とある学生の難儀(?)な日常   作:九牙タイト

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一ヶ月ぶりの、どうも隣の提督さんです!
忙しくて遅くなりました! そして長くなりました!
今回は今までより長いのですが読んでくれるとありがたいです。
では9時間目スタート!


9時間目 現代電子遊戯

5月になって数日が過ぎた。日が進むごとに暑くなっていくのは季節が夏に変わっていくのを感じさせる。

夏服になったのもその一つだろう。

まぁその夏服で一悶着あったのだが。

いや今回はそんなのどうでもいい。問題は別だ。

何故こんな暑い中、校庭で朝礼なんかやってるのか。殺すぞ。

「姫矢君イライラし過ぎじゃ…」

「してない。イライラしてない」

チラッと3年の方を見たら上井草先輩が見事なブーイングをしていた。俺も便乗しようか。

こういう時こそリゼを見習うべきだったか。後でモデルガンを買いに行こう。型はFN-Fivesevenで。

「よっ、純」

男子生徒が話しかけてきた。クラスメイトの西村 英騎だ。ネトゲ仲間で仲良くなった。今では名前で呼んでいる。男子の友達だから普通だろ?

「よぉ、英騎」

「おはよう、西村君」

穂高も挨拶をする。俺と仁さんでだいぶ男に慣れたらしい。いいことだ。…ホントにいいのか?

まぁいいか。

「どうした英騎。俺からは話すことないぞ。どうせネトゲ内で会話するだろうし」

「お前はソロだろうが」

ごもっとも。俺はソロで君はギルドメンバーでしたね。

「ということは火山に来るのか?」

「あの火山は意外とモンスター出てくるから経験値溜めにはいいんだよ」

「経験値溜めって…。カンストが何言ってるんだよ」

そうですねカンストしてました。

「で、さっき騒いで瀬川なにがしにキモいとか言われた上に隣のクラスの女の子を恐怖のどん底に陥れた気分はどうだ、英騎?」

「見てたのかよ…」

「姫矢君なんだかんだで目がいいからね…」

耳にも自信があるぐらいですから。え、関係ない?

「いや実はな、俺氏ついに嫁ができる」

「ふえ!? に、西村君!?」

「穂高、ネトゲの話だ」

「え、ゲーム?」

「そうだよ。つーかはよ元の場所に戻れ。な行のお前はもう少し前だろ」

「え、ああ生徒会長もう立ってるのか。じゃあゲーム内で」

「おう」

『生徒会長の御聖院だ』

生徒会長と目があった。

いや待て。何故笑った。

 

バイトも終わって飯も食べ、お風呂にも入った。ここからは自由時間。楽しみましょう!

