ACECOMBAT if ~全く違うzero~ 作:夕霧彼方
光の奔流をまともに受けたあと、次に来たのは衝撃波。
機体は大きく揺さぶられレオンハルトも体が上下左右に行く。ハ―ネスが無ければコックピット突き破って空に飛ぶ自信もある。
サンバイザ―を通り抜けた強烈な光で視神経がやられたか前が眩んでいる。
異常警報と誤動作のミサイル警報が混ざって雑音とも言える不快な音楽になる。
体は無意識に確認ボタンを押し警報を止める。
前が大分見えてくると、まず見えたのが
「機械がやられてる…」
目の前のHUDが乱れて、高度計が正確か怪しい。
レ―ダ―は左下近くにいるクロウ隊の一機の位置が反転して右下に居る事になっている。
磁場が突如発生?いや、電磁パルス…そしてあの光は…
最悪の予感…もしそれが当たれば…
「こち…アイ、全機おうと…せよ」
雑音まみれの通信に生真面目な声、応答する
「こちらガルム1!レ―ダ―電子系統がやられたが何とか飛べている!聞こえるか?」
「了解、全機せいぞ…きょうは把握した……何てこ…だ…緊急じ…発生!…オ―シアにて…が起爆された。繰り返す!北オ―シアで核が起爆された!」
最後のやけにクリアに聞こえたイ―グルアイの言葉に背筋に冷たいものが走る。
「…だと!」
「くそ…オ―シアは早まっ…」
機器は死んだが、直接の操縦系統は生きている。全員が一番強いレオンハルトに自然に集まるが…
「さあプリンセス…かぼちゃのば…上がりました」
「戯れ言を魔法…こ…見せたいも…のか?」
「ああ…これ…の生んだ悲劇だ」
「ガ…2、だれとは…している」
まったく知らない声の主とラリーが話す。
そして……
「相棒…俺は戦う理由を見つけた…」
「は…、!!!」
レオンハルトが声を出した刹那、ミサイル警報。
誤動作の可能性もあるが、本能が思いっきり警告を示して高機動回避をする。寸ででAAMが飛びさる。電磁の影響でアクティブが作動しなかったのが幸いだ。
「ガルム2!味…を攻撃す…血迷った…?!」
「おい!何をする?!」
「相棒…お前みたい…流される奴に…ない、全てをリセ…す…」
「時間だ…行こう」
「ああ」
レーダ―から二つの光点が離れていく。
「何がどうなっ……くそっ!」
「わけがわから…なってきた」
上がイ―グルアイ、下はPJだ。
レオンハルトは肩を震わせ、サンバイザ―を上げ顔を覆ってから
「くそ…」
ただ呟く事しか出来なかった。
そしてガルム隊は核の使用による電磁により、この作戦記録は全く残されてなかった。
そして3時間後
別の地域でも核の多大な被害を受けていた。
3/10
1300hrs
西ベルカ州営空港
現在は北オ―シア討伐の最前線の基地だった場所。今は戦闘機の墓場に様変わりしている。
北オ―シアの防御陣地に向けた空爆作戦は順調に、被害もほぼ皆無だった。
しかし悪夢の10時丁度、突如として起きた核爆発により状況は一変する。
不幸な事に、最前線を飛んでいた部隊の大半はコントロールを失い墜落、更に強烈な光で失明したパイロットは全く状況が掴めずこれも墜落した。
電磁でAWACSとも連絡がつかず、各々基地に撤退するが、機器の不調が重なりベイルアウトする者も出た。
基地に着陸出来た機の生き残りは出撃時のわずか3割も居なかった。
そしてその被害を受けた部隊の中にはヴァルキュ―レ隊も居た。
「ふぅ…」
戦闘機を降りた途端に女性の臨時除染隊によってごしごしと洗われたり、医者の素早い治療を受けたりと珍しく疲れきり、休憩室のソファーに座るのは、ヴァルキュ―レ隊隊長、ジャスミンである。
