ACECOMBAT if ~全く違うzero~ 作:夕霧彼方
4月11日
ベルカ国軍中央病院
病室
「ユーマ!飯をよこせ!飯!肉を!」
「けが人がそこまでがっつくんじゃありません!」
子どものように駄々をこねるギュンターに、お母さんのユーマが諌める。階級は本当にどこに行ったのだろう。
「足を失って死にかけて魘された人間がここで無茶なことすれば大変ですよ」
「大丈夫だ!ストゥーカを操った某閣下はすぐに前線に飛んでった!」
「隊長は人間です!人外を例に出さないでください!」
本当に何度脱走したか分からないこの男に何を言い聞かせても無駄だと思うが、とりあえず言わなきゃならない。
こんなうるさい人間は看護師に任せた方がいいが[実はもう医者も看護師も匙をぶん投げているが]、ユーマは律儀に休暇日には一時間以上はここに居る。彼が右足を切断して魘されていた時はずっと・・・
「とりあえず言う事聞きなさい!」
「そうだよギュンター君」
「お前は昔っから馬鹿だよな・・・いい女そばに置いといて」
二人の男の声に反応するユーマ、背筋がぞっとする。
「ああ、ザンナルのおやっさんに、兄貴」
そこに立つのはベルカ軍のザンナル上級大将にウスティオのフェルナンデス元帥、共に軍のトップクラスに居る人間、ユーマは即座に立ち上がり最敬礼をする。
「君はギュンター君の部下で・・・」
「ベルカ空軍航空爆撃団所属、ヘルエンジェル隊ユーマ・アントーニ、階級は少尉、軍所属№018763113であります!」
一気にまくし立てて最敬礼を続ける。自分の実力じゃ数十年後昇進してもお顔を拝見するのがやっとなレベルの階級の重鎮二人を目の前で礼装をしていない自分など論外である。
てか、隊長!
「なぜ平然と?!」
「兄貴に元上司、気兼ねの必要がない」
はっきりとおっしゃられる・・・。
「ああ~、逢引の途中で申し訳ないが、少し席を外してくれないかな?」
「はっ、失礼いたします!」
ユーマは即座に病室から出ていく。早い
走っていく足音が遠くなる。彼女は扉の前で無く、空気を読んでかなり遠いところまで行ったようだ。
「本当、忠実で惚れてる部下を持つなんて、てめぇはどんだけ幸せものなんだと」
フェルナンデスが呆れて言う。ギュンターも笑い
「ああ、本当に勿体ない」
そして二人を見る。
「お二人さんで来るという事は、俺に何か通知あるんだろ?」
さぁ言えよと目で示す。彼は考えていた。右足を失った使い物にならない前線兵士、通知されるは・・・除隊と今後の部下たちの方針、そのはずだった・・・。
「ああ、貴様には6月に辞令が下りる、大佐昇進の上、バレット空軍基地FCMB新戦術航空実験団の戦闘爆撃部門部長を任じる」
目を見開くギュンター口開く前にフェルナンデスが
「これは伊達や酔狂でもなんちゃって二階級特進でもない。未来の攻撃、爆撃部隊の育成に力を貸してほしい」
「・・・く・・くく、はは、そりゃすごいことだ・・・マジでどうゆうことだ。俺はA-10しか乗ってきてない男だぞ、空軍大学も卒業してない万年少佐だぞ?」
「質問に答えよう。その空軍大学卒業したエリートが国境なき世界に加担したため綱紀粛清して人材不足、それと・・・A-10は2014年度を持ち全部隊解散が決定された」
ザンナルの言葉に衝撃が走る。
一つ目のエリートの粛清、彼らは戦争を味わってから、カリスマのある男たちに惹かれた、それが国境なき世界に行ってしまい、上層部は大惨事となっている。
なので経験豊富で裏切りそうにないギュンターが一時的にだが白刃の矢が立ったのだ。
そしてもう一つ、A-10の全機廃棄・・・
A-10はその戦闘力は歩兵の神とされたが、戦術空軍から戦略空軍のマルチロールに移行したベルカでは一つの仕事しか出来ない兵器はうっとおしいと思う人間が増えたのだ。更に言えば、狂った集団により対空砲火に晒されまくるA-10は修繕費と戦果の費用対効果が合わず、先日の天上議会においては軍が改めて強力なシビリアンコントロールに置かれた手前、A-10擁護派の将校の意見を政治家が弾圧し、新たな戦闘爆撃機導入を強力に推進している。背景にはもはやベルカの一大利益集団となっているベルカ国営兵器産業廠が強力な圧力をかけている面もある。
依然として陸軍は猛反対しているが、空軍もコストのかかる機体よりもやはり今は政治家のご機嫌を取らねば予算が最近熱が帯びる海軍に奪われる可能性が高いので従順になりつつある。
「本当にか?」
「ああ、もう少し働いてもらってから君には退官してもらう。それと君の二階級特進はただのお願いでは済まされてない」
「どういうことだ・・・まさか」
そう、不思議だったのだ。二つのことならザンナルかもしくは空軍将校が言えばいい、なぜ他国の、既に見舞いには来ていたこの人が来ているのだ?