俺は自室のパソコンを立ち上げる。

いつも通りパスワードを入力しアバターを移動させる。

レジェンダリー・エイジ。最近のネトゲ、いやオンゲか? で俺がハマっているMMORPGだ。

SAOを見てから何かそんな感じのネトゲはないのかと思ってたら丁度OPのネトゲがあった。それがこのレジェンダリー・エイジ、通称LAだ。

アクションは本格的とはいわないがそれなりにいいもので、デフォルメされた可愛いアバターから結構の人がやっている。こういうネトゲにしては長く続いてる。

あの時は楽しいログインゲームをしたものだ…。懐かしいな…。

それじゃ狩りを始めようか。

効率狩りで有名な火山を突き進む。モンスターが時々出てくるのだがまったく敵にならない。

HPなんて最近全然減らないし。なんかモンスターはスキル使えばだいたい倒せるし。

…なんでやってるんだよ。

と、俺の横をすっげぇ固そうな鎧のキャラが通り過ぎていった。後ろに大量のモンスターを引き付けて。

今のキャラは見覚えがある。たぶんルシアンだ。

ルシアンとはソロである俺の数少ない友人で、ゲームに関することで気が合ったからこのゲーム稼働当初から仲良くしている。

…まぁただの英騎なんだが。

しかしいつもはHPを8割以上残してるアイツが半分ギリギリとは珍しい。面白そうだからついていってみるか。

火山のルートはもう大体覚えたので行き先はなんとなく予想できる。

この先には広場があってそこでギルドメンバーが待っているのだろう。となるとあれが見れるな。

俺はアバターを広場に入るための壁に隠れさせる。

道中で回復していたルシアンのHPは緑から黄色になっている。

ギルドメンバー、つまり残り3人なのだが向かい合ってなにもしない。チャットしてる暇があったら助けてやろうよ…。

フレンドだからできるモードで俺はギルド《アレイキャッツ》のチャットを覗き見。

アコ『そしたら20Mもする指輪をくれたんです…』

シュヴァイン『はっ、あのムッツリ旦那め。なんだかんだでノリノリじゃないかwww』

アプリコット『これはスクショしておかなければwwww』

お前ら鬼畜か! これは英騎も焦るわ!

アコは《アレイキャッツ》唯一の女性キャラでルシアンの嫁。つまり英騎が朝言っていた嫁とはこいつのことだ。決してお気に入りのアニメキャラとかじゃない。

役割はヒーラー…なのだがはっきり言ってヘタクソなので誰も期待してない。ギルメンじゃない俺でさえ期待してないぐらいの下手なのだ。

シュヴァインはソードダンサーの男性キャラ。イラつく俺様キャラを連発するのだが何故か嫌いではない。むしろ好意さえ抱く。…いやホモじゃないです。

腕前は平均的。が、ほんのそこらの効率狩りのやつらに比べれば下手かもしれない。それだけ攻撃力特化なのはいいことなのだが。

アプリコットは《アレイキャッツ》のリーダーで魔法使いだ。しかしその火力は大体課金によって手に入れたという胃の痛くなる男性キャラで、その投入した金額は絶対に聞きたくない。

これがギルド《アレイキャッツ》。ぶっちゃけエンジョイ勢なのだが俺は嫌いじゃない。けど入ろうとは思わない。ソロで十分です。

ってどんどんルシアンの体力が減ってる訳だが!? ヒーラーは何をしてる!?

ルシアン『アコ! 早く回復!』

アコ『すいません!』

やっと見慣れた緑のエフェクトがかかる。

…敵のど真ん中に。

ルシアン『なにやってんの!?』

まったくだぜ!

と、アプリコットが前に出る。

アプリコット『ここは私に任せておけ。このリアルマネー15万を投入して強化した杖の、そして使い捨ての課金魔力ブースターお値段三百円、10個買ったらなんとおまけで1個プレゼントの力!』

ルシアン『何そのユーザー舐めきった課金アイテム!』

まったくだよ! もったいねぇ!

アプリコットが放った火属性魔法(名前は知らない。魔法を使わない脳筋ビルドだから)はモンスターをほぼ全滅させた。しかし5体残っている。

アコ『すごーい。モブがゴミみたい』

アプリコット『これが伝説の力だ』

つまり金の力じゃねぇか。嫌な伝説だ。

とりあえず残り5体を片手剣5連撃スキル《リーサル・エッジ》で斬り裂く。

アプリコット『キリトではないか。いつからいた?』

キリト『ルシアンがこの部屋に入ったときから』

ルシアン『なら助けろよ!』

キリト『いやおもしろかったから。スクショしてやろうかと思うぐらいに』

ルシアン『裏切り者め!』

アコ『オンドゥルルラギッタンディスカーッ!』

キリト『裏切ってねぇよ。つーかオンドゥルやめろ』

それは俺のネタだ。

ついでにキリトとは俺のことだ。いやぁSAOに浸食され過ぎだろ俺…。

と、やっと前衛と壁役を担当していたルシアンとシュヴァインに緑のエフェクトがかかる。やっぱ下手。

キリト『なぁ。いい加減ヒーラー変えた方がいいと思う訳だが。絶対に経験値少ないだろ』

ルシアン『下手なのは否定しないな』

アコ『あー。何も聞こえません』

アプリコット『ここで話すのは危ないな。モンスターがいつ来るかわからないし。いつもの喫茶店に行こうか』

ルシアン『そうだな』

 

