トリックスターの友たる雷   作:kokohm

25 / 77





試作武器、専用武器、そして趣味武器

「満足したか?」

 

 戦いの後、座り込んだヴェルナの髪を括りなおしてやりながら、秋雅はそう問いかける。彼女の髪を秋雅が纏めているのは、彼女がそれを頼んだからだ。秋雅にしても、妹たちから何度となく似たような事を頼まれた経験があったので、特に抵抗も不慣れもなく、さくさくと彼女の髪を括ってやっている。

 

「うん、まあまあね。久しぶりに楽しかったー」

「そうかい」

 

 ヴェルナの満足そうな返事に、秋雅は軽く頷く。髪を纏めてやっている都合上その表情は見えないが、ヴェルナが当人の言うとおり、楽しげな表情を浮かべていることは秋雅にも分かった。

 

「ほら、纏めたぞ」

 

 そう言って立ち上がり、秋雅はポンポンと軽くヴェルナの頭を叩く。よく彼が妹たちにやる癖なのだが、それをヴェルナは拒む素振りもなく受け入れた。

 

「ありがとう。久しぶりに他人にやってもらったけど、やっぱりちょっとくすぐったいね」

「そりゃそうだろうよ」

 

 うーん、とヴェルナは立ち上がって背を伸ばす。そのまま右左と身体を伸ばした後、

 

「さ、て。そろそろ感想なんかを聞いちゃおうかな?」

 

 そう言って、ヴェルナは秋雅に向き直る。元々ヴェルナの方が秋雅よりも背が低いのと、やや上体を前に倒す体勢になっていたことから、ヴェルナは秋雅の顔を下から仰ぎ見るようにして覗き込む。その表情は、まるで親に自慢をしたい子供のようでもあると、そんな感想を秋雅は抱く。

 

「そうだな……まあ、中々悪くない仕上がりだが、もう少し注文をつけたいって所か」

 

 少し考えた後、秋雅はヴェルナの作ったVW-01をそう評価した。地面に置いていたそれを拾い上げ、長剣の状態にして軽く振りながら、秋雅は感想を続ける。

 

「一つの武器が自在に変形可能ってのは確かにいい。武器を持ち返る隙なく、自在に間合いや攻撃手段を変えられるってのは、俺みたいな半端者にはちょうどいい」

 

 とは言うものの、実際の所、この武器を扱えるのはそれ相応の実力を持っていなければ無理だろう。複合兵装、万能武器というものは往々にして扱いが難しい物であり、本当の意味での半端物が使いこなせるような物ではない。形状の選択や判断等、普通の武器を使うよりも圧倒的に難しいというのは自明だ。そういう意味では、難なく使いこなして見せた秋雅やヴェルナは、この手の武器に対する才能があると言っていいのだろう。

 

「そういうコンセプトだからね。満遍なく修めているけれど一つを極めていないって人にこそ効果的な武器、ってことになるのかな」

「量産性はどうだ?」

「まあまあってところかな? 流石にこのまま量産ってのは無理だけど、ある程度スペックダウンさせた物を量産するのは無理じゃないと思う」

 

 量産可能、それは秋雅がヴェルナたちに課しているもう一つの研究課題だ。より正確に言うのならば、魔術師であれば誰でも扱え、全体戦力の底上げを用意とする武具の開発、といったところだろうか。

 

「どの程度までいける?」

「量産前提となれば三つか四つも変えられれば十分でしょ。素材のランクも下げないといけないから反応速度と強度も下げることになるけど、そこは仕方がないということで。このままフルスペックで作るとしたら、結社のトップ周辺ってのが精々になるんじゃないかな。材料的にも、金銭的にもさ」

「そんなところだろうな」

「まあ、これを使ったところで神獣に勝てるかって言われると、そういうわけじゃないんだけどね」

「別にいいさ。確かに最終的な目的はそこにあるけど、これはこれで十分に強いからな」

 

 ヴェルナも言ったが、そもそもとして秋雅が彼女らにこういった武器を開発させているのは、最終的にはカンピオーネの力を借りることなく、魔術師達のみで神獣を討伐できるようにしたいからだ。

 

