とある学生の難儀(?)な日常   作:九牙タイト

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どうも。金髪より銀髪。至近距離よりあなたの隣に、隣の提督です。
ゆっくりしていってください。


8時間目 月曜日

「緊張する…」

俺は白いスーツを着て教会で待っていた。さっきからドキドキが止まらない。

緊張で胸を押さえながら待っているとドアが開いた。

ついに来たのだ。この時が。

白いドレスを身に纏い、ブーケを両手に持ちながら少しずつ、少しずつ近付いてくる。その顔はベールに隠されて見ることができない。

でもいいのだ。俺が選んだ女性なのだから。

俺は手を伸ばした。

彼女の歩く速度が上がった気がした。

そして、俺の手が握られる。

ここまで遠かったような、近かったような。

そのベールを上げる。美しい金髪が俺の目に…。

…金髪?

ここで違和感に気付く。何故金髪。茶髪じゃないのか。いや、茶髪もおかしいわ。

「どうしたんデスか?」

「え? あ、いや…」

でも逃げられないんだよなこれ。結婚式ですし。姫矢コールスゴいですし。おい待て。キスするときは静かにしろよお前ら。…じゃねぇよ。

これ、夢ですよね。

姫矢コールに包まれながら俺は念じる。

ならば目覚めよ、俺氏!

 

「…矢! 姫矢!」

「はいわたくしが姫矢 純上等兵であります!」

呼ばれて慌てて立ち上がる。回りからクスクスと笑い声が。おう視線が痛い…。

「珍しいわね。授業中のあなたが呼んで起きるなんて」

「いえマジで感謝してます千石先生。なんでもしてあげたいぐらい感謝してます」

なんてたってあんな夢見てんだよ。相手転校生じゃねぇか。危なすぎるだろ。

「あら。なら結婚してくれるのかしら」

「先生。今、俺の前でその単語を口にしないでください」

「何故?」

「聞かなくていいです。それでなんですか」

「教科書12ページを読みなさい」

教科書読むなんていつぶりだ? 少なくとも中学では読んでない。…俺よく進学できたな。

「了解です」

俺は教科書を開く。

「…先生」

「何?」

「I can't speak English!」

「今は現代文の授業よ」

教科書で殴られた。

 

トラウマものの夢を見た次の10分休み。あと1時間で昼休みだ。

「珍しいね。姫矢君が起きるなんて」

「穂高もそれを言うのか」

3時間目も過ぎると俺も穂高もだいぶ回復していた。

「そんなこと言ったら穂高だって珍しく居眠りしてたじゃないか」

「うっ…」

穂高にとっても上井草先輩はトラウマに近いらしい。

俺もあの人嫌です。むしろ何故仁さんが耐えられるのかがわからない。

…俺と一緒か。

普通の人が俺の幼馴染みメンツに耐えられるはずがない。

でもなぁ。

その俺にトラウマや疲れを叩き込むあの人は何なの? 宇宙人なの? 地球外生命だろ。

「宇宙人ってなんのことデスか?」

「いや、美術部の先輩が…ってカレンか驚いた!」

「だって純とみやびが仲良さそうに話してるから…」

「まったくだよ純君!」

…めんどくせぇ奴が絡んできた。

「うるせぇよ、輝」

「うるさくされるようにしたのは君じゃないか! 半端イケメン! 失敗美少年!」

「半端と失敗は余計だ」

妹曰くこの基本的に誰でも殺せる目以外はパーツとかの整いがいいらしい。というより俺の本性(人を殺せる目をしてるのにお人好しという最低の称号)を知ってる人たち皆が口を揃えて言う。いや、んなわけないだろ。そしたら俺今すごくモテてるよ。

