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俺は今、永琳宅のソファーで寛いでいる。
他人の家で、それも居候の身でこの態度はどうかと思ったのだが、永琳本人が、堅苦しいのはやめてくれとのことでこうやって伸び伸びと寛いでいるのだ。
「調子はどうだ?」
「う〜ん…」
俺は永琳に声をかける。
永琳は最近になって薬ではなく、図案や電気回路と睨めっこしながら唸っていた。
「微妙なところね…」
「と、言うと?」
「要となる噴射の構造が、イマイチ納得出来ないのよ」
「ふーん…」
俺は永琳の後ろから、噴射の構造が描かれていると思われる図案を覗き込む。
「ふむ…」
俺は脳の容量の限界を無くしているので、都市にある書物の知識を、詰め込めるだけ詰め込んだ。
だが、ただ知識があるだけでは、意味がない。
その知識を活かさなければ、俺が詰め込んできた今までの苦労は水の泡になる。
俺はそれを回避したいが為に、永琳にアドバイスしたりしているのだが、この都市の技術、そして都市自体を作った人間と俺では思考速度が違い過ぎた。
「少し待ってくれ。その図案よく見せてくれないか?」
「え、ええ」
俺は永琳との思考速度の差を埋める、または超える為、『増減させる能力』で俺の思考速度を加速させた。
頭に浮かぶアイデアの中で、元々描かれている図案に最も近いものを描くことにする。
永琳に道具を借り、頭の中のものを元々の図案の上から慎重に描いていく。
俺の筆を動かすスピードが上がるにつれ、永琳の顔が少しずつ青ざめていった。
というか俺、図案描いてる最中に人の顔見てる場合じゃねえわ、集中集中。
「ふぅ〜できた」
「…」
図案を描き終わった俺は、手を振って休める。
勢い余って構造どころか全部描いてしまった。
最終的に、俺がいた現代のロケットの形に収まった。正直ロケットの構造は興味本位で調べた程度なのだが、それ以外は全て、詰め込んだ知識で補った。
「理論上はこれでいける」
「なるほどね…足りなかったのはこの部分だったのね…にしてもこの構造よく思いついたわね」
「軽量化のために、途中で燃料タンクを切り離すようにしようと思ったんだが、意外にも使われる素材の強度が高い上に軽いからな」
この都市では様々な採掘技術を使って、特殊な鉱石を大量に産出していた。
その鉱石は、都市の兵に配備されているレーザーライフルに耐え、同じ大きさの鉄と比べても三分の一という軽さで、加工がしやすいというものだ。
「私が思いつかなかった事を簡単にやってのける…そこに痺れる!憧れるぅ!!!」
「お、おう」
それは狙ってるのか?永琳…
ジ○ジ○好きの俺からしてみればその反応は嬉しい限りなのだが、急にやられると反応できないです。
「是非教えて欲しいわ!」
「何を?」
「あなたの教えられる限りの知識を!!!」
oh…要するにそれは…
「俺に教師になれと?」
「是非!是非!」グイッ!グイッ!
永琳がグイグイと俺に迫ってくる。
いや近過ぎるって!
近い近い近い!ちょっといい香りする!いやガキかよ俺!
「わ、わかった。わかったから、できる限り教えるから、あと顔近い」
「ハッ!?ご、ごめんなさい…取り乱していたわ」カァァァァァ
永琳が顔を真っ赤にしながら離れていった。恥ずかしいならしなきゃいいのに。
話を戻さないとな。この状態が続くとか胃痛が起きそうだ。
「で?これはどうするんだ?」
俺は図案を指しながら永琳に問う。
勿論それは【これをどうやって作るんだ】の意味を込めて言っているわけだが…
「ええ、月夜見様に報告しておくわ」
やっぱりか…やっぱり俺の考えは伝わらないか…
永琳からしてみればロケットを作る事など、設計以外では悩む事なんかないのか。
そこが俺と永琳の違いだろうな〜…本人は作れて当然、という考えだし。
薬云々関係ねえな。永琳が能力関係無しに既に強い件について。
報告に行くらしいし、俺は都市を見てこようかな。
「そうか、じゃあ俺は少し歩いてくる」
「分かったわ。私はその間に報告に行ってくるわ」
「りょーかい」
俺は玄関に向かって歩き出す。何回か行き来しているので、使える部屋や、道具などの部屋は大体覚えている。
まぁ使われている部屋より手付かずの部屋の方が多いのだが…
相変わらず思うのだが遠い。もうこれ…玄関に着くまでに、外出する気力無くなるんだけど…
「長え…ワープ的なものを作るのもいいがそれだとデカイ意味も無いし、ほとんど廊下を歩かなくなって掃除がされなくなるな」
埃が溜まるのは許せない性格の俺は、現代にいた頃の部屋を隅々まで綺麗にしていた。
友人には、どう掃除したら部屋が輝くんだ、と聞かれたものだ。
「掃除がする意味があって、尚且つ移動が便利…」
歩かなくてもいいという発想からだと、空港の床にエスカレーター敷いたようなやつ…
確か〜…ムービング・ウォーク?だったか?
あれだ、ケ○○軍曹の基地で、ほとんどの移動シーンで使われてるやつ。
あれ作ろう、うんそうしよう。帰ったら取り組もう。
と〜りあ〜えずぅ〜外で暇つ〜ぶしぃ〜
「まだか?」
確かこっちで道は合ってたはずなんだが、中々着かない。
迷った?
