オレだけなんか世界観が違う   作:ろくす

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いつも感想評価誤字脱字報告ありがとうございます。
諦めずに書いていられるのも皆様のお陰です。

お待たせして申し訳ありません。
難産のあまりバッドエンドにしか行かない先輩を軌道修正するのが大変でした……。




大規模侵攻が完了した後もただ終わった訳ではなく、後始末がある。

 

会見の方は今回の大規模侵攻による被害が極めて少なく、交渉により連れ去られた極少数のC級隊員も取り返すことができる可能性が高いことからそこまで大きなバッシングは無かった。

C級隊員とのトレード材料になりそうなものは何なのかという質問もあったが、ネイバーを捕獲したことは伏せブラックトリガーについてのみ公開された。

 

対外的な問題が片付いた後残す問題は、彼のしようとしたネイバーフッドに向けての単独渡航に関する問題のみとなった。

彼の行動に対する尋問は大規模侵攻が終わり、対外的な会見の完了した後に行われた。

 

拘束はされてはいないとはいえ、窓のある個室に閉じ込められてトリオン体に換装した相手に尋問される状況でも彼は至っていつも通りの調子で話していた。

 

 

「遺書?大袈裟だなー」

 

「確かに上手く行った後余計なことがないようにちょっと大袈裟には書きましたけどね」

 

「無いとは思いますけど、助けようとか思われたら大変じゃないですか」

 

「あ、別に誰かの入れ知恵とかじゃないですよ。文字が上手いって、そりゃ自由にしてもらうために沢山勉強しましたから。1日14時間くらい丸一年以上勉強し続けたんですよ」

 

「動機?うーん、オレ自身まだ日本に存在することになってない筈なんで。だからボーダーにできる限り迷惑をかけないでやるなら今しかないかなって」

 

「今回恩を仇で返そうとしてしまいましたが、ボーダーには本当に感謝してるんですよ」

 

「ここの事を知らなければとっくに死んでたくらいには人生詰んでましたから」

 

 

笑顔さえ溢れるごく普通の世間話のような態度で語られる言葉はしかし嘘ではなかった。

笑うと顔の傷跡が引きつるが、まだ愛嬌の内に収まると言えなくもない。

 

 

「嘘はついてない」

「……そうか」

 

 

サイドエフェクトを見込まれて呼び出された遊真はネイバーの尋問に続いてチームメイトの“先輩”の尋問も手伝っていた。

 

尋問に当たって大まかな先輩の事情を聞いた遊真は個人の意見を出すことなく、嘘をついているか判定することに徹していた。

しかし、修の先輩の言葉は嘘ではなくても本心ではないと遊真は気付いていた。

 

 

「迅さん」

「お?なんだ?」

 

 

ネイバーの尋問では居なかった迅に声をかける遊真。

 

 

「迅さんのサイドエフェクトで“先輩”のやろうとしてること解らなかったの?」

「いや、殆ど解っていたよ」

「じゃあ、あえて泳がせたってこと?」

「……彼のいる未来が一番被害が少なかったんだ」

 

 

あえて泳がせていたことは否定しない迅。

その選択に遊真が何かを言うつもりはなかった。

いつだって最善になるように努力している人だということは既に何となくとはいえ解っていたからだ。

そんな時、個室の音を拾っているスピーカーから新しい質問が聞こえた。

 

 

「こんな世界に居たくなかったって、どういう意味なんだ」

 

 

その言葉を聞いて、初めて困ったような顔になる先輩。

先輩の余裕がわずかに崩れたことが外からでも解った。

 

 

「変なこと書くんじゃなかったな……うーん、ノーコメントとかダメですかね?」

 

 

拝むようなポーズを取りながらも無理は承知の上で聞いているのは、原作ファンのメタ的な視点からしたら嘘をついたらばれるという確信があったからだった。

ここまで全ての質問に協力的だった先輩から初めて異なるリアクションを引き出せたことから受け入れられる事はまず無い提案であったが。

 

 

「……えーと、言葉にするのは難しくてですね。思春期の子供にありがちなやつというか何というか」

 

 

軽く腕を組み上体を反らす。

目線はやや斜め下に向いて、深く考え込んでいるようだった。

暫しの沈黙のあと、漸く相手と向き合った先輩は、感情を感じさせない静かな声で呟いた。

 

 

「オレ、頭がおかしいんです」

 

 

相手の反応も待たずに吐き出される言葉は、淡々としたものであるからこそ逆に感情的にもとれる。

 

 

「俺の経歴というか過去はご存じですよね?で、俺は何だかんだ前いたところに適応して成長したわけです」

 

「まぁなんというか、やれと言われたからって言葉にできないような残酷な仕打ちだって沢山してきました。それを当然だと思ってましたから」

 

「でもそれって、日本じゃいけないことなんですよね。俺のやって来たことって悪いことなんですよね?」

 

「オレ、今は平均的な日本人くらいの倫理観とか価値観とか持っているつもりですよ。けど、同時に俺はなにもおかしな事をしたつもりは無いんです」

 

「俺がおかしい日本じゃなくて、俺がおかしくない所に行きたかった。……って言葉にするとまるっきり子供の考えっすね恥ずかしい」

 

 

“先輩”はそこまで口にすると身体から力を抜いて、机にもたれ掛かった。

そうして肘をついたまま、まるで天気について語るような気軽さで言った。

 

 

「でも、人間を殺したり傷付けたりすることってそんな悪いことなんですかね」

 

 

そう言った彼の言葉に、初めて遊真が反応した。

 

 

「嘘をついた」

 

 

 

 

 

 

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