ACECOMBAT if ~全く違うzero~ 作:夕霧彼方
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0600hrs
ベルカオーシア国境線
「はあ~・・・」
「どうした?もはや絶望感満載か?」
「まあな、否定はしない」
G-3を構えるのは予備役中心の中隊の中で分隊長を務めるシクリア、そして隣には戦友のホルシア。
昨日伝達を受けた敵大隊は進軍速度で出した予想よりも遅く、遂に姿を見せなかった。おそらく再編成や、行軍の休憩をしてたのだろう。
我々も出来れば急襲したかったが、目の前の大きな川の上流にとどまった大量の水がいつこちらに襲ってきて撤退不能などで自滅したくなかったので、敵の準備時間を利用してこちらも防御力を上げる。
「しかし、うちの連隊長も気が利くね~」
「まあこれぐらいしなきゃな、いくら経験年数がある予備役が多くても、職業軍人にはかなわない」
今日の深夜に入った、悪い知らせから少し希望あるニュースに変わったのは、川の下流方面のバリバリ現役軍人を直轄の上司である連隊長の粋な計らいでこちらに派遣してくれたことだ。
彼らは戦場では堂々としていて、ベルカ陸軍正規兵の大半に導入されたG-36を持ち、工兵はクレイモアや何やらを設置している。
とはいえ敵は本気であり容赦なく、最悪な状況は依然変わらずだ。こちらも完全な防御陣形で臨まなければ確実に食いちぎられる。
「そういえば、分隊長」
「うん?なんだ?」
うちの隊で一番若い奴、てか教育実習中に戦線に引っ張られた可哀そうな奴が聞いてくる、シクリアは顔を向けると
「敵の野戦部隊も来るって聞いてますが、榴弾とかが来るのですよね?」
「あ~、そうかもな・・・あれってさ、遠くからも聞こえてくるんだこう・・・」
ドーーン、ドーーン・・・ドンドンドン
「てね・・・て、あれ?」
「おい、お前はいつからそんなリアルな音声再現が出来るようになった?」
ホルシアが乾いた笑いを浮かべる、そしてシクリアは
「あ~・・・とりあえず、伏せろ!!!」
「空から降ってくるのは女の子だけでいい!マジで!」
シクリアと、女性にもてず二次元に逃げてるオタクが伏せながら叫ぶ。
刹那
ドドン!!!
榴弾が着弾する。砂煙が巻き起こり、悲鳴も聞こえる。野戦部隊の攻撃が終わると、即座に
「被害報告!!」
「前線負傷者多数!」
「後方、補給拠点には被害軽微、しかしテントの奴らが甚大な被害なり」
「監視塔より、エイブラムス戦車6両、接近、さらに後続部隊も装甲車から降車中!」
戦線に一気に通信が飽和する。
そして川の先の地平線からは最大速度で突っ込んでくる戦車と装甲車群。
さらに
「戦車が停車・・・まさか・・・」
「注意!奴らは主砲をぶっ放・・」
瞬間、監視塔が爆発して崩壊する。エイブラムスの主砲だ。
「奴らには血も涙もないのか」
「ひぃぃ!!」
無慈悲な野戦砲と戦車主砲、そして迫りくる怒号を上げて狂戦士たち、ベルカ軍の前線は恐怖に支配される。
しかし、恐怖するものも居れば、何か吹っ切れる者たちも居るわけで・・・
「だぁああああ!!!オーシアの野郎ども!確かに同情はするがここまでやれって言ってないだろ!!お返しじゃごらああ!!!」
「同感だホルシア!どこぞの国の漫画が書いてたな、全員の合言葉!」
「「「ベルカ軍人はうろたえない!!!!」」」
「弾をばらまけ!今ならどこかに当たる・・・かも!」
「オオオオオ!!」
シクリア分隊長以下12名の分隊員全員が防御用の土嚢の上に立ち、G-3を迫りくる敵に向けてばらまく。
射程圏外の為に弾はほとんど当たらないが・・・
「誰だ!あんな命知らずの馬鹿ども!」
「予備役の前線部隊だ!あいつらに負ける?騎士の名に廃る!!」
「対戦車戦闘用意!鉄クズに変えてやれ!」
「ATM用意!エーーーイム・・・ファイヤー!」
ベルカ対戦車部隊が一斉に撃ちあげる。
しばらく高度を上げると、エイブラムス真上で垂直降下、そして12発の内、8発が当たる。
「どうだ?」
「3両は炎上・・・しかし残りは・・・撃ってきたああ!!」
「だあぁぁ!無駄に重くて無駄に堅くて、エイブラムスは大嫌いだ!」
「対戦車部隊が弱音吐いてどうすんだ馬鹿野郎!!早く弾込めろや!!」
「敵歩兵部隊第一陣が150m手前、射程圏内です」
「撃て撃て撃て!」
「よし!全員戻れ!」
わああ、と陣地の土嚢の影で、タコつぼに隠れるシクリア達。
「よっしゃあ!弾倉交換したら次だ次!」
敵が150mを切ると、次はMINIMIなど軽機関銃も火を吹く。
既に全面武装解除で弾薬を気にしない、気にしたら負けだ!
