安藤物語   作:てんぞー

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Under The Blue - 1

 過去改変から数日が経過した。お出かけは控えて活動していたが、どうやらゼノの事を探す姿や、生存が確認されているような様子はなかった。その代わりに一度サラとアークスシップでエンカウントし、それとなくゼノが頑張っているという事を伝えられた。つまりは過去改変の完了、成功を意味していた。俺はちゃんとゼノとシーナを救い出すことが出来たらしい。歴史を改変し、時間を遡行するこの安藤の力、こうやって誰かの力になることが出来るのであれば素晴らしい物なのだろうとは思うが、好き勝手過去を改変した果てに待つものが何か……というのを考えると、恐ろしいものもある。とはいえ、これを活用しなければアークスがとっくに終わっているのも事実だ。

 

 これがなきゃ、死んでいる人が多すぎる。

 

 だからまぁ、今はデメリットがあるとしてそれに目を瞑る事にした。そもそも何か余裕みたいなもんがダークファルス相手にある訳でもないし。詰めれる所は詰めないと勝てる勝負も勝てなくなってしまう。

 

 という訳で、軽く様子見をして数日後、そろそろ何時も通りのアークス業に戻るか、と判断する。とりあえずアザナミと俺の活躍もあり、新しいクラスであるブレイバーもそこそこアークスの間では広がってきていた。おかげでカタナやバレットボウを背負うアークスの数も他のクラス程度には増えてきた。まぁ、普段から俺がカタナを使い、レギアスがカタナユーザーだと知ればミーハーなアークスは手を出そうとするだろう。そう言う訳でブレイバークラスは徐々に浸透し始め、今日も今日とてマイショップの監視とドゥドゥに武器のOP関係の調整でショップエリアに通わなくてはならない。

 

 だというのに。

 

 アークス活動を再開しようとした所で、

 

 その場所には、アークスの姿も店員の姿もなかった。普段であればOPの継承に失敗して発狂する馬鹿の姿や、暇つぶしにうろついているような奴の姿があるはずの場所だ。だというのにまるで人払いをされたかのように誰もそこにはおらず、

 

 シオン、そしてルーサーの姿だけがそこにあった。

 

 ゆっくりと、なんとなく音を殺すようにテレポーターからシオンの前へと移動すれば、ルーサーがシオンへと話しかける声が聞こえてくる。その視線はシオンへと向いておらず、背中をシオンに向ける形だった。だけど確実に、その意識は見えない筈のシオンを捉えていた。

 

「もう、無駄な事は止めないかシオン。君にそういう足掻きは似合わないよ。アークスも、オラクルも今では完全に僕の手の内だ。いい加減にしないか?」

 

 シオンの視線は此方へと向けられる。

 

「かつて私に、無駄なものはないと教えてくれた男がいた。それが彼であった」

 

「もう無駄さ、シオン。これまでは君の解析に時間をかけてきた……だが漸く、君の存在を感じられる程に結果は出た。そして後少し……後少しで完全に君にまで手が届く。そうすればあぁ、今度こそ全知をこの手にすることが出来る。そう、全知記録(アカシックレコード)が僕の手に……!」

 

「全知に価値はない。真の未来は私と私たちの知る外側にある。故に私は思う。その未来を創れるのは貴女だけだと」

 

 シオンは明確にルーサーを拒絶していた―――だがそこには嫌悪感があるのではなく、どことない同情の感情があった。嫌悪感からの拒絶ではなく、哀れむような、そんなものをルーサーに対してシオンは抱いていたのだ。その感情に腕を組み、首を傾げる。ここまでしてくるルーサーを憎んでいないシオンの姿にはちょっと、違和感があった。だけどそれをはっきりと確認する前にルーサーは振り返り、俺の姿を捉えた。

 

「ま……いいさ。所詮は時間の問題。近いうちに問題の全ては解決される。それに最近は何やら面白い催しが開かれているみたいだしね」

 

 シオンを一瞥しながら彼女の横を抜けたルーサーは、此方の横までやってくると一旦足を止める。

 

「そう、長い人生には時折刺激も必要だ―――たとえその結果が解り切ったものでもね? それじゃあ精々頑張りたまえ」

 