というか輝がめんどくさい。

「僕というものがありながら! 何故他の人に目移りしちゃうのかな!」

「…輝。俺ら今日は昼休みに大富豪するためにトランプ持ってきてるよな」

「そうだね」

「これを見ろ」

3枚を輝に見せる。

「♦の5と6と9だね。…ってまさか!?」

俺は腰を落として構える。そして叫ぶ。

「みやびぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

オーバヘッドキックを輝の肩に直撃させた。

「今純君が二人に見えたぜ…(ガクッ)」

気絶した。どっちが上かわかってるのにこれだもんな。輝、死にたくなきゃやめときな。

と、穂高の方を見てみたら顔が赤くなっていた。

「あっ…。い、いや、すまん。いきなり名前で呼んで…」

「えっ、あっ、うん…」

ヤバイ。顔が熱い。全身の血液が沸騰しそうなぐらいだ。

もうお互いに顔を合わせられない。何か言おうとするけど口が動かない。というより全身が動けない。

「…じ」

「え…?」

「純、くん…」

「……ッ!?」

何だ今の破壊力は…。吐血して死ぬところだったぞ。

「やっぱり純とみやび仲が良いデス」

「なんでお前が不満そうなんだよ」

カレンを通してなんとか熱を逃がす。今のままだと俺も穂高も死ぬ。ガチで。…何で死ぬんだよ。

顔を反らしたからなのか背中側のドアに誰かがいるのが見えた。あの黒髪は…。橘姉?

「ダディャーナザン!? ナズェミテルンディス! オンドゥルルラギッタンディスカーッ!」

「…姫矢の不埒者(ボソッ)」

「ぐぅっ…!」

理由がわからないけど否定できなかった。

「純はいろんな人と仲良いんデスネ!」

これのどこが仲良いんだよ。

 

昼休みになった。俺と穂高、カレンは忍たちのいる隣の教室へ。あ、コッペパン忘れてた。

「まぁいいか…」

「コッペパンないけどいいの?」

「うん。なくてもあと二時間だし。耐えれるよ」

「コッペパンって伝説のコッペパンデスか!?」

「伝説になってんのかよ…」

イギリスおかしいだろ…。

「冗談デス! コッペパンぐらい知ってマスヨ~」

「じゃあ説明してみろ」

「コッペパンデス」

「説明になってねぇよ」

ただ名前言っただけじゃねぇか。

「さっそく仲が良いのね」

「何で綾さんが怒ってるんですかね」

「あやや?」

カレン、綾だ。

それを聞いて綾が訂正する。

「綾よ」

「あややー!」

「あややかー!」

陽子までノリだした。

「「あやや! あややー!」」

「やめて二人とも…」

「まぁいいじゃないか」

「何でよ!」

「だって綾らしくて可愛いじゃないか」

顔を真っ赤にして綾の動きが止まった。

「どったの?」

「純の…」

「へ?」

「純のバカー!」

「グハァッ!?」

右頬を打ち抜かれた。

「何で!? 何故に殴られた!? まったく意味がわからない訳だが!」

「イチャイチャすんなよなー」

え、これが噂に聞くイチャイチャなの? 右頬を打ち抜かれるのが? やっぱ女子ってこえぇ。そして意味がわからない。

「私は可愛くないのかな…」

「穂高は穂高で何言ってるのか聞こえない訳だが」

「き、気にしなくていいよ!?」

むしろそう言われた方が気になるのだが。ソースは俺。

『押すなよ。絶対に押すなよ』と一緒だ。あと『このスイッチを押さないでください』とかな。

というか最近綾が怒り気味の理由わかってきたぞ。

「綾。嫉妬はよくないぞ」

「へ?」

「最近俺に怒る理由って嫉妬だろ? どんどん俺の回りに見知らぬ人が関わっていくんだからそりゃあ嫉妬もするよなぁ。そうだろ、親友?」

「え、あ…。そ、そうよ! 親友の回りに友達が増えればねぇ! 嫉妬もしたくなるわよ!」

やっぱりですか。そういう俺も綾に友達が増えて話せなくなったら悲しいし、嫉妬もする。

万事解決かなと思ったら綾以外がジト目で俺を見ていた。

「え、何この空気。何故俺がいけないみたいになってんの?」

「いや姫矢君が悪いかな…」

「穂高!?」

「純…。ええ加減にせいよ」

「関西弁!?」

「え、えーと…。(飯に戻る)」

「何か言えよ!?」

「純君ですからね~」

「俺だからなんだよ!?」

「純の朴念仁デース!」

「何気に酷いな!」

つーか俺が朴念仁だと言うのならこっちにも言い分があるぞ。

「そういうお前らだって先週鈍感じゃなかったか」

穂高と有住以外が俺から顔を反らす。恥ずかしがるなよ。ここからだってのに。

「え、どういうことデス?」

「まあカレンは知らないよなぁ。実はな…」

「言わないでください~!」

「言うな~!」

「言っちゃダメ~!」

問答無用で回想。

 

