海溝の狭間で   作:かわうちはいじ

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結構いろんな艦娘が死にますのでお気をつけください。


嫁艦がナレ死しても作者に殺害予告しないでください。



でも戦争ってそうじゃないとおかしいっていうか


プロローグ 大和轟沈

 

 

 

ーーー#0ーーー

 

 

 

『戦艦大和轟沈!

 

矢矧からの報告によると、戦艦レ級の爆撃を受け大破炎上、のち大爆発を起こし転覆、緊急救助の余地なし!!

 

擬装、及び本体の回収は絶望的だと…!』

 

 

オペレーター席にまるで目の前で子猫がトラックに轢かれたのを見たかのような、あまりにも悲痛に過ぎる叫び声ーーー報告が司令室を木霊したとき。

 

 

ある提督は火のついていないタバコを落とし、ある提督は蒼白として地蔵のように動かず、またある提督はその報告が信じられないあまり自分の管轄の艦娘にコンタクトをとり。

 

観戦武官はペンを走らせるのをやめた。

 

大淀が口にした言葉はそれほど、誰にとっても信じがたく、そして絶望的な物だった。

 

 

「擬装はどうでもいい!51㎝の連装砲でも何でもくれてやれ!

 

大和、大和本人だけはどうあっても回収しろ!」

 

 

そう叫んだのは、それらのなかでも最も早く状況を受け入れることができた、司令であった。

 

が、その司令とてただ状況を飲み込んだだけであって冷静に頭は働いておらず、

 

大淀の言の中にある、『回収不可』の部分は全くの無視であった。

 

 

『轟沈』、という言葉は、総じて一個の人間の死を意味するが、

 

それでも涙を流すものはその司令室には一人としていない。悲しさの前に訪れる感情は全員一致の焦燥で、皆、悪魔の手を借りてでもこの状況を回避しなければならないと、遅すぎる対処に思考を巡らせるのである。

 

故に吹き出すものは、脂汗。空調の効いた司令室にあって、誰もがその額に滴を載せていた。

 

 

 

「当該海域、或いは近接海域に潜水艦は居ないのか!誰か、配下に潜水艦をもつ者はーーー」

 

 

「現在、海老名艦隊が現場に急行しています、その中に伊401が配備されていますが、先の戦闘で中破しております、現在潜航は……」

 

 

「我が艦隊に潜水母艦大鯨がおります、中に甲標的を積んでおりますが!」

 

 

「アホかお前!んなちっさいもんで何ができるっちゅうんじゃボケ!だいたい潜水艦ごときの馬力で大和を引きずりあげるなんて無理や!

 

司令、今俺んとこの駆逐艦が急行してる、五分でつく!洋上からの攻撃でも、とりあえず敵の手ぇから大和を守ることぐらいはーーー」

 

 

「馬鹿野郎!爆雷打ってどうする、大和も再起不能になるだろうが!」

 

 

「いや司令、本人には悪いがいっそ木っ端微塵にしてしまうのも手かと」

 

 

「それができる駆逐艦がおる思うてんのか!アホ!」

 

 

「だがこのまま見過ごしたらどのみちもう一度我々は………」

 

「他の戦艦はどうしてる?!宜野湾にいる金剛は?近くに扶桑と山城もいたんじゃないのか?!

 

あいつらに潜らせてでもなんとしても大和は回収を!」

 

 

『金剛は現在、自力航行が不能です!榛名も中破状態で速度が出ません、当該海域まで最速で二時間、霧島、比叡は共々宜野湾沖に大破着底、

 

なお、扶桑、山城の両艦は1330より既に連絡途絶しており、僚艦の時雨、最上、那智、曙、共々消息不明です!空母ヲ級と会敵したとの報告が最後でーーー』

 

 

「もういい!ここから武蔵を出せ!」

 

 

「司令もアホになったか!?間に合うわけーーー」

 

 

「池添!お前の駆逐艦隊も使う!伊401も向かわせろ!やれることをやれ!場合によっては……大和の処分も辞さぬ!故にーーー」

 

 

『大和シグナル途絶!』

 

 

 

 

混乱した司令部を一刀両断にする大淀の声。

 

 

全員の顔から血の気が引いた。

 

 

 

 

沈没から一分経たぬ内のシグナル途絶。

 

 

 

それが何を意味するかは、その場の誰もが解っていることだった。

 

 

「とぜっ…」

 

 

 

『大和、深海棲艦によって、

 

奪取された模様………

 

追跡…………不可です』

 

 

 

涙混じりのオペレートが、

 

自軍から飛車が落ちたことを告げる。

 

 

 

その場の人間すべてが、溶けたアイスのように崩れ落ちて、そしてその原形を留めなかった。

 

 

皆、その未来、そしてこの戦争の着地点を嫌でも想像し、恐怖したのだ。

 

 

『艦娘』という第四の兵器が誕生して以来、最も大きな容量を持った『器』の喪失。

 

 

 

もし、彼女が再びこの洋上に姿を見せることがあったとき。

 

 

戦争が終盤を迎えた今、損耗に損耗を重ねた、自分達が持つ戦力で、

 

『彼女』を止めることができるのか。

 

 

 

 

 

指令部の人間は皆、

 

手元に桂馬と香車しかない棋盤を前にして、

 

 

言葉を失い、そして、

 

 

立ち尽くして何もできなかった。

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