そんな最近筆が遅い私ですができればついてきて欲しいのが本音。これからも応援よろしくお願いします。
そしてサブタイは思いつきませんでした。思いついた方は感想と一緒に出していただけるとありがたいです。抽選で1名様に何か当たるかも?
・・・ないですそんなもの。逆に自分にください。一兆円ぐらい。
長話はそこらへんにして。それでは20時間目。お楽しみください
学校から帰ると仁さんと美咲先輩の姿はなかった。女の子ところか買い物か。どっちでもいいしどうでもいいので、手洗いうがいを済ませ台所に立つ。
さーて今日は何をつk
「はい待ったー!」
「ぐはっ!?ぶべら!」
吹き飛ばされて壁に激突した。痛い。すっごく痛い。
「こーはいくん、なんでそんな所で寝てるんだい?」
「誰のせいだ誰の・・・!つかアンタ料理できねぇだろ・・・」
「できるよ?」
「なら何故今まで料理当番に立候補しなかった!?」
「こーはいくん達で回ってたからいいかなって♡」
「今度からアンタも料理当番決定だオラァ!」
冷蔵庫の料理当番の枠に不動の赤の上井草美咲マグネットを貼り付ける。
「なぁ!?謀ったなこーはいくん!?」
「自業自得だコノヤロウ!人を吹き飛ばした罰だ!」
「ただいまー。って帰って早速うるさいわね・・・」
「なら私はこうだー!」
「何ィーッ!?」
それはッ!凰鈴音マグネットッ!それも不動の赤じゃあねぇかァァァー!
「・・・台所でなにやってんのよ」
「当番決め・・・かな?」
「鈴か・・・。悪いな、お前の当番は一つ確定してしまった・・・」
「アタシがいないのに勝手に決めるな」
「当番は大体他の人達の押し付け合いな部分あるから・・・」
そう、その通り。このシェアハウスでの当番は立候補、押し付け合い、推薦(という名の足の引っ張り合い)で決まる。どうにもなりやしないのだ。
「さらにこっちには切り札がある!それは!これだァーッ!」
「そ、それはッ!」
俺の赤いマグネットじゃねぇか!
「ふっふっふっ、これを当番表のどこに貼ってやろうかなぁ〜」
「アンタら騒がしい!」
「おう!?千尋先生いたんすか!?」
「いたわよ」
「残業は」
「ない」
もうこれ有能なのか無能なのかわっかんねぇな。
「あんまりくっさいこと言ってるとモテないわよ」
「未だに結婚できてないアンぶべらっ!?」
「何か言った?」
「こんの暴力教師・・・!」
「もう一発必要みたいね」
「そういうとこだよ、そういうとこ!その強気が持てない秘訣だろうが!今の時代に気の強い女好きになるやつそんなにいないから!」
「あー、はいはい。さすが草食男子本人は言うことが違うわねぇ。さっさと告白すればいいものを」
「なっ、ななななな何を言ってるんですか!」
「取られたくないんでしょ?だったら早めのうちにしないと後悔するわよ」
「さすが合コンの使者!後悔ばかりの人生!」
「上井草も殴られたい?」
「いえ、こーはいくんだけで結構です!」
「えっ!?純君好きな人いるの!?」
「OH MY GOD!?」
嘘だろみやび本人に聞かれてんの!?いや聞かれてて当たり前ですよねここキッチンでみやびはリビングだもん!
「こーはいくん金魚の真似?」
「空いた口が塞がらないを実践したやつ初めて見たわ」
「先輩女性方は少し黙ってて貰えませんかね!死活問題なんですよ!特にアマゾネス!」
「誰がアマゾネスだってぇ・・・?」
「イエマリモ!」
どーしよどーしよどーしよどーしよ!?ここはいるって言うべきなのか!?いやでもいないって言って一切期待させないのもなんというか・・・。
いや、覚悟を決めろ姫矢純。目の前にいるのは好きな子だ。その好きな子に嘘をついてどうする。正直であれ!行けぇ、姫矢純!
「あっ・・・えっと・・・いる」
「「「「え?」」」」
何故か鈴も聞いてるけど知ったこっちゃねぇ!覚悟を決めたんだ。今の俺に言えることを言ってやる!