金曜日。俺と穂高はやはりというかなんというか一緒に登校していた。

で階段を登っていたのだが…。

「…何してんのお前ら」

「ふえ!? 純君ですか」

「純、驚かすなよ」

「俺は悪くない。不審人物がいけない」

影に隠れてストーカーしてるお前らがいけない。俺が警察なら即逮捕だ。

「で、どうしたの忍ちゃん」

「見てください」

「「うん?」」

3人が見てた方向にはアリスがいた。窓に頬をつき空を見てる。

「あれがなんだってんだよ」

「きっとホームシックです!」

「え~…」

絶対違う。

「あれは眠いだけだろ」

「違います! お空を眺めるということは同じく繋がってるイギリス、つまり故郷に思いを募らせてるということ! ホームシックなんです!」

綾と陽子も頷いてる。

んな訳あるか。欠伸してんぞ。

「例えホームシックだとしてもはえぇよ。高校生活が始まってからまだ三週間しか経ってねぇぞ」

「そうだよ。アリスちゃんとは言えどそれはないんじゃないのかな」

「穂高さんもこう言ってる。その勘違いをそろそろ止めろ」

「あのねアリスを悲しませてからじゃ遅いのよ? だから私たちが守らなきゃいけないの」

「さすが綾! よーし、アリスを守るぞー!」

「「オー!」」

「…俺は知らね」

「あはははは…」

呆れるのと苦笑いしかできなかった。

時は流れ放課後。

「穂高さーん。そろそろ帰ろうぜ」

「うん!」

穂高さんは笑顔で俺に近付いてくる。なにそれ可愛い。

空はまだ夕日で照らされてる。太陽が出てるのも長くなったものだ。

「今日も疲れたなぁ」

「姫矢君寝てただけだよね」

「クラス委員ですから」

「やっぱり姫矢君にクラス委員は似合わないよ~」

「自覚してる」

「自覚はあるんだ…」

そりゃあ≪優等生の劣等生≫ですから。

しかしなんか騒がしい。何事?

なんて思ってたらA組からアリスが飛び出してきた。腕には日誌を抱いてる。

急いでいるのか? と思ったらその後ろを3人が追いかけていた。

まだやってんのかよ…。

「過保護ってレベルじゃないぞあれ…」

「そろそろ止めないとまずいよね…」

とりあえず職員室から戻ってくるのを待とう。

数分後。四人が戻ってきた。アリスだけが疲れてるように見える。見えるじゃなくて事実だろうけど。

「お前ら…。いい加減にしとけ」

「私はただ眠たかっただけだよ~!」

「「「え」」」

だから言ったではないか。

帰り道。

「私はまだイギリスには帰らないよ。シノと思い出いっぱい作るんだもん!」

「アリス~!」

アリスに抱きつく忍。やめなさいここ公道。

「それにね。イギリスとはちゃんと繋がってるもん!」

アリスが空を見上げる。夕暮れ時で綺麗だ。

「…そうだな」

なんか納得してしまった。親父とお袋、妹も、この空の下で元気にしてるんだと思うとそう思ってしまったのだ。

「あ、飛行機です! イギリス行きですかね~」

「あっちは羽田空港の方だから東京行きじゃないかしら」

「いや雰囲気雰囲気!」

空気を読まない綾に陽子がツッコム。

なんだろう。今なんかフラグが立った気がする。

「姫矢君、どうしたの?」

「いや…。なんでもない」

俺は空を見上げながらそのフラグが気のせいであることを祈った。

 

「…という訳だ」

「その飛行機乗ってマシタ」

フラグは間違いじゃなかったか。間違っててほしかったです。

「姫矢君が何で泣いてるの?」

「いや、別に…」

泣いてなんかないぞ…。いや本当ですよ? 泣いてなんかないですよ?

「とにかく! 俺はお前らに朴念仁だの鈍感だの言われる筋合いはない!」

「事実でしょ!?」

「よし親友! 久々の口論といこうではないか!」

「上等よ!」

「二人とも落ち着いて~!」

こうして俺たちの騒がしい週始めが過ぎていくのだった。

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