何にせよ楽しんでいただければ幸いです。
10/6 kamkam様、誤字報告ありがとうございます。
17 7/31 Stop writing.様、誤字報告ありがとうございます。しかし、あの箇所は十四日という意味ではなく、十日程という意味で書いている(つもり)のでそのままにしております。ご了承下さい。
修行開始から十余日。修行前とは比べ物にならないほどの成長を遂げた一護達は、浦原の協力により、断界へと突入した。
断界を走り抜ける一行。走った後から崩れていく拘流の壁に、石田のマントが捕らえられかけたが、茶渡の咄嗟の反応により事なきを得た。
「……!? な、何だ、あれは……皆! 何か来てるぞ!!」
茶渡に抱えられ、後ろを向いていた石田が背後から迫る存在に気づいた。
「オイ夜一さん! 何だよあれ!? 聞いてねぇぞ!?」
「拘突じゃ!! 7日に一度現れる掃除屋が、よりにもよって今日現れようとは!! あれは恐ろしく早いぞ!! 絶対に追い付かれるな!!」
夜一の言葉にスピードを上げる一行。しかし、拘突の速度もかなりのものだ。出口まであと一歩。だが同時に拘突も一行を捕らえようとしていた。
「クソッ! あと少しだってのに……!!」
「火無菊、梅厳、リリィ……『三天結盾』!! 『私は』、『拒絶する』!!」
しかし間一髪、織姫の三天結盾が間に合い、一行は無事、拘流を抜けることができた。
一護が芸術的な体勢で着地していたり、石田のマントのスペアが出てきたり、織姫が夜一に怒られたりしたが、何にせよ、全員無傷である。
「ここが、尸魂界……」
「そうじゃ、ここは郛外区。流魂街とも言われ、死神達が住まう瀞霊廷の外側を取り巻くように存在している街じゃ」
「……成る程な、なら彼処に見えてるのが瀞霊廷って訳だな!」
言うが早いか、早速そちらに向けて駆け出す一護。
「待て!! 一護!!」
夜一の制止する声も無視して走る。が、唐突に巨大な壁が瀞霊廷を囲むように空から降り注ぎ、一護の行く手を遮った。
「久すぶりだぁ、真っ正面がら通廷証も持たずに瀞霊廷に乗り込もうとするやつは。最近はながなが骨のある奴もいねぇし、腕がなるだよ」
地面を揺るがすような大きな声が響く。
見上げるほどの巨大な体躯を持った、西・白道門の番人、兕丹坊である。
「さぁて……もでなすど! 小僧!!」
好戦的な表情で、一行の前に立ちはだかった。
━━━━━
「本田クンやないの。こないな所でどないしたん?」
声を掛けられ振り替えると、狐っぽい雰囲気の蛇、市丸隊長だった。
「あ、市丸隊長。ただの散歩ですよ。飯食った後なんで腹ごなしもかねて」
嘘じゃないです。うどん旨かった。
「そうなんや」
「市丸隊長はどうされたんです?」
「ボクもそんなもんや」
そんなもんって何だろう。散歩か?
「吉良は元気にやってますか?」
「ウン、よお頑張っとるよ。ええ子や。でもちょっと真面目すぎるから、そこはアカンなぁ」
「成る程、確かにあいつはお堅い所がありますね」
「本田クンはどうなん? 藍染隊長と仲良うやれてる?」
「ええ、勿論ですよ」
表面上は、ね。この人知ってて言ってんじゃない? 知られてるとか怖すぎるけど。
「本田クンは意外とボクとも気が合いそうな気がするんよね」
「そうですか?」
色々引っ掻き回されてポイッてされる未来が見えた。この人徹底してるからな。怖いよな。まだ敵だもんな。
「そうや。だって、人からかうの好きやろ?」
「え……そうですけど」
「何で知ってるんだって顔やね?」
「はい」
「イヅルが前に愚痴っとったんよ。また本田君にからかわれたって。故に侘助ゲームやったっけ? おもろそうやと思ってな。故に侘助」
「ああ、あれですか。折角カッコいい台詞なんですからどんどん使わないと勿体無いと思ったんですよ。故に侘助」
「イヅルはあんな台詞、よお思い付いたよなぁ。故に侘助」
「雛森の前でカッコつけたかったんだと思いますよ。まぁ、披露する機会には恵まれてませんけど。故に侘助」
暫くやり取りして、市丸隊長がニヤリと笑みを浮かべた。向けられたくない笑顔ランキング上位だ。流石だ。ちょっと鳥肌が立った。
「やっぱりや、君とは仲良うやれそう。三番隊においでや」
ヨン様と毎日顔合わせるよりは楽しそう。うん、吉良イジルのも隊長公認でやれそうだし。……それやると吉良のストレスマッハかな?
