もしひとりぼっちになってしまったのが12才ぐらい女の子だったら・・・と考えて書いてみました。
*原作をご存じなくても読んで頂けるよう、基本的な世界観の設定も内容に盛りこんでいます。
#Pixiv小説にも同じ内容のものを投稿しています。
あ あ
えーと こちら は ちきゅう です
みなさん の ふるさと ちきゅう です
うちゅうの みんな
きいて くれる ?
ちきゅうは いまも いきています
じんこうちのう どうしの
せんそう は
まだ つづいて いて
このまえ
おかあさんが なくなって
わたしひとりだけ に
なっちゃった けど
わたし ぜったい に
あきらめ ない よ
だって ちきゅうは
みんな の こきょうは
たしかに ここに
あるんだから
そして みんなの
こころ の なかにも
だから あきらめないで きぼう を
きぼうを もって つづけていれば
きっと ねがい は かなう から
だいじょうぶ だから
だから まけないで
あなたは じぶんで おもう より
きっと つよい から
じぶん を
もっと
もっと しんじて
・・・
「よ~し、今日もがんばるよ~」
目覚め一番、そう叫んで自分に気合をいれてみた。
寝室の窓から外をのぞいてみる。今朝はとてもしずかで、いい天気のみたい。戦闘予報装置も、今日は近くでの戦闘はないようだと言っている。絶好のガラクタ集め日和だね。
まずは顔を洗って・・・っと。
パタパタと庭先にある洗面台まで小走りして、いつものように顔を洗って、歯をごしごしと磨きはじめた。すると、小鳥が数羽、ちゅんちゅんと鳴きながら、近くの背の低い木にとまる。いつもの子たちだ。
「あ、みんな、おはよう~、今日も元気いっぱいだね~」
小鳥たちに声をかける。ちゅんちゅん、ちゅんと小鳥たちも一斉にあいさつを返してくれる。今日みたいに天気のいい日は必ず来てくれるんだ。
そして、今日は久しぶりにテラスでお食事。人工の卵でつくったスクランブルエッグと人工菜園でできたプチトマト、そして昨日焼いたフランスパン、ロイヤルミルクティを花壇に咲いたお花たちを観ながらおいしく頂くの。鳥たちも一緒に。
このあたりはもう随分長い間戦闘がないので、草木が生い茂って小動物も沢山いて、とても緑がいっぱい、なのでわたし大好きなの。
そんなおだやかなひとときをしばらく過ごして、その後お出かけの準備を始める。今日はこのまえ戦場となった場所で、ガラクタ収集をするのだ。そのための自走車やガラクタ選別用のセンサーやらを用意して・・・あと昼食の弁当をこしらえて、準備完了~。
「じゃ、いってきま~す」
手を振りながら、てくてくと自走車で走り出す。小鳥たちに挨拶をしてお出かけする。しばらくいつものように鳥たちが追いかけてくる。その後別れて現場まで自走車で1時間ぐらい走らせたて、今日の現場に到着。
2~30分ざっと見て回って、使えそうな材料をいくつか集めて荷台に積み込む。そしてそのまま、いつものように『アンテナ』へ向かうんだ。
・・・
昔人類が生み出した人工知能同士の果てしなく続く世界戦争により、ほぼ人類が滅んでしまった世界。そんな世界にひとり残された少女、あみ。
一部宇宙に逃れた人たちはもう地球から遥か彼方にいて、まともに交信することもままならない。いや、それ以前にそういうテクノロジーを地球の人類は失ってしまった。
だがそんな絶望的な状況の中で、ある時地球に残された人類は人工知能が生み出した機械のガラクタを集めて再構成することで、宇宙からの人類のメッセージを受信できることを発見した。
相互交信はできない。ただ一方的に発信された文字データを無作為に拾うだけ。しかしそれでも当時地球に残されていた人類は歓喜した。他にも人類はまだ残っていたのだ。
その後、更に特定のモジュールを追加することで、自らメッセージを発信することもできるようになったが、時間軸のズレの問題や送信先の設定ができないなど課題も多く、会話が成り立たない。それに、こちらのメッセージが本当にどこかに届いているかもわからない。