「いる!好きな人は、います!」
言った!言ったぞ俺は!
と、思ったら何故かみやびは呆けた顔をしていた。
「あれ?みやびさん・・・?どったの・・・?」
「えっ・・・。あっ、ううん。なんでもないよ。私、宿題してくるね」
「お、おう」
そう言ってみやびはリビングを出て自室に向かってしまった。
「・・・え?何今の反応」
「普通なら有りよりの選択だったんだけどねぇ。みやびには逆効果だったみたいね」
「つまりどういうことだってばよ」
「それを理解できないようじゃ女の子を落とすなんて無理ね。奢り決定」
「待てよ。なんで奢ることになってんだ」
「純が告白できなかった場合、もしくは告白して振られた場合にはアタシと箒にラビットハウスで奢るってルール」
「いつそんなルール建てやがった」
「純が忙しそうにバイトしてる時に」
「それ俺本人が聞いてないから無効じゃ・・・」
「今聞いたから有効よ。残念だったわね!」
知らず知らずのうちに人の恋愛事情で賭けをするなよ・・・。いや、それに乗ってる俺も悪いんだけど。
しかし、だ。あのみやびの反応。あれはどういうことなんだ?
考えても考えてもこの鈍感頭では何一つわからずじまい。だからといって時間というのはあっという間に過ぎてしまう訳で。一週間なんてあっという間に過ぎようとしていた。
が、そんな一週間の中で事件は起きた。いや、頼むから俺に考える時間をくれ。
そんな願いも虚しく、後にこの事件は『ルシアン浮気(未遂)事件』と呼ばれたり呼ばれなかったり・・・。
みやびへの遠回しな告白から数日。前に比べて壁ができてしまった俺とみやびの関係について考えて続けていた。
「・・・!・・・矢!姫矢!」
「おわっと!?な、なんじゃぁい。いきなり大声出して」
「いやHP見なさいよ!」
「え?ああ!?黄色どころか赤入ってるぅ!?」
俺が意識を戻し画面を見ると
エネミーの次の攻撃を急いでパリィさせ、ソードスキルで切り裂く。一撃で倒れたエネミーはアイテムを落として消えていった。
「あ、あっぶねぇ・・・」
「ふむ。今日はここまでにするか。全員ホームに帰還!」
「了解っと」
「了解です!」
「りょ、了解」
「オッケー」
マスター・・・いや、御聖院の指令で全員クエストを後にする。んー、なんか申し訳ないな・・・。
「アコ、とりあえず純のHPを回復してやってくれないか?」
「わかりました!キリトさんの回復は」
「キリトじゃねぇ姫矢だ」
「ひっ・・・。姫矢さんの回復は初めてですね・・・」
「危険領域に入ったのを見るのが初めてだからなぁ。あと睨まないでやってくれ。アコがビビってる」
「自業自得でしょうが」
瀬川の言う通りである。俺の名前はキリトではなく姫矢純なのだ。
帰り道は危なげなく終わらせギルドハウス代わりのいつものカフェに辿り着く。
「今日もお疲れ様」
「おつかれー。んで?今日はどうしたのよ。姫矢らしくないプレイミスばっかりだったけど」
「考えごとをしてた。それだけだ」
「それだけって・・・。あきらかにそれだけじゃないだろ。他になにかあったんじゃないのか?」
「・・・・・・」
あった。あったけど。こいつらに言っていいのか?人の不幸ほど幸せなことがない奴らだぞ?
「姫矢」
「んだよ」
「今すっごく失礼なこと考えてるでしょ」
いえ全く。そんなことはございませぬことよ。
「姫矢さん!私達はギルドの仲間じゃないですか!悩み事ぐらい言ってくださいよ!」
「いや俺ギルド入ってないから。ソロだから」
同じ部活で同じゲームを同じタイミングでやってるに過ぎない。というかこの部活、ゲームやるためだけの部活ではなかったような気がする訳だが。
「何か言いたげだな姫矢君」
「・・・もういいや。笑うなよ?俺の悩み」
「わかってるとも。我々はギルドの仲間ではないか」
「だから俺はギルドメンバーじゃねぇって言ってるでしょう!?」
お願いだから俺の日本語聞いてぇ!?