 ピンキリはあるものの、神獣というものは強力な存在だと言える。まつろわぬ神には劣るとはいえ、一般の魔術師程度ではどう足掻いても太刀打ちできない。一部、人の限界を超えているようなものたちだけが、辛うじて対抗できるかといった程度でしかないのだ。

 

 だが、しかし。いかに強力とはいえど、まつろわぬ神には劣る上、一部の人間であれば太刀打ちは出来るのだ。であれば、その一部の人間に強力な武具を与えれば、より戦いを有利に運ぶ事が出来るようになるかもしれないし、一般の魔術師でも数を揃えれば神獣を討伐できるようになるかもしれない。

 

 そもそも、まつろわぬ神はともかくとして、神獣にまでカンピオーネに任せるとなると、周辺への被害が正直割に合わないと言っていい。例えるなら、怪獣にミサイルを叩き込むのは分かるが、猛獣にミサイルを撃つのはデメリットの方が大きい、といったところだろうか。せめて神獣だけでも魔術師達に任せる事が出来れば各所の負担も大きく減るはずというのが、秋雅がこれまでの経験から得た考えであった。

 

 勿論、これには様々な問題が付きまとっている。しかし、その上で秋雅は、自分を慕う彼女らに、これを課大として研究を行わせている。その必要があると、彼自身が判断したからであった。

 

「まあそれでも、このVW-01なら神獣にも有効打を与えられると自負しているけどね。勿論、最低でも私達レベルの達人が振るうって前提だけど」

「それで十分だ。全体の底上げを望んでいるとはいえ、一部でも対抗できるレベルになるのであれば上々だよ」

「うん、ありがとう。じゃあ耳心地の良い感想はここまでとして、今度は改善点でも聞こうかな?」

「そう言われてもな。コスト面を除けば性能には不満はないし、第一、俺らの目的からして、まずは量産してもらわないとどうとも言えないぞ」

「じゃなくて、さ。普通に秋雅がVW-01を使うにあたっての不満だよ」

「俺の?」

「そりゃ、これは量産のための試作品だけどさ。一応は秋雅のための武器として作った面もないわけじゃないんだよね。これがまつろわぬ神に通じるかはともかくとしても、秋雅ってどんなものにしても手札になるなら貰うってタイプだし」

「まあ、それはな」

 

 役に立つ、立たないは別にして、手札が増えるに越したことはないというのが秋雅の主義だ。そのほうが選択肢は多くとれるし、何より器用貧乏よりの体質である彼にしてみれば、一つの事を執着して極めるよりも多数のことを習得する方が結果的には力となりやすいという一面がある。将来的には秋雅も一つぐらいは達人の域にまで達することも出来るだろうが、何分その時間がない。まだ、手を広げる方が稲穂秋雅にとっては効率的であった。当人も言っているが、だからこそヴェルナもVW-01という、秋雅の能力を引き出せる武器を作ったのであろう。

 

「そういうわけだから、不満点は言っちゃってよ。秋雅が帰るまでには、出来る限り改善して渡すからさ。秋雅専用武器、張り切って作っちゃうよ」

「そうか。ありがたい限りだ」

 

 言葉通りに元気の良い笑みを浮かべるヴェルナに、秋雅は心強いものだと思う。しかし、同時に彼の冷静な部分は、それが自分の力になりたいという想いからきているものだということを警告する。その想いに対し稲穂秋雅という男はどう答えるべきなのか、いよいよもって明確な答えを出さなければならないと、秋雅は改めて実感させられ、小さな声で呟く。

 

「……どうするべきなんだろうな」

「ん? 何が?」

「いや、何でもない」

 

 どちらにせよ、彼女、いや、彼女らの姉であり、自分の恋人であるウルと話をする必要があるだろうと結論付けて、秋雅はとりあえず目の前の事を片付けることに決めた。

 

「で、不満点、というか改善点か。まあ、とりあえずアックスとハンマーと大盾はいらん。どう考えても俺のスタイルに合わない」

「ああ、そりゃそうだね」

 

 基本、秋雅の戦闘スタイルは『我は留まらず』を前提とした高速戦闘であり、回避を重視したものだ。隙の大きい攻撃はあまり好まないし、足を止めての防御もまず行わない。受け流すならばともかく、下手に防御など選ぼうものならば確実にそれを受けた腕の方が吹っ飛ぶだろう。いかにカンピオーネが常人よりも頑丈と言っても、サルバトーレ・ドニの権能(『鋼の加護』)のようなものでもない限りまつろわぬ神の攻撃を受け止めるのは難しい。それだけあちらの攻撃力というものは過剰なのである。