「前向きに善処する方向で検討しつつ、様々な可能性を模索していきたい所存であります」
「ひゃあ、フラれてもうたわ」
わかってたくせにな。
「それより、故に侘助ゲームはやっぱり吉良がいるところでやった方がいいですね」
「そうやね。今度やろうや」
「いいですね」
「ところで本田クン、ボク今悩んどることがあんねん」
「そうなんですか?」
俺を消すかどうかとか? 気に入ってるけど命令だから仕方ないよね、みたいな? 勘弁してくれよ。でもなんかすごくヤバそうな雰囲気。今すぐ帰れば……ダメだ、この人13キロだった。無理だ。
「またまた惚けて……ホントは気付いとるんやろ?」
「いえ、全然思い付きません」
「ならヒントや。ボク、藍染隊長の他やと、東仙サンとも仲ええねん。……どや? なんかピンと来たか?」
「い、いえ全く……そ、それがどうかしたんですか?」
落ち着け、平常心だ。まだ名前が出てきただけだ。原作での色んな出来事が思い出されるけどそれは今関係ない。寧ろ俺は何も知らない。原作って何ですかちょっとよくわかんないです。
たったの数秒だが、ひどく長く感じる。
「あの二人と並ぶとな、ボク、仲間外れやねん」
「は?」
意味わからん。
「あの二人の格好思い出してみてや」
「はぁ」
ヨン様は言わずもがな。隊長羽織と死覇装、あと眼鏡。要は着物着たヨン様。東仙隊長は、同じ服装で、お肌が黒め。日焼けサロンでも行ってんのかな? で、ドレッドヘアーを一つ結び。なんか目のところに白いの付けてたっけ。
「で、ボクを見てみて」
銀髪で糸目の胡散臭い男が立っている。勿論死覇装に隊長羽織だ。何ら変な所はない。
「……?」
「あの二人にはあって、ボクには無いもの、あるやろ?」
信用とか? アウトですわ。
「市丸隊長は銀髪だから、髪の色素とかですか?」
「ちゃうちゃう、そんなんボクの個性やん。気にせぇへんよ」
なら、何だ? ガチのヨン様派か、後で裏切る予定かってことか? いやでもそれだと見た目を思い出させる意味がない。
「どう?」
「……降参です。わかりません」
「目の周り」
「はい?」
「ボク、目の周りに何も無いやん?」
「……そう、ですね」
どういうことだろうか。目の周り……あー、眼鏡とか。
「藍染隊長は眼鏡かけとるし、東仙サンは……白いの付けとるやん? ボクだけ何も無いからちょっと仲間外れみたいに感じとるんよ」
「成る程」
『西方郛外区に歪面反応! 三号から八号域に警戒令! 繰り返す! 西方……』
「歪面反応……虚ですかね?」
十中八九黒崎君ですな。俺は知ってる。このアナウンス見たことあるもの。
「いや、虚なら虚ってわかるはずや。これは……旅禍、いうやつかもしれんね」
「旅禍……ですか」
瀞霊廷を取り囲む壁が一気に落ちてくる。
「さて、折角やし、見に行こか」
「えぇっ!?」
俺もあの場に居合わせんの!? あとで怒られるじゃねぇか。
「西言うたら兕丹坊んとこやから、大丈夫やろうけど、万が一ってこともあるしな」
「そ、そうですけど」
「本田クンも見てみとうない? 旅禍なんて滅多にあらへんよ」
そりゃ原作のイベントを間近で見たいって野次馬根性はあるけど。
「それに、ここからすぐそこやん」
結局、好奇心に負けてしまった。目の前には門がある。
すごく……大きいです。
「仮に兕丹坊を旅禍が倒せたとして、どうやって門を開けるんでしょうか」
「……せやね。もしかしたら無駄足やったかもしれん」
その時、ズズズ……と、鈍い音を立てながら門が上に上がり始める。
「……随分と、力持ちなお仲間が居たようですね」
「……うーん、どうやろなぁ」
━━━━━
「離せ! 三から八なら六番隊も範囲だ。たぶんどさくさに紛れていける!」
「ダメです止めてください!」
「そうっすよ! 寧ろ警戒して普段より厳重になりますって!」
十三番隊の隊舎で、怒鳴りあう声が響いている。
「うるせぇ! 俺の部下をいつまでも牢屋に入れといて堪るか!」
「だから今は動く時じゃないって隊長も言ってたじゃないですか!」
「隊長は今寝込んでんだろうが! 動こうにも動けねぇだけに決まってらぁ!」
「落ち着いて下さいって! 誰も助けないなんて言ってないじゃないすか!」
