これはもう一つの暗殺教室。
例の教室を卒業した三年後の二人。二人はあれからも何も変化はなく当時のまま連絡を取り、出会っていた。しかしそんな日常はある日突然、日常ではなくなってしまうのかもしれない。

ー前書きー
シリアスです。読まないほうが良いです。書いていて辛かったですから。もともとこんなつもりじゃなかったんですけど、つい浮かんでしまって……。
例によってpixivにも投稿いたします。やや表現等を変えると思います。

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七夕の時間

ーー喫茶店 くぬぎの丘

 

 渚は何か書いた〜?」

「書くって何を?」

「今日七夕だよ?」

「ああ、さすがにこの歳だし書いてないよ」

 

と笑って答えるその顔はどのあたりが「この歳」なのか分からない。未だに身長変わらないし、童顔だし、警察には中学生と勘違いされて早く帰るように言われたりする。渚くんの何が怖いって自分のそう言うところを自覚してないこと。分かってんのかな?だとしたらもっと怖いけど。ま、渚はそんな演技派じゃないか。

 

「渚くん見た目は当時のままだから小学生に混じって書けばいいのに」

「うん。当時でも小学生に混ざるのはおかしいよね?」

「つか当時でも殺せんせーがいなきゃ書いてないと思うけどね〜」

「そ、そうだね」

「あれからもう3年か」

 

暗殺教室を卒業して3年。けど俺の目の前はまだ、当時のまま。さすがの渚くんも声がちょっとは男らしくなったけどまだ十分女装できる。メイドカフェでバイトできる。アイドルの選抜勝ち抜ける。

 

「あっという間だったね」

「渚がいなくてもなんか意外と、時間経つの早いんだよね」

「いないって……毎週会ってたじゃん!」

「昔はほぼ毎日朝から夕方まで会ってたんだよ?」

 

当たり前のように一緒に帰っていた毎日がある日突然終わって、週に一度、会えてもたったの十時間。週に十時間ってさ〜少なすぎじゃん。朝会ってカラオケとボウリングとかして昼食って服見たりしてカフェで終わり。もっとなんかさ〜誰もいない緑の丘で太陽の下で寝転がってさ〜。時間を無駄遣いしたい。たまにいちゃついたりしてさ。けどそれが三年前は普通に出来てたんだよな。

 

「僕だって……本当はカルマに毎日会いたいよ」

「なんかさ、だんだん疎遠になっていきそうで怖いんだよね俺」

「そ!そんなことないよ!」

「いや、E組のみんなね。寺坂とかあいつ元気にしてっかな〜」

「でも僕たちE組はさ、絶対に切れない縁だと僕は思うよ」

「まあね、あんなことを共有した仲間だし」

「わ、分かってんなら変なこと言い出さないでよ」

「ビックリした?」

 

と、やけにご機嫌にカルマは笑っていた。別に大した冗談でもないのになんでそんなに笑っているんだろう。今までとは違うな。ちょっと、違和感がある。

 

「そりゃあだってカルマと会えないなんて僕、そんなの嫌だよ」

「けど渚、ちょうど今日だけど空の織姫と彦星は泣いてるかもよ?」

「あ、今日天気悪いもんね」

「これから雨だし」

「一年に一回しか会えないなんて可哀想だよね」

「うん。俺たちはまだ恵まれてる……って、思った?」

「違うの?」

「いやだってあいつらさ、何千年も、これから先も永遠に会えるんだよ?逆に羨ましくない?」

「で!でも!一年に一回だよ!?」

「って言うけど、俺たちに来週会えるって保証あるの?」

「ーーえっ?」

 

どうしてそこまで言うの? 冗談みたいな感じで話せば良いのにどうして? どうしてそんなに張り合うみたいに話すの? 来週会える保証って……今日のカルマなんか変だな。

 

「織姫と彦星は永遠に会える保証があるんだよ。けど俺たちには永遠なんて無ければ、明日連絡取れる保証もない」

「カルマ……何かあるの?どうかしたの?」

 

僕はつい聞いてしまった。何か嫌な予感がしたらか。引っ越し? それとも……それともって何考えてるんだ僕! カルマに会えなくなるわけないだろ!あったとしても引越しとかだよ。それに引っ越ししたって今の時代普通に顔見れるし声聞こえるし!

って、本気で心配した僕の労力はすぐに無駄になった。

 

「何もないけど?」

 

カルマはそうやってとぼけたように言ってストローに口をつけた。僕がまるで間違えたみたい。そんな僕の顔を見ながらカルマはいちごオレを無表情で吸っている。うん、おかしいのは僕だ。勝手に変なこと考えてたんだから。けど、なんかまだ引っかかるな。カルマの目が何か被って隠れてる気がする。いつもの赤いルビーのような目が今日はレンガみたい。

 

「本当?」

「本当だよ。俺はただ、渚に会えてる瞬間の毎秒を大事にしたいなって言いたかった」

「僕だって思ってるよ!」

「ほんと?じゃあキスしてハグしてセッ◯クスしようよ。今日は渚がタチでも良いよ?」

「それが言いたかったんだね……」

 