狩りを終わらせ行きつけの喫茶店に5人で入った。喫茶店でバイトをしてるからかなんか敵意を持ってしまう…。

たとえばコーヒーの入れ方を再現しているのだろうが、違う! と思ったり。こう考えると俺もだいぶ浸食されてるな…。悲しいかな。

席に着くや否やアプリコットが口を開く。

アプリコット『ルシアン、経験値は増えたか?』

ルシアン『まあ一応は』

ルシアンの隣にアコが、シュヴァインの隣にアプリコットが座ったので俺は自動的に誕生日席となる。

アコ『お疲れ様です。ルシアン、何度も殺しちゃってごめんなさい』

キリト『何回もって…。やっぱりヒーラー変えろよ』

絶対その方が効率いいって。

…って言っても聞かないんだろうなぁ。別にいいんだけどさ。俺のことじゃないから。

案の定、ルシアンたちは否定する。本当に仲良いよな。

キリト『エンジョイ勢だしそりゃあそうだよな』

ルシアン『別にキリトみたいにレベル最大まで強化する必要もないんだよ。まぁ、強くなりたいとは思うけど』

アプリコット『なら課金だな。すぐに強くなれるぞ』

シュヴァイン『それ一瞬で終わる強さだろ』

まったくだ。鎧の強化とか意味わからん。あと魔力ブースターね。無駄だからマジやめろ。

アプリコット『キリト。実はな。あの魔力ブースターはうまい棒30本+1の値段なのだよ』

キリト『その310円が無駄だって言ってんだよ。一瞬の火力出すのに300円もいらんわ』

俺だったら3クレに回す。とりあえずビルドストライクの参戦はまだですかね。

アコ『私思うんです。火力より、可愛いさだと』

キリト『よしアコ今すぐ外に出ろ俺とデュエルだ。安心しろ瞬殺してやるから』

ルシアン『俺の嫁に何する気だ!?』

え、何って制裁だけど。装備がどれだけ大事か直接叩き込んでやろうと。

アプリコット『そういえば思ったのだが…。ルシアン、何故アコのプロポーズを断ったのだ?』

おお…。英騎にその質問はダメ…。

ルシアン『え、あいや、その…』

シュヴァイン『俺たちはギルドメンバーだぞ? 安心しろ』

キリト『いつ俺がギルメンになったよ。勝手に決めるな』

シュヴァイン『嫌なのか?』

キリト『永遠のソロでいいから』

それに…。ギルドはあんまり、な。

アプリコット『キリトの話はいい。問題は何故ルシアンがアコのプロポーズを断ったのか、だ』

俺は黙る。これは英騎から直接言った方がいいだろう。

ルシアン『実は俺…。昔ネカマに告って盛大にフラれたことがあってさ…』

アプリコット『wwwwwwww』

シュヴァイン『wwwwwwww』

ルシアン『結局笑うんじゃねぇか!』

しょうがないね。実は俺も笑いそうになったし。

ここで解説しよう。

1年前、丁度このゲームに結婚システムが実装された日、ルシアンは憧れの女性キャラ、猫姫さんにプロポーズをした。

しかしその猫姫さんの口から開かれたのはネカマだということ。そしてルシアンは盛大にフラれたのであった。

そのことを相談された時は画面を挟んでいるとはいえ笑いそうになった。

今では笑わなくてよかったと心から安心してます。

つーかこの空気止めないとな。しょうがない。ここは俺が。

キリト『二人とも落ち着け。ルシアンに失礼だ』

アプリコット『だってな!www ネカマに告白って!wwww』

シュヴァイン『腹が捻れてしょうがないwww』

コイツらマジで失礼だな。

アプリコット『そんなネット不振に陥ったルシアンを救うしかないな』

キリト『盛大に笑っといて何言ってんだお前』

アプリコット『第1回アレイキャッツオフ会!』

盛大なファンファーレ。

ルシアン『ちょっと待ってマスター。それも課金アイテムでは』

アプリコット『拍手ー』

ルシアン『スルーかよ』

そんなやりとりを眺めながら俺はうねるしかなかった。

「オフ会、ねぇ…」

これはギルドの問題だし俺は関係ないな。

キリト『俺は関係ないようだからこれで』

アプリコット『店は5名で押さえた』

キリト『何勝手にやってんのお前!?』

アプリコット『そうだな…。確か皆は学生だったな?』

ルシアン『そうだけど』

アコ『そうですね』

シュヴァイン『そうだな』

キリト『ああ』

ってなんで俺はマトモに回答してんの!? 参加しねぇって!

