ACECOMBAT if ~全く違うzero~   作:夕霧彼方

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優しさ

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1020hrs

シルバーマ―ク空軍基地D格納庫脇

練習機用格納庫の周りには人間は居ない。全員本部待機か戦闘機格納庫前に集合しているので元から人が少なく主たる練習生と整備士も行ってしまい完全に人気が無い。

そんな中で格納庫にもたれかかる男が一人、結川だ。

彼は絶望というより、先に起こる未来を知りながら、口に出そうとすれば頭に軋みみたいな痛みを感じ、口は動かず、結局何も出来ない自分にむなしさを感じて状況を傍観していた。

北オ―シア核起爆…さっきからその単語がぐるぐると回っては苛立たせていた。

「くそ…くそっ!」

ガンっ!と壁を殴る。痛みを感じて拳からは僅かに血が流れるが構わずに殴り続ける。八つ当たりか痛みで気を紛らわせたいのか分からなくなり始めた頃に

「そこまで」

冷静な女性の声が聞こえたと思ったら、さっきまで叩きつけてた腕を凄い力で抑える。

「商売道具の腕をどうするつもりかしら?」

「ハ―ト少佐…」

振り返ると居るのはハ―ト、彼女はにっこりしてから

「まずは…制裁!」

ハ―トは結川の両肩に手を置き腹に思い切り膝蹴り。

顔だと腫れてしまうと面倒、腕は商売道具だから捻れない。だから膝蹴り

「ごふぅ!」

結川は鍛え上げた筋肉を通して衝撃を受けて目の前がぐるぐるしながら膝をついて咳き込む。

憂鬱から朝から何も食べていなかったので苦い胃液もあまり出ず、逆に何も出せなくて悶えた。

ハ―トは片膝ついて視線を真っ直ぐ、絶対に逸むけさせない眼力で圧して

「何があったが知らないが隊長がそんなんじゃ先が真っ暗なんだよ!何にいらついているか分からないが部下を安心させられないほどに心中ざわめつかすな!!」

彼女の言葉に結川は今度は心が揺れる。

確かに隊長がしっかりしなければならない……でも

結川が俯くと、ハ―トはふぅ、と息を吐いてから

「でもまぁ、いきなり立ち直って謝ってこいよりも、順序は逆になりましたが…あなたは今何に悩んでいるの?」

さっきとは打って変わった優しき声、見上げるとこれも変わって穏やかな笑顔。

「私は陸でも隊長は隊長、何か相談にのれるかもしれないし、愚痴も今なら何も咎めないしその人に漏らさない。約束する」

「………」

結川にとっては何か分からないが昔に何か似たようなものを感じる。

しかし何か固かった口が突如柔らかくなり

「この未来…昨日の内に分かったんです…でも何も出来なかった…何も…分かっているの出来ない、どんな事があっても起きてほしくない事が…」

そこまで言うとまた口が固まる。もう喋るのは許してくれないみたいだ。

彼女はそれを聞くと

「そう…そしてあなたは苦悩した」

彼女の言葉にこくんと頷く。またため息ついた後

「中佐、はっきり言ってそれは自惚れであって抱え込み過ぎた大きすぎる罪悪感です。1日で何とかなるなら私も部下も総動員で駆逐に奔走します」

ハ―トは結川が気にする言葉をぐさりと突き刺す。確かに自分は無謀と分かっても未来が見えたから何とかしたいと思っている。そして彼女はさらに

「そしてあなたはその罪悪感から自分許したくない」

その言葉に結川はピクリと反応する。

「図星ですね。確かに許せなくてやるせない、私も同じ立場なら…ううん軽々しくは言えない、でも、中佐自身が許せなくても、有り得ないと思いますが戦友が、周りも許さなくても、私は許します」

「えっ――」

刹那、結川は腕を引かれてそのまま抱き止められる。完全に彼の頭はハ―トの胸の部分に置かれる。

「許せないならそれでいい、私や部下も味方になります。でもそれ以上自分を責めない、そしてそれ以上にやらなければならない事を見失いで」

状況を把握した結川は赤面して反射で逃げようとしたが、がっちりと左腕で止められ、やがて彼女の穏やかな声で抵抗が止まる。

「あなたは戦場において逃げるだけの無力な民間人ですか?いえ、それを守るべき盾になる存在でしょ?今は気落ちしてもこれから過酷で、熾烈な試練が起こる可能性は大です。ここで切り替えて中佐は守れなかった分を取り返しましょう」

優しい声を掛け続ける。結川にとっては何か救われる。そしてこの懐かしい感じがやっと分かる。

昔の昔、小学生の頃に友達の愚行を誰にも言えず、起きてしまい非難を受けた時に近所に住んでいた姉と慕っていた人に励まされ抱きしめられた時の安心感だ。

軍人の迷彩服で決してさわり心地の良い繊維の服でないのに、女性特有の甘い匂いや暖かさに結川は身を任せて、大分落ち着いてきた。

「もう大丈夫です」

「そう?お役に立てた?」

「十二分に…ありがとうございます、おかげさまで立ち直れました。それよりも凄く慣れていますね」

ハ―トは微笑しながら

「ふふ、私には悪ガキだけど憎めなくて可愛くて無邪気な弟妹分達がたくさん周りに居ましたから」

結川も大分調子が戻って、小さく笑い。

「あと、失礼な質問ですが、何故あなたが?」

「とある人との同盟…とだけ言っておきます」

更に意味深な笑みを浮かべる彼女、これ以上は教えてくれないか。でもとにかく

「本当にありがとうございました。これから隊のみなの方に行ってきます」

「いってらっしゃい、ちゃんとキレてた分はフォローしてきなさい」

「はっ!失礼します」

階級は上でも恩人になったハ―トに敬礼する結川、彼女も返礼する。

結川が去ってから、ハ―トは腰に手をあて、

「ふぅ、人の恥ずかしい姿を隠し見は良くないと思いますよ、エリ―ゼ大尉?」

「ふふ、あなたが同盟をちゃんと遂行したかの確認ですよ」

物陰からエリ―ゼが出てくる。

「とりあえず、今までの話は聞かない事にして、隊長はどうですか?」

「死人の目の一歩手前ってところね」

戦場では一人で抱え込みすぎると、使命を更に重く感じて、最終的には死人の目になり、戦死する。結川はまさに死人の目に浸蝕されはじめ、さっきの事変で急速に進んでしまった。

「しかし少佐の素晴らしい母性力というなの抗生物質で大分和らいだみたいですし、あとは私達が…」

「ええ、部下のあなた達も早くユイカワ中佐が信頼おいて安心させるように精進なさい。まあそれよりも早いワクチンは彼女の想いに気付く事だけど…どう?」

ハ―トが聞いてエリ―ゼは

「正直な話、彼女の片思いでなく、隊長も潜在的には好意を抱いていますが、気付かないというか、気付きたくないのか…特に今日はそれがはっきりしてまし、彼女自身も死人の目の隊長を包み込めなかったあたりまだまだワクチンどころか抗生物質にも…」

「あと一押しか否か…どうなるのかしら」

2人前途多難な結川アリチェくっつけ作戦にため息を吐いた。

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