ACECOMBAT if ~全く違うzero~ 作:夕霧彼方
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0900hrs
ユーク連邦首都 オクチャブルスク郊外
まだ春の芽吹きの前の寒さが残る首都近郊の町ポクマ、そこは戦場となっていた。
<<くそっ!こちら第346機械化狙撃大隊!包囲された・・・突破は困難・・・我々は最後の覚悟を決めた。最後まで我らは書記長の盾となる。書記長万歳!!>>
<<こちら西門守備隊、手のひら返したニカノールの手先どもの突破を許しそうです!早く退避を!!>>
ポクマは昔から軍、政治家要人の別荘であり、首都にはない別の司令システムも簡素ながら作ってある。
ニカノールの拉致を始めとした、静かなクーデターを起こした張本人であるユーク書記長、タック・ブルヌ・ゴランは、この町を気に入り、将来の政治場所は首都よりここで行いたいと機能を強化していた。
しかし、予想以上に早く、ベルカに負け、更にニカノールの始末に失敗したことから、ユーク全軍130万の兵力のその大多数が寝返り、更にその機能強化は未だグランを敬愛する兵士達の断末魔と命令を求める声で飽和するという無残な結果になった。
そして町は、ニカノール派2個師団1万人[人数が少ないのは充足率90%師団は軒並みベルカに行き、50%ほどの書類上の未熟な師団しか居ないから]、ダック派または好戦派軍4000名で血で血を洗う争いとなったが、それももう終わる。
「書記長閣下・・・散々予算をせびった挙句に寝返った恩知らずどもがまもなくここに来ます・・・。早く撤退を」
中佐階級章を付けた側近、ヘルンが息を切らして部屋に入る。既に銃声が間近に聞こえ、更に奴らは榴弾まで持ち出してこの町でゲリラする好戦派軍を無慈悲に一掃している。
「・・・・・」
「ダック閣下!!」
「同志ヘルン」
「なんでしょうか?」
「私は、ここから去ってから、どこに逃げれば良いのかな?」
「それは・・・」
ダックの静かな問いかけに、ヘルンは口ごもる。実際、ここ以外に逃げ場所がない。局地戦のほとんどは我が方の劣勢、勝利している地域も、ベルカから引き揚げた主力部隊の攻勢に耐えられるわけがない。
「時に同志ヘルン、FCMB天上議会への情報は?」
「はっ!既にナグファルム艦長に情報を渡しています・・・が、作戦命令は出していません」
口惜しそうに言う。ナグファルム最強の槍は、書記長の命令とそれに合わせた機密コードの符号が合わなければ発射出来ない、核兵器並に保管は厳重であり、貴重な制圧兵器である。だがダックは特に失望した表情も見せず
「だが、彼の艦長は優秀ではないのか?」
「優秀です。艦長である同志グリスは平時で海軍最年少将官昇進を拝命し、将来ユーク最大の北方艦隊長官、または潜水艦隊総司令参謀長の有力候補であった男です」
「ならば・・・優秀な彼なら危険も承知で既に作戦の為に動いているな」
「恐らくは」
グランの淡々とした問にヘルンは疑問符を浮かべながら答える。
「確かに兵器は私の裁量がなければ撃てないが、それは上級司令部が機能しているだけで、機能していないなら勝手に撃てばいいと訓示したことがある。特に私など上の者が死んだときな」
「ま・・まさか、それだけはお考え直し下さい!同志!!」
察したヘルンはダックを止めようとする。しかし
「ニカノールの部下は恐らく融和と称して意気揚々と私の死亡と共に降伏文書でも送るだろう。それが私の最後の合図だ。そこからは降伏でも抗戦でも構わん。ただ、一騎当千のナグファルム乗員は必ず抗戦の方を選び、どこか重要な・・・出来れば天上議会かニカノールを抹殺してくれると信じている。私の死は無意味な死ではない、今までベルカの地で無意味に果てた兵への弔いの為の有意義な死へと昇華する」
そんな事をのたまったダックはニヤリとし
「それでは、私はここで天命を待たず、打って出ようではないか。静かなクーデターの黒幕にして最大の悪としてな」
「同志書記長」
「なんだ?」
扉のノブに手をかけたダックにヘルンが声を掛ける。彼は意を決した表情で
「私も同行いたします。ニカノールの軍門にも、これから恥のある生涯なぞごめんです」