「いいから言いなさいよ。たぶんロクでもないんでしょうけど」
「確かにロクでもないだろうけど。実は数日前━━━」
俺はみやびへの遠回しな告白について全て語った。俺がいつ恋心を自覚したのかとか玉置に聞かれたりして話が逸れかけたりしたがなんとか話し終える。
「━━━という訳だ。それ以降みやびと距離を感じるようになったし、その時見せた表情の理由もわからない」
しばらく部室が静まる。えっ、何この空気・・・。現代電子遊戯部初の重い空気が漂ってるんだけど・・・。そんな大真面目にならなくても・・・。
「ねぇ、それって姫矢はどういう意味で言ったの?」
「言うなれば遠回しの告白?いないって言ったらなんか嘘ついてるみたいで嫌だし」
「悪くはない。悪くはないんだが・・・」
「いっそのこと告白した方が良かったと思います・・・」
「何故あんな大勢の前で告白しないといけないんだ」
「あー、わかる。告白って二人っきりの時がいいよな」
「だよな。ギャラリー多くても茶化されるだけな訳だし」
「ギャラリーいるから断りづらいみたいのもできちまうからなぁ」
・・・・・・。
立ち上がって英騎と握手を交わす。
「いや乙女か」
「「悪いかよ!」」
「瀬川、お前だって告白されるならできれば二人っきりの方がいいだろ?」
「・・・まぁ、告白イベントは二人っきりがいいけど」
「それに今告白しても勝ち目ないでしょ。まだ出会って1ヶ月ちょっとよ?成功しないっての」
「1ヶ月は無理だな。一目惚れとかじゃないと」
「でもこう考えなかったのか?好きな人がいる。つまり自分ではない人が好きと捉えられることを」
「なにそれまるでみやびが既に俺の事好きみたいじゃん。ないない」
「姫矢君。君はもう少し自分に自信を持っていいのではないか?」
「俺の自信付与して、いい友達ぐらいの好感度だと思うんだけど?」
「ダメねコイツ・・・」
何故か瀬川にダメ出しされてしまう。そんな過小評価してるかな俺・・・。
「もうダメでしょ。コイツが自分の良さわからない限り解決は不可」
「え、俺が悪いの?」
「アンタが悪い!」
そこまで強く言います?
「お、落ち着けよ瀬川。マスター、今日は解散でいいよな?」
「そうだな。それぞれホームに戻ってくれて構わない。今日は流れ解散にしよう」
「了解ですっ。ルシアン!早く私達の愛の巣に帰りましょう!」
「言い方ァ!ただのホームでしょうが!」
「つまりラ○ホテr」
「マスター!言わなくていい!」
玉置のボケ(いや本心だろうけど)で少し場が和む。
けど神様って残酷だよね。これで終わればいいのに。
「あれ?誰かいる・・・」
「本当です・・・」
「あん?お前らのホームもマンションつーかアパートタイプだよな?新住人じゃねぇの?」
「いや、でもウロウロしてるわよ?」
「英騎か玉置の知り合いじゃないのか?」
「私はゲームの中でも知り合いはアレイキャッツだけです!」
「悲しいことサラッと言ってんじゃねぇ玉置ィ!」
「あ、もしかして」
「なんだ、思い出したのか?」
「たぶんだけど・・・。この前助けた初心者・・・かな?フレンド交換したし」
「お前・・・」
コイツはいつもそこら辺にいるビギナーを助けてしまう。そのせいで玉置という厄介者に目をつけられたというのに・・・。
俺のそんなジト目を傍らに話は進む。
「えーとプレイヤーネームは・・・セッテ?」
「女性キャラだが・・・」
「お前らみたいな性別詐称なぞたくさんいるからその情報役に立たねぇよ」
つーかなんでこいつら男キャラでやってんだ?
