ダンジョンに戦いを求めるのは間違えているだろうか?   作:蟹味噌汁

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ステータス項目がどう言ったものだか覚えていないので適当です。
その辺りは後日確認してから修正を入れます。


ステータス

 クレインの過去の話を聞いた上で、クレインを受け入れると決めたロキは改めて神の恩恵を授けようと話を進めていたのだがその途中で問題が生じた。ロキとしては当然ながら神の恩恵やファミリアの存在を知っている前提で話していたのだが、クレインはそれらの存在を欠片も知らない事に気付いたのだ

 

ーーこんな状態でよぉダンジョンに潜ろう思えたな...

 

 それこそクレインの性格によるものだと分かってはいるが、その無知故の無謀さには呆れるしかなかった。

 

 とは言え、オラリオに置いて常識と言われるそれらの話は覚えて貰わなければ話にならない。面倒だと感じながらも面に出すことなくロキは一つ一つ丁寧にクレインに説明した。

 

「っちゅうのが神の恩恵や。分かったか?」

 

 オラリオがなぜ出来たか。ロキを含めた神の存在。神が与える神の恩恵や眷属、ファミリアの事全てを早口に、かつ丁寧に説明したロキは若干の息切れを起こしていた。

 

 しかし悲しき事に相手が悪かった。過酷な人生を歩んできたクレインがまともな教育を受けていたのは六歳まで。その後の人生に置いて戦闘以外の知識を学ばなかった彼の脳は何処までも覚えが悪くなっていた。興味がない事には集中力が働かない人間がいるが、まさにクレインはその典型だと言えるだろう。

 

「...」

 

 ロキの説明に眉を潜め怪訝な表情を示すクレインを見て彼女は嫌な予感を覚えた。自身の苦労が無駄になっているかもしれない。そんな一抹の不安を打ち消したいが為に彼女はクレインに問い掛けた。

 

「なあクレイン。うちが言った事を簡潔に纏めて言ってみ」

 

 そう命令口調で告げ、クレインの返答を待つロキだが、クレインは小難しい表情をしたまま中々口を開こうとはしなかった。部屋に置かれた時計の針を示す音だけが虚しく響く。

 

 そのまま五分程の時間が経過しただろうか。クレインは意を決したように目を見開くとロキの方を真っ直ぐ見据え口を開いた。

 

「つまり俺は戦えばいいんだな?」

 

 間違えてはいない。間違えてはいないが、クレインが理解出来た事は神の恩恵を受ける事により常人には発揮出来ない力が手に入ると言う戦闘面に関する事だけだった。オラリオの始まりに関しては何も覚えておらず、ロキなどと言った神に関しては凄い存在程度にしか覚えていない。よってクレインが下した結論は一つだった。迷宮に潜り戦う。それがこのファミリアに利益をもたらすと言う事だ。

 

「っかぁ〜......あかんわこいつ」

 

 クレインの頭の悪さにロキは早々に諦めを付ける。とは言え戦えばいいと言うのも一種の正論。クレインはどう考えても戦闘員としてしか運用出来ない。その為ロキはやるせない気持ちになりつつも納得する事にした。

 

 ロキがクレインの特殊っぷりに翻弄される一方でクレインはふと過去の事を思い出していた。

 

「...そう言えばオラリオの外にもロキと似た雰囲気を出すやつがいるな。今思えば彼女も神だったのか」

 

「ほお」

 

 本来オラリオ以外に神がいると言う事は珍しい。決していないと言う訳ではないが、オラリオの外で神に出会うのは運が良いと言えるだろう。大多数の神はオラリオの中で生活しているだけに余計だ。

 

 そう言った経緯もあり、素直にロキは驚く。それと同時にどの神かも気になり尋ねる事にした。

 

「名前はなんて言うんや?」

 

「アレアと名乗っていたな。......正義感の強い美しい女性だった」

 

 クレインが口にした名前の神はいない。が、正義感の強い女性と言う単語でおおよその検討は付ける事が出来た。

 