アプリコット『ならば今週の日曜日に篠原駅だ』

アプリコットが言っている駅の名前。それって…。

「最寄り駅じゃねぇか!」

近すぎて思わず声が出てしまう。

「うるさいぞー」

「うわ!? 仁さん!?」

いつからドアのとこにいた!?

「ゲームやってるのか…。静かにやらないと変人だぞー」

「それは仁さんだけには言われたくないです」

「厳しいな」

「そりゃあ宇宙人の相手をしている先輩ですからね」

肩をすくめる仁さん。

「わかってないな…。とりあえず静かにしてくれよ? 近所迷惑だから」

「了解です」

俺とルシアン、つまり英騎はいいとして他のやつはどうするんだよ。結構マイナーな駅だぞ?

ルシアン『俺は近いからいいけど…』

シュヴァイン『そんなマイナーな駅でいいのか?』

アコ『その駅最寄りです』

キリト『マスター結構近くに住んでるんだなぁ』

ルシアン『えっ』

シュヴァイン『えっ』

アコ『えっ』

キリト『いや何これ怖い』

まじかよネットの世界狭いな。英騎だってそうだし。ネトゲ自粛しようかな…。

アプリコット『よし。皆大丈夫らしいな』

アコ『はい! 男に二言はありません!』

ルシアン『おい待て今なんて言った』

アコ『あ、いえ、今のは言葉のあやで』

あーあ。これで英騎行く気ないな。

でもなんだろうな。本当にアコが男なのか?

他のメンバーもそうだ。アプリコットも、シュヴァインも。本当に性別男か?

まっ、いいか。とりあえず断らなきゃな。

キリト『おい、アプリコット。俺はギルメンじゃないから行かない。予約しようがしまいが行かないぞ』

アプリコット『その店は先払いでな。すでに5名分の金額が発生してるぞ』

キリト『マジでお前何してんの!?』

完全に断れねぇじゃねぇか!

アプリコット『来るよな? キリト君』

あーもーわかりましたよ。

キリト『行くよ。行けばいいんだろ』

アプリコット『それでいい』

キリト『じゃあ俺は落ちるぞ』

アプリコット『そうか。じゃあまたな』

シュヴァイン『日曜日絶対来いよ』

キリト『わーってるよ』

パソコンの電源を落とす。

しかし日曜か…。穂高に言っといた方がいいな。

1階に戻ると上井草先輩が格ゲーをしていた。

「お、こーはい君じゃないか。一緒にやる?」

「やりません。それより穂高はどこです?」

「今は洗面所だよー」

「ありがとうございます」

洗面所か。歯でも磨いているのだろう。

洗面所のドアを開いて穂高に伝言を開始する。

「穂高ー。俺、日曜に」

「ひっ…!」

ひっ? どうしてそんな声が。

タオル1枚でした。こんなのどっかで見たぞ。あ、4月だな。やっぱりなんかエロい。そしてこの部屋熱くね?

「姫矢君のエッチぃぃぃぃぃ!」

「ですよねっ!」

やっぱり薬用石鹸μ'sは痛かった。

 