そうこうしているうちに、ひとり、またひとりと人が減ってゆき、最後のひとりあみだけになってしまったのだ。
・・・
えっと、いちおう、機械工学の基礎?みたいなのはお母さんやおじさんから教えてもらったし、過去のえらいひとが書いた本も沢山残っているしね。
だから食べ物や発電とかの自給自足システムのメンテナンスぐらい自分でできるし、簡単な改造くらいならまかせて!って感じ。
『いつか宇宙にいるほかの人たちと再会して、もう一度この世界をやり直すことができるわ。だから決してあきらめないし大丈夫よ。』
って、お母さん、いつもそう口癖のように言っていたの。病気で亡くなってしまってしばらくたつけど、私、いまでも信じてる。
お母さん、間違ったこと言ったことないし。だいすきだもの。
「おはよう~『あんちゃん』!今日もよろしくね~」
持ち帰ったガラクタを使って、このアンテナ、『あんちゃん』にエネルギーを注入するの。
水晶のようにキラキラ光る半透明のモジュールを機械に挿入すると、ウォンウォンと音をたてはじめる。アンテナが動き出した音だ。
「今日も調子いいみたいね。いいこいいこ。よしよし」
彼女には先人から教えてもらった知識と経験、そして彼女自身の並外れた感性によって、機械の動作音や雰囲気で機械の調子が分かってしまうのだ。まるで機械と会話をするように・・・。動作は順調のようだ。
そっとその機械からちょこっと飛び出て人の頭みたいになっているところをなでてやる。
色々なモノがむぞうさに組みあわされているので、あちこち線がはみ出していたりへんな機械が飛び出したりしていて全然きれいじゃないし、かわいくもない。でもこれはこれで魅力があるようなないような・・・不思議な感じ。
「今日はなにか届くかな~」
近くで戦闘があるときはあぶないので、シェルターの中で一日じっとしていないといけないから 毎日は来れないの。
前に来た時には、1日なにも受信できなかったし、その前は来た!と思ったら、
『 かれーらいす と はやしらいす
どちら は ですか? 』
とか、
『 あなた は えりまき とかげ
を おぼえ て ますか 』
みたいな意味不明だったり、少々アレなメッセージばかりで、おかげでその日はセミブルーな夜を過ごすことが多いの。でも、たまに
『 きょうは おとうさん が
おたんじょうび に かわいい ぼうし
かってくれたんだ えへへ 』
みたいなのが届いたりすると、ほっこり幸せな気分になったりする。
今日はどんなメッセージが聴けるかな?
あ、なにか受信したようだ。
『 にんげん というものは ほんとうに
どうしようも ない ね
じぶん の ことしか
かんがえない
たにん を へいき で
ころす
わたしも その ひとり
だから もうじき しぬんだ
さようなら 』
…なにこれ。
どういうこと?ひとがひとを殺すって?
わたし知らない。お母さんがひとを殺し滅ぼそうとしたのは機械だと、人工知能だと教えてくれた。
ひとがひとを殺す、なんて知らない。信じられない。ほんとうなの?
・・・
あみは資料室にしばらく籠って、歴史の本を読み漁った。人類の戦いの歴史。自分たちの私利私欲のために他人を殺し抑圧してきたこと、そして二度の世界大戦。虐殺の歴史。とても彼女には信じられないことばかりだ。
そしてその後のテクノロジーの革新による人工知能の発明、人工知能による経済・政治など基盤システムの運用、機械が人類を管理する世界へ。
そして人類の心の腐敗、永くパートナーであった人類への反逆。人工知能はこんな人類はいらない、不要だと三行半をつきつけたのだ。
そして人工知能同士の世界戦争の勃発が致命的となり、世界に一時は70億いたという人類は一気に滅びに向かう。
・・・
愕然とする。信じたくない。信じられない。
だが本が、歴史がそれを真実だと告げる。一つや二つの文献ではない。読み込んだ書籍のすべてがそうだと告げている。もう疑う余地はないと思えた。もはや受け止めるしかないのか?
