東方創造伝   作:るーびっく☆きゅーぶ

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真 壊れる


第18話 現状

 

 

 

輝夜姫の家庭教師となった俺は、都市の軍の隊長であり輝夜姫の家庭教師でもある。

 

そんな都市の重役を2つも担っているということで、俺は都市で大いに騒がれる存在となってしまった。

 

 

「なぁ、聞いたか」

 

「あぁ、軍部の隊長と姫様の家庭教師どっちも務めてる人のことだろ?」

 

「そうそう。それにその人外部から来たらしいぜ?」

 

「おいおいそんなん大丈夫なのかよ…」

 

「てかその人、月夜見様の旦那様なんでしょ?」

 

「「は?」」

 

「有名な話よ」

 

「ええ」

 

「「なん…だと…」」

 

「私達、実際に旦那様を見に行ったけど月夜見様が求婚するのがよく分かるわ」

 

「ええ、軍部の隊長になった人よ?」

 

「「俺らの夢が」」

 

「ちょっと!?」

 

 

どうやら現実に耐えられずぶっ倒れてしまったようだ。

まぁ原因は俺な訳だが。

 

一度、外部から来た俺がそんな重役を務めていいのかという議論になり、都市の議会にお呼ばれしたが月夜見の鶴の一声で解決した。

 

皆口々に、月夜見様が言うなら大丈夫だろう、と言っていた。

それだけ月夜見が都市の人達に信用されているということか…

 

 

〜〜〜〜

 

 

 

「真がこっちにきてどれくらいかしら…」

 

 

永琳が俺に問いかけてくる。

数えたことがないからよく覚えていない。

 

 

「さぁ…まだ数年単位だろうとは思うが」

 

「そんなに短いの?」

 

「あぁ、俺の何百億年と比べれば、まだ短いほうさ」

 

「そんなに生きてきたのね…」

 

 

輝夜が俺の年齢を聞いて一瞬固まってしまった。

 

 

「そりゃあな…宇宙が生まれるもっと前、無から生きていたからな」

 

「ということは真が宇宙の創造主ってこと?」

 

「そんなとこだな」

 

「「私…創造主に教師してもらってたの…」」

 

 

永琳と輝夜がハモる。

まぁ仕方ないといえば仕方ないのか。自分の教師が宇宙の創造主だとは誰も思いもしないだろうからな。

 

 

「軍部の方はどうなの?」

 

「あぁ、なんとか今まで平均以上の体力値には維持できてるよ」

 

「あの、まるでダメな人間達の集まりを、まともな軍部の組織として復活させるとはねー」

 

「本当に驚きだわ。まぁ真が隊長になると聞いた時も驚いたけど」

 

 

そのフレーズどっかで聞いた事あるぞ…

 

 

「そこまで言わんでも…あいつら、しっかりと鍛えればそれなりに強くなれる奴らだからな」

 

「そんな事も分かるの?」

 

「まぁな」

 

 

心を読んでいるわけではない。

心理学などを頭に詰め込んでいるから、相手の癖や行動で大体わかるようになってきた。

 

 

 

 

コンッコンッコンッ

 

 

 

 

話もひと段落ついたので、次の分野を教えようと腰を上げた時、部屋にノックの音が鳴り響いた。

 

 

「どうした月夜見」

 

 

月夜見が頭だけ出して、部屋の様子を伺っていた。

 

 

「月夜見様!?」

 

 

永琳が珍しく焦る。

対して輝夜は、月夜見の突然の訪問にまた固まってしまった。

 

 

「調子の方はどうでしょうか?真様」

 

「あぁ、悪くないよ。永琳達の勉学も理解が早くて助かってるし」

 

「それは良かったです」

 

「で?どうしたんだ」

 

「少しお話が…」

 

 

月夜見が悩み込んでいるような表情を見せる。月夜見が悩むとなると都市規模の話のように思える。

 

 

「ふむ…すまないが今日はこれで終わりにしよう。また明日教えに来る」

 

「わかった。また明日ね」

 

「あぁ、すまんな。月夜見、どこで話すんだ?」

 

「姫、隣の部屋を使ってもいいかしら?」

 

「いいですよ」

 

 

月夜見が輝夜に許可を取る。

輝夜の屋敷は結構部屋が多い。永琳の家の何倍とあるだろう。

 

 

「永琳にも聞いて欲しいのだけれど」

 

「わかりました」

 

 

永琳もか…都市規模だけでは済まないようだな。

 

輝夜が貸してくれた部屋に入る。

 

