鎧なんて飾りです。   作:C-WEED

20 / 21
一年以上経ってた。時間の流れって速いですよね。
遅くなって申し訳ないです。

楽しんで頂ければ幸いです。


第二十話

 ん? あぁ、そのこと。

 

 ……わかってへんなぁ、イヅル。

 

 

 本田クンはなぁ、ボクと出くわすと、困った顔すんねん。

 

 どんな楽しそうにしてても、疲れきっとる時でも、僕が視界に入ったら、一瞬真顔になって体固なんねん。まあその後すぐ、さもそんなことしてませんよって顔するんやけどな。

 

 おもろいやろ?

 

 

 そ。

 

 それだけや。

 

 まあ、もし知らんようならルキアちゃんの処刑日早まったって教えたろ思っとったけどな。

 

 でも、知っとったみたいやし。

 

 ほんま、本田クンはおもろいよなぁ。

 

 真面目にやっとる筈やのに、結局なんやかんや胡散臭いもんなあ。

 

 正直者のボクとは大違い。

 

 ……?

 

 どないしたん、イヅル。妙な顔して。

 

━━━━━

 

 脱獄、そして市丸との邂逅。なんやかんやあって走る本田と雛森。そんな中、女子力で冴えた雛森の脳にある疑問が浮かんだ。

 

 

「……ねぇ、本田君」

 

「どうした?」

 

「本田君は、藍染隊長を殺した犯人の目星ついてるんじゃないの?」

 

 別に確信があって聞いたとか、そんなわけじゃない。

 ただ、ふと思った。藍染隊長の下で色んな事を学んだ本田君が、宛もなく闇雲に犯人探しなんてするのかって。

 朽木さんの処刑が迫っているってこともあるのかもしれない。でもそれなら朽木さんを助けようとするのと、藍染隊長殺害の犯人探しをどっちもやろうとするのは正直無茶だ。

 

 本田君はもしかしたら犯人を探す気はないのかな。それとも、犯人に気付いているけど、見逃している……? 前者だとは思えない。あり得ないと言っても良い。大恩ある上司の仇をそのままにしておくのは、流石におかしい。もしそうなら、本田君の頭がおかしいか、藍染隊長との関係がうわべだけのものだったことになる……よね。

 でも、もし後者なら、見逃しているとしたら……一体どうして?

 

「……そんな筈ないじゃないか。わかってたらどうにかしてるって」

 

「……そっか」

 

 答えるまでに間があった。

 難しい質問じゃない。話すのを躊躇った? 言い訳を考えた?

 いずれにせよ、何かある。犯人に気づいているか、私に言えないことがあったのか。もしくは、その両方。

 そもそも、藍染隊長を殺せる人がどれだけいるの? やっぱり、隊長格の人、だよね。

 もし、本田君が犯人を突き止めていて、私に伝えてないとすると……

 

 まず考えられるのは、犯人が口封じする時に私がその対象にならないように……? でも私が犯人なら、犯人が誰か知ってる人が誰かと一緒に居たらまとめて口封じする。なら私に隠す意味なんてあんまりない。

 

 なら、やっぱり、別の理由があって伝えてない?

 

 私に知られてはいけない人が犯人……?

 知られてはいけないって、どんな人だろう。総隊長とか? でもそれだと私どころか尸魂界がやばいよね。なら言っちゃっても良いはず。あ、卯ノ花隊長? 確かに卯ノ花隊長が犯人でもなかなかインパクトが大きいよね。ありえないと思うけど。

 でも今挙げた二人だと、殺したからどうこうって言うより、何で殺したのかって所が重要だよね。

 

 それか、知ったらショックを受けるような人が犯人……とか?

 でも、私が仲良しな人の中で藍染隊長を殺せるような人なんて……。本田君は、違う。阿散井君じゃ無理だし……吉良君も無理。あとは……女性死神協会の人? でも藍染隊長を倒せそうな人となると卯ノ花隊長くらいしかいないし……乱菊さんはありえないし……ん?

 

 あっ……シロちゃん…………?

 

 いやいやいやいや……そんなわけ……。

 

 動機もないし……。

 

 

 ……でも、隊長だから実力はかなりあるはずだし、頭もいいから、偽装も上手そう……それに、実際、このことにたどり着いちゃった私はショックを受けてる。

 

 もしかして、本当に……?

 

 だとしたら……。

 

━━━━━

 

「本田君、私、ちょっと用事思い出したんだけど」

 

「用事?」

 

 何しに来たのかよくわからなかった市丸隊長が去り、恋次と合流するべく移動し始めた途端にこれである。なかなか進めない。

 

「なら、その用事を先に済ませるか?」

 

「ううん、大丈夫。本田君は先に行ってて」

 

 大丈夫なのか。え、でも雛森じゃん。この時期の雛森って危うくない? そうでもない? 一人にしていいんかね?