彼女たちの隊は幸運にも作戦地域では後方で待機していたのでまだ何とかなった方だった。
と言っても愛機の不調は酷く、ここまでたどり着くまでどう操縦したか覚えていない。
ただ記憶にあるのは、電子戦機で隊の司令塔だった荘姉妹が基地手前でベイルアウトした事だ。
通常の機体よりも精密機器の塊である機体はほとんどのシステムが生きておらず、とにかく騙し騙し飛ばした後に、基地には着陸出来る程力が残ってないから、迷惑かけるくらいならと基地手前の絶対味方防衛圏内に入ると、彼女たちは民家が無く、広い土地に迷わず機体を捨ててベイルアウトした。
さっき救助部隊から連絡があり、パイロットの銀姫は核の衝撃波による打撲、WSOの錦姫はベイルアウト時の無茶で意識は朦朧としているが命には別状は無いとの報告を受け体の力が抜けきった。
他の部下達も、大なり小なりと怪我は負ったが、骨折などの重傷は居なかった。
ジャスミンは部下が全員生存した喜び以上のショックも受けていた。
今でも目の前で起きた事が現実でなく夢であってほしい。そう願わずにはいられない。現に眠気で目を瞑れば途端にあの光景が浮かんで目を開く。不眠症になりそうだ
強烈な光から目が慣れた瞬間、網膜に捉えたのはいくつもの大きな紅蓮の球体…いやキノコにも見えたそれは下にあった緑や民家、そこに住む生命を根絶やしにしたのだ。
あれはオ―シアなのか、あってほしくないがベルカなのかはこの際どうでもいい。ただこんな恐怖しか連想させず、軍人以外も巻き込む非道な兵器を使用し、特に部下をここまで追い込んだ時点でジャスミンのデッドラインは十二分に越えた。
「こんな馬鹿げた作戦を断行した首謀者、絶対に殺す」
外は氷でも中は半端じゃない程熱い人を静かに覚醒した。
と言っても機体があれじゃね…
別の事で苦笑した時
「ここに居ましたか、探しましたよ」
「あら、私を探す口実にサボった?」
「んな事したら即刻ベルカ整備士に殺されます!連絡事項があったので」
ジャスミンの目の前には一人の男性、直接ウスティオから引っ張ってきたセアラである。
彼女が専属を要望するのは普段なら有り得ない事だが、彼には愛機整備を信頼出来た。
それ以上の気持ちにはまだ気付いていないが…。
「あなた結構疲れてる?」
「ええ…まあさっき滑走路上で機能停止した戦闘機を引っ張ったり走ったりしてましたから」
「じゃあ座りながら話しなさい」
「いやいや、それはちょおおお!!」
問答無用でソファーに座らせる。セアラはまさかの展開に驚き、結構近いジャスミンのいたずらめいた微笑に不覚を取られる。
「それで、連絡とは?」
彼女は構わずに聞く。
「あ、ヴァルキュ―レ隊の機体についてですが……」
「予備機パ―ツに再利用くらいは出来るかしら?」
「………気付いてましたか」
「愛機の調子は分かるわ」
セアラが言いたい事を先に言われる。もう分かっているなら躊躇わず。
「はっきりと申しますと、全滅です。簡易ですが内部調査したら良くここまでたどり着いたとまで言える程に中はただれて機器破損を起こしていました。パ―ツ再利用も、核の至近起爆の放射能の影響は免れないと、廃棄命令が出ました。それと後継機は作戦本部からSU-47以外の機体が支給されるそうです」
「……、そう」
ジャスミンはふうっと息を吐き、天井を見上げる。
何があっても四年間ずっと一緒だった機体を失うのは、気付かない内に結構依存していたのね…。
「それと…信じるかは自由ですが…」
「?、なに?」