「ねえ、お母さん、わたしどうしたらいいの?」
「ほんとうにひとは滅ぶしかないの?・・・ねえ?・・・おしえてよ・・・」
彼女の問いかけに答えるものはない。
ただ『アンテナ』のインジケーターランプの光だけが、陽炎のように揺れていた。
・・・何日かたった。
彼女は無気力ながらも、母親との約束だった日課、ガラクタ集めとメッセージの受信を続けていた。
ルーチンワークのように無感情に同じことをただただ繰り返す日々。彼女は続けるしかない。でもはたしてそうすることに意味があるのかもうわからなくなっていた。
・・・そしてある日。
いつものように拾ったガラクタを持ち込みメッセージの受信を始めて、ひと息ついた頃。
ふと機械のあるインジケーターランプが、ホタルのように緑色にゆっくりと点滅しているのに気づいた。メッセージ受信用ではなく、発信用の機械のランプだ。
…そういえば、さいきん発信機を使ってなかった。お母さんからは宇宙にいる人たちにメッセージを伝えるのも大切なお仕事なのよ、と言っていたのに。
でも誰が聞いてるかもわからないし面白くないから、最近ちょっとおざなりになっちゃってた。しっかりやらないと。
でも、なぜあのランプがいま点灯しているのだろう?
「…なあに?『あんちゃん』、どうしたの?」
…返事はない。この『あんちゃん』に音声認識の機能はないから当たり前だよね。
ふぅ、とため息をつきながら、発信機に向かう。
あ、そういえば過去の発信メッセージの記録・ログを読むことができたはず。ふとそう思いついて発信機に備え付けられたキーボードに手を伸ばした。
「うーんと、過去ログの確認は、こうして・・・こうだよね・・・よし。」
以前は結構しっかり定期的に発信していたみたい。メッセージがいくつかのページにわたって一覧表示される。そのメッセージの一覧から、てきとうに深く考えずに選ぶ。およそ10年前の記録だ。
『 みなさん こんにちは
きょうは みなさんに
とても うれしい ほうこくが あります
せんじつ わたしの こどもが うまれた んです
かわいい げんき な おんなのこ です
なまえは あみって いいます
あかるい みらいが くるように
って きめました
いま あなた は たいへん つらい おもい を
されて いるかも しれません ね
でも あなた の こきょう ちきゅう は
たしかに
たしかに ここに あります
せんそうは いまも つづいて います
でも かならず おわります
ぜったい
です
わたし も まけません
あきらめません
だから あなたも
だいじょうぶ あなたは
ひとりじゃない
こうやって つながること が
できるんですから
だから あきらめないで
きぼうを
あかるい みらい を
しんじて
そして また みんな で
さいかい できる ひ
を ゆめみて
ともに がんばりましょう
…お母さんのメッセージだ。
こんなメッセージを発信していたなんて知らなかった。
こころの底から何かとてもあたたかいものがどんどんこみ上げてくる。なんだろうこの気持ち?うれしいの?かなしいの?わからない。よくわからないけど・・・なんだろ、涙がどんどんあふれてきて、とまらないよ。
…そうだ、わたしはひとりじゃない。きっと今もわたしと同じように宇宙でさみしい思いをしている人がたくさんいるんだ。地球には木やお花や鳥たちとかお友達が沢山いる。だから地球にいるわたしが宇宙の彼方にいるみんなを励ましていかないと。みんなの故郷は、地球はここだよ、たしかにここにあるよって。
「ありがとう、お母さん。・・・それと『あんちゃん』も。ありがとね。」
・・・
「おはよう~『あんちゃん』!今日もよろしくね~」
いつものように『あんちゃん』に挨拶をして、ガラクタを使ってエネルギーを注入する。
そして、軽快にキーボードをかちゃかちゃと操作する。宇宙に向けて配信するメッセージを書いているのだ。そして一気に書き上げた。
「メッセージ送信・・・っと。できた! とどくといいな~」
『あんちゃん』のインジケーターランプがやさしく緑で点滅する。まるで彼女の声に呼応したように。
『・・・きっととどくよ・・・だいじょうぶだって。』
…『あんちゃん』の声が聞こえたような。空耳かな?
「うん、そうだよね。ありがとう。わたし、頑張るね?」
よくわからないけど、とりあえずそう返しておく。
もう不安になるのはやめよう。お母さんが信じたものをわたしも信じる。それだけだ。そして明るい未来を手に入れるんだ。
・・・おわり・・・