に近付く
「ここ…は?」
まだ覚醒しきって無いのか、少し舌足らずだ。
「ここは医務室だ、君は昨日から今まで寝てたんだよ。と、それじゃあ早速だけど質問いいかい?」
「はい…」
ジップは吐き気や頭痛が無いか質問する。エレノアも徐々にはっきりした口調で返答する。あとは瞳孔や口にくわえるタイプの体温計で体温を計る。
「うん、特に異常は無さそうだね、高機動の体の負担からくる疲れかな?それ「あの…」なんだい?」
ジップは落ち着いて聞く。彼女は遠慮がちに
「あの…、隊長は大丈夫ですか?」
「!!?」
ジップの顔が強ばる。
この子、覚えてないのか?いや有り得ない話でもない。
悪魔が乗り移ったかのような戦闘の後の長い眠り……心理学はやらないが推測するにこれは一種の記憶封鎖か?
「あ……ええと…」
「?どうしたんですか?」
エレノアが心配そうに聞く。ジップはどうしようかと思案を巡らせた時
「君の隊長はオ―シア軍の攻撃で撃墜され、救援信号無し。行方不明だ」
「えっ……」
「なっ!」
ジップの振り返った先、海軍総司令レンが真顔ではっきりと宣告した。
「う…そ…、嘘ですよね」
「嘘を言って何の得がある」
「ああ……」
ジップは頭が白くなる。こりゃまずい
「〜〜〜〜!」
ベッドから飛び出し走り出すエレノア。
どこの小説だよ!
「総司令!」
「彼女を追いかけるぞ、多分彼女はまず馴染みの部屋を探してから、最悪……」
レンの言葉にジップが固まる。
1315hrs
エレノアは希望を持って、最後の馴染み部屋、休憩給湯室にもグレンが居ない事に、彼女はようやく現実を受け止め、膝から崩れ落ちる。
「おい!大丈夫か?」
休憩給湯室で休んでいた整備士とパイロットが近付く。
「………」
「?、おい…」
「………ですよね…」
「はっ?……!!」
彼女の纏うオ―ラが明らかに変わる。
今までが眩しいくらいの純白が、どこまでも深く絶望に満ちた黒に変わる。
「隊長を落としたのはオ―シア軍?」
「あ…ああ」
威圧で大の男2人含め周りの人間が固まる。
「落とす…」
「ちょ!おい!」
暗いオ―ラを纏う彼女が走り出す。
「間に合わなかった!」
「ジップさん!彼女は?」
肩で息をしているジップは素早く内線を取り
「整備隊に緊急事態発生だ!至急エレノア・ロ―トシルト中尉の機体を差し止めとロ―トシルト中尉の確保を急げ!」
《はい?!どうして…》
「理由なんて後付けだ!今言えるのは、彼女に今機体を乗せたらどんなに妨害しても絶対に発艦するぞ!急げ!!」
《ア、アイサ―!》
「中尉はどうしたんだ?!」
近くのパイロットがエレノアを追いかけ始めたジップに聞く
「彼女はグレン大尉の撃墜の記憶を喪失してたが、元帥があっさり戻して、その衝動から…」
ジップは一言間をおき
「純白の女神から復讐の女神になった…」
1325hrs
シ―フェスディス甲板
「乗せなさい!私を出撃させて!」
「落ち着け中尉!今のお前に機体は乗せられない!」
「ロ―トシルト!お前の気持ちは痛い程分かるが、今は我慢の時だ!」
「君が今これに乗ってもカタパルトは動かない!諦めろ!」
エレノアは機体手前で近くに居た男性3人に抑えられてるが、華奢な体からは想像出来ないな恐ろしい力がかかる。
「そこまでだ、中尉」
静かに…しかしエレノアの邪悪とまた違う、周りを威圧する声。
レン元帥である。
「エレノア中尉を放せ」
「「はっ!」」
3人は素早くエレノアから離れ、整列する。それに倣い周りの隊員も口を噤み手を止め、そちらを見る。
「エレノア・ロ―トシルト中尉」
「はい」
切れながらも、何とかある自制心でレンに向く。
「君は機体に搭乗してどうするつもりだった?」
「私の手でオ―シア軍の部隊を潰すだけです」
「それは許可出来ない」
「……」
「人を恨んで、殺してそれで大切な人は戻るのか?それはない、更に言えば、君の暴君で死んだ人を大切に思う人を悲しませ、その人の恨みのスパイラルだ」
「………」
エレノアは俯き震える
「戦争で軍人は血を被り、恨みを被る職業、しかし傭兵や乱射魔は例外として無用な争い恨みを生まない生ませないのが普通だ。それは君も例外じゃない…」
「…分かります……」
俯いていたエレノアが小さい声でポツリと言う。
「総司令のおっしゃる事は分かります…私が戦っても隊長は帰ってきません…敵を私情で乱射すれば隊長が悲しむ事も分かります……でも、でも、隊長はいつも私を庇ってくれたのに、私は隊長を援護も何も出来なかった!」
エレノアは捲くしたてるように言う。レン他周りの人は何も言えない。
「私の無力で全てが壊れたのです…これじゃあ国も国民も友軍も救えません…もうどうなってもいい「甘ったれんな!!」」
エレノアは気付いた時には青い空が広がり、左頬は焼けるように熱くて痛い。
レンの強力な平手打ち、周りはどよめくが動けない。容赦なくエレノアの襟を掴み、
「過小評価もいい加減しろよ!そして簡単に守護の誇りを簡単に捨てるなよ馬鹿野郎!!分からないなら何度でも殴る!」
「………」
「守りたいなら強くなれ!戦場ではいつも誰かが死に、誰かが生きる。その定義は絶対に揺るがない。
グレン大尉は確かに現在行方不明で残念な結果もあるかもしれない…しかしな!それですぐに自棄になり誇りや護るものを捨てるな!」
「あ……」
初めて彼女の中で何かが燃え上がり同時にこみ上げる。
「誇りを持て、グレン大尉の分君は戦うべき場所がある。ネメシスではなく、誇り高き制空騎士だ」
「うあぁ…」
エレノアの目から涙が零れる。それは止まらず
「うわあああん!!!」
「泣くな!と言いたいが、今は泣け。そして明日からまた戦え!グレン大尉も諦めるなよ!」
「イエズザ―…」
空母の甲板で彼女の泣き声が響く。
周りの隊員もやっと雰囲気が白くなり、安心が広がった。