ACECOMBAT if ~全く違うzero~ 作:夕霧彼方
3/9
0700hrs
シルバーマーク空軍基地オフィス
酒に強く、宴の犠牲者の中では回復が早かったギュンターがオフィスを素早くかける。
今日は宴以前から決まっていた完全に軍務が解かれる一日。しかし彼は決定的なミスを犯していた・・・。
書類の数枚・・・しかもかなり書く間違いなく3時間コースの書類をうっかり忘れていたのだ・・・。この休暇が終わると、明日からは超ハードミッション、南部のベルカ領内採掘場に未だとどまる、北オーシア軍並にうざいオーシア残党軍に連続空爆任務が待っている。
「よーーし、だれも居ないな・・」
彼の任務はただ一つ。素早く事務処理能力ピカイチのユーマの[ギュンターの手伝いでそんじょそこらの商社の社員よりも能力が高くなった]デスクに書類を置く!彼女なら文句言いながらも1時間で終わらせるだろう!!
超他人になすりつけ主義の隊の隊長、文句を言ってもやってくれるユーマに完全に依存している。
さて書類書類と・・・無い?!
ギュンターにあてがわれたデスクには書類が見つからない、その時
「はい、これを探してましたか?」
「お!そうそうこれだこれだ!ありが・・・」
ギュンターは振り返り笑顔が凍る。そこには笑顔のユーマさん。
「あれ~?結構お酒強かったけ?」
「まあまだ少し頭は痛いですが、直感で起きたので・・・で?これは何ですか?」
「ん~?未提出書類?今日提出だよ~」
「ふざけた事は言う隊長は・・・」
「ん~・・・ちょっ!マジやめ!しまるしまって・・・」
少尉が少佐の首を締めあげる図。階級差はログアウトしました・・・。
「・・・たく、しょうがりませんね。まあ今から始めてどんなに遅くても事務が始まる時間までには終わりますね」
「へ?」
「私が7やりますから隊長は3して下さい。キリキリと働いて下さい」
「ありがとう!ユーマ!」
「感謝は終わってから!それと、今日は今までの残業代、きっちり請求させていただきます」
「・・・・へ?」
ギュンターに冷や汗が垂れる。まずいぞ~、次はなんだ?!
「えええい!ままよ!なんだ!言ってみろ少尉!!」
ギュンターが壊れた!ユーマは一冊の本を出し
「あの・・・このカフェの・・・おススメだそうでのすで、隊長のおごりで行きませんか?」
差し出されたのは、そこそこ良い値段で雰囲気がよさそうなカフェの特集記事。見れば基地から近い。
「え・・あー、別に構わないけど、だけど、そこは大丈夫なのか?」
「大丈夫です、既にあのカップル、トゥル隊のエレノアさんが、昔、そこの紅茶を飲んでかなり美味しい部類だったと」
「そうか・・・うん、分かった。仕事が終わったらおごらせていただきます」
「はい!」
どんな無茶請求が来るかと思ったら、ギュンターは思う・・・これはもしかしての・・・いや、こんなに仕事を押し付けてたから絶対にそれ以上に金が消えるだろう。
完全にネガティブ思考モードに入る。ユーマの想い、隊長に通じず・・・。
「それではまず仕事を終えましょう!」
「はいよユーマさん!」
さて、どちらが立場が上だ?