ーー女神アストレアか。......確か敵対してたファミリアの怪物進呈を受けてファミリアは壊滅した筈や。......名前を変えて都市外に逃げてたんか。まぁ最低限の処置って感じやな。

 

 神が人々の住む下界に降りてくるに辺り、その力の使用は禁じられているものの、その体からは意図せず神威と言う雰囲気、オーラのようなものが出てしまう。その為下界に住む人々は神を見れば一目でその存在が神だと認識出来る。だからこそ名前を変えると言う行動はやらないよりまし程度の最低限の処置に過ぎない。

 

「そのアレア言うんは何しとったんや?」

 

「戦争孤児を養っていた。戦争によって親を無くした子供なんて腐る程いる。かく言う俺も一時は彼女の元で世話になっていた」

 

 そう語るクレインは戦場で死にかけた所を救ってくれたアレアーーアストレアの事を思い出していた。正義感が強く、自分の信念を決して曲げない強い女性だったと彼は記憶している。その為クレインの自殺紛いで正義とは真逆の行いに何度も意見のぶつかりあいになっていた。最終的には彼が逃げ出す形で彼女とは別れたが。

 

ー......また何時か彼女の元を訪れたいものだ。結局最後まで礼を言うことができなかった。

 

 親身になってクレインの行いを止めようと声を荒らげるアレアの存在を当時は疎ましく思っていたが、ロキと出会った今、思えばそれも自分の為を思い言ってくれたものだと理解出来た。

 

「なるほどな...優しいやっちゃな」

 

「ああ、厳しいが優しい人だ。ロキは彼女の事を知らないのか?」

 

 そう問われたロキはどう返答するものかと頭を悩ませる。当然オラリオの中で活動していたアストレアの事は知っている。活動内容からその末路まで。しかし素直にそれをクレインに告げていいものかとロキは悩む。

 

ーーうちが勝手に話していい事ちゃうか。

 

 そう考えたロキはクレインの問に首を横に振るった。

 

「...そうか。まぁ知っていたからと何かが変わる訳ではないか」

 

 その言葉を最後に二人の会話は途切れる。それぞれアストレアと言う女神に対して異なる思いがあるが、これ以上彼女について話しても意味はない。逸れてしまった話を戻す為にロキは口を開いた。

 

「そろそろクレインに神の恩恵を授けよお思うんやが...構わんな?」

 

「...ああ。頼む」

 

 神の恩恵を授かった者はその神の眷族になる。つまりはファミリアと言う組織の一員になる。互いに思う所があるだけに室内の雰囲気が重くなる。

 

「上脱いで楽に背向けてみ」

 

 ロキの言われた通りに上を脱ぎロキの方へと背中を向ける。ロキもソファーから立ち上がり、クレインのいる方へと歩みを進める。

 

 その表情は少しばかり強張っており、彼女の心境がよく表れている。しかし、それはクレインも同じことであり、二人が心の中で思う事は違うものの、この契約は両方にとって特別なものになるのは違いない。その心境が二人の表情を強張らせていた。

 

「少し邪魔するで」

 

 そう言いながらクレインの隣に腰を下ろし、彼の背中に視線を向ける。そしてロキの視界に入る数えるのが嫌になる程に出来上がった傷。大小はあれど、その傷の多さがいかにクレインが戦場に長い時間立っていたかを物語っていた。

 

―ーよくもまあ死ななかったもんやな。

 

 数多もの傷の中には右肩から背中に掛けて一直線に伸びている大きな傷もある。その傷は既に癒えてこそいるものの、死んでいたって可笑しくない程の傷だ。だと言うのにクレインはいまだに生きている。今回のミノタウロスに負わされた傷も本来なら死んでいても可笑しくはない傷だった。

 

―ー運が良いだけで済ませられるレベルかいな......まぁ今考えても仕方があらへんか。

 

 その事に何か引っかかりを感じながらも、その考えを打ち消す。今はクレインに恩恵を授ける事が優先だ。

 

「少し痛みが走るかもしれんけど我慢せえ」

 

「分かった」

 

 クレインの短い返事を聞いてから、ロキは彼の背中に手を伸ばす。そして伸ばされた指先がクレインの背中に触れた途端に眩い光が部屋の中を満たした。

 

「ッ!?」

 

 それと同時にクレインとロキに鋭い痛みが走る。

 

―ーなんや!?