今にも六番隊隊舎に駆け出そうとする海燕を、虎徹清音、小椿仙太郎の二人がかりで止めている。
「じゃあいつ助ける!? 今だろ!?」
「今じゃないです!!」
「大体、朽木隊長は何やってんだ! 義理でも妹だろうが! 何で助けようとしねぇんだよ!!」
「俺らに言われても知らないっすよ!!」
「……よしわかった。取り敢えず、今朽木を助けるのは止めだ」
落ち着いた様子の海燕に、ほっと胸を撫で下ろす清音と仙太郎。しかし
「まずは朽木白哉を殴りに行く!!」
安心するのは早かった。
━━━━━
時間にしておよそ5分。一護と兕丹坊との戦いに決着が着くまでの時間である。一護は兕丹坊の巨体から繰り出される攻撃を物ともせず受け止め、ただの一撃でその斧を打ち砕いた。
「お、斧が……オラの……オラの斧がああああああ……っ!!」
尸魂界中に響き渡るのではないかとも思える音量で兕丹坊は泣き叫んだ。
「なんか、サイレンみたいだね」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ……」
「あー、そんなに大事にしてる斧壊しちまって悪かったな。えーっとほら、なんかできることあれば手伝うからよ、取り敢えず泣くなって」
兕丹坊の余りの泣きぶりに、ばつが悪そうな表情で一護が声を掛けた。
兕丹坊の顔が一護の方に向けられる。暫しの沈黙。
「お前、いいやつだなぁ……。さっぎまで戦ってた相手のことを思いやれるなんて……オラの、負けだ。完敗だ」
姿勢を直し、再び口を開く。
「通れ! この白道門の番人、兕丹坊が許可する!」
「お、おうっ!」
「……こっがら先は、化け物みでぇに強ぇ連中がたっくさんおる」
「……わかってる」
「……なら、いい。いくど」
兕丹坊は門の方へ向き直り、門を持ち上げようと、力を込めた。
「ぬうんっ!」
やがて、重そうな音を立てながら、門が少しずつ持ち上がっていく。膝を越えた後は一瞬だった。
これで無事、瀞霊廷に入ることができる。
だが、兕丹坊の様子が少し、いや、かなりおかしい。道の先の一点を見つめ、ひどく狼狽えている。
「三番隊隊長……市丸ギン……五番隊副隊長……本田正勝」
汗が滝のように流れているが、これは門を持ち上げたことによるものではないだろう。
兕丹坊の呟きに、夜一も焦りを見せる。いくら実力を付けたと言っても、いきなり隊長格の相手をするのは現実的に無理である。
「アカンなぁ、門開けてもうたら」
「門番の意味を、一度調べた方が良いだろうね、兕丹坊。それは、君の仕事じゃあない」
狼狽えつつも、しっかり二人を見つめ、兕丹坊は答えた。
「オラはここにいる一護に負けただ。も、門番が負けたら、門を開けるのは当然だべ」
「君の持論はよくわかった……だが」
「……わかってへんなぁ。門番が負ける言うんは……死ぬ言うことやぞ」
市丸の手がぶれる。直後、門を持ち上げていた兕丹坊の左腕が切り飛ばされた。しかし、そこは尸魂界中から選出された豪傑の一人、片腕と、己の体を使って、何とか門を支える。傷口からは大量の血が流れている。
「……さすがに腕はやりすぎでは?」
「本田クンは優しいなぁ」
「……甘いと言われているような気がしますね」
「あら、バレてもうたわ」
一瞬で兕丹坊に重傷を負わせながら、何事も無かったかのように会話する二人。言ってしまえば隙だらけである。
一護は味方となった者が傷つけられて黙っているような男ではない。しかし、今回は相手が悪すぎる。
どうか何もしてくれるな。
それが夜一の心境であった。
しかし
「何てことしやがんだこの野郎!!」
お前こそ何てことをしてくれる。夜一がそう思ったのは言うまでもない。
━━━━━
白道門にて、通り魔事件が発生。被害者は門番の兕丹坊さん(10M級巨人)。腕を鋭利な刃物で切り落とされ重傷。命に別状は無いとのことです。兕丹坊さんは普段通り門番をしていた所、侵入者の黒崎苺さん(仮名)に敗北したものの、その優しさに心打たれ、門を開けた所、何者かによって腕を切り落とされたとのことです。目撃者によると、兕丹坊さんが腕を切り落とされた現場には怪しい男が二名立っており……
