暗殺教室を卒業し、教育実習生となった潮田渚。彼はどんな教師になっているのだろうか。

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pixivで全体的に書き直しましたのでこちらでは改善版を再投稿です。


先生の時間

あれから7年が経った。僕は今、教育実習生として『私立極楽高等学校』に通っている。学校名だけを見ると天国みたいなイメージだけど、実は違う。ここは僕が来る前まで生徒にとって悪い意味で天国だったんだ。

 

「はーい!みんな〜!席につい……」

「ナギサァァ!」

 

教室のドアから犬崎くんの突進。勢い、気持ちの乱れ的にこれは(フェイク)。ということは

 

「おォォラ!」

 

やっぱり正面からの刃山くんの鉄パイプが本命。けどパイプを握ってから一瞬迷った。

目もハッキリと (ターゲット)を見ていない。これじゃあ僕には当たらない。

 

「今だ紫龍!やっちま……え?」

 

そうか……刃山くんがわざとらしく鉄パイプを振り上げたのはその後ろの紫龍くんを隠すためか。懐かしいな……隠し弾(ブラインド)だっけ?

彼らも前よりは考えたみたいだけど、ごめんね。僕には見えてるんだ。君たちの動きが空の雲のように。

 

「惜しかったね。最初の犬崎くんは囮で刃山(はやま)くんが本命だと思ったよ。でも名前を言っちゃったから紫龍(しりゅう)くんに気がついちゃった」

 

きっとあの先生が僕らを褒めた時もこんな気持ちだったのかな。

この子達もあの時の僕らのようにまだまだ未熟。だからと言ってそれをその通りに言っては彼らのやる気をうまく引き出せない。だから成長させるためには、やる気を引き出すように褒めないとね。でもこの教室で僕が引き出してあげるやる気は、殺る気じゃなくて良いんだけど……つい、スイッチが入っちゃうな。

 

「今日はこの辺で終わりかな?それじゃあ授業に入るよ?」

「渚、お前何者なんだよ」

「だから何度も言ってるでしょ紫龍くん。僕は君たちの先生だよ」

「先公がなんで俺の拳を何度も避けるんだよ。かすりもしねえしよ」

「そんなことないよ。僕だってギリギリで避けてるんだから」

 

初めてこの教室に来た時、僕は

 

「先公が俺らに命令すんな。殺すぞ(、、、)

 

と言われた。でも全く嫌な気はしなかった。むしろ力をもらえた。そしてつい言ってしまった。

 

「殺せると良いね。卒業までに」

 

って。それ以来みんなはこうやって僕を殺しにくる。もちろんそれは本気じゃなくて、せめて一発当ててやろうって思ってるんだと思う。最初はどうなるかと思ったけど半年一緒にいて、修学旅行にも行って分かった。

本当に悪い生徒なんていないんだ。皆、やればなんでも出来るんだ。それは僕だから、元落ちこぼれの僕だから分かる。

あとは先生()が教え導くだけ。

 

「ひょっとして渚って28人のヒーローの1人なんじゃねえの?」

「28人のヒーロー?」

「なんだナギ先知らねえの?7年前に地球を救ったっていう超能力集団だよ!」

「ちょ、超能力集団!?」

「瞬間移動!浮遊!とか」

「火を吹いたり、電気を操ったりするヒーローたちだよ!」

 

「ーーそんな人間はいないよ」

 

「いやだってそんな奴らだから地球を滅ぼそうとしたーー」

「授業中だよ刃山くん。その話は休み時間にしてね」

 

僕が大学に入った頃からどういうわけかそういう都市伝説のような話が広まっていった。僕はもちろんその話の真実を知っている。だからそれが勝手に色をつけられて、全く違う色になっているのが良く思わない。それに誰の言う話でもあの教室のあの先生は決まって、悪役なんだ。真実と変わらないのは数字。それだけ。

 

 

 「起立!礼!さいなら!」

「はいさようなら。みんな〜!また明日ね!」

 

帰りのホームルームだけならみんな優等生なんだけどな……。でも僕も生徒の頃は早く帰りたかったけど。

 

「あっ紫龍くん!明日はちゃんと遅刻しないで来るんだよ!」

「……っせ」

「明日も期待してるからね!」

立ち止まって話を聞いて目を合わせてくれるようになっただけでも良くなった。彼に初めて夢を聞いた時に

 

「先公のいない世界だよ」

 