中は部屋の真ん中に長机が1つと椅子が4つほど。

月夜見に向かい合う形で俺と永琳が座る。

 

 

「昨夜、都市の近くの森に調査に入った部隊が行方不明になりました」

 

「俺の部隊じゃないな」

 

「はい。私の管轄外の部隊です。他の権力者達が結成させた特殊部隊のようですが…」

 

「ふむ…」

 

 

この都市全体は月夜見が管理しているわけではない。

地区ごとに分けられた権力者達で都市が管理されている。

月夜見はその権力者達の統括を務めているが、その座を獲得したいが為に特殊部隊を結成したようだ。

 

俺の訓練を受けている部隊は月夜見直属の管轄を受けている為、情報は月夜見にしか入らない。

 

それを妬んだ他の権力者達が自分らの部隊を作り調査に向かわせたらしいが…被害が出てしまったようだ。

 

 

「妖怪達の活動も活発になっている…そろそろこっちも行動するべきじゃないか?」

 

「はい、その事で相談が…実は地上の穢れが増加してきて、都市のバリア機能が低下してきているのです。その為地上を離れ、月に移住しようと考えています」

 

「ここからは私が説明するわ。随分前に真が設計してくれたのがあったでしょ?」

 

 

永琳の家に居候し始めた時に設計したロケットの事か?

 

 

「あぁ、あれか」

 

「それを使って月に移住するの。もう既に発射場や居住区は造っているわ」

 

「相変わらず行動が早いな」

 

「ありがとう」

 

「妖怪達の活動の活発化、地上の穢れの増加、ロケットの準備共に居住区の完成が重なっている為、近いうちに月に行く事になります」

 

 

ふむ…そうなると都市の防御が手薄になるな。

 

 

「その間に奴らが来るかもしれないという事か…」

 

「!…良くお気づきになられましたね…その通りです。ロケットに都市の住民を乗せるとなると時間がかかります。誘導も含めると兵達を出動させるため、その間の防御ができない可能性があります」

 

「おおよそどれぐらい掛かる?」

 

「短く見積もっても2時間近く…」

 

 

数までは予測できないか。まぁそれでも時間稼ぎぐらいなら。

 

 

「余裕だな」

 

「「!?」」

 

 

俺の言葉に2人は驚愕した。

それもそうか…1人で数十億の妖怪を相手するなんて考えもしないか。

なんか感覚が鈍ってんなー。元からか。

 

 

「最悪は全滅させればいい」

 

「ふふ…真様ならやりかねませんね。よろしくお願いします」

 

「月夜見様!?い、いくらなんでも真一人に任せるのは!」

 

「大丈夫だろ」

 

 

永琳が俺1人に任せるのはマズイと思ったのか焦りながら月夜見に反論するが、それを俺が一言で否定する。

 

 

「ええ、真様なら大丈夫ですよ。というか闘いと呼べるかも分からなくなりそうですが…」

 

「まぁ手加減はするよ」

 

「て、手加減…」

 

 

またもや永琳が固まる。

 

 

「で?いつ頃になるんだ?」

 

「遅く見積もっても半年ぐらいでしょうか」

 

「わかった」

 

 

結構余裕はあるみたいだ。

しかし、それでも月夜見の顔は暗い。俺はなんとかその表情を明るくしようと考えを巡らすが、生憎笑顔にできるほどの技量を持ち合わせていない。

 

 

「まぁ間に合ッ

 

 

俺が喋ろうとした時、屋敷の中ではないが、近くで爆発音のようなものがした。

 

 

「今のは!?」

 

「どうやら…半年もねぇなこりゃ…」

 

「そ、それはどういう…」

 

 

俺は永琳の言葉に返事をせず、輝夜の屋敷を飛び出た。

 

 

「ッ!」

 

 

目の前に広がっている惨状を見て俺は息をのむ。

 

 

パッと見ただけでも十数人が血を流しながら地に伏しているのが分かる。

近くのビルには大きな穴が開いていて、そこから煙が立ち込めていた。

人々は悲鳴を上げながら助けを求めていた。

 

そして…

 

 

1人の男性の屍体の上に乗り踏みつけている奴が…

 

 

 

「人間ってのは脆いな〜壊れ方は面白いのにすぐ壊れるのがな〜」

 

 

 

そう言いながら奴は男性の屍体の頭を踏み潰した。

 

その瞬間俺の中で黒い何かが生まれた。

 

俺は初めて…自分の中から湧き出るような殺意を感じた。

 

 

こいつを…コイツヲ…コロシテヤル…

 

 

 

 




次回、戦闘、真 暴走

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