オレだけなんか世界観が違う   作:ろくす

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大変お待たせしました。
面倒くさい先輩回です。


三雲修は、

三雲修は、実は先輩が少しおかしいのを知っている。

 

B級以上の隊員の名前が公開されているサイトに先輩の名前はなかったし、いつ何時にランク戦の対戦ルームに行っても先輩は居た。

修より早く帰ることは無かった、というかどこかに帰るという行為をしているのを見たこともないし学校の話をされた事もない。

最近はやらなくなったが、食事中ですら起動済のトリガーは正直やめて欲しいし、仮想戦闘室で修相手に銃を構えたときはいつもの笑顔は鳴りを潜めて人間以下の存在を見るような目で見てくるのも知っている。

少なくとも、何かしら普通ではないのだなと察してしまう程度の付き合いがある。

 

しかし、いくらなんでも単独でネイバーフッドに行こうとしていた事に関しては修も一言どころか一時間ほど物申したいところがある。

 

けど、先輩が少しおかしいことがどうしたというのだろう。

 

修にとって、先輩とはずっとそういう人だった。

そうと解った上で今までがあるのだ。

 

 

「先輩、どうしたのかな……」

 

 

大規模侵攻後、先輩が姿を見せなくなって早数日。

先日の問題行動でもしや除隊されてしまったのだろうかと不安に思う。

 

色々おかしな先輩であっても、修にとっては関わりのある人だった。

 

実は意外と排他的で利己的で自己中心的な所があろうと、修に戦いのいろはを教えてくれたのは先輩だし、才能がないのかと落ち込む修を不器用かつ斜め上ながら慰めてくれたりもした。

とりあえず、修としてはこのまま永遠の別れとなるのは不本意な状況である。

 

 

「とりあえず、一発殴ったら話を聞こう」

 

 

 

 

 

そう決めていた。

 

その為、今日この瞬間先輩の顔面に修のストレートパンチが綺麗に決まっているのも当然のことだった。

 

一発決めてから気付いたが、今日の先輩はどうやら生身のようだった。

始めて見た素顔はトリオン体とは少し異なるところがあった。

 

まず目についたのは顔にある傷痕だった。

頬から耳にかけてくっきり残った痕は既に塞がって古傷になっているとはいえ痛々しいもので、そこから更に少し視線をずらすとやや歪な耳が目に入る。

明確な欠損に、当時の痛みを想像した修は何かを言おうとして、しかし踏みとどまる。

 

 

「先日のあれやそれに随分と言いたいことはありますがこれで許して上げます」

「……よ、容赦ないストレートでした」

「先輩の教育の賜物ですね!」

「全く嬉しくないよ!」

 

 

修の拳を受け赤くなっている頬を押さえながらいつものようにリアクションをした先輩に安心した。

 

 

「……ていうか、オレが言うのもなんだけど色々と気になることあるんじゃない?」

「こうしてボーダーに居るっていうことは、上層部に何かしらの許しは貰ったんですよね?だったらさっきの一発でぼくからの個人的なものは終わりです」

「そんなあっさり!って、いうかさ、ほら、他にも傷とか色々あるじゃん?」

 

 

どうやら先輩は嫌なことは先に終わらせるタイプらしい。

何かを覚悟したような顔で言われたので、修は大袈裟に返した。

 

 

「えっ今さら元ヤンアピールですか?!ずっと前から知ってましたけど?」

「何それ!も、元ヤン!?」

「先輩が未成年なのにお酒のんでたって知ってるんですからね」

「い、いや確かに飲んでたけどさ!」

「色々若さにかまけてやらかしてきたであろう先輩に今さら何を驚けと……。ソウルネーム(笑)つけちゃうくらい拗らせてた事知ってるんですよ、ロウ先輩(笑)」

「拗らせてた言うなし!」

 

 

修にノリ突っ込みながらも、やや下がった眉と僅かに持ち上がった口角に先輩が安堵したのを感じた。

全くもって面倒くさい人である。

 

正直、以前はどんな経緯があれば先輩のような盛りまくりの人間が出来上がるのかまるで想像はつかなかったが、遊真という友人を得てから何となく解ってきた気がする。

先輩は遊真に平均的な日本人の価値観を入れて混ぜたような人、というのが現在の認識だ。

 

実際どの程度当たっているのかは解らないが、修という存在が先輩にとって普通の後輩であって欲しいと望まれているのは理解している。

その為先輩の知ってほしくないであろう面には踏み込まない。

 

 

「で、今日は珍しく換装してないですけどここに居るということはボーダー首になったとかじゃないですよね?」

「あー、うん。ただ、前のトリガーは没収されました……」

「トリガーない先輩とか……」

「やめて!」

 

 

先輩が自身のトリガーを異様に大切にしていたのを知っている修からしたら、中々の衝撃だった。

また、トリガーの所持を禁止されたのにボーダーに所属し続ける不自然さに突っ込んでいいのかやや考えてから口火を切る。

 

 

「先輩、ボーダーでもニートになったんですね……」

「でもって何!?ち、違うし!」

「今のご職業は?」

「け、研究のお手伝いを少々……」

「じゃあ、本当に隊員じゃなくなったんですね」

 

 

先輩にデスクワークなんて出来るのかと一瞬考えてしまったが、口には出さなかった。

 

 

「そ、そうなんだよね。だからもう今までみたいに特訓とか出来なくなったんだ」

 

 

少し、落ち込んだような笑顔だった。

だからさよならだ、とか続きそうなトーンにきっともう修と関わることはないとかなんとか悲観的な事を考えているのが手に取るように解った。

全く手のかかる先輩である。

 

 

「だとしても、勝ち逃げは許しませんよ」

「でも、」

「別にランク戦じゃなくてもいいんです。トランプでもゲームでも、何でも。とりあえず今まで先輩に負かされた数以上に先輩を倒します」

 

 

普通に遊びましょうなんて言っても余計なことを考えてしまうのは解っている。

友達と遊ぶのに理由なんて要らないのに、それが解らない先輩の為に理由をつけてあげるのだ。

 

三雲修は、先輩が思っている以上に先輩について知っている。

 

 

 

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