 

 であるので、バトルアックスやウォーハンマーといった威力は大きいものの隙も大きい武器はいまいち相性が悪い。ハンマーにいたってはそれ以上の打撃力を誇る『雷鎚』があるのだから意味がないだろう。勝っているのはリーチのみで、それもどうとでもカバーできるものにすぎないのだから。盾にしてもまず使わなと言っていいい。小楯ならばまだ相手の刀剣を受け流す際に使えるだろうが、両手持ちの大盾などはっきりいって何の役にも立たないだろう。

 

「じゃあ、その三つは取り除いちゃおうかな。他は使う?」

「長剣と長槍はまず使う。小楯と短剣もまあまあ使うだろう。さっきは使わなかったけれど、篭手とランス、まあ鎖分銅も使う機会はありそうだ」

「七つか、ある意味ちょうどいいかもね。ラッキーセブンって言うし、代わりに大剣か大弓でも突っ込もうかと思っていたけど、いらない?」

「ふむ……」

 

 ヴェルナの提案に対し、数秒ほど思案の後、秋雅は頷く。

 

「大弓はともかくとして、大剣はまあアックスやハンマーよりは扱いやすそうだ。ちょっと俺には合わないかもしれないが、入れてしまうのも手だな」

「じゃあ入れちゃおうかな。考えてみれば待機状態もあるから、全体としては九つの姿に変えることになるし、そっちの方がいいかも。九ってのも結構いい数字だし。十の一歩手前の不完全さみたいな」

「まあ、分からんでもないが。とにかく、そういうことなら頼んでいいか?」

「はーいはい、じゃあその方向で。他にはある?」

「強いて言えば重量がな。短剣は重すぎ、抜くだろうがアックスは軽すぎだ」

「あー……」

 

 秋雅の不満点を聞いて、ヴェルナは、やはり、といったような困り顔を浮かべる。どうやら彼女も、その点に関しては理解していたらしい。

 

「そればっかりはねえ、材料が共通している以上何ともならないんだ。質量操作系の魔術を仕込むにはまだまだ足りない物が多すぎる」

「重い方はまだ良いんだがなあ、身体強化すればどうとでもなるから。だけど軽いのは武器の威力に直結するから困るぞ。特にハンマーやアックスみたいな、振り舞わす系統の武器はな」

 

 その手の武器は基本的に遠心力を使って振るうので、案外重すぎてもどうにかなることもあるが、軽すぎるとその遠心力がいまいち起きず、スピードも威力も大したものにならない。どうやらその当たりの調整は、まだまだ厳しいようである。

 

「これでまだ先端部分に質量が集中しているならともかく、そういうわけでもないしなあ」

「うーん、どうしても密度を部分的に変えるってのが出来なかったんだよ。だから全体として密度は一緒。その所為で短剣はみっちり詰まって硬いんだけど、長物は案外柔かったりするんだよね。いやまあ、それでも十分な強度なんだけど」

「どうにも、難しいな」

「量産型が二つ三つなのも、その重量問題が少なからず関係しているしねえ。使い手がそれ系の魔術を使えるならともかく、それを前提にするとなるとこれの存在理念に引っかかるし」

「どうしたもんだろうな」

 

 思案顔で、秋雅とヴェルナは唸り声を上げる。どうにかならないかと考える秋雅の目に、ヴェルナが持っているVW-01の存在が映る。ついで、何となく自身が持っている方を見て、ふっと彼の脳裏に一つのアイデアが浮かんできた。

 

「……ちょっと思いついたんだが、分割と結合って出来るか?」

「どういうこと?」

 

 つまり、と秋雅は持っているVW-01を待機状態である十センチ程度の棒に戻し、その中央辺りに手刀を軽く当てて言う。

 

