東方創造伝   作:るーびっく☆きゅーぶ

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ありがとうございます。


第19話 悲鳴

 

「そ、それはどういう…」

 

 

私は真の返事を待とうとしたが、本人は目にも留まらぬ速さで部屋を出てしまった。

月夜見様と私は真の突然の行動に驚いたが、返事を聞くためにすぐに真を追った。

 

 

真を追い屋敷を出た私は、一瞬頭の中が真っ白になってしまった。

 

 

赤黒い鮮血がそこら中に広がり、ビルには穴が開き、十数人が倒れていた。

そして目の前で、男性の屍体の頭が踏み潰された。

 

踏み潰した本人は愉快そうに笑っている。

 

私はその光景を見て、初めてその場から、現実から逃げたしたいと思った。

 

真の周りには黒い煙のようなものが漂い始めていた。それは真の周りで円のような形を作ると少しずつ大きくなり、半径10メートル程の大きさになった。

 

 

 

「?お前誰だ?」

 

「…」

 

「ケッ…意識がねえのかよ…つっまんねぇなー…でも、そこの女は面白そうだな。とりあえず邪魔だから死ね」

 

そう言って奴は拳を構え、真に放とうとする。

 

目の前まで拳が迫っているというのに真は動こうとしない…まだブツブツと何かを呟いている。

なんとか真を助けようと体を動かそうとするが、何故か指一本動かない。

 

まさか!奴が何か仕掛けてきている!?

 

 

「あ、あれ?お、おかしいな…な、なんで体が…ッ!」

 

 

奴自身も動けていない。

しかし、その場で1人だけ動いている人物がいた。

 

 

真だ。

 

 

真は奴の方に歩き出すと、顔を上げ奴に何かを囁いた。

 

 

「ヒッ!や、やめろ…ち、近付くな…や、やめてくれ!」

 

 

すると奴は、何か恐ろしいことを聞いてしまったかのように怯え出した

 

奴が真に制止を呼び掛けるが、真は聞こえていないかのように、とてもギクシャクとした動きで近づいて行った。

 

 

そして奴の拳が真の体に触れた時…

 

 

 

 

「き″ぃ″や″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″ぁ″!!!!!!」

 

 

 

 

奴の悲鳴が響き渡った。

 

 

奴の腕は、真の周りに漂う黒い何かに取り込まれて、跡形もなく無くなっていた。

 

悲鳴はビルの壁などに反響し、屋敷の中にまで聞こえたようだ。

証拠に姫様と、姫様の屋敷の人間が出てきた。

私達同様、固まってしまったが…

 

 

 

「痛い…か?」

 

「や、やめてくれ!わ、悪かった!どんな償いでする!」

 

「償い…か…俺の望みは償いではない…」

 

「た、頼むぅぅ!い″の″ち″だ″け″は″あ″あ″ぁ″!」

 

「はぁ…煩い」

 

 

真が奴の口に指を当てる。

すると奴の口は、元から無かったかのように塞がってしまった。

 

 

「〜〜〜〜!!!!」

 

 

叫ぼうとするが口が塞がれているため、声にならない。

 

 

「1つ聞きたいことがある…お前は誰に指示されてここに来た?」

 

「〜〜!!!!」

 

 

真が奴に質問をした。しかし答えはなく声にならない叫びだけ。

それもそうだ口が塞がっているのだから。

 

 

「あぁ、口が塞がってちゃ喋れないか…ほら」

 

「〜〜〜〜〜!!!!」

 

 

そう言って真は塞がっている口を指で裂いた。

 

 

「鬼子母神様だ″あ″あ″ぁ″ぁ″!お″れ″は″!お″そ″え″と″し″し″さ″れ″た″た″け″な″ん″た″ぁ″!」

 

「そうか…鬼子母神…か…月夜見、どうだ?」

「わ、私は聞いたことありません」

 

 

真が月夜見様に問いかけた。

鬼子母神と言う名を聞いたことがあるか、という意味だろう。

 

その問いに月夜見様は、戸惑いながらもなんとか答える。

 

 

「ほう…月夜見が聞いたことがない…らしいが?」

 

