ここまでこれたのも皆様の支えがあってこそです。
首を吊って死んでいた。
舌を噛みきって死んでいた。
飛び降りて死んでいた。
食器で自身を貫いて死んでいた。
割れたガラスを飲み込んで死んでいた。
生命活動を拒否し点滴に繋がれながら死んでいた。
頭を勢いよく叩きつけて死んでいた。
意図的な低体温で死んでいた。
風呂の中でわざと溺れて死んでいた。
送迎の車のハンドルを奪い事故を起こして死んでいた。
回りの人間を殺せるだけ殺して死んでいた。
×××××で死んでいた。
他にも沢山、本当に沢山死んでいた。
一人の人間の死を、これほどに見せられたのは初めてだった。
先輩、と呼ばれる彼をボーダーから途中で追い出した未来の可能性はどれも凄惨な死が溢れていた。
可能性の数のわりに明確に見えるその死は、どれも実現する可能性が高いのだと伝えていた。
もちろん、ボーダーから追い出す選択をしなかった理由はそれだけではない。
彼をボーダーに在籍させたままの未来は、もう一つの未来と比べて不確定事項が多かったが、それでも大規模侵攻の被害が大幅に減らされることが確約されていたからだ。
今回の大規模侵攻の被害はC級隊員の行方不明者4名に死者0名。
もう一つの未来とは大きくことなる結果になった。
最も、行方不明者の大幅な減少は彼本人よりも三雲くんに寄るところが大きい。
三雲くんが人型ネイバーから千佳ちゃんを守りきったことにより、レプリカ先生に千佳ちゃんの莫大なトリオンを受け渡すことに成功。
大量生産された黒いラービットがトリオン兵駆除にラービット撃破とキューブの回収、更には人型ネイバー撃退に大きく貢献した。
この未来になる分岐は、三雲くんに先輩からの過激な指導と戦闘指南が必要になる。
大規模侵攻当日のトリオン兵より三雲くんが先輩に撃たれた回数の方が多いくらいに過激な指導があってこそで、それだけの時間とやる気があるのは先輩しか居なかった。
死者の方は先輩の未来予知のような動きによって0人になった。
彼の大規模侵攻での不可解な行動は、迅のようなサイドエフェクトがあるようにも思えるがそうではないことは解っている。
無駄にトラウマを増やすだけだと理解しているので本人に問い詰めることは絶対にしないが、彼の予知のような行動はいつの間にか迅が教えたことになっていたので少し思うところがある。
またしばらくの間肉が食べられなくなるのは勘弁して欲しいが、これからの未来に影響が出かねない彼の存在は中々やっかいでもあった。
これからの未来について考えながら移動していると、迅のサイドエフェクトが直近の未来を写し出した。
まだ少し熱を持っている頬を押さえながら対戦ルームを後にした。
腰の入った無駄のないナイスパンチだ、これなら確かにそこらのチンピラは歯が立たない。
…………めっちゃ痛い。
さて、一番気になっていた修くん達の現状を聞けたので、次は迅さんに謝罪しにいこうと思う。
オレは今まで迅さんには多大な迷惑をかけてきた……。
アフトクラトルに無断渡航しようとした時に迅さんの名前を勝手に使ったり、ボーダーを追い出されないように些細な嫌がらせをしたり……。
本当に申し訳ないことをした。
迅さんがどこにいるかは解らないが、時間はいくらでもあるので地道に足を使った。
人気の少ない廊下を歩いていると、目的の人物の背中が見えた。
「迅さん!……本当にご迷惑おかけしました!」
迅さんの姿を見つけた瞬間、思いっきり頭を下げた。
サイドエフェクトで予知していたのか、迅さんはそこまで驚いてはいなかったがこれも誠意ということで続ける。
「迅さんには多分沢山助けてもらったのに、迷惑ばかりかけて恩を仇で返すような真似してすみませんでした」
「いいって、いいって、とりあえず頭あげてよ。なんだかおれが後輩を苛めてるように見えるだろ」
言われるがままに頭をあげると、頬の腫れが目についたのか少し目を細める迅さん。
「医務室に行った方がいいんじゃない?」
「いえ……ケジメってやつなので。迅さんも修くん方式がいいなら、」
「生身なんだし、あまり無理はしないでくれよ。はい、これで許した」
某宗教の偉い人みたいに殴られてない方の頬を向けてみたら、頭に軽くチョップされて許してもらってしまった。
こんなの全然罰にならないのに、迅さんの懐が広すぎて心配になる。
「でもまぁ、自殺方法にあんなにバリエーションがある事にはビックリしたよ。一時期肉食べられなかったし、変なトラウマ出来たし。……間違ってもハサミ持っておれの前に立たないでね」
「本当に、本当にすみません……!」
最後の一言が本題だろう。
原因のオレは一度上げた頭を下げるしかない。
オレの些細な嫌がらせは意外と効果があったらしい。
しかしハサミって、別の未来のオレは一体何をやらかしたのか非常に気になるが迅さんの口から言わせるには酷だろう。
ペコペコ下げる頭を再度上げさせた後、しっかりとオレの目を見て迅さんは言った。
「もう、自殺なんてするなよ」
「……はい。ここで生きる覚悟、決めました」
「そっか、」
良かったな。
声に出されることはなかったけど、そう呟いたような気がした。
なんだかちょっとしんみりした後に、ふと思い出したように迅さんが言った。
「ぼんち揚食う?」
貰った。
ついでにサインも貰った。
ボーダー来て、本当に良かった……。
これにて一件落着?
ということで、中途半端ですがここで完です。
この作品のタイトルとテーマについては回収しきったのでここからは蛇足になります。
ここからの展開についてはがっつり書こうとするとアフトクラトルの侵攻目的がはっきりしない今、書くに書けないので番外編の更新となります。
原作者さんの体調回復を祈ります。
これ以上のあとがきは活動報告に書きます。
遅筆で情景描写の足りない作品にここまでついてきて下さりありがとうございました。