 

 ……。

 

 まあ、いいかな? 眼鏡置き(あいぜんたいちょう)に騙されて、とかじゃないだろうし。

 

「わかった。気を付けてな」

 

「うん、本田君もね!」

 

 さて、俺も急がないと。確か恋次は黒崎君のとこにいる? 向かった? んだよね。合流しようそうしよう。味方は多い方がいい。

 

 主人公の近くなら割かし安全とか、そんなこと考えてなんかないんだからねっ! ……一人でやっても空しいだけか。

 急ごう。

 

 

 

「……間違いねぇ、あいつの霊圧だ」

 

「やっと追い付いた!」

 

「正勝か」

 

「置いてくとか最悪だなお前」

 

「信頼あればこそって奴だ。現にお前、出てきてんじゃねぇか」

 

「いやそういう問題じゃ……まあ、いいや。……どうやら近くに居るっぽいな」

 

「そうだな」

 

「どうするつもりだ?」

 

「そりゃお前……こうすんだよ!」

 

 手に持った蛇尾丸を地面に叩きつける恋次。地面が崩れる。足場が無くなれば落ちるのが自然の摂理だ。せめて一声かけてほしかった。

 

 恋次は難なく着地し、キメ顔で歩きだす。俺も遅れて、着地時に足首を痛めたことを悟られないよう注意しながら続いた。

 胃が痛い日々を過ごしながら冤罪で捕まったりした上に足首まで痛めるとかどんな拷問だろうか。俺なら泣いている。いや泣いてないけど。

 

 ダイナミックな登場に注目が集まった。不思議と胃は痛くない。きっと普段に比べたらストレスが少ないからだろう。

 

「お前は! 阿散井恋次! と、えーっと、キツネ顔じゃない方!」

 

「こんな「誰が無個性だとこのオレンジストロベリー!」

 

 恋次が何か言おうとしていたようだが、つい過激な台詞が口から出て来てしまった。なんてことだ。ストレスかな?

 

「正勝どうしたお前……」

 

「いや、何でもない。うん、幻聴だよ。黒崎君、俺は五番隊副隊長、本田正勝だ。よく、覚えておいてくれよ」

 

「いやでもお前……」

 

「さあ! 卍解の修行をしようじゃないか恋次! 俺も付き合うとも!」

 

「お、おう……あ、そうだ」

 

 ここで、黒崎君の方に向き直る恋次。

 

「てめぇに良いこと教えといてやる」

 

「な、何だよ」

 

「ルキアの処刑時刻が変更になった━━明日の正午だ」

 

 黒崎君と夜一さんに動揺が走る。が、それは置いておこう。

 

「ほら行くぞ恋次。邪魔しちゃ悪いだろ」

 

「あいよ」

 

 このあと滅茶苦茶修行した。

 

━━━━━

 

 朽木ルキアが処刑される。そのことが決定してからというもの、旅禍の襲来、藍染の変死と、次々に異常事態が起こっている。

 

 それに何かを感じない程、日番谷冬獅郎は愚かではない。

 

 この処刑の裏には何かがある、そう思い至っていた時のことである。

 

 彼の幼なじみであり、藍染殺害の重要参考人の本田正勝の同期兼部下である、雛森桃が十番隊隊首室に現れた。

 

 追われる身、というほどではないとは言え、仮にも脱獄した彼女が自らである。当然、戸惑った。

 

「雛森……? 何だってこんな所に? いや、そもそも何で脱獄したんだ」

 

 雛森は何も答えない。

 

「黙ってないで何とか言ったらどうだ? 俺だって暇じゃねえんだぞ」

 

「日番谷くん……」

 

「日番谷隊長だっての」

 

「……私は、あなたに聞きたいことがあってここに来たの」

 

「聞きたいこと? 藍染の事件の手掛かりならまだそんなにねぇぞ」

 

 雛森は首を横に振る。

 

「そんなことを聞きに来たんじゃない」

 

「そんなことってお前なぁ……なら、何だよ」

 

 呆れた顔で問う日番谷。それなりに大事にしてたであろう部下からそんなこと扱いされては藍染も無念であろう。

 

「……どうして」

 

「?」

 

「……どうして、藍染隊長を殺した罪を本田君に着せたの?」

 

 雛森の口から飛び出したのは、思いがけない問いである。一瞬、思考が止まる。そして戸惑う。何故そんなことを? 何故俺に?

