ようやくですが後始末完了となります。
友達。
そんな簡単なものだったのか。
オレはそんな簡単なものに揺らいで、躊躇って、失敗したのか。
「バカみたいだなぁ……オレ」
でも、ほんの少し嬉しい。
机の上についた両肘で項垂れる頭を支えた。
『感動の場面に申し訳ないが』
硬質的な、鉄でできた壁を思わせる冷たく硬い声が聞こえた。
スピーカーから聞こえたということは、部屋の外の人が言ったのは間違いない。
うつむいていた頭を持ち上げ机から視線を上げると、監視用のマジックミラーが解除されていた。
ただの透明なガラスになった窓から見えたのはいつの間に来ていたのか、城戸司令だった。
『どんな事情があろうと決定は覆らない。いくら彼が特異な存在とはいえ今回の行動は重大な違反になる。例え政府から反発があろうと例外は許されない』
いつもの無表情ではっきりと、死刑宣告のような言葉が振り下ろされる。
実際、ちょっと前のオレなら満面の笑みで喜んで頷いて外に出た後に速やかに自殺していたただろう。
けど、今は解っていたこととはいえ少し、辛い。
全部自業自得なのは百も承知なのだが、なかなか儘ならないものである。
しかしこの結末は当然のことといえば当然で、些細なこととはいえずっと脅してきた迅さんにも、せっかく友達になってくれた修くんにも悪いからオレは覚悟を決めなくてはならない。
ごく普通の、当たり前の日本人として生きていく覚悟を。
完全に諦めているオレとは違い、おじさんは納得がいかないようだった。
もしかしてさっき気持ち悪いって言った言葉挑発するためじゃなくて本心だったのか……?
それはそれで怖いんだけど。
反論しようと椅子から立ち上がった性善説の塊みたいなおじさんが口を開く前に、意外な人が割って入ってきた。
『先日奪取した、ネイバーのブラックトリガーの情報、欲しくありませんか?』
実力派エリートこと、迅さんが。
ぼんち揚片手に、漫画でよく見た不敵な笑みを浮かべながら言った。
『……どういうつもりだ、迅』
城戸司令の目付きがすっと鋭くなった。
これはきっと遊真をボーダーに入れる話をしていたときと同じような緊張感なのだろう。
ガラス越し、スピーカー越しですらぴりりと肌に感じる程の緊張感の中、それを物ともしない様子の迅さんは続けた。
『実はボーダーにたった一人だけ、あれを起動できる隊員が居るんですよ』
『まさか、』
『ええ、そのまさかです』
………………………え。
なんなんだ、この展開……。
目の前で繰り広げられる展開についていけない。
つい先ほどまでは、これからはどんなに辛くても外で普通の日本人らしく生きなくてはいけないと迅さんにも修くんにも申し訳ないと覚悟を決めていたのに、どういうことだ……?
『本当に、彼に適性があるというのか』
『ええ。おれのサイドエフェクトがそう言っている』
オレがこの場に関係ない存在だったのなら、名台詞キター!と諸手を上げて喜んでいただろうがそうはいかない。
城戸司令が彼、と言いながら見たのは見間違っていなければオレのことだと思う。
いやだって、まさか、こんなことって、無いだろ……。
お、オリ主最強展開キター……?
「いっ、いやいやいや……」
まるで意味がわからん。
ダメ元で迅さんの後ろに見えた遊真に向かって口パクで助けてと言ってみた。
が ん ば れ 、とめっちゃどうでも良さそうな顔で言われた。
オレには解る、あれは心底どうでもいいって思ってる絶対に!
薄情!薄情だよ遊真くん!
無視されなかっただけ良いかもしれないけど!遊真の横に居るレプリカにファンとしては感涙ものですが!軽く流された先輩はとても悲しいです!
なんて、現実逃避していたらいつの間にか城戸司令と迅さんの話は終わっていたらしい。
もし起動できても逃げ出そうとしないこと、悪用しないこと、攻撃しないことを誓い遊真に言質を取らせた後、本当にボルボロスを持ってきた。
エネドラにとって、アイデンティティとすら言えるであろうボルボロスをオレが起動できるなんて本当にあり得るのだろうか。
目の前に置かれた目玉をモチーフにした、ちょっと気持ち悪いトリガーをじっと見る。
スライムみたいであまり触りたくはない、何て言うのは言い訳で本当にこれに触っていいのかと悩んでいた。
他人の大切なものを蹂躙するようなそんな気分になる。
城戸司令や迅さんの視線を感じる。
あまり待たせては悪いから覚悟を決めて手を伸ばした。
正直一番疑っているのはオレだった。
それでも、やるしかない。
「……トリガー、オン」
身体が換装される時独特の感覚。
ゆっくりと目を開けば足元にアフトクラトルセンスな黒い服が見えていたが、それでも恐る恐る、頬を触ってみる。
つるりとした肌は、生身でないことを語っていた。
思ったよりもあっさりと起動できてしまったトリガーにオレの今後が決まった。
ちなみにオリ主最強展開やるつもりはないです。