日曜日。俺は駅前でケータイをいじりながら他の四人が集まるのを待っていた。といっても集合時間までまだ時間はある。

と、ケータイが連絡が来たことを知らせた。英騎はそろそろか…。

しばらくすると見覚えのある顔が。英騎だ。

しかしこっちを見つけられてないらしくうろうろしている。

しゃーねーか。

「おーい、英騎ー。こっちだー」

大声で呼んでやっと気付いたらしい。こっちに向かってきた。

「よっ、純」

「よく来たな。来ないと思ってたぜ」

「それはこっちのセリフだよ。ギルメンでもないのにさ」

「しょうがねぇだろ。金がすでに発生してるんだから。見知らぬ人にそんな無駄金使わせるかよ」

まぁ、その相手はギルメンじゃなくても胃の痛くなる重課金魔法使いなのだが。

と、英騎のケータイが震えた。

「あ、アコからだ…」

「ふーん。で、内容は?」

「そろそろ着きます。黒い服に白いスカートを履いてます。…だってさ」

「やっぱりアコは女の子なのか。…返事したか?」

「女装したオッサンでなければ。…したよ。俺たちの服装も伝えた」

「すぐに警察に突き出されるわ。…じゃあそろそろ来るな」

「あ、あの…」

軽い漫才に入るかというところでかぼそい声がかけられた。

声の主を見ようと振り向くと一人の女の子が。

おどおどしていて普通の人だったら守ってあげたいと思うだろう。

俺? 思わないね。むしろ養ってください。養ってくれる人ただいま募集中です。

「どうしたんですか?」

敬語で英騎が対応する。英騎、やっぱり普通の男だったか…。

そんなことを思っていると女の子が口にしたことに俺は驚くのだった。

「『ルシアン』と…、『キリト』君、ですか?」

もちろん、俺も英騎も戸惑った。

何故俺らのキャラ名を知っている? 知り合いなのか?

しかし脳内検索をしても出てこない。英騎も同じようだ。

待てよ。黒い服に白いスカート…?

「もしかしてだが…。君が『アコ』なのか?」

女の子が頷く。

こんな可愛い子が、英騎の嫁で、ヘタクソヒーラーのアコ…?

もはや絶句するしかない。

俺じゃ対処できん。英騎、任せた。

俺は英騎の肩を叩く。やっと元の世界に戻ってきたらしい。

「え、えっと、俺がルシアンです。で、こっちが…」

「キリトだ。よろしくな、アコ」

それを聞いてアコがうつむいてしまった。

「生の…」

…は? 生の?

「生のルシアンだー!」

「うわっ!?」

アコが英騎の腕に抱き付いた。

「これが生ルシアン!」

「生ってなんだ!? いつもの俺が半解凍みたいじゃねぇか!」

「私は半解凍のアイスでも大好きです!」

「知らねぇよ!?」

「キリト君はどうです!」

「ここで俺に振るな!」

この話を聞かない感じはアコだ! コイツが正真正銘のアコだ!

「ルシアン…? キリト…?」

「次は誰だ、よ…」

キャラ名を呼ばれて振り向くとクラスメイトの瀬川なにがしさんが。

時間が止まる。そりゃクラスメイトにキャラ名がねぇ…。

「せ、瀬川…」

「に、西村…」

アコだけわからないようで疑問符をつけたまま俺ら3人を見てる。

瀬川なにがしとはクラスメイトでありながらオタクキモい女子集団の一人だ。そのため英騎は徹底的に嫌われている。俺は別にそうでもない、らしい。別にどうでもいいんだけど。

「よ、よぉ瀬川。これから買い物か?」

仕方ないから俺が口を開く。永久にこの時間やってたらもたんわ。

「そ、そうよ。へー西村って彼女いたんだ。アンタの変な趣味に巻き込まないようにね」

「そ、そうだな。じゃあな瀬川」

「じゃあね、西村、姫矢」

立ち去ろうとする瀬川。ついでにそのまま帰ってくれ。

と、帰ろうとする瀬川の肩を誰かが掴んだ。

「全員揃ったようだな」

その人は俺の学校の制服を着ている女子生徒だった。俺らより年上だからか大人のようにも感じる。

…上井草先輩はやっぱり残念なんだなって改めて認識してしまった。

というか見覚えあるなーって思ったら

「アンタ生徒会長の…」

ん? 全員揃った?

「諸君、私が《アレイキャッツ》ギルドリーダー、アプリコットだ。君がルシアンで、抱き付いてるのがアコ。で、君がキリトだな?」

と、順番に指で指していく。頷くしかない。

「待てよ。アプリコットさんや。全員揃った、って言ったな? どこに5人目がいるんだよ」

「すでにここにいるではないか」

は?