って彼は言った。その時のことを考えたら彼は随分変わってくれたと思う。彼とは血を流しながらぶつかり合った時もあった。あの時は茅野に今までで一番心配されて怒られたけど、彼の心と僕の心を繋ぐ道は少し整備されたから良かったな。僕はあの先生ほど完璧じゃなくて不器用だけど少しは彼らを手入れ出来たかな……ここに実習で居られるのもあと少し。ちょっとでも彼らの力になりたい。けど〜

先生の仕事って授業が終わってからが大変なんだよな〜。生徒を見ながら教えるのは楽しいけど、こうやって座って書類を見ながら作業をするのはーー

 

「大変です潮田先生!」

「……何がですか?」

 

それは「大変」なんて顔じゃなかった。青ざめて汗をかき手が震え、まるで今殺されるような人間の顔だった。

 

「えっ。紫龍くんと刃山くんがですか!?」

 

 

 

 「おい紫龍。お前、俺らの(グループ)から抜けることの意味分かってんのか?」

二人の制服を着た生徒は白い学ランを着た男たちに囲まれていた。その多くが鉄パイプや金属バットを持っていた。

そしてその集団の数人はバイクに乗り、威圧的なエンジン音を吹かせて円を描いて走っている。

二人のうち一人は腕や頬に内出血を起こしていた。二人とも両手は空いていたが傷一つついていなかった。

 

「どうなんだよっ!おい!」

「やめてください拳堂(けんどう)さん」

「刃山。お前も何でそんな雑魚に変わった?テメエらどうしたんだよ」

 

絵に描いたようなリーゼントが目立つその男は手と口を同時に否、足も動かしていた。無抵抗な人間が傷めつけれれる様子を周囲の男たちはお笑いを見るように笑っていた。

 

「前みたいな覇気がなくなって、その辺の高校生と同じだぞオラ!」

 

リーゼントの男は傷ついている男の胸元を持ち強引に自分と同じ目線にして

 

「何で殴り返さねえ!おい紫龍!」

 

と、唾をかけた。

 

「……俺らのせいで散々迷惑かけた先公(やつ)がいるんだよ。俺はもう、そいつに迷惑かけたk」

「何言ってんだ紫龍!お前はそんなヤツじゃねえだろ!」

 

膝と拳が同時に紫龍を襲った。その光景を隣で見ていた刃山は綺麗なままの手を、拳を振り上げた。

 

「もう我慢なんねえいくら拳堂さんでも」

 

「やめろ刃山!!!」

 

叫んだのは口元を切って、腹に手を当てている男だった。

 

「お前がそんな奴(、、、、)なんか殴る必要ねえ。そんな奴(、、、、)を殴ってもお前とあいつが傷つくだけだぞ」

「おいおい紫龍よ。俺は自分の耳がバカになったのかと思ったぜ?お前今俺のことなん〜って、言ったんだおい?」

「刃山……お前だけでも逃げろ!早く渚に……」

「ナギサだ?なんだお前の女か?なら良い。そいつも罰してやーー」

リーゼントの男は紫龍の髪の毛をひっぱり顔を起こすとそばの奴からナイフを受け取っ……受けと…受けと…受けとるその寸前だった。そのナイフは水色の髪の小柄な青年の手に渡った。そして青年はナイフの柄の部分でリーゼントを見上げながら、ホコリをなぞるように撫でた。

 

「違うよ。僕は二人の先生だよ」

 

リーゼントを撫でられた男は気絶をしたかのように尻から落ちた。そしてそのままコンクリートとくっついたように動かなかった。だが男はしっかりと目は開けていた。男のその揺れる瞳の中、リーゼントがさす先にはどこにでもいそうな普通の青年が傷ついた二人を介抱していた。

 

「な、渚。なんでここが……」

「俺まだ連絡してないぞ」

 

「今まで黙ってたんだけど実は僕ね、マッハ20で動けるんだ」

「マッハ20!?……って、どんくらいだ?原チャよりはえーのか?」

 

そ、そこからだったのか〜。

 

「う、うん。マッハ20は見えないくらい速いんだよ」

「じゃあもしかしてお前、本当に28人のヒーロなのか?」

 

授業の時よりもすごい食いつきだけど、もしかして刃山くん僕が言ったこと信じてる!? 