「・・・そうか」
ダックはそう呟き、そして
「それでは行こう、同志ヘルン、地獄への道へ」
「お供しましょう閣下!!」
双方笑顔で部屋を出て行く。そして数分後
激戦の中、生け捕りにしようと試みた潜入部隊をダック率いる直近の護衛で襲撃、相打ちにして、ダックはその生涯を閉じる。
狙い通り、ニカノール派は意気揚々と反乱分子の親玉を討ち取ったとして降伏勧告をした。
しかしそれが逆にダック派の生き残りに火を点け、更にクルイーク要塞内部でもダックを心酔する司令とその部下が反乱が発生、ほぼ無傷で奪取。ダック派生き残り本隊がそこに移り、後継の書記長が生まれる。
ベルカからの引き上げが間に合わず指揮統制回復、そしてクルイーク要塞という首都に程よく近く、地方にも十分脅威を与える基地を拠点化、ここに内戦を泥沼化が確定となり、この大失態を後にクルイーク事変と呼ばれる事になる・・・。
それが起きたのは19日のこと、その前日、その事変を知らない海の男たちは叩きに命を賭した・・。
3/18
1300hrs
深度200m
大陸棚クラスの海底にひっそりと佇むのは、世界最大最強の艦、ナグファルム、彼らは新たな命令を待っている。
「同志艦長・・・」
「なんだ?」
ナグファルム艦長、グリスの元に駆け寄るは通信士官、その顔は非常に暗い。
「どうした・・・早く読み上げろ」
「ニカノール派からの電文・・・・、我が・・・我が同志書記長が・・・ニカノールの手先による凶弾で・・・相果てました」
「そうか。負けたか」
士官は言葉に詰まりながらも言い切る。無理もない、彼は赤の中でもかなりの信奉者、書記長は神の存在であった。そして私もだ。
ちなみに書記長が最高指揮になったのは、ユーク元首はニカノールで、首相中心であることから、最高会議長という役職ができず、書記長に留まったという経緯がある。
戦争は統制の失った混成軍とユーク軍が茶番とも言える元首の演説により武装解除をした。そしてユーク本国では好戦派の書記長とニカノールを信奉する軍により衝突が起こり、そして今、ニカノール派が勝利を収め、今まで正義だったはずの好戦派政権軍は残党となった。[クルイーク要塞事変は知らない]
そしてこの艦は国に帰る事も、他国に寄港することも出来ぬ、機密という空虚に包まれた逆賊となった。
我々の時代が始まる前に終わってしまった・・・。少将として、栄誉ある北方艦隊提督、または中央栄転の道を捨て、この艦の艦長を選んだ末路がこれである。
「もう一通・・・ニカノールが降伏の文書を寄越してきました」
士官は口惜しそうに言う。同時に
「同志艦長!敵の艦隊、及び哨戒ヘリの吊り下げソノブイを確認。恐らくは秘密通信傍受と、ニカノール派の情報網でここが特定された可能性が」
「所属、規模は?」
「は、先遣にあの第2海軍管区中央艦隊から離反したミサイル巡洋艦グムラクと同じ推進音を探知、これを察するに中央艦隊を撃滅した、オーシア空母ヒューバード級ケストレル旗艦の連合艦隊と思われます!規模として駆逐艦、巡洋艦10隻以上、情報艦1隻、空母1隻以上、潜水艦も含めた大規模艦隊です!」
「・・・・・」
まさかこの場所がバレるとは・・・まあ、書記長閣下の通信はいつもよりセキュリティーが手薄だったのは知っていたので覚悟はしていたが、予想以上に優秀な敵であり味方だった軍であり、物凄くにくたらしい。
あの融和しか叫ばず、国内の情勢を、ベルカの存在を見過ごすユークの癌、ニカノールの下に降ったとしても、軍人としての一生の恥であり、さらにここの部下は命を保証されてのうのう生きるのはごめんという人間が多い。だからといって、オーシア艦隊を相手取るのには・・・
既に衛星データリンクシステムは遮断され、相手の艦隊に槍を打ち込むのはより精確な情報が必要だが、高精度探知機能を削除したこの潜水艦にそんな手段はない。
しかし、希望はある。
なぜ我々がここに来たか、それはとある所の射程内だからだ。
書記長直轄の情報部からもたらされたFCMB要人のみで構成された天上議会、これがまさに行われている場所を特定していたのだ。
最後の命令は出ていない、しかし、書記長は訓示で言った。上が動けないなら勝手に撃て・・・今復讐できず、いつするのか!
