東方創造伝   作:るーびっく☆きゅーぶ

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戦闘(?)


第14話 月夜見の憂鬱

 

 

真様に軍を指揮していただけると分かって、つい昂ぶってしまい根回しを忘れていた。

あの男をまず外さなければならないのに、私はその事をすっかり忘れて、真様に迷惑を掛けるような状況を作ってしまった。

 

 

「月夜見の心を傷付けた代償はデカいぞ?」

 

 

真様///は、恥ずかしいです///

 

 

「ほざけっ!」

 

 

本っ当にコイツは…これが終わったら徹底的に潰してやる…真様にあんな口の聞き方…

 

 

「コイツで吹き飛ばしてやらぁ!」カチャッ

 

「んな!?」

 

 

あれは試作型のレーザーライフル!?なんであいつが持っている!?

 

 

「なんだそれ?」

 

「これは試作型のレーザーライフルだ!支給されているレーザーガンの倍の威力!永琳様が極秘に作っていたようだが、軍部の全ての情報を握っている俺が見逃す訳がないだろう!」

 

 

しまった…しっかり情報操作を行っていなかったせいでこうなるとは…

自分のミスのせいで真様に銃口が向けられていると思うと、どう償えばいいのか分からなくなってくる。

 

 

「ふ〜ん…そうか、じゃあ楽しませてくれるんだよな?そんな玩具まで用意してたんだし」

 

「お、玩具だと?貴様ぁ…どこまでも舐め腐りやがって…俺の地位を奪うだけでなく侮辱するだと?」

 

「だからどうした?成果も出せず、対策も講じようとはしなかった。所詮お前はその程度だったと言う事だ」

 

 

真様が満面の笑みで正論をぶつける。やべぇかっけぇ…

こんな状況なのに笑顔が輝いている!

 

 

「野郎ぶっ殺してやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!顔面吹き飛ばす前にど玉ぶち抜いてやる!」カチャッ

 

 

まずい!照準を合わせ始めた!

 

 

「真様!」

 

 

私は、真様を射線上から少しでもそらす為に走り寄ろうとした。

しかし、それを真様は手で制した。

 

 

「死ねぇぇ!」

 

 

奴がトリガーを引く。

その刹那、私は悔しくも目を閉じてしまった。

真様が撃ち抜かれる所など見たくない。

そんな自分が情けなくなって私は涙を流した。滝のように流れる雫は止まることはない。

真様を救えなかった自分が憎くて憎くて堪らない。

 

 

「クッアッハッハッハッハッ…は?」

 

 

「どうした?笑えよ…」

 

 

「え?」

 

 

真様の声が聞こえて、私は重い瞼を上げる。

そこには、変わらずあの笑みを浮かべた真様が立っていた。

 

 

「な、な、な、な!何故だ!何故当たらん!」

 

「そりゃ避けたからに決まってんだろ」

 

「光速を避けるだと!?」

 

 

私は現状が理解できず、真様と奴の会話を聞き流していた。

 

 

「別にお前が撃った後に避けた訳じゃない。お前がトリガーを引く前に射線を予測して、指を掛けた時点ですでに避けていただけだ」

 

「だ、だが、お前は撃つ時にはそこに」

 

「答えを教えてやろうか?」

 

 

訓練場にいる全てのものが息を殺した。

真様の次の言葉を一字一句聞き逃さぬように。

 

 

「残像だよ」

 

『……は?』

 

 

今なんと?残像?レーザーの光速に対して残像?

 

 

「お前は俺の残像を見て、まるで俺がまだそこにいるかのように錯覚しちまったのさ」

 

「う、嘘だ!嘘に決まっている!」

 

 

真様から発せられた言葉に混乱し、奴は必死に否定する。奴には否定する事しかできないのだ。

絶対的な力を持つ真様を相手に、少しずつ絶望の淵に近づいて行く奴の顔は、青白くなっていた。

 

 

「はぁ…分かったよ」

 

 

真様は溜息をつくと、片方の足を軸に回転し、もう片方の足で地面に円を描いていった。

 

 

「ほいっと。じゃ、次は接近戦だ。俺はこの円の中で動かねえから、お前はひたすら攻撃してこい。一撃でも俺に当てられたら、俺は引き下がろう」

 

「なんだと!?貴様はさっきから俺を舐めているのか!?」

 

「言わずもがな」

 

 

さらに真様は煽っていく。

もう既に勝敗は決したようだ。

あの真様の表情。満面の笑みの筈なのに、嘲笑いという言葉の方が似合っている。

口の端は耳まで吊りあがり、目は閉じているものの、瞼の間から見える黒目は玩具を前にした子供のような目だった。

 

 

「さぁ…こいよ」クイックイッ

 

「ッ!フンッ!その気味の悪い顔面!叩き潰してやる!」ダッ

 

 

嘲笑うような笑みのまま、真様は手を伸ばし、指を曲げて奴を挑発する。

奴は挑発に乗せられ、拳を握り、駆け出した。

確かに今の真様の表情は、他の人間からしてみれば気味の悪いものに感じられるだろう。だが私は、それよりも真様が笑っていることに歓喜さえ覚える。

 