セアラがまた気まずそうな顔をしながら
「え〜、あなたの機体から、「あなたが次に使う機体は体当たりしないでね」と「国を絶対に守って、仲間達をここまでにした敵を見つけろよ」だそうです」
セアラは息も絶え絶えの飛魂、ヴィジュエントからの遺言を伝える。彼にとっても短い間に色々交流あったので、別れに辛いものがあった。
笑うかどうか、身を構えていると
「飛行機から…分かったわ。伝言ありがとう」
「えっ…」
信じた事に驚きを感じていると、彼女は立ち上がり微笑しながら
「直感かな、あなたの伝言には私にとっては信じられる説得力ある言葉に聞こえたわ。だから信じるの」
「そうなんですか、意外と純粋で可愛いところもあ…」
ビシィ!!と言い掛けのセアラの額に強烈なデコピン
「言葉は選ぶように、それじゃ、仮眠取るから、機体でも何でもあったら遠慮なく呼んで頂戴」
「あい…」
セアラ自身も調子にのった節があるが報復が痛すぎる。
結構痛いが、額をさするのを我慢してセアラは敬礼して見送る。
ジャスミンを見送ってから、セアラが敬礼を止めた時、
「随分と仲良くなりましたね」
少し癖のあるイントネ―ションのベルカ語が背後から聞こえ、振り返ると
「荘中尉?」
「そですね」
「見れば分かりますよね〜」
上は銀姫、下は錦姫、双子で性格は楽天的だが、比較すると銀姫は穏やかな方で錦姫は少し毒舌感もある。
銀姫は右腕が包帯で巻かれていて、他にも2人共通して小さい怪我を多数している。
「あなたも中々どうして凄いですね」
「へっ…どうゆう」
「自分の幸せ具合が分からないセアラ少尉は不幸ですね、鈍感!」
「……」
錦姫の言葉が凄くきついが、何が鈍いんだ?
2人は本気のため息を吐く。
ジャスミンが去った廊下の反対側の廊下で立ち聞きした彼女の言葉に衝撃を受けた。
ジャスミンは実働時間を増やすために短い睡眠で体力を回復する、その短い時間を非常に大切にするため、特に戦時からは空襲などの緊急以外で起こされるのを嫌い、例えヴァルキュ―レメンバーでも嫌な顔をして出来れば起きてからにしてと注意する。
しかしセアラにはどうだ、遠慮なく起こせと言うのはジャスミンの性格からは考えられない。彼に呼び起こされるのは嫌ではないと言っているものだ。
更に確信に至ったのは、荘姉妹は見逃さなかった決定的瞬間、ジャスミンがセアラの天然の言葉にデコピンをかました時のあの照れ隠しに似た表情が見えたのだ。
これで勘違いとは言わせない。
だから姉妹は決めたのだ、非常にシャクだが、既に芽生え始めてる隊長の恋心を応援するとしよう。まだこの男は気付いてないみたいだが、すぐに気付くだろう。いや気付かなかったら一思いに殺す。
「まあ、無事生還の報告はあとにしようか、錦」
「うん、銀姉」
「ん?今なら間に合うん「「あなたの優遇は私達には無いの、分かった?」」え…はい」
姉妹の凄みに負けて頷くしかないセアラであった。
この時、陸軍、特に北オ―シアと国境接する防衛部隊はどの地獄にも劣らない血で血を洗う戦争が始まっていた。
北オ―シア残党軍に出回ったもの
核を使用したのはベルカである。
これが演説された瞬間、今まで戦う気がなかった兵士が全員奮起し、作戦もへったくれもない玉砕覚悟で数日数波の超波状の総力戦を仕掛けた。
これはのちにこの世界の21世紀最悪の戦闘の一つに数えられ、一部では地獄戦争、デスマ―チと呼ばれた。
更にユ―クの最終兵器、シンファクシ改級一番艦ナグファルムも投入され地獄は更に煉獄となる…
混迷の焔〜fin〜
煉獄の戦場の章に続く…