「副長」
「はっ!」
「マイクを貸せ」
「了解しました。どうぞ」
副長はすぐに艦内マイクを差し出す。それを受け取ったグリスは
「艦内全要員に告ぐ。今から作戦行動を忘れ、私の言葉に対して全力で答えろ。地上でバカ騒ぎするみたいにな」
副長以下全員はグリスの言葉を素直に飲み込めない。作戦行動中、特に敵に見つかるか分からない静粛性を求める中で騒げと?
「我らにこのシンファクシ、リムファクシ以上の、最高の艦に乗せて下さった敬愛すべき同志書記長が凶弾に倒れ・・・亡くなった」
その瞬間艦内はざわめく、あまりの衝撃的な話に、まだ知らなかったエリート思想で固めた若き士官が呆然とし、気を取り直した先任伍長が再起動させる。
「私は・・・、改革の志半ばで散った書記長が無念で仕方ない!だが、ここで自暴自棄する暇はあるか?否、このいつ敵に見つかるか分からない状況、我々に残された時間はあまりに少ない。そこで諸君らに聞きたい。ここで降伏してニカノールのクソッタレの靴を舐める犬畜生になるか、それとも、この絶望した海域から可能性低くとも逃げ出すか・・・それとも、ここで沈められる覚悟で奴ら、FCMBの主要人物が終結する議会を、その街を壊して殺して、書記長と共に地獄を歩むか。さあ選べ!」
グリスの問いに艦内はしばし沈黙する。しかし・・・
「やってやる・・・」
「やってやろうじゃないか!」
若き士官が叫び始める。それは下士官に兵に先任伍長に伝播しそして参謀や政治委員も同様に騒ぎ始める
「やってやる!」
「ユークの潜水艦乗りをを・・・ダック閣下への忠誠心を舐めるな!」
「やるぞ!殺してやるぞ!」
「機関なら任せろ!」
「操舵、敵の攻撃なんぞ任務完遂するまで避けきってやりますぜ!!」
「ミサイル部署!我らの日頃のミサイル技術を舐めるな!FCMB!オーシア共!」
「航空部署!何かあったら我ら無人機、有人機部隊総動員を持って戦います!!」
それは異様な、海の中の潜水艦乗りでは有り得ない行動
「同志諸君!改めて聞こう!FCMBは憎いか!」
「ダー!」
「書記長を殺した祖国が憎いか!」
「ダー!」
「我々の持てる限りの力を尽くし、祖国の未だ残党になっても戦う同胞に恥じぬ破壊を見せたいか!」
「ダー!!!」
「よし、ならば我がナグファルム一世一代の大戦争だ!各員、任務完遂を持って死ぬことを許可する!フィルフィーリエ発射用意!!深度20!」
「「「「ナグファルムУрааааа!!!!!!」」」」」
同時刻
海上、ケストレル所属シーホーク
正直な話、FCMBに頼らず、独自でナグファルムを探すのは困難であった。しかしユークのニカノール首相に味方する部隊がダット書記長を倒し、その上秘密情報であった天上議会への攻撃計画、そしてたまたまオーシア海軍の哨戒機が大型の潜水艦と思われる音を探知しこちらに通報、そしてアンドロメダの高度な情報処理によりこの海域に潜んでいると確信し追いかけてきたのだ。
天上議会まで時間がないが、敵に動きがない、もしかしたら黒幕の喪失で逃げたか・・・そんな不安がよぎった時。
「・・・・」
「どうしたんだ?敵を見つけたか?」
ソノブイの音を聞き分ける水測員の顔色が悪い。
「見つけました・・・ただ」
「!!・・・じゃあ早く報告だ!しかしなぜ今見つかった?」
「・・・地獄だ」
「はっ?」
機長が怪訝そうに聞き返す。水測員は
「こう・・・さっきまで無音でしたのに・・・何か地獄のような業火の音が・・・ここまで聞こえる人間の声・・それが」
「おいしっかりしろ!とにかく連絡だ!」
機長はその時彼の言い分を真に受けなかった。
しかし、それは追い詰められた男たちの魂の叫びである恐怖と気づくのは、本格的な戦闘になってからだった。