ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス   作:オリゴデンドロサイト

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初投稿作品です。


プロローグ
創造


 イギリスのとある鬱蒼とした森の中。足元もおぼつかない闇の中に、ぽつりと一軒の屋敷が建っていた。

 黒を基調とした人に冷たい印象を持たせるような建物の前に、突如『ばしり!』という音が鳴り、一人の男が姿を現す。

 その男の肌は青白く、鼻は無理やり切り込みを入れたように潰れ、切り裂いたように細い瞳は赤い。人というより、蛇を無理やり人の形にしたかのような異様。そんな異様な顔立ちをしたこの男こそ、今イギリスを恐怖のどん底に突き落としている闇の帝王……ヴォルデモートであった。

 

 ヴォルデモートはあたりを一瞬見回し、誰もいないことを確認した後滑るように黒い屋敷に入ってゆく。

 中に入ると数多くある部屋には目もくれず、奥にある地下への階段を目指す。階段をおりるとそこには怪しげな液が入った鍋や、何に使うのかもわからないような器具が所狭しと並べられていた。

 

 しかし部屋の中には一か所だけぽっかりと空いた空間があり、その真ん中には巨大なガラスのケースが置いてあった。

 ヴォルデモートはその巨大なケースに近づき中を見やる。

 そこには、

 

「もうすぐ完成だな」

 

中には一人の白銀の髪をした赤ん坊が眠っていた。

透き通るような、彼女の白銀の髪と合わさるような白い肌の赤ん坊。

場所さえ違えば、それこそベビーベッドにでも寝かされていれば、ただ可愛らしい赤ん坊に見えたことだろう。だが異様な場所に相応しく、赤ん坊は……彼女は普通の子供とは程遠い存在だった。

 

 何を隠そう、彼女こそヴォルデモートが造りし……人造死喰い人(ホムンクルス)、人を殺すためだけの()()であった。

 

こんなものを作ろうと思ったのは、ただ帝王の単純な気まぐれであった。帝王は闇の勢力を率いて()()()、マグル出身の()()()()、ひいては魔法族でありながらそのような輩におもねる()()()()()()を駆逐すべく、このイギリス魔法界を闇で覆いつくさんとしている。

 だが、いかに彼が強大な存在であっても思うように支配は進まなかった。それはダンブルドアのような強大な敵がいるということもあるが、自らの部下たちの脆弱さもあると帝王本人は考えていた。

 勿論、純血である死喰い人がそのように脆弱であるとは思いたくはない。が、いかんせん全てが全て由緒正しい純血というわけではない。彼の部下の大部分は穢れた血とまではいかなくとも、何代か前にマグルなどの血が混ざったような劣った存在がほとんどだ。それに元になる家系も、彼のようなマグルの血が混じっても全く偉大さを損なわない程の家系ではなく、どこにでもいるような家系のものばかりだ。この世で最も尊く、()()であるべきはただ俺様一人。その他は有象無象であり、その中でもマシな部類の魔法使いはほんの一握りだ。ほとんどの者は足手まといにしかならぬ。

 そんな存在がある程度足を引っ張っていると帝王は考えていたのだ。だが、彼らのような存在も許容しなければ勝つことはできない。真の純血だけではさすがに人数の上で圧倒的に負けているからだ。質だけであのダンブルドアを凌駕出来るとは思っていない。

 そこで帝王は考えた。

 いないのであればより純血を、自らには及ばないが、()()()()特別な存在を造りだせばよいではないか、と。

 無論、今から造ったとしても今の戦争に間に合うわけではない。思い通りに進まないとはいえ、確実にこのイギリス魔法界の支配は完成されつつある。だが、イギリス魔法界を支配し、マグル共を一掃したあかつきには、その支配を海の向こうへ、世界中へと広げていく予定なのだ。その時にやはり今の状態ではまずい。その時を見据えて行動を開始しなければならぬ。

 闇の帝王は思う。 

 

 俺様は死を超越した、永遠の存在だ。その程度なら待ってみせよう……と。

 

 帝王は自らの部下を()()にあたって、自ら造るには、他の純血より劣った存在であってはならないと考えた。だから自らの血の一部を与えることにしたわけだが、すると今度は()()すぎるという問題が発生する。

 

……俺様程の特別な存在は俺様以外あってはならないのだ。

 

であるから自らの血と、魔法族ではなく、マグル程でないが純血より劣る亜人、『吸血鬼』の血を使うことにした。

 適当な純血を使ってもよかったのだが、造るからには自らと同じ永遠でなくてはならない。自らと同じ手段で永遠を勝ち取らせるという方法もあるが、それをすれば()()()永遠になってしまう。そうすれば、もしもの時殺すことができなくなってしまう上、何よりいくら自らが造った特別とはいえ、自らの特別性を誰かと共有することなど帝王には我慢できなかった。

 であるならば、種族的に疑似的な永遠にすればよい。吸血鬼は数ある亜人の中でも姿かたちが人間とそん色なく、なおかつ日光やニンニク、そして銀といった弱点はあるものの、半永久的な寿命を持つ種族であるので、自らが求める条件としてはピッタリであった。

 構想が纏まれば、後は実行に移すのみ。配下にいた適当な吸血鬼の女の血液を()()させることで、肉体をつくるのに重要な材料はそろった。不要になった女の()()も処理した。あとは細々とした薬草や鉱物をそろえるだけでよい。

 

 これで俺様程ではないが特別で、なおかつ半永久的な寿命の肉体を持つ優秀な僕が出来上がるだろう。

 

 偉大な闇の力を存分に使い、僕づくりは順調に進んでいた。血を奪った吸血鬼が女であったため、肉体の性別が女になったがそれは些細なことだ。寧ろ御しやすい駒になるだろう。

 魂の問題も以前永遠の存在になるために研究したことが活きた。肉体があったとしてもそれを動かす魂がなければ、この人造死喰い人が動くことはない。だが、帝王は人工的に魂に近いものをつくることにすら成功していた。魂そのものとは言い難くとも、肉体を動かす代用品くらいにはなるだろう。

 そうしてもうすぐケースから出るほどに、普通の生まれたての赤ん坊と同じくらいには育った。あとは従順な死喰い人にある程度育てさせ、ホグワーツに入学する年、十一歳になった時に自ら闇の魔法を教えればよい。長丁場ではあるが、自らの血も入っているのだから優秀なのは間違いないだろう。使えるようになるのにさほど時間はかかからぬ。

 自らの支配を確実なものにするであろう新しい()の完成まであとわずか。

 ヴォルデモートは薄暗い地下室の中で酷薄に笑うのであった。

 




物書きも投稿もはじめてなため四苦八苦中です。至らぬ点は多々あると思うのですがどうぞよろしくお願いします。
吸血鬼に関しては、原作であまり触れていないことからねつ造し放題。
設定としては、ある程度までいくと老化がひどくゆっくりになり、銀、ニンニク、日光に弱いこと以外は比較的人間より肉体が優れている。

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