心配して本当損した。やっぱりカルマはいつも通り良い意味でおかしかった。公共の場でこういうこと言うの本当やめてほしい。恥ずかしくならないのが僕には理解できないよ。

 

「渚。俺たちは永遠には会えないけどせめて後数年は俺といて欲しい」

 

数年?数年……か。

こういう時に数年って例えは違和感を感じた。けど頭の良いカルマなりの何か意味があるのだと僕は思って詮索はしなかった。

 

「カルマ。そんなの当たり前でしょ?」

「じゃあ約束のキス」

「いや、たぶん忘れてるだろうけどここお店の中だから」

「七夕の日に恋人同士が同じ願いを想いながらキスをすると願いが叶うんだよ?」

「それ、今考えたでしょ?」

「の割にはよく出来てるでしょ?」

 

はぁ……犬みたいにキスを待ってる。僕からしろってこと?でもさすがに僕からは無理だよ。二人だけの空間ならまだしも、ここ公共の場だからね。したくないわけじゃないけど、場所が場所だから。それにムードとか大事だし。でも今なら……誰も見てないよね?ここ隅の席だし。あ……それ考えてカルマはこの席をとったのか!なんだ、じゃあ最初からこの流れは計画通りってこと?

「……いま」

「今?」

「今なら人が少ないから。早くしてよ」

「渚だってしたかったでしょ?」

「良いから早く!」

「渚はドドドMだからこういう風に大勢の人に見られながらの方が興奮するの俺知ってるよ?」

「もう!うるさいから黙って!」

 

僕はカルマを黙らせたいその一心でキスをした。キスっていうよりも頭突きに近かったかな?ちゃんと唇には当たったけど、なんか気持ち良くないな。……ンンッ!? あ、えっとぼぼ僕、今カルマにキスした!? じじ自分から!? こんな場所で!?

久しぶり? いや、初めて? それは流石にないか……。渚にキスされた。誘ったんだけど本当にするとはね。勢いつけすぎで痛かったんだけど、好きな人にされると嬉しいは、嬉しいよね。でも、唇ぶつけただけで終わりか。ま、渚にしては頑張った方だね。てかたった2秒俺の唇に合わせた程度で顔赤くしすぎでしょ。別に初めてのキスじゃないのに。そんなに赤くして恥ずかしがってる渚を見たら俺が興奮するの知ってんでしょ?

「えっ、ちょっカルmーー」

 

良い渚? キスはまず相手の体を抱きしめて頭に手を当てて、自分に抱きよせるんだよ。そんで唇が暖かくなったら舌をゆっくりと入れる。焦らないで慎重にね。それで相手が舌を出してきたらOK。こっちはそれに絡んでいく。そんで片方の手で相手の体全をこっちも舌でやるように撫でる。で、まあ人によるけど苦しそうにして息が荒くなってたら離してあげる。渚の場合はもう少しいけるね。あとはひたすら本能のままに自分の体全体で相手を愛す。もちろん口を繋いでお互いの舌を舌で握り合ったままね。これに満足なんてないから呼吸の限界までね。いつか渚に愛すべき人ができたらこうして欲しいんだけど……伝わってないだろうな。

 

「……ごめん渚。お店出ようか」

 

渚はしばらく無言だった。けど店を出て裏道に入ったらさっきの続きを求めてきた。こういうとこまだ子供だよね。そこが可愛いんだけど……もっと一緒にいたい。キス以外にも教えたいこと山ほどある。渚に会う前に書いた短冊叶うと良いな。あと俺が作った約束が叶うってやつ、本当にならないかな。渚も俺も、まだまだ一緒にいたいんだよ。一年に一度で良いから数十年先も渚、君に会いたい。

 

 

〜おまけの時間〜

 

キスをされた時に毒リンゴを食べて死んだヒロインが王子のキスによって蘇るという童話を思い出した。童話は童話。一種の演出に過ぎない。現実ではキスしても病気は治らない。死んだ人間は蘇らない。だから俺はその童話のヒロインになりたいと思った。

君はきっと俺より長く生きる。きっと泣いて泣きまくって顔を真っ赤にするだろうね。叫んで叫びまくって声も枯らすだろう。永遠に見ていたい顔と聞いていたい声が台無しだよ。俺のせいでそんなに傷つかないでほしいな。渚はこれから良いパートナーを見つけるはず。てかもういるよ。茅野がね。やっぱなんて言うかさ、世界ってよく出来てんだよ。くっつく人同士がくっつくように。俺はまあ幸せを前借りできたから後悔は…………。

とりあえず先に殺せんせーの授業受けてるわ。「起立!」の号令はやっぱ渚の声じゃないと締まらないからできれば早く来て欲しいかな。なんてさ、嘘に決まってんじゃん。俺は幸せな渚が好きだよ。誰といても渚が幸せなら俺は……別に良いよ。俺が幸せに出来ず不幸にしてしまうのは不本意だけどね。渚、嘘とか冗談とかイタズラばっかりしてた俺だけど、渚にしてきた愛情表現は全部真実で本音で真剣だから。信じて。渚愛してる。愛してるよ。だからさ……誰かとキスをするときに俺のこと忘れないで。

 

終わり


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