「これの二つに分けて、その片方を基本単位とするんだ。その状態だけなら短剣を、二つで長剣、三つで長槍、四つで大剣、という風に出来ないか?」

「……あー、成る程。武器が大きくなるにつれて材料を付け足していくって風にするのか。その発想はなかったな。流石秋雅」

「そうでもないだろ。元のコンセプトからはちょっと外れるだろうが、俺専用ということなら構わないだろう?」

「使い手に応えるのが作り手だからね。秋雅がそうして欲しいっていうならそうするよ」

「それはありがたい……で、結局やれるのか?」

「そうだねえ……」

 

 虚空を見ながら、しばしヴェルナはああでもないこうでもないとぶつぶつ呟く。その状態を一、二分程度続けた後、

 

「……うん、出来るんじゃないかな」

 

 と、案外軽い調子で頷いた。

 

「元々呪力、というか持ち主の思考に反応するように感受性はかなり高くしてあるし、ちょちょっといじれば合体も出来そう」

「悪いが頼んでいいか? その方が扱いやすそうだ」

「オーケーだよ。お任せあれ」

 

 ぐっと、ヴェルナは胸を張って答える。その様に、秋雅はふっと笑みを浮かべる。

 

「頼もしい限りだな……さて、それじゃあそろそろ、費用関係の話をしようか」

「……それは、あんまりやりたくないなあ……」

「それも大事な話だから仕方ないだろう」

「分かっているよ。んじゃ、こっち来て」

 

 そう言って、ヴェルナは奥の小部屋を示す。それに頷いて、秋雅は彼女と一緒に歩き、小部屋の中に入る。

 

 

 小部屋の中は、一台のパソコンと大きな作業台らしき物、壁にかかった刀剣類に、所構わず置いてある金属類。奥には何やらシートをかけられた謎の物体なども置いてあり、中々に煩雑である。それが、普段ヴェルナが篭っている研究室の状況であった。

 

「はい、これが使った物の纏め」

 

 ごそごそと机の引き出しを漁った後、ヴェルナはとあるリストを秋雅に渡す。枠線を除き、ヴェルナの手書きであるそれには様々な物品の名前と使用量が書かれている。

 

 それを受け取り、秋雅は無言のまま読み進める。ヴェルナがやや苦笑いのようなものを浮かべながらそれを見つめている中、上下左右へと視線を動かす秋雅だったが、五分ほどの後軽くため息をつき、ヴェルナの方を見て口を開く。

 

「……とりあえず、今回は不問にしておいてやる」

「おお、それはありがたいね」

「が、今後は自重するように。何だ、このオリハルコンやらミスリルやらの使用量は。これ、ここにあった分のほとんど全てじゃないか」

「ははは……まあ、最高スペックにするにはそれだけ必要だったってことで……」

 

 胡乱げな目で見る秋雅に、全力で顔を背けるヴェルナ。その姿勢を一分ほど続けて、秋雅は呆れたように大きなため息をつく。

 

「……レポートはきっちり書いておけよ。後々必要になる」

「そ、それは大丈夫。そこはきっちりしているから」

「それと、使ったものの補充も手配しておく。やれやれ、また金が飛んでいくな」

 

 その金額は下手をすれば上流階級の家庭の年収ほどであるが、言うほど秋雅の口調に大変そうな様子はない。軽々と、とまではいかないものの、秋雅の貯蓄なら問題なく払える額だし、秋雅にしても溜まっていくばかりの貯金を世間に放逐できる機会なので、態度の割には望んでいることでもあるのだ。溜め込みっぱなしでは社会は回らない、ということぐらいは秋雅でも知っていることなのである。

 

「あ、そうそう。秋雅にもう一つ使って欲しいものがあったんだった」

「使って欲しい?」

 

 空気を変えるためか、本当に偶々思い出したのか。ヴェルナは奥にあるシートをかけられた物体の前に向かう。彼女の言葉にやや怪訝そうな表情を浮かべる秋雅の前で、ヴェルナはバッとシートを外す。

 

「じゃーん! 見よ、これが私とスクラで作った特別兵器の正体だ!」

 

 何かの影響だろうか、えらくハイテンションなヴェルナの言葉を聞き流しながら、秋雅はヴェルナが示した物体を見る。

 

「これは……」

 