「第一陣!まもなく乗り込んできます!」
「突破されるな!突き返せ!」
「敵が撃ってきたぁぁ!」
「当たり前だろ馬鹿野郎!」
「俺が引きつける!お前はグレネードを敵に叩きこめ!」
無線は飽和する、しかし聞く暇なんて存在しない。
「ホルシア!おれが撃つ!お前が叩け」
「了解だ」
這い上がってくる者どもに容赦なく銃弾を浴びせる叩くそして
「お前らにはこれがお似合いだーー!!」
余っている土嚢を投げてしまう。まさに外道!
「俺達の故郷を潰したクソどもがーーーー!!」
「ふざけるな!しらねえ言っているだろ!!」
乗り越えてきた奴と怒鳴りあう・・・て
「乗り込まれた?!シクリア分隊より本部!敵に乗り越えてきた・・・本部?くそっ!輻輳[パンク寸前]している!」
0625、ついにオーシア軍部隊が防衛線に侵入、銃撃戦は激化の一途を辿る・・・
いや、逆に銃撃戦は減り、白兵戦や銃床での殴り合い、究極は素手の殴り合いに発展する。
小銃から機関銃、迫撃砲から対戦車誘導弾(ATM)、更にはクレイモア、使えるものは使う・・・しかし
「限界が近いなーー・・・」
中隊長パルセルは呟く、既に左翼方面から穴が開き始め、そこからオーシアが雪崩れ込む。
押し返そうと奮戦するが、負傷者の増大で思うようにいっていない。
更に右翼方面は戦線が広く、度重なる攻勢で脆くなり、中央はエイブラムスをやっと退治出来たが、それだけで限界に近づいている。
「もはや手段を選ばずか・・・通信!」
「はっ!何でしょう!」
通信兵はパルセルの方に顔を向け、耳を傾ける。
「我が戦線維持に非常に困難なり・・・ブロークンアロー・・・ブロークンアローだ!」
「・・・はっ!西部戦線B-12地区、状況劣勢、ブロークンアロー、ブロークンアロー!!」
通信兵は素早く通信を開始する。
ブロークンアロー・・・それはFCMB地上軍が戦線突破を許しそうになった時、敵を食い止めるために敵味方無差別に叩く最強の切り札であり、無慈悲の行動・・・
通信は20km手前・・・
0630hrs
戦線より手前20km陣地
前線の先制支援攻撃が間に合わない代わりに、戦線を突破する敵部隊を殲滅する役割を持っていた砲兵部隊、ベルカ陸軍第12砲兵中隊のFH70榴弾砲6門が並ぶ。
「ブロークンアローがきました!」
「マジか・・・しかし・・味方を極力巻き込ませるな!」
「測距が電磁で機能しませんが・・」
若い兵士が言うと、ベテラン曹長が
「貴様ら!機械に頼るようじゃまだまだだな!機械は補助だ!俺達の勘を信じろ!」
「仰角よーし・・・距離よーし・・・今だ・・ってぇーー!!!」
「撃てえええ!」
復唱と同時に6門が同時に火を吹く。
「次だ次!持続射撃の限界を越えろ!」
「俺達最強!!」
そして戻って前線
「味方榴弾砲が飛んでくるぞーー!!」
「はっ?!」
乱戦の中、連絡兵が声を張り上げて警告するのを聞いてシクリア達は混乱する・・・榴弾砲をここに飛ばしたら・・・
考える暇無く上を見上げれば明けてくる空に不似合いな流れ星・・・てか榴弾砲!!