「本当な″ん″だ″!鬼子母神様は森の奥で妖怪達を仕切ってる!」

 

「…他には?」

 

「ち、近々ここを全勢力で襲うってのを噂で聞いた…」

 

「…」

 

 

真が奴の眉間に指を当てた。

 

その指は少しずつ、奴の眉間にめり込んでいく。

 

やがて血が流れ出した頃。

 

 

 

「本当だ!信じてくれぇ!」

 

「…お前を生かしておいて…俺に何の得がある?」

 

「し、知ってる限りの情報を教える!」

 

「そうか…確かに情報は欲しい…でもな…俺はお前を生かさずとも…お前の記憶を、情報を得る方法があるんだ」

 

「へ?」

 

 

真が奴の頭に手を伸ばした。

 

 

その手は黒い何かで包まれていて、腕まで渦を巻きながら伸びていた。

 

 

「お前を…吸収する」

 

「ちょ、ちょっと待っキ″ィ″ヤ″ァァァァ

 

 

その黒々とした手が奴の頭に触れた時、触れられた部分がグニャリと捻れ始めた。

 

その痛みに耐えられず奴は先程と同じような悲鳴を上げる。

 

しかし、その悲鳴は先程とは違い弱々しく、少しずつ小さくなっていった。

 

 

 

 

数刻。

 

 

 

 

鮮血によって出来た巨大な絨毯。

 

黒い何かが完全に消え去り、悲鳴の余韻を楽しむかのように佇んでいる真。

 

 

 

「派手にやったのぉ〜」

 

 

どうしようもできずにただ見つめていると、何処からか声が聞こえた。

 

その声の主はすぐに分かった。

 

光と共に現れたのは、神美。

この前、真が居候の際同居する事になったと紹介してきた本妻だ。

 

 

 

「やったのは俺じゃないんだがな…」

 

「じゃあ誰なんじゃ?」

 

「もう俺の頭の中だ」

 

「はぁ…相変わらず無茶苦茶な事をするの」

 

「いつもの事だろ…」

 

「それもそうじゃな」

 

 

 

なんで…なんでそれで納得するんだ…

してしまう私もおかしいのか?

 

 

 

「無事か?」

 

「え?あ、うん」

 

 

真が問いかけてきた。

もちろん私達は何もされていない。

 

 

「あ、あの真様」

 

「なんだ?」

 

「な、何をなされたんですか?」

 

 

月夜見様が真におずおずと問いかける。

無理もないだろう。私もまだ膝が震えている。

 

 

「吸収したんだよ…奴を…」

 

「吸収…ですか」

 

 

真の返事の内容を月夜見様は理解しようと努力するが、理解するという事に抵抗があるようだ。

 

他の命を自分のものにしてしまうという行為を理解してしまえば、自分が可笑しくなってしまうのではという不安だろう。

 

 

「月夜見、移住の準備は最短でどれぐらいかかるんだ?」

 

「最短ですか?そうですね…都市の人間を乗せるのも考えると2日は」

 

「そうか…」

 

「襲撃はいつ?」

 

 

真が1人で黙り込んでしまいそうになったので、肝心の情報を聞く。

 

 

「丁度準備が終わった後になるだろうな」

 

「そんなに早く!?」

 

「もうあっちは襲撃の準備はできてる。だが襲撃してくる方角は一箇所しかない。兵は全て誘導に派遣しろ」

 

「しかし防衛に関しては」

 

「問題ない…屋敷の中でも言ったが…最悪…全滅させる」

 

「でもそんなこと「できるから言うとるんじゃろ」へ?」

 

 

私が否定しようとした時、神美が私の言葉を遮ってきた。

 

真が単騎で、襲撃してくる妖怪を全滅させる?

 

真でも自殺行為にも程がある。

止めなけれ…ば…

 

 

「止めなさい永琳」

 

「月夜見様…何を…」

 

「貴女が何かしようとしたのが分かったから、少し能力を使わせてもらったわ。少しの間眠って落ち着なさい」

 

 

そんな…私は…真を…彼…を…止められ…な…

 

 

 

 




戦闘になりませんでした(´・_・`)
次回は…というよりも次回もですね。
戦闘(遊び)になります。

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