「私が退官する代わりに君の二階級昇進を認めさせた。今日でこの制服とはおさらばなのだよ」
「~~、兄貴っ!!」
足の痛みはなくなり思いっ切り殴りかかろうとするが、正常な体で無い今はそれも叶わぬ話である。
フェルナンデスは笑いながら、そしてまじめな表情に戻り
「私はもう60を過ぎた男だ、これ以上軍に残っても無駄が多いし、何よりももう疲れた・・・。お前ならどんなことがあろうとも私の意志を継いでくれる。FCMBとしてひいてはウスティオ空軍の発展のため、お前には絶対に残ってもらいたかった・・・それだけだ」
為らざる本心。いや、少し違う。
フェルナンデスはもっと軍に残りたかった、無責任に任を放棄せず、国境なき世界という脅威の行く末を・・しかし、戦争が終わってから政治家の圧力は自分にも向いてきた。
人事的に政治家お気に入りの将校を上げてこなかったのが原因と分かっている。だがあいつらを上げれば軍は腐る。そう考えていたからだ。だが、既に自分が考えていた以上に正義感の強い人間も多い、もう自分は要らないのではないか?そう考えれば最後に可愛い弟分に権力の限りを尽くして新たな世代育成の道を作らせなければならないんじゃないか。そう考えた瞬間、すぐに退官の届け出の筆はよく進んだ。
「今まで世話になったな、ギュンター。これが最後の兄貴分として我がままとして聞いてくれ」
「・・・最後まで、本当に振り回してくれる野郎だよ・・・くそ・・・辞令が出たら従うさ・・その前に少し考えさせてくれ」
「分かってるさ」
俯くギュンターに、二人はそれじゃと退室する。
「大丈夫かあいつ?」
「大丈夫だ」
問うザンナルにフェルナンデス返す。
「サプライズにしては重いが慣れちまえば大丈夫だ。あいつなら、それにあいつはパートナー居るみたいだし・・・なんであんな若い子に・・・」
「そうか・・・それならいいが」
フェルナンデスの面白い言葉に引き気味に返すザンナル。そんな掛け合いをしていた遥か後ろ
帰ることを確認したユーマは、何だかんだ言いながら近くの店で買って無断で持ち込んだチキンを持って。
「失礼します。お話はおわ・・・何で泣いているんです?!」
ユーマが突っ込む。常に笑うか狂人かの二択しかない男が泣いている。それだけで衝撃的なのに、ギュンターは作り笑いしつつ
「ちょっとな・・・ちょっと面白い話と悲しい話を聞かされてな・・・すまんな」
「いいえ」
ユーマは自然と体が動いた、尊敬し敬愛する彼は明らかに無理をしている。ならば、彼女はゆっくりとギュンターを抱きしめる。
「お・・・おい」
「無理しなくていいです。自分は隊長の全てを受け入れて好きですから」
「・・・・」
余りの唐突な告白に困るギュンター、しかし今はその優しい言葉に身を委ねるしか・・・
「なっ、心配ないだろ」
「どうだな、しかしいい風景をみたものだ。いじるネタが出来た」
病室の扉の隙間からニヤニヤしてみるザンナルとフェルナンデスの二人、彼らは今、上級将官で無くただのおっさんとなっていた。