モッ...モリアさんは最強なんやで(棒読み)   作:ニルドアーニ四世

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闇の深淵 2

悪魔の実の新たなステージ...それを人は“覚醒”と呼ぶ。能力者は稀に覚醒し、能力の系統ごとに影響は異なる。カゲカゲの実を含むパラミシアでは己以外にも影響を与え始める。

 

 

 

 

 

モリアが膝をついてしゃがみ闇が蠢く地面へ手を触れつぶやいた。

 

「“暗黒大陸(イロージョン)” 。」

 

モリアの右手からは影が渦巻き素早く地面へ侵食する様に広がり始めた。黒ひげの煙の様にゆらゆらと蠢く闇をまるで喰らい尽くす様に水平な影が広がっていく。闇は成す術がなく影の支配下におかれるとマリンフォードの地面は影に覆われ、モリアの支配下と化した。海賊達や海兵らは黒ひげの“闇穴道”とは違い地面に沈むことはないが、誰しもが“ある異変”に気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『万物の動きが止まり、視線と口以外は何一つ動かせなくなっていた。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで俺は動けねぇ!!!!」

 

黒ひげは大声をあげた。モリアを除く目に入る全ての動きが止まっているのだ。人も雲も風も土煙も微動だにしなかった。

 

「常識だが物体は動くと影も動く。だが俺はある程度の影を動かして物体を動かす事ができる...。覚醒により地面へと影を覆い尽くし万物の動きを封じただけだ...。」

 

原作のモリアには“影革命”という技があった。物体の影に“影法師”を潜ませて本体を自由自在に形を変えることができた。

 

そしてカゲカゲの実の覚醒により、地面に影の影響を与えた。つまりマリンフォード一帯に影を侵食させ、“闇穴道”ごと地面を影で覆い尽くしたのだ。つまり万物の物体の影を喰らい、影そのものを一時的に無くしたのだ。つまり影を持つ全ての物体、液体の動きを受け止めることができるのだ。

 

もっとシンプルに言うと気体を除く全ての動きを停止させる事がモリアのカゲカゲの実の覚醒による最大の特権なのだ。

 

 

「何だと...⁉︎じゃ何で俺の闇が⁉︎影と闇じゃ上下関係があってもおかしくはねぇが、影が上回るなんて思えねぇ!!!!」

 

「馬鹿か貴様は?付け刃程度の能力と研ぎ澄まされた俺の力を同格に見るなど滑稽...。単純に格が違うのだ。」

 

黒ひげがヤミヤミの実の能力者になったのは数ヶ月程度前であり、まだコントロールか生半可なところがある。それに対しモリアはカゲカゲの実を自由自在に操り、精密度は世界でも五本の指に入る程使いこなしている。更に覚醒という新たなステージへと上り詰めている。

 

仮に上下関係にあろうともその程度で勝敗が揺らぐ程能力者の争いは単純ではない。

 

「人も銃弾も土煙も...動きが止まってやがる。動かせるのは目線と口と思考回路...。」

 

黒ひげ海賊団の一人の“雨”のシリュウは慌てる他のメンバーとは違い、冷静に現状を分析した。確かに動きを支配したのであれば目線や口を動かせるはずではない。

 

「俺は万物の動きを支配できると言ったな?即ち一部の部位だけ自由にする事も可能だ。ここまでの精密さを出すにはかなり苦労したがな...。」

 

モリアは万物の動きを止める事が可能である。だがそれではつまらないのだ。だから口元と眼球を能力の対象外にした。元々人の内臓や筋肉は内部にあり影は存在しないため動くのは可能である。ただ影を一時的に無くしたため動くことはできないが、元々影のない内部では動かせることができる。

 

例えばモリアの影の支配下に置かれて動けない人間がいるとしよう...。更にその人間が体内に時限爆弾を仕込んでいたとする。体内であり影は存在しないため時限爆弾は機動し、爆発することはできる。つまり爆風が体外へ出てモリアへダメージを与える事が可能であるのだ。なぜなら元々地面にあった影は既にモリアの支配下であるが、爆風による影は新たに上書きされた影であるからだ。

 

つまり支配下にさえあれば内部を動かすことは可能であるが、外部は一切動かない。つまり臓器、血液、筋肉は動かせる。ただし表面...人で言えば皮膚か服は一切動かす事ができないため全身は動かせないのだ。

 

「おめぇだけ動けるなんぞ卑怯じゃねぇか!!!!」

 

「この影の支配下とはいえ強力な武装色の覇気さえ纏えば抵抗はあるものの動くのは可能だ...。だがこの戦場で覇気を使わず温存した強者などいるか?少なくとも俺が動けるのは元々影が必要ないからで貴様らが動けないのはただ“小物”だからだ。」

 

そもそも覇気とは弱点を突く以外に能力者の実体を捉えることができる唯一の手段である。覇気をより強力な攻撃をする“武装色の覇気”...。覇気は本来悪魔の実の能力の実体を捉えるだけであるが、その道の達人は実体のない攻撃でさえも軽減する事が可能である。

 

事実原作のパンクハザード編ではヴェルゴの強力な武装色はローの能力でさえも防ぐとドフラミンゴが言っていた。つまり武装色の覇気さえあれば実体が無くとも軽減ないし無効化ができるという事になる。ただそれは能力者の覇気に一定の差をつけなければならないのだろう。