仕事を始めようとした時、あっ、と声を出してからユーマは
「そういえば隊長は聞きましたか?なんでも州営空港をベルカ軍拠点基地に一時するという話?」
「いや、知らん、どこがだ?」
「えーと、ウエストベルカ州空港だと聞きました。あそこは開戦前から今までずっとベルカ軍の受け入れ拒否をしてたのにって・・・隊長?」
彼女の言葉にギュンターが動かし始めたボールペンを止める。そして思案顔になりながら
「ウエストベルカ・・・間違いないか?」
「ええ、どうかしましたか?」
「いや・・・少し昔の事を思い出してね・・・亡国ユネーストが協力しただと・・・」
「ユネースト?どこですか?」
首をかしげるユーマ
「そうか、小国すぎてベルカとは近くて遠くて、ベルカの黒歴史だから教科書には載らなくてユーマは知らないし、親の世代でも名前は知ってても歴史の真実を知る者も少なく、なおかつ俺達は未だに緘口令が敷かれて喋れないから知らないか・・・」
「緘口令?どうしてそんなものが・・・」
「ユーマ、俺から言える事は無いが一つだけ教えてやろう。俺の推測が当たるなら・・・多分、ベルカから近い未来、独立国が出るだろう」
「え・・・?どうゆう事ですか?」
「さーあね、まあ頑張って答えを見つけてみな」
ギュンターは笑い、ユーマはムーと膨れ顔になる。しかしギュンターは笑顔ながら裏は違った・・・。
ユネースト・・・か・・・
経済崩壊時代、自分が最初に飛んだ空・・・それが亡国ユネースト共和国威力偵察任務だった。
3/9
1000hrs
ベルカ連邦
ウエストベルカ州営空港兼州軍基地
この州営空港総責任者にして、ウエストベルカ州軍航空隊№3、テータ・ニロク少佐は飛行場を眺めて驚きが隠せない。
この空港は、長らく大きさに反して、設備が無かった。せっかく3本ある滑走路も、ベルカ公国本国の空港に飛行機が流れる為現在は1本、この州に観光に来る人も、直接ここには来ずわざわざ迂回をしてくる。
今は国内線と州軍航空隊のF-4などが20機程度が時折飛んで、本国からの助成金で成り立ってる田舎空港の一つだった。
それが今はどうだろう。
いきなり州知事から、ベルカ空軍が来ると言う報告を受けたのは3日前、何だと思ったら、北オーシア残党軍攻略の最前線重要基地の一つとして使用決定。あれよあれよという間に最先端のレーダーシステム、管制システムが整い、滑走路整備が出来たと思ったら、今日からFCMB空軍約70機が次々降り立って、てんてこ舞いだ。
テータはこの国の生まれだ。
なぜ州で無く国と言うか、それは言いたくないが、とにかく彼はベルカの国からは嫌われている。その理由は右目の横の刺青に理由があるからだ。
そして彼もベルカ人を嫌っている。尊敬する父親を殺されたも同然だからだ・・・。
FCMB空軍・・・といっても10割ベルカ空軍所属なので、彼らに話しかけるつもりもないし、奴らも自分を嫌い話かけないので好都合だ。
はあ、交換条件があれでなければ絶対に反対したが、仕方がない・・・州の未来の為だ。そんな事を考えていると・・・
「貴官がここの司令でしょうか?」
女性の声に振り返ると・・・まず、大きい、自分の身長と同等の180cmレベルだ・・・。ベルカ空軍のパイロットスーツを着る彼女は微笑しながら近づく。隣の小柄の青年は・・・整備員だが・・・なぜウスティオ空軍?
「ああ、まあこの空港の総責任者だが・・・」
「初めまして、ベルカ空軍特殊戦術航空団、第2戦術航空中隊、ヴァルキューレ隊隊長、ジャスミン・ミリディアナ、階級は中佐です」
彼女の敬礼を筆頭に後ろの部下と思われる女性たちも一斉に敬礼する。
「ご丁寧に・・・テータ・ニロク・・階級は少佐です。こんな小さい州のベルカ空軍の規定では大尉の自分に敬礼はやめて下さい、この刺青が見えないんですか?」
「いいえ、この基地の使用権はそちらウエストベルカ・・・いえ、ユネースト配下にあります。その責任者に敬意を払うのは当たり前かと・・・」
テータに衝撃が走る。なぜこの若い女性がこの国の名前を・・・この30代の前半までなら名前なんて知らないはず・・・。ジャスミンは微笑を浮かべながら
「私の親が刺青入りだったんです。ですから」
「!!?」
「それでは」
もう一度彼女が敬礼してからテータの元から去る。彼女も同胞の血が流れてたとは・・・
この州に関する歴史は闇に近い・・・
完全冷戦のさなか、ベルカ公国、オーシア連邦の国境に位置してた、ウエストベルカ州の前の名前、ユネースト共和国。
人口100万も満たない小国だったが、北ベルカ、北オーシア工業地帯の唯一の中立にして中継交易都市国家として存在していた。