そんな俺の疑問を傍らに以下略。
セッテ:あ
「「「「「あ?」」」」」
セッテ:あrっりがtoう
「タイピングおせぇ・・・」
「文字化けしてるし・・・」
「これは・・・ありがとうか?」
「いかにも初心者だな・・・。どうやったらtoになるんだよ」
「聞くな聞くな」
なんて話してるとこだった。
いきなりで悪いがここで解説させてもらいたい。このLA、デフォルトキャラが人気のひとつな訳だが、その中でも戦闘以外に使えるアクション、まぁ、ジェスチャー(手を振る、その場で回転する、など)が可愛いと評判なのだ。その中でも上級者、いや、ネトゲのルールを知る者ならば初対面の相手には絶っっっっ対に使わないアクションがある。というかネット夫婦でも使わないアクション。それは・・・
セッテという見知らぬプレイヤーは、ルシアンにハグのコマンドを実行したのだ
そのシーンを見てしまい思わず後ずさる。やべぇよ、やべぇよ・・・。
俺はある程度の予想を立てながらも恐る恐る
あきらかに黒いオーラが纏われていた。いやもうオーラ
「・・・ルシアン」
「は、はい・・・」
引きつってる。引きつるしかない。理解してるのだ、
いや、悲劇を生み出さない為に俺達がいるんだろうが!
「待て!落ち着け玉置!相手は初心者。タイピングもろくに出来ない完全な初心者だ!たぶんネトゲ内でのルールもろくに知らないんだろう!知っているならほぼ禁断と化しているコマンドを一回会っただけの知人には使わないだろうからな!だから大目に見る事は出来ないだろうか!?かッ!」
呼吸もせず一気に捲し立てたもんだから息切れしてるがこれで理解してくれ玉置。ここを戦場にはしたくない・・・!
「西村もセッテさんに注意しなさいよ!早く!」
「え?あっ、ああ!」
「瀬川、御聖院、俺らも急いでルシアンハウスに向かうぞ!」
「そのダ○ワハウスみたいな名前はやめてくんない!?」
「便宜上の呼称だ気にすんな!とりあえずお前はセッテ止めとけ!」
「なんて説明すれば!?」
「ギルドの説明でいいだろ!ったく!」
とりあえず全員がルシアンハウス揃う。
キリト:俺はキリト
シュヴァイン:俺様はシュヴァイン。よろしくな
「ぷっ」
ギロリ。
笑ったら睨まれた。これは自業自得なのでなんとも言えない。
アプリコット:そして私がギルド《アレイキャッツ》のマスター、アプリコットだ
キリト:というより。なんでセッテさんはルシアンに引っ付きぱなしなんですか?
「説明したんだよな?」
「したんだけどクエスチョン1つで返されて・・・」
「あぁー・・・」
もうなんかネトゲ初心者あるある過ぎてなんも言えん・・・。というか陽キャあるある・・・?
セッテ:ギ ル ドって?
さっきよりタイピングが早くなってる。正確にもなってるし・・・。けどギルドは少し遅かったな・・・。まぁ、見慣れない単語ではあるけど・・・。
ならさっきのタイピングミスと遅さはなんだったんだ?テンパってた?
まぁいいや。
キリト:ギルドっていうのは一言で言うならチームです。一人でクリア出来ないものはみんなで力を合わせればできる。こういうネットのゲームでもそれは一緒なんです
セッテ:チームは絶対に組まなきゃいけない?
キリト:いえ、そんなルールはないです。自分はソロですし
セッテ:ソロ?一人でやってるの?
キリト:基本的にはそうなんだけど・・・
最近俺ソロプレイしましたっけ?いや、最近のプレイをほとんどこいつらとの時間に費やしてる気が・・・。
自分のプレイスタイルに疑問を持ってしまい手が止まる。
シュヴァイン:初心者だろ?俺様が教えてやってもいいぞ
「豚に教えられるセッテさん・・・。プクク・・・」
「玉置さん、何か言ったかしらぁ・・・?」
「な、何も言ってないです!」
もはやそんな会話すら耳に入らない。
俺はなんのためにこのゲームやってるんだっけ?