「…もしかしてだが瀬川、お前…」

「…シュ、シュヴァインです…」

…ネトゲやめようかな。

 

とりあえず5人集まったので店に入った。

俺はジンジャーエールを頼みそれぞれの席に着席する。

つーかなー。

「何で俺が誕生日席なんだよ!」

「いいではないか。これを期にギルドに…」

「入 ら ね ぇ よ !」

勧誘すんなっての。俺は一生ソロプレイヤーで結構。

「そうか。では自己紹介とでもいこうじゃないか」

「じゃあ、生徒会長。アンタからでいいだろ」

「おい、純。一応相手は先輩だぞ」

「だけどな英騎。お前の戦友なんだぜ」

「うーん…」

「ふっ。別に構わないさ。それでは自己紹介を始めるぞ。さっきも話したが《アレイキャッツ》ギルドリーダー、アプリコットだ。魔法使いをしている。リアルでは御聖院 杏。陣代高校で生徒会長をしている。年上ではあるが気兼ねなく話してくれ。それではシュヴァイン。次は君の番だ」

「えー、瀬川 茜です…。ゲーム内ではその…」

口ごもる瀬川なにがし。と、ここで御聖院が助け船を出した。

「そうだよな。自分のことを豚とは言いたくないものな」

「へ…? 今なんて…?」

目が点になる。いや、であった当初から俺も思ってたけどさぁ。今それ言う?

「キリト君。君は知ってそうだね」

「一応な。シュヴァインは確かドイツ語で豚って意味だったはずだ」

「正解だ」

「私のシュヴァインが豚!?」

「知ってて使っていたのではないのか?」

「知ってたらそんな名前にしないわよ!」

「デスヨネー」

「姫矢。今すぐ外に出なさい。叩きのめしてあげるわ」

「やめといた方がいいぞー」

英騎が瀬川を嗜める。最初っからカオスだなぁ。

「諦めろ瀬川なにがし。黙ってその理不尽な現実を受け入れるんだ」

「ああもうわかったわよ! ゲームではソードダンサーのシュヴァインです! これでいい!?」

「お、おう」

さすがに言い過ぎたらしく涙目になっていた。これは俺がいけないのか。

「姫矢!」

「は、はい!」

「次はアンタよ!」

「サーイエッサー!」

姿勢正しく立ち上がる。

「姫矢 純、陣代高校1年です! LA内ではキリトという名前で剣士をしています! 何か質問は!」

「どこの軍人だよお前は」

仕方ないだろ。瀬川が怖いんだから。

「ないのなら以上です。はい英騎次お前」

「この空気で俺に寄越すな」

知ったことか。黙ってやれ。

視線で英騎に伝えると、ため息をつきながら立ち上がった。

「えっと…。西村 英騎です。ゲームではアーマーナイトでタンクやってます。よろしくお願いします」

「では最後にアコだな」

「あ、はい。玉置 亜子です」

アコのリアルネームを聞いて思わずつっこんでしまった。

「え、本名?」

「なにか問題でも?」

あるから言ってる。

「はっはっはっ。アコらしいではないか」

「マスター、笑いで誤魔化さないでくれ」

ナイスだ、英騎。

「あのな。リアルとゲームは別でな。ゲーム内で本名使うと危ないんだよ」

特に犯罪面で。

「ふーん…」

何故だろう。一瞬アコの空気が変わった気がする。なんかヤバイスイッチを押したような…。

「それでは第1回、アレイキャッツオフ会を始めさせてもらう!」

アプリコットの言葉で思考世界から戻ってくる。

…同じ学校らしいしアコには気を付けよう。

心の中でそう決心するのであった。

 

こうしてオフ会が始まった。

最初は装備の話から。

「━━つまりね、防御なんてある程度あればいいの」

「いや、それはおかしい。防御の数値がある程度あれば狩りができればタンクも苦労しない。そんなの何千だってパターンがあるんだから。現にシュヴァイン。お前の装備じゃサイオン研究所じゃ狩りにならないだろう?」