 

「ごめんね刃山くん。マッハ20で動けるのは嘘なんだ。あ、あと」

 

周りの人間たちは手に持ったナイフをペンのように回すその青年に恐怖を感じた。顔も体格もどこを見ても自分たちの方が勝っているのに。数だって勝っているのに。どこから見ても普通の青年なのに。その水色の青年から砂を踏みながら男たちは離れた。

 

「君たちが言ってた地球を救った28人のヒーローの噂。あれはデタラメだよ。あそこにいたのは英雄(ヒーロー)なんかじゃない」

 

そう。あそこいたのは……

 

「どこにでもいるアサシン(殺し屋)だよ」

 

「こ、ころしや……?」

「怪我痛いだろうけど、ちょっとだから我慢して待ってて」

「待てよ渚!いくら避けるのが上手いお前でもあの数は!」

 

心配されたことが嬉しかった。これが終わったら僕は教師ではなく、僕は本当に殺し屋と思われるかもしれないから。

でも僕のこの(才能)は人を殺すためのものじゃない。あの時誓った。この力は、誰かを守るために使うんだ。力のない僕が守りたい人を守れるようにと、授かった才能のはずだから。

 

「僕なら大丈夫だよ。僕はただの先生だけど、必殺技があるから」

「ひっさつ……わざ?」

 

……僕はここに入ってきた時と同じように普通に歩いて彼らに近づいた。いつものように職員室から教室までを歩くように。普通に。鉄パイプ? 金属バット? 30人?地球を破壊できる超生物、世界一の教師に育てられた僕の標的(ターゲット)になるには、まだまだ殺意(やる気)が足りないね。僕がしっかり教育(おしえ)てあげるよ。

今の僕のアレ(、、)の発動条件は、たった一つだけ。

武器は二本なくて良い。敵が手練れじゃなくても良い。相手が殺される恐怖を知っていなくても良い。

今の僕の必殺技。それのたった一つの発動条件は

 

一つ、『守りたい人がその場にいること』

 

ふたりがいて よかった

 

〝パンッ〟

と言う破裂音が渚の合わせた手の平から放たれた。その破裂音は前にいた数十人の男たちを波でさらうように一瞬で飲み込んだ。飲み込まれた男たちは1秒も経たない内に全員が同じタイミングでその場に倒れた。今度は全員が本当に気絶していた。

 

「渚お前、何したんだよ」

「大丈夫。ただの音の爆弾(猫騙し)だから」

「ねこだまし?」

「……渚」

「何?紫龍くん」

「渚って本当は何者なんだよ」

「だから何度も言ってる通り僕は」

 

ドジる時も沢山あるし、間違える時も沢山ある。小さくて弱そうで頼りなさそうな見た目かもしれないけど、それでも僕はね、 

 

「君たちの先生だよ」

 

君たちの先生でいたいんだ。

 

 

乱れたままの刃の生徒と教師として未熟な僕の、不安要素だらけの教室。始業のベルは明日も鳴る。

 

終わり

 

〜おまけの時間1〜

 

とある私塾

 

「やあ、来てくれてありがとう潮田渚くん。いや、今は先生と言うべきかな」

「そんな僕なんてまだ実習生で」

「君の噂は耳にしているよ。授業の評判がとても良いとね」

「そ!そんな!浅野先生の足元にもーー」

「単刀直入に言わせてもらうよ。潮田渚先生、私のところで教鞭を振ってはくれないか?」

「……浅野先生はどうして僕にそこまで」

「少し言い過ぎかもしれないが……私の理想の教師像はね、君のような人間かもしれないんだ」

「ーーそこまで言ってもらえて本当に光栄です。でも僕は」

「まだ、君を必要としている生徒がいるのかい?」

「はい。僕にはまだ教えたいと思う生徒が大勢いるんです」

「そうか残念だ。と言って私は諦めたりはしないよ。また時が経ったら君をスカウトをしても良いかな?」

「はい、もちろんです!理事……浅野先生もお元気で!」

 

〜おまけの時間2〜

 

「あっカルマ。昨日は電話ありがとう」

「ん?なんのこと?」

「昨日の夜に匿名で僕の学校に電話してくれたのって、カルマでしょ?」

「別に〜。俺はちょっとストレス発散したくてターゲットを探してただけだよ」

「も〜。大人なんだから喧嘩したらダメだよ。ストレスたまったらまた一緒に飲もうよ」

「おっ、良いね〜。じゃあまた連絡するわ……頑張れよ渚せんせー」

「うん!カルマも頑張ってね!」

 

完結


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