「全員伏せー!」
乱戦をやめて伏せをする。オーシア達は好機と流れこもうとするが、それが命取りとなった。
大きな川跡やその周辺に榴弾砲の弾が次々と弾着する。
さっきは敵のが味方を吹き飛ばしてたが、今はベルカの榴弾でオーシアが吹きとぶ、同時に破片でベルカ側も負傷者が出る。
しかしそれ以上にオーシアの進撃が・・・止まる。榴弾はまだ降っている、だがシクリアがこれを見逃すはずがない
「今だぁああああああああ!!!!」
声を張り上げる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
呼応するように動ける者から銃剣を着剣して走り出す。
「また予備役の奴が筆頭に立ってるぞ!」
「くそっ!玉無しの騎士と馬鹿にされたくなかったら走れえ!!」
「漏らすなら終わってからにしろ!今は目の前で死ぬ気で戦え!てかここに墓標を建てろ!!」
止まるつもりなんてない、ベルカの騎士たちは恐怖の限界を越えて今、狂戦士となる。
オーシア兵は最初の怒声はどこへやら、最終的には撤退を開始した。
「生きてるな~、俺達・・・」
「ああ・・・少し痛いが・・」
シクリアとホルシアが怪我を負った仲間に肩を貸しながら戦線から離れる。間もなく川の上流が決壊すると警告が来たからだ。
勝利だが、ベルカ兵は士気を上げる雄たけびもあげられず。黙々と撤退をする。生き残りの装甲車とトラックは全て重篤者の後方搬送に使われ、手を貸せば動ける者含めて残りの兵士は徒歩だ。
「川が・・・水があふれるぞ!!」
誰かの言葉で後ろを振り向くと、遂に決壊した川の大量の水が、川幅を大きくオーバーして流れていく。
人の血が染み込んだ土を侵食して、戦死した兵士を流していく。
「目標の為に殉じた敵味方、水に包まれて安らかに眠れ」
地元が自然を神として捉える独自文化があるシクリアは黙祷しながら唱える。目を開けると、ホルシアが固まっている。
「ん?なんだ?」
「いんや・・・聖職者ぽいことするんだな~て」
「悪いか?」
「悪くないさ、いいんじゃないか」
ホルシアが笑顔を浮かべ、シクリアも笑う。しかし次の瞬間
「同時に我々に良いネタを提供してくれました!」
取り出すのはICレコーダー、シクリアは首をかしげて
「ナニコレ?」
「ん?お前、時々恥ずかしい事をさらりと言うタイプだから、こういうの録音して皆で笑ったり・・・ああ、もちろんこれはさすがに不謹慎だから後で消すけど。いやー、いいもんだ」
お前、顔整ってるから女性兵士にも需要があるんだよ~となんかのたまっているが、
「・・・ちょっとごめんね、ホルシア、その負傷兵を丁寧に降ろせ」
「ん?」
ホルシアが負傷者を降ろした瞬間
「貴様も戦死者の後に続けや!」
「おわっち!!死ぬ!し・・」
「殺す!殺してやる!!」
「小隊長がご乱心だ~、ホルシアを助けるぞ~(棒)」
「お~(笑)」
「お前ら~!!て、俺は小隊長じゃ「君は小隊長だよ」はっ?」
やって来たのはいつも通りのパルセル中隊長。彼はにこやかに
「今回の戦闘において、士官が壊滅的で、直属の連隊長が師団長に推薦して君正規軍の小隊長決定、3日後に少尉の階級章届くから」
「はい?」
「それと部下達の満場一致だから終戦後も希望すれば現役少尉でいられるから・・・とりあえず小隊長おめでとう!」
「・・・・う・・・」
「う?」
「嘘だぁあああああああああああ!!!」
シクリアの悲鳴が響き、戦友の笑い声が響いた。
そしてこの激戦地は、後に血の線、ブラッディーラインと呼ばれる・・・。