モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み) 作:ニルドアーニ四世
「強ぇ…。」
ゾロは身体のあちこちに浅い切り傷ができ、血がゆっくりと垂れていた。それに反してリューマの着物は一閃の切り傷も付いていなかった。致命傷を与えきれない事から二人の力量は僅差だが剣士にとってはその差が命取りになるのだ。だがゾロは仲間とその他の海賊達の命が己の剣にかかっているというのにどこかこの状況を楽しんでいるようだった。
「“海割”コナー・ナルキス...。その者の全盛期の剣は海をも斬り裂いたという...。だが落ちたモノだな。」
(やはりリューマの肉体に“覇気”のない
コナーはかつてモリアが生け捕りにした“新世界”の強者の一人である。彼は彼を倒し捕らえたところまでは良かったものの自分の限界を感じ、“自分を信じられなくなった”のか覇気が使えなくなってしまったのだ。そもそもゾンビにおける影とは技、性格などの特徴を表すモノである。むろん覇気も影の力に委ねられている。そして剣士だからリューマの影にしようと思ったのが打算であると再認識した
「まぁそこそこはやるようだが、若い...。面倒くせぇからさっさと終わらせようぜ。老体にゃ応えちまう。」
リューマは黒刀を鞘に収めそう言い放った。ゾンビである以上老体などとは関係無いが影は当人の性格の影響を出るためそう言ったのだろう。リューマは刀に手を添えると素早くゾロへ間合いを詰めた。
(...ック⁉︎ スキがねぇ...だったら...)
「“斬波天鐘”」
「“一刀流 飛竜火焔”ッ!!!!」
二人の刃が交わり剣を同時に鞘に収めた。数秒後ゾロの腹が裂け血が飛び散った。そのままゆっくりと膝を着いて口から血を吐いた。
「クックック...生意気なクソガキだ。」
リューマがそうつぶやくと着物が大きく斜めに裂け、ホグバックに改造された強靭な肉体にヒビが入ると同時に傷口が発火した。
「私が剣士に敗れるとはな...。私も老いたものだ。受け取れ...。“秋水”をその折れた刃の代わりにするがよい...。」
着物から引火し全身が燃え盛るリューマはゾロへゆっくりと歩み刀をゾロへ渡した。彼はゾロが刀を三本使用する事やその内の一本が折れていることを見抜いていた。そして同時にリューマはゾロを気に入ったようだった。ゾロはリューマの技にどう足掻いても捌けないと判断し“避けなかった”のだ。そして相打ち覚悟でゾロも技を撃ち込みその結果彼は自分より力量が上のリューマに打ち勝ったのだ。
「はぁ...はぁ...。」
「約束は守る。少なくとも俺が逃がしたって事はDクラス以下のはずだ。この場に居合わせた者の影は全て返そう。」
モリアがゆっくりと息を整えてえるゾロの元へ向かうと傷口を押さえながら息を整えていた。そしてモリアはかなり細め糸にした“影血閃”でゾロの傷口に注ぎ込み傷口を塞いだ。するとゾロはリューマから受け取った刀をモリアへ突き出した。
「刀は返す。ゾンビの性格は“影”なんだろ?だったらリューマの意志じゃねぇ。」
「いや...あと刀は持っていけ。貴様の戦利品であろう?先の影の糸は傷を防いだだけに過ぎん。貴様の治療が先だ。」
ゾロはモリアに刀を返そうとした。ゾンビにおいて影は精神面を担うのだ。つまり肉体のリューマの意志とは言い切れずリューマやモリアのモノである可能性が高いからである。モリアはゾロを右腕で抱え更に側に倒れているルフィを左腕で抱えると麦わら帽子をまじまじと見た。
(この帽子...。あぁ...この子がシャンクスが言ってた子供か…。)
「ディルゴッ!倒れている者達を屋敷へ移動させろ。」
「了解したぜボス。」
モリアはかつてシャンクスとの交流を少し思い出したがすぐに現実に戻った。そして声をあげて部下へ命じた。約束では手を出さず安全を保障するとあったからである。
***
数時間後
〜スリラーバーク〜
モリアは城内のホールに先ほどの場に居合わせた者達を連れ影を返した後に食事や治療を施した。そこまでは約束の範囲外であるが、それはゾロを気に入ったモリアの一存である。ホールには豪華な食事が置いてあり大半はそれに貪り食っている。そして完治しているはずのサンジや一部の海賊の男はペローナとリィディアナの看病をデレデレした様子で治療を望み、ペローナがツンツンした様子で拒むのを見てサンジや海賊達にアルフレッドが悪態をついたりボコったりしている。
城内の一室にゾロを除いた一味が回復し集められたところでモリアが口を開いた。
「アラバスタやエニエスロビーの件は見逃してやる。緑色の剣士に感謝しろ...。」
「「「「ゾロ⁉︎」」」」
一味のメンバーが目を覚ますとモリアになぜ生かしたのか?なにが目的か?ゾロはどこにいるのか?と次々と質問攻めにしたがモリアは一味が集まってから答えるの一点張りだったのだ。そしてモリアは約束の流れを話した
「奴は治療室にいる。船医のホグバックが治療しているから安心しろ。」
「ホグバックって...ドクトル・ホグバックか⁉︎」
船医のチョッパーが大声をあげた。ホグバックは天才外科医としてその道で知らぬ者は無いと呼ばれる程の名声を得ている。
「あぁ...。今は俺のクルーだ。それはさておき、これ以上は無闇に暴れるな。貴様らの安全圏はこの海域だけだと思え...。」
モリアがそう説明をし、チョッパーから見学とかサインなどのワードを聞き流しながら警告をするとモリアの幹部達がピクッと反応して同時に同じ方向を見た。そしてモリアが目線でペローナとアルフレッドに合図を送ると二人は無言で部屋から出て行った。