 こちらを見るだけ見てからルーサーは去って行く。テレポーターを使う必要もなく転移する姿は今のアークスを支配する大ボスに相応しい貫禄と恐ろしさを兼ね備えている。だがあのルーサー、その奥底から感じられたものはつい最近感じられた気配でもある。【巨躯】や【仮面】に近い感覚……そう、ダークファルスに似た、そんな気配をルーサーの奥の方から感じられた。だけどアイツ、アークス船団に居るよなぁ? アークス船団に居てマジでダークファルスなら既にレギアスかマリアにぶっ殺されてそうなものだが。

 

 マリアとレギアスのダーカーに対する殺意マジですげぇからな。俺も人の事言えたもんじゃないけど。

 

 純戦闘部門、戦いたくないアークスランキングに入ってた時はちょっと泣いた。

 

 ちなみに不純・戦闘部門もあって、こっちはネタ的な意味や恰好で絶対に戦いたくないアークス達がランクインしてた。堂々の1位はドゥドゥ。攻撃に当たったら強化値とOPを1個消すとか言われてるし当然だろ。

 

「私と私たちは信じている。この世に無駄な物はない、と」

 

 シオンが手を差し出す。その上で輝く新たなマターボードを受け取り、登録する。ホロウィンドウにウォパル海底区域の探索許可が出たのを確認し、視線をシオンへと戻す。

 

「彼は人でありながら人である事を超越し、人である事を諦めてしまった。故に彼は刺激を求める。長く生きる事にそれこそが必要であると、人らしく」

 

「だけどその遊び心が隙になる、って奴か」

 

 その言葉にシオンが頷いた。

 

「彼の目はアークスとオラクル全体に及ぶ。だが彼は細かい見落としをする。小さな出来事の一つ一つを興味がないと切り捨てるだろう。そこに希望がある。貴女が、紡ぐ希望が……」

 

 そう言葉を残すとシオンは静かにノイズと共に消え去った。再びルーサー到達までの時間を稼ぐ為に自閉モードにでも入ったのだろうか? まぁ、どっちにしろ海底探索の許可が出来たのだ。次はこっちへと向かって調査をして欲しいって事なんだろう。

 

「うーむ、良く寝たなぁ」

 

「さぁ、仕事に戻るぞ」

 

「おーい、アキナ何やってんだー」

 

「お散歩!」

 

 シオンとルーサーが去るとそれまで不自然に去っていたアークスや店員たちが戻ってきた。自分たちがそこにいなかったことにはまるで違和感を抱いておらず、自然と本来の居場所へと戻ってきていた。

 

「催眠か洗脳でも出来るのかアイツは」

 

 もしルーサーが本当に催眠か洗脳でアークス達を、オラクルの人たちを操れるのであれば。そうであればもう、本当に……完全にこのオラクルを支配していると言えるだろう。

 

 まぁ、オラクル全体が敵に回っても俺の方が強いから勝つんだが?

 

 ジャスガとステップ回避が入る時点で安藤の勝利は約束されてるんだよなぁ! 安藤vs安藤? 精神攻撃で先に精神ダメージ喰らった方が負ける。今のうちに罵倒のバリエーション増やしておくか……。

 

「ついに徘徊始めたかあの全自動ダーカー殲滅廃人」

 

 無言でクラリッサを呼び寄せてからラ・グランツを叩き込んだ。アークスシップにはリミッター? そんなもの安藤の気合の前では無意味だ無意味。いや、マジであるらしいけど俺もマトイもシップのリミッターガン無視できる事は既に確認済みなので、無視して馬鹿を言ったやつを処刑してから頷く。

 

「良し! さーて、海底探索解放されたしそっちに向かうか」

 

 宇宙は脅かされているし未来は割と絶望的だが、今日もアークス日和だ。

 

 

 

 

 惑星ウォパルには全部で3エリア存在している。

 

 一つは海岸エリア。時間の流れがおかしく朝、昼、夜の時間が凄まじい速度で駆け抜けて行くのがこのエリアだ。ここは既に解放されているし、何度もエコーやカブラカンに付き合って探索している。ちょっとビーチで遊んだりもした。やっぱ海で遊ぶのって楽しいんだよなぁ。

 

 そして二つ目がここ、海底。

 

 到着するここはウォパルの海の底。光源は不自然に発光する周囲の岩や施設、そしてフォトンによるアークス支援用のライト。ウォパルの水底にあるのだから水で満ちている―――という訳ではなく、マップを見る限り水中のある陸続きの洞窟という形の方が正しいらしい。青、青、青、しかし深い青に囲まれたこの海底の洞窟にはちゃんと酸素が通っており、人が最近まで活動していた痕跡もある。