結局、その後のことはほとんど覚えていない。
次の日、俺は現代電子遊戯部を休んだ。というか昨日の夜もログインしていない。
こんなにLAでモチベーションが上がらないのは初めてのことだった。
代わりに。俺は高崎さんに電話をし、ラビットハウスに来てもらった。
カランコロン、とドアから鐘が鳴る。
「いらっしゃいませ」
「二人。待ち合わせ」
「純か。部活はどうした?」
「今モチベーションが上がらなくて休んだ。いつもの。ミルクと砂糖はなしでいい」
リゼは風邪が治って元気そうでなにより。
「今日はブラックなんですね」
「高崎さんが来るまでに頭を整理しておきたい。なんかいろいろあってごちゃごちゃしてる」
「コーヒーにそんな効果あったか?」
「理由はわからんがコーヒーを飲むとすっきりする」
「正確にはコーヒーの中のカフェインに脳の活性化と心拍数を上げることで集中力を高める効果があるんです。同時に筋肉も活性化されるので運動前に一杯飲む選手もいるそうです」
「へー、そこまでは知らなかった」
「私もだ。さすが喫茶店の娘」
カフェインって意外と奥が深い。苦いのに愛され続ける理由もそこにあるのだろう。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」
「サンキュ」
リゼが持ってきてくれたスペシャルブレンドに口をつける。誰かさんと違って猫舌ではないのだ。
・・・誰かさんって誰だよ。
なにか頭に引っかかりそうになる。とても大事なことのような・・・。
待て待て。今回は高崎さん相手。恋愛相談を受けてもらうんだ。ゲーム関係やその誰かさんについては今回は考えない。
もう一度ティーカップに口をつける。苦味と酸味がほぼ同じバランスで口に広がる。
ティーカップを皿の上に乗せ目を閉じる。
今までの出来事や貰ったアドバイスを高崎さんにわかりやすく伝えるために整理をする。
・・・・・・。
整理は終わった。たぶん余計なことは口にはしないだろう。
コーヒーが少し冷めた頃に高崎さんがお店に入ってきた。
「いらっしゃいませ、高崎さん。前と同じでいいですか?」
「えーと、今日はキリマンジャロとロールケーキにしようかな」
「かしこまりました。少々お待ちください」
入店早々チノと喋れるとはえらくこの環境に慣れたものだ。
「いきなり呼んですみません」
「ううん、全然いいよ。今日はどうしたの?」
「実は・・・」
俺はさっき整理したことを全て語った。
「━━━という訳なんです。これってどういうことかわかりますか?」
「うーん・・・。答えづらい・・・」
「えっ、今回の事件ってそんな難問なんですか?」
「答えはもうわかってるんだけど姫矢君に伝えるべきかどうか・・・」
俺の話を聞いただけで解決してた。高崎さんマジパネェ。
「一つ聞いていい?」
「なんです?」
「その、穂高さんってネガティブ・・・とはいかなくてもあんまり自信持ってない子?」
「なんでわかったんですか」
「いやもう・・・うん・・・」
えぇ・・・。何その曖昧な感じ・・・。俺が責められてる気分になる・・・。
「別に姫矢君を責めてるんじゃないよ?でも、ある意味お似合いなのかなぁ・・・」
「・・・いっその事告白すればいいんじゃないのか?」
「・・・リゼ。お前それ本気で言ってる?」
告白するのにどれだけ勇気がいると思ってる。それにフラれた場合今の友達という関係すら壊れてしまう可能性があるというのに。
「純、お前に足りないのは度胸と覚悟だ」
「知ってる」
「知ってるなら何故」
「一緒に住んでんのに変な感じになったらやばいだろうが。それこそ地元に帰るとかありえるのに」
確かに俺には足りないのだろう。自分が傷付く覚悟が。
でも、まだ俺とみやびの関係は薄くて。
輝や山本、神城とかと違って、知ってることが少な過ぎる。実の所まだ誕生日も知らない。
それだけまだ俺とみやびの関係は薄い。
そんな状態で告白?たぶん相手は俺の嫌いな食べ物も知らないのに?
