適当に都市を散策した後、俺は永琳に軽い手土産でも買っていこうと思い付き、近くの団子屋に入った。
「あれ?俺団子屋に入ったよね?」
あまりにも予想外過ぎる光景で、ただの見間違いだと自分に言い聞かせ目を擦る。しかし、目の前の光景は変わることはなかった。
「これは…凄いな」
まず驚いたのが、都市全体は未来的な造りをしているのに、店などは未来的などという言葉が似つかわしくないような内装だった。
壁は基本的に赤で、装飾は金などの貴金属が使われている。
和風とも言えないが、これは中国の歴史的建造物の内装に近い気がする。
団子屋でこれか…いやもしかしたら、ここが超高級な団子屋で、それだけ内装に拘れるんじゃないかな。
「いや高級な団子ってなんぞ」
納得しようとしたけど無理だね。
俺入る店間違えたわ。軽い手土産買いてえのに、全ッ然軽くない。
「これいくらなんだ?」
手元の金と、団子を交互に見ながらそんな事を呟く。
というか物価分かんないのに何故買おうとしたんだ。
金はこの前、永琳に持っといた方がいいと言われて渡されたから、持ってるけど。
これは永琳に物価について教えてもらわないとな…買い物も碌にできない。
「また次のきか「何の団子をお探しですか?」うぉぉい!」
あ、ビックリして時止めちった☆
急に話しかけないでくれ本当に…
ビビって軽くちびるかと思った。ち、ちびってないよ?
「この人…店主か?」
質問の内容的に考えて店主だろう。他には商品を見ている人はいるが、同じように働いてる人はいない。
「?この服…」
俺は、声を掛けてきた店主の服装を見て、疑問を抱いた。
中国系の服。とてもシンプルな作りで、アクセサリーの類のものは付けていない。
なぜ古代にこんな服装があるんだ…というか、なぜ中国なんだ?月夜見や永琳は着物なのに。
とりあえず、この状況をなんとかしないと…
「能力解除っと」
「?どうかされましたか?」
「い、いえ…あのここのだんご一本ずつで、どれぐらいですか?」
俺は、目の前の団子を指差しながら問いかける。
「一本ずつですとこれぐらいですね」スッ
うん分からん。なんか計算機的なのに字が表示されてるけど、どう見ても数字でも漢字でもない。
これ領収書取れるかな…
〜30分後〜
こっちに最近来たことや、物価が分からないことを伝えるのに四苦八苦したが、なんとか買えた。
しかし、説明で30分も掛かったわけではない。説明し終わって、団子の購入ついて話出そうとしたら、店主が俺に興味を持ったらしく、質問攻めを喰らった。
その時は
『で、俺、この団子を買いたいんですけど、このお金どれぐらい出せばいいんですか?『どこからいらっしゃったんですか!?』…』プチッ
『質問を質問で返すなぁぁぁぁぁ!』
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
という事になって、他のお客さんに白い目で見られてしまった。
説明するのは5分ぐらいだったはずなのに、店主のせいで30分近く経ってしまった。
「金額分ここから取っていただけるとありがたいんですが…」
「わかりま「あ、必要以上に多く取られてたらシバきますんで」…」
「でも、物価分かんない自分も悪いんと思うので、代金の10%ぐらいは取っていいですよ」
俺が言い切った瞬間、店主が小さくガッツポーズした。これが女の子なら可愛いんだろうが、男だからなあ…
「じゃ、また来るよ」
「ええ、これからもご贔屓に」
最初の頃の堅苦しさは無くなり、砕けきった仲になった店主とそんな軽い挨拶をして、俺は団子屋を後にする。
結構うまそうだから、これからも行ってみよう。その前に物価について教えてもらわないと…あと文字。
なんで言葉通じてるのか不明だが、月夜見の能力云々と信じよう。
〜月夜見の仕事場〜
コンッコンッコンッ
『どうぞ』
「どうも」
「魅剣様!?」
あれ?なんかデジャヴ。
「お仕事ご苦労様」
「あ、ありり、ありが、とうございます。こ、今回は、ど、どのようなご、ご用件ででで」
「落ち着け」
おいどうした…前会ったときは、そこまで酷くなかっただろ。2人だけだとコミュ症発動しちゃうの?
相変わらず俺なんだと思われてんの…
差し入れに団子持ってきただけなんだが。
「ほれ、団子」
「へ?は、あ、ありがとうございます」
「なにが好きか聞いてなかったから、とりあえず適当に買ってきた。好きなの選んでくれ」
好み聞くの忘れてたから、とりあえず全種類一本ずつ買ってきた。
ちなみに俺はづんだっぽいのを選んだ。ウマウマです。
枝豆?か分からんが、豆の風味と甘過ぎない絶妙な加減によって作り出される甘み!そして茶に合う!
greatだぜ!
「あ、あのわたくし何かミスをしてしまったのでしょうか…」
「いやいや、そういう訳じゃあなくて、仕事大変そうだから糖分摂っといた方がいいと思ってな」
「あ、ありがとうございます!!!」ウルウル
「お、おう。喜んでもらえて何よりだ」
まさかここまで喜ばれるとは。嬉しい限りだな。また今度差し入れしよう。
次はクッキーにしようか。今度作ってみよう。
「仕事はどうだ?」
「へ?あ、はい。進んでおります。ただ最近妖怪達の動きが活発になっていまして、南側の警備兵は常時警戒態勢をとらせています」
「ふむ…」
月夜見の話で思い出したが、最近になって妖怪達が巡回中の警備兵を襲う事件が相次いでいたな…
永琳が唸っていたが、どうも対策のしようが無いらしい。妖怪達の根城を叩ければ楽なのだが、最近は大妖怪が増えてきて、都市の兵では対応できなくなってきたらしい。
「なるほど…本格的に対策を練らなければならないな…」
「そうなのですが…こちらとしては永琳にも対応策が見つからない以上、どうしようもない状況でして…」
根城が見つからないのは、主に大妖怪が増えたのが原因だ。一度探索隊が編成され、根城を探さしたのだが、大妖怪が複数現れる異常事態が発生し、ほとんど全滅状態だった。
それからというもの、兵達の士気も下がり、訓練に真面目に取り組まず、探索で妖怪に遭遇し、まともに戦えず死亡というケースが相次いでいる。
「兵を鍛え直さないとな」
「都市の兵をですか?」
「あぁ。今の兵達の訓練への取り組みはどのようなものなんだ?」
「もうほとんどサボっていると言っていいものです」
そこまでか…
これは予想以上に兵を鍛え直す必要がありそうだ。
「そうか…ではこうしよう。これから兵の訓練、及び指導は俺がしよう」
「魅剣様がですか!?」
「犠牲者が少なくなるのなら喜んでやるさ」
「是非お願いします!」
「わかった」
まずは、兵達について少し聞いておかなければならないな。なにも知らない状態で、指導するよりもある程度把握しておいた方がいいだろう。
「指導するにあたって、兵達の記録を見せて欲しいんだが…」
「はい、ただいま持って参ります」
そう言って、月夜見は席を外した。
永琳の話では探索隊での犠牲者は、何十人といるらしい。中には家族がいるものも…
そんな現状を少しでも改善できるなら、神として動くべきだろうと思う。
俺は出された茶を口に含んで、これからの兵達への指導について考え始めた。
団子いいよね。一口で食べれて、そしてあの甘過ぎない甘さ(店による)。そして茶に合う。よし饅頭買ってこよう。