はいきた迷いました。なんでだろうね、普通に来る時に歩いてた道を戻ってるだけなのに、見当違いの所にでたよ。
誰かに聞くか…なんか恥ずいな家の中なのに他人に場所聞くって…
まぁ居候だから仕方ないよね!
あ、お手伝いさんいる。
「すいませ〜ん」
「あっはい!」
「玄関どっちですか?」
「へ?」
聞かれた内容が予想外だったのか、困惑していた。
まぁ…家の人に玄関何処って聞かれる事無いよな。でも居候だからな?まだ把握しきれて無いんだ。月夜見の仕事場よりデカイのに、覚えろって言う方が無理がある。
「すいません、この前ここに居候させてもらう事になったんですけど、家の構造を把握しきれてなくて…」
「あ、あぁなるほど…そういう事ですか」
把握しきれないどころか、把握する気力さえ起きない。
この家の能力は『住人を廃人にする程度の能力』でも持ってるんだろう。
「案内致しますので、ついてきてください」
「ありがとうございます」
「いえいえ」
お礼は大事←これ基本
「ところで、お名前を教えていただけますか?まだ永琳様から何も聞いていないので…」
永琳…ロケットの開発で忙しかったのはわかるが、俺の件ぐらい伝えておいてくれないかな〜。
「魅剣 真だ。永琳とはこの前、森で襲われてた所を助けた時に知り合ったんだ。で、最近こっちに来たから住む所が無くてさ、相談したら住んでいいって言われてね」
俺はできるだけ簡単に、短く説明する。長々と話す内容でもないし、俺より永琳から聞いた方が信憑性高いしな。
「そうでしたか。ここは長年働いている私達でも迷うものですから、構造を知らないとなれば迷うのは当たり前ですね」
「お恥ずかしい限りで…」
「あ、申し訳ありません。魅剣様へ言ったわけではなくてですね、えーと」
気落ちしている俺をなんとか立て直そうとする彼女は、少し面白く見えた。
しかし俺は、人が困っている姿を見て喜ぶような人間ではない。
いや待てよ、俺そもそも人間か?
「独り言…ですか?」
中々いい言葉が思いつかない彼女の代わりに、俺が思いついた言葉を言ってみた。
「はい!」
彼女はハッキリとした声で答えた。少し幼さの残る笑顔で返事をされたのは微笑ましいことなのだが、さっきまでの会話を思い出して笑ってしまいそうになる。
彼女は、俺が肩を震わせているのが何故なのか理解できないようだ。
勿論笑いを堪えるためだが。
「あの、質問をしてもいいですかね?」
「はい、なんでしょうか」
俺が笑いを堪えているのを悟られない内に、話を切り出す。
「あなたは、いつから永琳の下で働いているんですか?」
「永琳様がまだ幼い頃からです」
なるほどなるほど…待てよ、そうなるとこの人は…
あ、これ以上はいけない気がする。俺の生命本能がそう警告している。
「永琳が都市の建設に携わったと聞いているのですが、それは本当なんですか?」
「ええ、永琳様はとても聡明なお方で、月夜見様率いる神々が降りてきた時、永琳様が真っ先に交渉を行いました。そしてこの都市を建設し、あらゆるものを作り、都市の繁栄を後押ししました」
「なるほど…」
聞けば聞くほどスゲェ話だな。
これが1人の人間の手によって行われてるんだから尚更。
「着きましたよ」
お手伝いさんの話を聞きながら歩いていたら、すぐに着いてしまった。
もう少し詳しく聞きたい所だが…
「また今度詳しく聞かせていただけませんか?」
「分かりました。その時までに話を纏めておきますね。何時にお戻りになられますか?」
う〜ん…適当に歩き回るだけだからなー。都市で迷子になっても、飛べば永琳の家は見つかるし。
「えーと…5時前には帰ります」
「承りしました。永琳様に後ほどお伝えします」
「はい。あ、これからよろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
俺と彼女は同時に礼をした。
これからこの家に住むのだし、お世話になるはずだ。ゆえに挨拶は大事である。
「じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
俺は彼女に見送られ、外に出る。
そういえばお手伝いさんの名前を聞いていなかった。帰ったら聞いておこう。
そんな事を考えながら、玄関のドアノブに手をかける。
軽く力を入れると、自動ドアの様に両方の扉が開いた。
俺は都市で何をしようか考えながら玄関から出た。
「ふぅ〜あっちぃ〜」
永琳宅を出て少し歩き、近くの木陰で休む。
まだ午後になったばかりで、日が出ている。その為、日光の熱が俺をジリジリと熱していく。
着物を着ている俺は、少し汗を吸った着物の両襟を掴み、パタパタと空気を入れていく。
空気が入るたびに、脇がスーッと涼しくなるのを感じながら、俺は空を見つめる。
鳥に似た生物が、空のさらに高いところへ行こうと羽を大きく羽ばたかせる。
そよ風が当たるのを感じた俺は、膝に手を置きよっこいしょと反動をつけて立ち上がった。
照りつける日光を、手で遮りながら歩き出す。その先に見える景色は、活気に包まれていた。
俺は久し振りに見る人の密集率と、賑わいを見て、足を運ぶスピードが自然に速くなっていった。
次回か、次次回辺りには戦闘できるかな?