「わかった。姫矢君」
「・・・なんです」
「告白する前にもっと穂高さんのことを知りたい。そうだよね?」
「まぁ、端的に言えば」
「だから今日から毎日1時間、ううん、30分でもいいの。穂高さんと話して」
「30分、ですか」
「そう、30分。さすがに30分もあれば誕生日ぐらいわかるんじゃない?」
「・・・わかりました。そのぐらいなら」
「純、がんばれよ」
なんでお前がやる気満々みたいな感じなんだ、リゼ。
「そうと決まれば今日は解散だな」
「リゼさんはまだバイト中です」
「そ、そういえばそうだったな。ははは・・・」
「まったくだ。働け」
「ならお前はその穂高さんとやらと会話しろ?」
「・・・頑張ります」
でもなぁ。今俺達変な空気なのに話せるんですかね?
晩飯後。風呂にも入った俺はこれから入ろうとするみやびに声をかけた。
「あの・・・」
いや乙女か!緊張しすぎて声出てねぇよ腹から声出せぇ!
「どう、したの?」
「いや、その、なんつーか、あの・・・。風呂上がり」
「うん」
「風呂上がりに俺の部屋来て欲しいなぁ・・・なんつって」
「いいけど・・・。なんで?」
「それはあれですよあれ。あれというかなんというかもっとみやびのことが知りたいというガッ!?」
舌噛んだ。ひぃ・・・めっちゃいてぇ・・・。
「だ、大丈夫!?」
「だびぼうぶ・・・。と、とりあえず!風呂上がったら俺の部屋に来て欲しいです!では失礼します!」
ダッシュで俺の部屋に突っ込む。
「はぁ・・・。ここまで緊張するか・・・」
もう訳わからんキャラになってたし舌噛んでるし・・・。何やってんだ・・・。
「でも一応誘えた・・・。会話続くかな・・・」
いや、その前に。
「俺の教科書の位置大丈夫だよな?・・・よし。他になんか片付けるもの・・・」
しばらく部屋を片付けていると(といってもそこまで散らかってはないのだが)ドアが開いた。
「ヒムッ」
「失礼します・・・」
なんだ今の声。15年生きて初めて聞いたぞ。俺そんな声出せたんか。
「何してるの?」
「へ、部屋の片付け。落ち着かなくて」
「そ、そうなんだ・・・」
ん?みやびも緊張してるのか・・・?
「もしかして男の部屋は初めてで?」
「う、うん。男の子の友達もあんまりいなかったし、付き合ったこともないから・・・」
「へ、へー」
表面は平然を保ちながら(本当に保ててるかは置いておき)内心の複数の俺が喜びまくる。
落ち着け、内心俺達。戦いは始まったばかりだ。気を抜くにはまだ早い。
「とりあえず座ってくれ。なんか飲み物いる?」
「ううん、大丈夫」
そういって小テーブルの前に座った。俺も向かい合うように座る。
「「・・・・・・」」
まずい。会話が途切れてしまった。
何か話題話題話題・・・。
「あの・・・」
「ん?」
「ちょっと気になることが前からあってね」
「おう」
「ありえない話なんだけど・・・聞いてくれる?」
「ありえない話?」
いきなりなんだ?ありえない話・・・。もしかして妊娠!?俺まだ手を出してませんことよ!?
「10年以上前なんだけどね。怪人に襲われたことがあるんだ」
「いや俺はまだ・・・へ?怪人?」
怪人?ロイミュード?いや、でもロイミュード誕生はここ最近と聞いてる。つまり違う?他にも怪人が存在する・・・?