……ハッ! 久しぶりの派手な流血沙汰に放心してしまった。いかんいかん。これからは俺もそうなったりならなかったりするってのに。
いや、それよりも、だ。取り敢えずこの場をどうにかしないと……別に俺は何もしなくて良いか。
「……さすがに腕はやりすぎでは?」
過激です。双天帰盾で治るだろうけども。
「本田クンは優しいなぁ」
「……甘いと言われているような気がしますね」
「あら、バレてもうたわ」
……こいつ。いや落ち着け。俺じゃ勝てない。目上の人間に逆らうのは良くない。KOOLになるんだ。
「何てことしやがんだこの野郎!!」
黒崎君のおでましです。
「兕丹坊とはもう決着はついてたんだ。それをあとからしゃしゃり出てきやがって……武器も持ってない奴に攻撃するようなクソ野郎は……」
黒崎君は斬月を市丸隊長に向け、言い放った。
「俺が斬る!!」
カッコいいな主人公。流石だ。感動的だ。まぁ今の彼ではまだまだな訳だが。……あ、これ、言えるわ。
「……良い台詞だ。感動的だな……だが無意味だ」
これは決まった。めっちゃ強そうだろ。
色んな視線が突き刺さる。え、なんかごめんなさい。いや、ここで引いて堪るか。
「大言壮語、大いに結構。だが、彼我の戦力差を見誤っちゃいけないな、黒崎一護。君(彼?違ったらスルーで)がああなったのは、そのせいじゃないか?」
ちょっと大袈裟な位に動きを付けて言ってみる。うん、ちょっと気分が乗ってきた。
「一護……?」
「ええ、彼が一護です」
「なるほど……」
言いながらニヤリとする市丸隊長。不気味である。こっち見んな。
「やい! キツネ顔じゃない方! お前とはまともに戦ってねぇけど、今の俺はあの時とは違うぞ」
「どうかな……? でかいだけの包丁じゃ誰も倒せないぜ?」
キツネ顔じゃない方ってひどいよね。普通に傷つく。個性がないと言われたような気分だ。
「……なら、見せてやろうじゃねぇか」
黒崎君は斬月を包丁呼ばわりされてカチンと来たらしい。斬月を構え、こちらを睨んでいる。
ごめんなさい、反射だったんです。和解したら謝ろう。
あとさっき黒崎君 「武器も持ってない奴に」 とか言ってたけど俺も武器持ってないからね。そりゃ俺の都合なんて知らないだろうけどさ。
「はい、そこまで」
一度手を叩いて市丸隊長が言う。既に市丸隊長はこちらから離れている。
続いて、脇差にも見える刀を、此方に見えるように取り出す。
「何だそれ? 脇差……? その間合いから投げるつもりか?」
黒崎君の疑問も尤もだ。俺も知らなかったらそう思ったろう。だが……取り敢えずここに立ってるのは危ないな。
「脇差やない。これは、ボクの斬魄刀や……本田クン、そこ退いとき」
「はい」
サッと飛び退く。ちゃんと警告してくれる辺り、意外と優しいな。
「射殺せ、神鎗」
解号と共に、市丸隊長の斬魄刀が一気に伸びる。成る程早い。
咄嗟に防御の体勢をとった黒崎君は、斬月の腹の部分で神槍を受け止め、その伸びる勢いのまま、兕丹坊もまとめて門の外へ押し出された。
支えを失った門はそのまま落下してくる。
市丸隊長は門が完全に落ちる直前に、残った隙間から
「バイバーイ☆」 なんて手を振っていた。圧倒的煽りスキル。脱帽である。
「さて、帰ろか」
「はい……ところで市丸隊長」
「うん?」
「市丸隊長も案外お優しいんですね」
「……ああ、本田クンが怪我したらアカンからなぁ」
「いえ、そちらではなく」
「……?」
「市丸隊長なら、殺そうと思えば簡単に殺せたでしょう?」
俺も含めて……ね。
「……さて、何のことやろなぁ」
立ち止まって此方を見る市丸隊長は、やはりニヤリと笑みを浮かべていた。
読んでいただきありがとうございました。楽しんでいただけたなら幸いです。
大幅カットの末ではありますが漸く楽しい所に入ってきましたね。海燕さんを出してみたものの……って感じはありますが。しかも会話ばっかりですし。
原作はこの後場面転換が忙しいから辛いですな。あとエセ京都弁についてはおかしいところがあれば教えて下さい。
次回をお楽しみに的な。
今回のネタ
すごく……大きいです:くそみそテクニックより
KOOL:ひぐらしの鳴く頃により
良い台詞だ。感動的だな。だが無意味だ:仮面ライダーディケイドより