 

 ここの探索の許可を出したのがシオンであるという事は、このエリアに関わっていたのはルーサーなのだろう。

 

 確認してみればアークス全体に海底探索の許可が出ている辺り、ルーサーに対する目くらましも含まれているのだろう。一応、ダークファルスを警戒してクラスをFoBrという形でクラリッサを抜ける様に備えつつ、海底の地を歩き始め様とすれば早速オペレーターの方から通信が入ってくる。

 

『アキナ、聞こえているか。直ぐ傍でダーカーの出現予兆を観測した。規模は中型だが、これまでウォパルで確認されていないダーカーが出現するようだ。気を付けろ』

 

「サンキュー、ヒルダさん」

 

 スサノショウハを抜いて一回転させてから納刀すれば、正面にダーカーが転移してくるのが見える。出現するのは何段もの鉄のプレートを重ねたような姿をしたダーカーの姿だ。金と黒と赤色のダーカーはPSO2時代にも出現した相手、デコル・マリューダだ。上部に付属するクローで引き裂いてくるダーカーなのだが、

 

 まぁ、レア種含めてこいつに困らされた事ってマジでないんだよな……。

 

 滅茶苦茶弱いし。

 

 という訳で取る行動はシンプルだ。まだここは海底エリアの入り口付近である事もあってダーカーの強さはさほどでもない(N程度)のだ。アサギリレンダンで一気に接近しながらハトウリンドウで斬撃を放てば、斬撃の波によってデコル・マリューダの胴体が一気に三つ粉砕して、上のパーツが落ちてくる。

 

 そもそもからして頭の上の弱点となるコアが露出している相手なのだ。ここまでやらずとも別に良いのだが、解りやすい手本として胴体を砕いた。

 

 そこから跳躍、シュンカシュンランというトップにぶっ壊れたブレイバー最強のPAを使って頭の上のコアに斬撃を叩き込んで行く。その間にデコル・マリューダは抵抗するように足の下でクローをぶんぶんと振り回すが当然、それが届くような事はない。こいつにもジャンプ系の攻撃があるにはある。だが行動が解りやすい上に回避も簡単だ。それに、低ランクのデコル・マリューダなのだから、

 

「これで終わり、っと!」

 

 サクラエンドによるXの字の斬撃を放つ。交差するように放たれた斬撃にデコル・マリューダが浄化され、消滅する。その姿が消えた所で着地しながらスサノショウハを鞘の中へと戻す。

 

「ま、無敵の安藤様にかかればこんなもんよ」

 

『対象の消滅を確認、良い成果だ。引き続き頼むぞ』

 

「了解、了解。これぐらいなら軽いもんさ」

 

 手をひらひらと振りながらヒルダとの通信が切れる。他のオペレーターたちと比べると割と硬いというか、真面目な人だよなぁ、ヒルダは。とはいえ、それはベテランであり長年アークスという存在を見守ってきたオペレーターとしての経歴が乗った上での態度だ。新人やまだ未熟なオペレーターたちと違ったしっかりとして、どっしりと構えたその声とオペレートには安心感を覚えるものがある。

 

 そうだ、彼女たちの声がこのアークスミッション中に一番よく聞く声なんだ。

 

 お耳の恋人とはよく言ったもんだ。

 

「さーて……割とダーカー反応は多いな」

 

 海底にはいくつもの施設と遺跡が存在しており、また同時にダーカーが徘徊している。ゲーム時代は深く考えていなかったが、良く良く考えてみるとこんな海の底までデコル・マリューダサイズのダーカーが徘徊したり、出現するのもおかしいだろう。だってこの海底にはそこまで大型のダーカーを必要とする様な原生生物が存在しないのだから。

 

「となると護衛にでも置かれてるのかねぇ」

 

 まぁ、どっちにしろアサギリレンダンしながら移動するからエネミーの類は全部切り刻みつつ進むが。

 

「さー、やるぞやるぞ」

 

 今日も宇宙の平和の為にやるぞー。




 皆はもうラスター使ったかな? クラスの背景説明もなく、推進するNPCもなく、説明もなしに唐突に使用許可の出る謎のクラス。

 安藤が「あ、ひらめいた」で編み出した説まである。
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