1955年、ベルカが傾きの兆しを見せ始めた時、元々国土の北、年間を通じて雪が多く雄大な自然を利用したウインタースポーツ産業、高原では酪農産業を始め、様々な潜在的能力を引き出して、交易の頼りでなく、観光立国を目指した。
1960年、1人あたりGDPは世界の小国の中では群を抜き、そしてこの現ウエストベルカ州営空港、旧中央ユネースト空港を開港。世界から観光客を集め始める。
滑走路は2400m×2、3200m×1、世界最大級の空港で、ユネースト軍航空隊の本拠地になった。
しかし時はベルカ経済崩壊が極まった1980年代・・・
オーシアはどんどんとベルカに向けて領土侵略が始まる。
ユネーストも、オーシア、ベルカの狭間でどちらかに従わなければ理不尽な領土侵略は目に見えていた。
そして史実では、ベルカ陣営にユネーストは自発的に属国併合したと言われているが、実際は違う・・・。
共和国軍の約30倍のベルカ軍勢を国境に配置して、いつでも侵略を可能とした。
領土を焦土にされて、挙句に潤沢な資金を全て搾取されるか・・・
ある程度の自治権を残して、無血併合か・・・
軍は地の利を利用して、最後の最後まで徹底抗戦を表明した、確かにこの国の軍人を主に占めるのは、北の閉ざされた地域を拠点とする戦闘民族、リーフレイン族が大半を占めており、兵士の質は通常の国ではレンジャーレベルと評されていた。
しかし相手は経済崩壊しても軍事大国、勝てる見込みなど無いと断言出来る。
時の大統領は、是非も無しと、国民の命、国の資金を死守するため、1984年、併合を決定した。しかし約束は守られず、一時は公国直轄領という名の搾取指定区域になった・・・。
完全崩壊、資金が枯渇し始めた、旧ユネースト共和国に厳しい課税をかける本国。
幾度となくリーフレイン義勇隊とベルカ軍の戦闘が行われ、このいつまで続くか分からない暗黒時代は4年後の資源発見まで続く。
ちなみに刺青の理由はテータの親はリーフレイン族の軍人で、反逆思想があったため、その家族として、当時17だった彼ら家族にも刺青が彫られたのだ。
1990年、遂にベルカの経済は完全復活宣言、同時に禍根渦巻く因縁の直轄領は特別州に指定され、このウエストベルカ州も実質ユネースト共和国と同じ国土、主権を維持している。
ちなみに、ギュンターの推測通り、この戦争が終了したら、ベルカの監視下FCMB同盟締結を今までの賠償分を含めて、工業豊かな一部ベルカ国土割譲、ユネースト共和国復帰を大統領、州知事で締結している。
「・・・・、その・・お父さんて・・・」
セアラが知らなかったユネーストの歴史を聞いて愕然としている。
「私は元々ならベルカ、ユネーストのリーフレイン人のハーフ。まあ私の父は刺青入れられたのはたまたま帰省した時に刺青入れられて、私はベルカ人として登録されてたので刺青が無いの。どう?驚いた?」
「驚いたというより・・・なんか追いつきません」
「そうね」
ジャスミンはフフっと笑う。セアラと会ってから笑顔が増えているのに、後ろから日増しに強くなっていく視線をセアラは感じる。
それは・・・
「気に食わないわね・・・」
「「「はい」」」
ステラ筆頭のヴァキューレ隊のメンツ、彼女たちこそ真のジャスミンファンクラブ筆頭と言っても差し支えない信奉者が多いからだった・・・。
さて時を動かして
1100hrs
ウスティオ共和国
FCMB共同野戦飛行場「B7B」
円卓のオーシア国境側に作られた野戦飛行場、名前は無く、電磁波も円卓内では微弱でも通常の地帯ではまだ高いので強力なレーダサイトで管制されてる飛行場。
ここからも北オーシア残党軍討伐部隊を出す。
そしてその飛行場のブリーフィングルームには
「集まったな、ガルム、クロウ両隊、早速だがブリーフィングを始める」
基地の参謀が作戦内容を伝え始める。
内容は至極簡単
明日の昼前に頑強に作られた敵防衛線の空爆部隊との合流と護衛任務
「簡単そうな任務ですね!」
「そうだな、PJ、お前に彼女が出来る確率よか成功率があるのは間違いないな!」
「ちょ、先輩?!それに自分彼女居ますよ?!」
「「「意外だ・・・」」」
「えええええ?!」
「そこうるさい!」
クロウ隊が騒ぎ出し、参謀が叱責する。サイファー苦笑、そしてピクシーは
「お前ら、作戦ぐらいちゃんと聞いとけ」
「分かってますよ先輩・・・」
全員は薄々感じていた、最近彼の様子がおかしくなったことが、そして明日の任務が運命の日とはまだ知らない。
「質問は・・・ないようだな、それでは明日の戦闘、健闘を祈る」
参謀の敬礼に全員が一応返礼する。
その空気は静かで、妙に重かった・・・。