 

「オォォラァァァ!」

 

「…」スッ

 

 

奴は、駆け出した時の勢いを殺すことなく拳を振るう。

しかし、その拳は真様に当たることなく空を切る。

 

 

「どうした?遅いぞ?」

 

「ッ!フンッ!!!」ブンッ

 

「よっと」グイッ

 

 

拳を避けられ、煽られた奴は回転蹴りで頭に致命傷を与えようとするが、それもまた真様は背を反らす動作だけで避け切った。

 

 

「おっそいぞぉ〜、つまんないんだけど…」

 

「だッ!まッ!れッ!」

 

 

真様は余裕、いや退屈なようだ。

奴が繰り出す攻撃は一撃一撃が強力なものだが、当たらなければ意味がない。

他の兵達も戦闘、いや遊びだな…

この遊びに感嘆の声を漏らしている者もいる。

 

 

「ハァ…ハァ……ッハァ…」

 

「おいおい、どうした?俺の顔面を叩き潰すんじゃぁなかったのか?」

 

「だッ…まれ…ハァ…ハァ…」

 

 

どうやら奴はまともに訓練をしてきていなかったのもあって、体力の限界を迎えたようだ。

まぁ訓練をしているからといって勝てるわけではないのだが。

 

 

「次お前の一撃を避けたら、俺がお前の顔面に拳を叩き込むぞ?」

 

「やッ…てみや…がれ…ハァ…」

 

「よっしゃ!かかってきな!」ピョンッピョンッ

 

 

ピョンピョンと跳ねながら奴を挑発していくスタイル。

外野の私達でも鬱陶しく感じる。

 

 

「おらぁぁ!」バサッ

 

「ッ!?」

 

 

!?小癪な!

砂を投げて目潰しを仕掛けた!

このままでは真様が!

 

 

「貰った!死ねぇぇぇぇぇ!真ぉぉぉぉ!」 ブンッ

 

奴は最後の一撃というように、全身全霊を込めたような拳を放つ。

どこまでも汚い奴だ!

何とかして真様を…真様?

 

 

「…」

 

 

何故動かないのだろう。

奴の拳はあのままだと、確実に真様の顔面に直撃してしまう。

だというのに、真様は何故避けない?

 

 

「死ぃぃぃぃにやがれぇぇぇ!」

 

「…」スッ

 

 

奴の拳が眼前に迫った辺りで、真様は拳を構え、避けた。

そして次の瞬間…

 

 

「オォォラァァァァァァァァァァァ!」ブォンッ

 

「ぶべらッ!?」メキャツ

 

 

ズザザザザ--

 

 

真様は空気そのものを殴る勢いで、奴の顔面に拳を叩き入れた。

奴は顔面の骨が砕ける音と共に、後方に数メートル吹き飛んだ。

 

 

「ふぅ…顔面に叩き込まれるのは…テメェの方だったな…」

 

「…」

 

 

もちろん奴の返答はない。

顔面を砕かれ、意識が飛んでいるのだ。

その証拠に、奴の目は白眼を向いて、口からは血と混ざった泡が吹き出ている。

 

 

「月夜見を傷付けた代償が、この程度で済んで良かったな…できる事ならテメェを破滅まで追いやりたいところだが、その顔の傷を背負って苦しんで生きて貰った方が償いになる」

 

 

かっ、かっ、カッケェェェ///

そ、そんなに私の事を思っていただけるなんて///

あぁ…今なら死ねる。この幸福感に包まれながら死にたい。

他の兵達に奴を運ぶよう指示した真様は、私に目線を移し、歩み寄ってきた。

 

 

「月夜見…大丈夫か?」

 

「ハッ!?ま、真様!お、お怪我は!?」

 

「とりあえず落ち着け」

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「は、はい」

 

 

涙を流していたせいで、目は赤く腫れ上がり、頰には線が残っていた。

真様は、そんな私の情けない顔を見て心配してくださったのだろう。

 

 

「ありがとうございます…そして申し訳ありません…私が先に解決していればよかったものを…」

 

「大丈夫大丈夫、気にするな」

 

「し、しかし」

 

 

真様は私の謝罪は軽く受け流し、責めることはしなかった。

 

 

「それよりもだ」ズイッ

 

「ひゃい!」

 

 

真様が急に顔を近づけてくるから、噛んでしまった…

息のかかる距離まで近づかれて、私は多分、顔が沸騰しそうなぐらい赤くなっているだろう。というか熱くなっている。

 

 

「大丈夫だったか?」

 

「へ?」

 

「あんなこと言われてよ」

 

「あ、あ、大丈夫です」

 

 

まさかここまで心配していただけるとは…

真様を見ていると湧き出るこの胸の熱い感情…答えがやっとわかった気がする…

まだ出会ったばかりだが、これは…

 

 

「真様」

 

「どうした?」

 

「私…」

 

 

 

恋慕

 

 

 

「真様が好きです」

 

「……ふぁ?」

 

 




月夜見「真様真様真様真様…」
さて…次回、月夜見の恋は実るのか!
戦闘について感想・アドバイスなど頂ければ、修正・改善に取り組んでいきたいと思います。

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