「それはアンタの場合でしょこの腰抜け」

「んだと俺様野郎」

「その話はすんなって言ったでしょ!」

立ち上がる二人。おおう、熱いことで…。

と、ここでケンカを止めるためアプリコットが入ってきた。

「簡単だ。課金すれば最強の防御力が手に入るぞ」

「今一般プレイヤーの話をしてるの。課金厨は黙ってて」

「マスターの扱いが酷い件について」

「はい! 私にいい案があります!」

アコの意見とかロクでもないだろ…。

「可愛さ、カッコよさ重視にすればいいんです! 万事解決です」

やっぱりだった。ダメだコイツ。

「ふざけんなよお前」

「張り倒すわよアンタ」

「ひぃっ…!?」

完全に怯えるアコ。お前ら容赦ないな…。

「お前ら落ち着け。八つ当たりはダメだろ」

「じゃあそう言うお前はどうなんだよ」

「え、俺? 俺は一般プレイヤーではないと思うんだけどなぁ…」

レベルカンストだし。

「いいから答えなさい」

「瀬川さん怖いから。落ち着け」

んなこと言われてもなぁ。

「だって俺の装備って鎧類ないだろ? 一応必要最低限の防具は着けてるけど。でも俺のスタイル的に鎧は邪魔なんだよ」

「確かにキリトの装備は黒いシャツに黒いズボン。そして黒コートだからな」

「金属類は必要最低限…。スピード重視…?」

「英騎の考察でだいたいあってる。スピードがあればパワーも出るしな」

「防御はどうするんですか?」

「防御はだいたいパリィか回避で済むからなぁ。魔法の場合はタメ中に倒せばいいし」

「……」

「待ってなんで皆黙った」

俺の言ったことおかしい?

「まさにチートですね…」

「本当に課金してないのか疑問に思うぞ…」

「パクリ」

「このギルドの人本当におかしいでしょ…」

「おい待て好き勝手言い過ぎだろ。つーかいつこのギルドのメンバーになったよ」

なんて話になったり。

 

「そういえば瀬川聞いたぞ。また隣のクラスのやつにコクられたんだってな?」

「なんで西村が知ってんの!?」

「ほう…。そうか、シュヴァインはリア充なのか…。へい、壁殴り代行!」

アプリコットが指パッチンするとアコが立ち上がった。

「壁殴り代行はあなたの近くの壁を無差別に殴ります!」

「落ち着け!? つーかアコはむしろ英騎とリア充だろ!?」

と、瀬川がため息をついた。

「…今のため息はなんだ」

「アンタこそリア充でしょ…」

「何言ってんだお前? 俺彼女いないよ?」

いつ俺に彼女ができたよ? 童貞=年齢の男だぞ? 彼女なんかできた記憶がない。

「はいはい。鈍感キリト君」

「?」

まったく話が掴めん。

 

とこんなワイワイしてたらいつの間にか時間は過ぎ夜になっていた。

「何時間いたんだ俺ら…」

その時間で別のことできたろ…。

「今日のところはこれで解散だな」

「そうだな。さすがにこれ以上はマズイよな」

特に女性組3人。俺は問題ない。むしろ帰りたくない。

んなことはどうでもいいか。

「俺は先に帰るぞ。家でやることあるし」

「ああ、じゃあな純」

「学校で会ったらマスターと呼んでいいぞ」

「いつまでそれ続けんだよ。呼ばねぇよ。じゃあ」

帰路につく。でもまぁ。

なんやかんやで楽しかったのも事実だ。

 

「ただいまー」

「おかえり、姫矢、君…」

「ん? どうした、穂高?」

「…姫矢君のバカ」

「へ? ちょっ、穂高? どういう意味!? なんで急に不機嫌なの!?」

と、仁さんとすれ違った。

「あ、仁さん。ただいまです」

「純か。おかえり。それより」

「? なんです?」

「浮気者」

「意味がわからねぇよ!?」

「こーはい君の浮気者ー」

「上井草先輩まで!? なんでだよ!?」

どうしてこうなったぁぁぁぁぁぁ!?




今回からネト嫁本格参戦です。
そしてそろそろあのキャラも登場する予定です。
さらにあわただしくなる純の学園生活をお楽しみに!
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