 

 

事実原作ではローは覇気使いであり、ヴェルゴに能力を軽減させずぶった切られている。

 

恐らく『能力+能力に込めた覇気<覇気』という条件が満たせば可能であると思われる。

 

「とっ...“常闇”。」

 

黒ひげがモリアの通り名の通り名をつぶやいた。海軍は彼の影の能力を恐れてこの名を付けたが、図らずもそれが彼の真の力の名に相応しかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

〜マルコ・ジンベエ・赤犬side〜

 

 

 

 

 

「これはモリアさんの“覚醒した能力”...。これは有り難い...ルフィ君のダメージは変わらずわしは休息をとれる。」

 

ジンベエはルフィから垂れて地面に落ちかけていたルフィから垂れた血の水滴は宙に浮いており、傷口から血が体外へ出る寸前で止まりこれ以上の出血を図らずも抑えている。傷口から血液が出る寸前であれば内部でないため動かないのだ。

 

ルフィとジンベエの外傷は治療さえすれば何の問題もない。ただルフィは兄を目の前で殺された事でかなりの精神的ダメージを受けたのだ。だが気絶をしており、インペルダウン、マリンフォードでの肉体的負荷が甚大であったため目を覚ますことはないとジンベエは判断したのだ。

 

それよりもルフィを抱えて逃げるジンベエの体力を温存した方がいい。休めるのは赤犬()も同様であるが赤犬()を抑える白ひげ海賊団も同じ条件である為、体力の回復により食い止める時間を稼ぎジンベエの体力を回復させるのは都合が良かった。

 

 

 

「モリアのヤツ...これほどまでに能力を...。」

 

マルコはかつて悪魔の実の力の暴走とも言えるモリアの過去を見た。それに対して当時とは比べものにならぬ程の能力精度である事に驚いた。

 

儂ら(海兵)にまで能力の範囲内にするとは裏切りじゃのぅ...憶えちょれよ。」

 

赤犬は動かぬ白ひげ海賊団から目を逸らし、目の端でモリアを睨みつけた。

 

 

 

***

 

 

 

 

〜センゴク・ガープ・黄猿side〜

 

 

 

 

「モリアめ...。儂等じゃ影の支配からは逃れられん。もうふた回り若ければ何とかなるものを...。」

 

センゴクは己の覇気と衰えた身体能力では影の拘束はどうにもならないと嘆いた。

 

「影と対極にある“あっし()”でさえも拘束するって事は覇気か能力、もしくは両方に差をつけられてるって事だよねぇ...

ゲッコー・モリア...怖いねぇ...。」

 

センゴクとそう遠くない所にいた黄猿は呑気にモリアの技の分析を始めた。それに対してガープは歯を激しく食いしばり赤犬への殺意を殺そうとしていた。

 

「...。」

 

 

***

 

 

 

 

 

〜モリア・黒ひげ海賊団side〜

 

 

 

 

 

「動かぬ貴様を屠るのは興醒めというモノだ...。格の違いを教えてやろう。」

 

黒ひげの足元の影がフッと消えると彼自身の影が拘束を解かれて自由に動ける様になった。

 

「ゼハハハ...後悔させてやる。」

 

黒ひげは思いっきり折れた右手首を掴んでグキッと強制的に戻すと激痛が走ったが、歯を激しく食い縛って悲鳴をあげなかった。そして不気味にニヤッと笑った。

 

「“影編交刃(シャドウクロス)”」

 

モリアは両斜めからのありったけの覇気を込めた強力な影の一閃を互いに細々と無数に交差させ、黒ひげへ放った。

 

「ゼハハハ!!!!おめぇの影なんぞ支配さえされなきゃ恐るるに足りねぇぇぇぇッッッ!!!!」

 

黒ひげは覇気を纏った振動を起こして破壊しようとしたが、虚無化してあるため振動をすり抜け、身体にぶつかる寸前で実体化し黒ひげを斬り裂いた。

 

黒ひげは網状に激しく身体を切り裂かれて尋常なく出血をするとゆっくりと仰向けにバタリと倒れた。

 

「ハァッ...ハァッ...ハァッ...ハァッ...。」

 

黒ひげは息も上手く吸えぬ程のダメージを受けて目を濁らせた。モリアはゆっくりと歩いて黒ひげの顔の近くでしゃがんだ。

 

「やはり貴様は小物だ。さっさと死ね」

 

かつての白ひげはこの技を冷静に対処したのに黒ひげはなす術なく致命傷を負ったからである。モリアは黒ひげのデコに人差し指を置いた。そして指から実体化した鋭い影を放出すると黒ひげの頭を容易く貫いた。

 

 

 

(クソッ!!!!クソッ!!!!クソッォォ!!!!俺の長年の計画がァァァァァッッッ!!!!)

 

 

 

黒ひげは薄れゆく意識の中で悔しさを滲ませる声をあげたが、それがモリアに届くことはなかった。




モリアの覚醒の技はかなり分かりにくいと思われますし、作者の気付かぬ矛盾点があるかもしれません。ご指摘を受けても反論できない場合もございますので、発覚した場合は温かい目でご覧ください...

少なくとも修正できる様な場合でなければという場合です。


ちなみに耳が聞こえるのは鼓膜が振動するからで、鼓膜は体内であり影ができないからです。

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