 

「待てよ雛森……それじゃなにか? 俺が藍染を殺したってのか?」

 

「日番谷君なら、天才であるあなたなら、できるでしょう?」

 

「んなことするわけねぇだろうが!」

 

「だったら! どうして本田君は犯人を知らない振りをしてるの? どうして私に犯人を隠すの!? 犯人はどうしてあれだけ完璧に犯行現場を偽装できたの!?」

 

「だからそれを今……」

 

「氷って便利だよね」

 

 先程とは打って変わって静かな声になる。

 

「何……?」

 

「氷を使えば、藍染隊長を殺して、その凶器を隠すのにも困らないよね」

 

「お前……」

 

「きっと、凍らせちゃえば血も操れるんだろうなぁ……」

 

「お前は、本当に、俺がやったと……?」

 

「わからない」

 

「は?」

 

「わからないよ。手掛かりなんて私にはわからないし、本田君は何も言ってくれない。私は力になりたいのに!」

 

「だったらこんなこと……!」

 

「だって、おかしいじゃない! あの本田君が、宛もなく動くなんて! きっと何かに気付いてる! 何かを隠してる! 本田君が犯人に気付いていて私に言わないんだとしたら、私を傷つけない為に決まってる! 私が知ってショックを受けるような人間の中で、藍染隊長を殺せる人なんて、あなたしかいないのよ!!」

 

「なん……だと……?」

 

 辛うじて言えたのはそれだけだ。さっぱり解らなかった。はっきりしているのは雛森が相当錯乱していること。

 

「弾け……」

 

 思考している内に、雛森は斬魄刀に手を掛けていた。

 

「やめ「飛梅!!」チィッ……」

 

 飛来する火球を間一髪避ける。己が斬魄刀に手を伸ばすが、止めた。自分が斬魄刀を使えば間違いなく彼女を傷付ける。絶賛片想い中の日番谷にそのようなことができる筈もない。

 

 しかし、力ずくでしか彼女は止められないだろう。

 

 であるならば、やる他ない。拳で。

 日番谷冬獅郎は天才である。白打でも十分戦える。

 

 次々飛んでくる火球の合間をすり抜け、雛森の意識を刈り取るくらいなら、そう難しくなかった。

 

 

 意識を失い、倒れる雛森。彼女は泣いていた。泣きながら戦っていた。斬魄刀の柄に血が滲む程強く握り締めて。

 

 誰が彼女にこうさせた?

 

 誰が彼女をここまで追い詰めた?

 

 何故自分が雛森を傷付けなければならない?

 

 

「本田ァ……」

 

 忠告はしていた。なのにこの体たらく。どころか、雛森を追い詰めてさえいる。

 

 事が終わったら覚えておけよ、と何処かに隠れているであろう本田正勝に向かって呟くのだった。

 

━━━━━

 

 ゾクリと悪寒が走る。風邪ならどれだけいいだろう。だがわかる。間違いない。これは、何かろくでもないことが起こったのだ。

 

 何が起こったのか。これから何が降りかかるのか。想像しただけで胃が震える。

 

 明日に備えて速く寝よう。

 

 明日はとうとう眼鏡置きが天に立つ日だ。これ天って漢字間違えたら変な感じになるよね。例えば、眼鏡置きが店に立つ、とか。新しい眼鏡置きがお店デビューみたいな。いやでも天に立つのもオールバックのニュー眼鏡置き(あいぜんたいちょう)な訳だしデビューって意味では一緒なんじゃ……ん? 何考えてんだ俺。

 結構余裕あるのでは。いやないけどさ。現実逃避だようん。

 

 

「なあ、正勝」

 

「どうした?」

 

「届くと思うか?」

 

「……届くさ、きっと」

 

 

 

 翌朝、恋次がいた場所はもぬけの殻で、書き置きが残されていた。

 

 "ルキアは頼んだ"

 

 どうやら置いていかれたらしい。

 

 べ、別に、置いてかれたから朽木隊長は恋次に任せていいかとか、朽木隊長と戦わないで済んで良かったとか、そんなこと考えてないんだからね。

 

 

 さて、まあ、冗談は置いといて、恋次の助太刀に行くとしよう。ここで朽木隊長にダメージ与えとく方が後々有利に働くだろう(うろ覚え)。

 

 黒崎君達への挨拶もそこそこに恋次vs朽木隊長の現場へ急ぐ。詳しい場所は知らないがそのうちドンパチやりだして、すぐ見つけられるだろう。

 

 あ、でも、ルキアの移送を襲撃して逃げた方が手っ取り早いんじゃ…………いや、そこまでしてしまうと拗れて面倒かな……。

 

 考えながら走っていると、誰かが立っている所を通り過ぎた。誰だっただろう今の、と思ったけど、答えはすぐわかった。

 

「鳴け、清虫」

 

 不意討ちはズルいと思う……。

 

 

 

 目が覚めるとそこは……。

 

「や、本田君」

 

眼鏡(あいぜん)……置き(たいちょう)……!?」

 

 雛森枠って俺なの……? 違うよね……? あ、これヤバい。穴開いたわ。

 

 




読んで頂きありがとうございました。楽しんで頂けたなら幸いです。

あんま進んでなくて申し訳ない。あとたぶんまたしばらく時間あきます。申し訳ない。仕事が忙しくてね。

あとあれだ。割と描写省いてる感あります。分かりにくかったら言って下さい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。