「俺はまだ?」
「いや、なんでもない!話を続けてくれ!」
焦った・・・。そうだよな俺まだなんにもしてないもんな。
「その時に純君みたいなお兄さんが助けてくれて・・・。そのあとベルトを着けて黒い人?に変身・・・なのかな。その怪人の群れと戦いにいったんだけど・・・」
「10年以上前って・・・。同い年だということをお忘れでは?」
「だからありえない話って・・・」
うん、ありえない。俺だってその頃は幼稚園生とかだったはず。あれ?でもなんか小さい頃似たような事件あったようななかったような・・・。
「んで?その俺似の人はなんて言ったんだ?」
「誰なのか聞いたら『さぁな。将来の彼氏・・・だったりしてな』って」
「キザってぇ奴・・・」
痛々しいし・・・。でもベルトを着けて変身した。つまりその人は仮面ライダー?と考えると・・・
「やっぱ俺じゃないよなぁ・・・。仮面ライダーじゃないし」
黒い仮面ライダーに1回変身したことがあるとはいえ、本当にあの1回きり。ベルトも貴虎さんに返したし。俺は仮面ライダーじゃない。
「まぁ、この世に似てる人は3人いるってよく言うし他人の空似、もしくはそう脚色されてるだけじゃないか?」
「そう・・・だよね」
うーん。まだ納得がいっていない感じだ。まぁ、そういうのって結構気になるからなぁ。納得がいかないのも仕方ないか。
「そーいや時間大丈夫か?そろそろ10時になるけど」
「あっ、宿題終わってない」
なーにやってんだ。帰ってきたらささっとやるもんでしょあれ。
「じゃあ私部屋に戻るね」
「ちょっと待ってくれ」
「?」
「明日も・・・話していいか?その、黒い仮面ライダーの正体を見つけるために」
いや、実際は黒い仮面ライダーなんてどうでもよかった。俺はただ・・・みやびと話がしたかっただけだ。
「うん、いいよ」
笑ってくれた。たぶん、俺が久々に見たみやびの笑顔だったと思う。
その笑顔だけでモヤモヤが消えるんだから我ながら単純なものだ。
「純君?」
「あ、いや、早く宿題やって寝ろよ。あと、歯磨きとかも忘れずに」
「うん。おやすみなさい」
「あ、ああ。おやすみ」
部屋のドアが閉まる。
「はぁ〜」
緊張の糸が途切れたからなのか息を深く吐く。
なんとか、なんとか明日に繋げた。いや、しばらくは黒い仮面ライダーのことで話すことが増えるだろう。
「いや待てよ」
違う俺はみやびの誕生日とか好きな物とか聞かなきゃいけなかったのでは・・・!?
「・・・これは報告できねぇな」
今日の収穫、俺似の黒い仮面ライダーがいる!以上!解散!
待て待て。話はまだ続く。そう、次の日だ。
「ういっす」
「おっ、純。なんで昨日は部活に顔出さなかったんだ?」
「今ゲームに対するモチベーションが極端に低い。しばらく休むって御聖院に言っといてくれ」
「わかった」
「んで?俺に話しかけてきたんだからそれなりに楽しいことはあったんだろ?」
「昨日はFPSやりました!」
廊下の窓から玉置が顔を出す。英騎が廊下側になってから朝はいつもこうだ。
「FPS?いきなりだな」
「アコが昨日はLAやりたくないって言い出して。それで代わりのゲームとして検索して出てきたFPSを・・・ふあぁ・・・」
「随分と眠そうだなオイ・・・」
「アコがFPSは上手くてな・・・。ハマったらしく夜遅くまで付き合わされたんだ・・・」
「お疲れ・・・」
そういう俺は別のことで眠れなかったんだがまぁ、それを言う必要性はないか。
「ゲームやり過ぎのこいつらになんか言ってやれよ瀬川」
「・・・なんで巻き込んだのよ」
「なんか言いたげな顔してたから」
「西村君、姫矢君。それと・・・玉置さん?」
「はいなんですか姫矢さんですよ」
いきなり呼ばれたものだから玉置が怯えた野生動物みたいになってる。俺も一瞬隠れてやろうかと思ったわ。
呼ばれた方を振り向くと前に俺と瀬川をからかったクラスメイトAが。
「姫矢君まだ名前覚えてくれてないの?学級委員なのに」
「うっ・・・すいません・・・」
「秋山奈々子です。そろそろ覚えてね?」
「はい・・・」
「それで秋山さん?俺達になんの用で?」
「うーん・・・」
俺、英騎、玉置、そして何故か瀬川も見て口を開いた。それを聞き、俺は眠気が吹っ飛んでしまった。多分、英騎も。
「姫矢君がキリト君で、西村君がルシアン君。玉置さんがアコさんで、茜がシュヴァインか〜」
「「「「は?」」」」
俺達現代電子遊戯部の動きが止まる。
「秋山奈々子、LAでは・・・えっと、セッテです」