 

 本来神の恩恵を授ける時にロキに関してはそのような痛みは生じない。だと言うのに、クレインに神の恩恵を授けようと神の力をクレインに流し込んだ瞬間、まるで何かに反発するかのようにロキに痛みが走る。その事に困惑を隠せないでいるも、クレインの背中には文字のようなものが浮かび上がりは消えを繰り返している。

 

―ー何が起こってるんや!?

 

「がっ、あああああああああああっ!!」

 

 ロキが目の前の初めて見る現象に困惑している最中、クレインが悲鳴を上げる。未だにクレインの背中に浮かび上がる文字は浮かび上がっては消えを繰り返しているが、それと同時にクレインの体に小さな亀裂が入り始めていた。そのどれもが小さな傷だが、その傷からは少なくない血が流れ始めている。

 

「クレイン!?しっかりせえ!!」

 

 そして畳みかけるように不可解な事象が起こる。クレインの裂けた傷口から流れ出た血が流れに逆らい、彼の背中に集まり始めたのだ。一か所に集まった血はやがて文字の形をつくり、クレインの体に染み込むかのように消えていった。それと同時に浮かび上がっていた文字も消え、クレインを襲っていた激痛も消え去った。

 

「っく…」

 

 体を襲う痛みがなくなった事により、クレインは前にのめり込む様に倒れる。

 

「クレイン!?」

 

 突然倒れたクレインに驚きながらも支えようと手を伸ばそうとしたロキだが、その最中に彼の背中に刻まれたステータスが目に付いてしまった。

 

「なんや、これ...」

 

 そこでロキの目に入ったステータスは異常と呼ぶに相応しいものだった。

 

ーーーーーーーーーー

 

クレイン・フォン・グラヴィスLv.1

種族 ーーー

力 0

耐久 0

器用 0

俊敏 0

魔力 0

 

魔法

 

スキル

 

狂戦士化

・スキル狂戦士化の侵食具合により効果が変動。

浅 少量なステータスの向上。

中 レベルが1上昇。

深 レベルが2上昇

狂喜乱舞

・スキル狂戦化の発動内容により効果が変動。

・効果上限に近づく程に全ステータスに大幅な加算が加えられる。

戦闘継続

・魔力を用いて動けなくなった体を強制的に動かす事が可能。

・痛覚等、戦闘継続の妨げとなる感覚、感情を阻害。

生命渇望

・死に瀕する程ステータスの伸びが早くなる。

 

ーーーーーーーーーー

 

 レベル1にも関わらずレアスキルが四つある事も異常だが、ロキが驚いたのはそこではなかった。本来ステータスの欄に種族と言う項目は存在しない。だと言うのにクレインのステータスには種族と言う項目が存在し、更には文字化けを起こしておりロキにもその内容を読み取る事は出来なかった。

 

 ステータスとはその者の魂の器を数字化したもの。つまりロキの視界に映る文字の羅列は嘘偽りのない正しい表記であり、ロキ自身もステータスを偽装する事は出来ないと分かっている。それだけにクレインのステータスは衝撃が大きかった。

 

「クレイン...あんたほんまに何者なんや」

 

 クレインは既に気を失っており、ロキの呟きに気付く事は無かった。

 

 先程痛みが生じた指先に目を向けて見ればクレイン同様指先に亀裂が入っており、少なくない血が流れていることに気付く。しかし、その血を拭おうとはせず、ロキはクレインを助けたと言う黒ローブの女について考えていた。

 

 だからこそロキは気付くことが出来なかった。ロキの指先から垂れた血がクレインの背中に付着し、肌に染み込むように消えていった事を。

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