 そこにあったのは、巨大な杭であった。鋭く、長い金属の杭の根元の部分が四角い金属で覆われており、その四隅には杭の半分ほどぐらいの長さがある、先端が鉤状になった金属の棒が取り付けられている。杭の根元の四角い金属には、それとはまた別の薄い金属で作られたカバーらしきものが接続されている。カバーの方はちょうど人の腕を通すぐらいの直径をしており、先端部分にグリップが取り付けられていることから、そこに腕を突っ込んで使用するのであろうということが見て取れる。

 

 そんな、何やらよく分からぬ物体であったが、秋雅はすぐにその正体に勘付いた。呆れたようにため息をついた後、ジトッとした視線を自慢げなヴェルナに向け、まるで地獄の底から発しているかのような低い声で、秋雅は彼女に問いかける。

 

「……ヴェルナ、これは、何だ?」

「ふふん。これこそが神獣の頑丈な体表をぶち抜く為に、偶々見た日本のロボットアニメから着想を得た最終兵器。その名もそのまま、パイルバンカー!」

 

 ヴェルナの楽しそうな態度に、秋雅はいよいよ頭が痛くなってきたという風にこめかみの辺りを手で押さえる。その表情には、明らかな呆れの色が浮かんでいる。

 

「……よくもまあ作ったもんだ」

 

 まあ、簡単に言えば杭打ち機である。杭、つまりはパイルを何かしらの力を用いて高速で射出し、対象を打ち抜くというもので、その手のロボットアニメなどでは時折出てくる、所謂ロマン武器と呼ばれるものだ。

 

「まあ、作ったものは仕方ないとしても、ヴェルナ」

「なに?」

「これ、どうやって使う気だ? 人間大にした所で、とても使えるものじゃないだろ」

 

 秋雅の言うとおり、単に小型化したものを作った所でとてもではないが役に立つものではないだろう。反動をどう抑えるかなどもあるが、特に重量の問題がネックとなってしまうのだ。単純な話、例えば金属板を打ち抜こうとするだけの威力で杭を放った場合、相手の重量が軽ければ、杭が相手に刺さらずにそのまま吹っ飛ばしてしまうだろうし、逆に反作用で自分が吹っ飛ぶ可能性もある。この手の兵装ががロボットアニメで活躍しているのも、あれをロボットというかなりの重量物が使用しているからに過ぎないのであって、人間が使ったところでまず役に立つとは思えない代物なのである。

 

「いやいや、そこはそれ。私達だって考えてあるって」

 

 しかし、そんな秋雅の疑念に対し、ヴェルナは気取ったように指を振る。その素振りに視線を鋭くしつつ、秋雅は無言のまま顎をしゃくって説明を要求する。

 

「最初に言った通り、これはあくまで神獣相手に使う事を前提としているんだ。神獣というのは基本大きいから、重量の問題は大丈夫。自分が吹っ飛ぶ可能性にしたって、このクローの部分に接着と固定の魔術をガッチガチに付加してあるから、これを使って固定した状態で放てばまず吹っ飛ばされないと思う」

「反作用はどうするんだ? この感じだと腕に取り付けるみたいだが、下手をすれば打った瞬間に肩が外れるぞ」

「そこはまあ、秋雅なら大丈夫かなって」

「……俺が使うのか」

「仕方ないじゃん。そりゃ最終的には一般の魔術師でも使える段階まで持って行きたいけどさ、反動軽減の魔術の研究とか、今はまだ無理なんだもん。秋雅なら大丈夫じゃないかなってレベルまで押し込めるのが限界だったんだよ」

「はあ……で、威力は?」

「鉄板どころか鉄塊だってぶち抜けるよ。そこは私達が保証する。実際の所がどうなるかは実戦で使ってもらわないと分かんないから、是非とも秋雅にはデータを取ってほしいところなんだけど」

 

 駄目だろうか、とヴェルナは上目遣いで秋雅の顔を見つめる。が、しかし。その表情に浮かんでいるのは間違いなくマッドサイエンティストのそれだ。新兵器を試してみたい、という欲求がありありと見て取れる。何だかんだといって普段は真面目に研究をしているヴェルナやスクラであるが、ふとこういったおかしな代物を作るのが玉に瑕だと言えよう。しかも、そういう時に限って成果を挙げるものを作るから性質が悪い。

 

「………………分かった、機会があれば使ってみる」

 

 たっぷりの無言の後、秋雅は息を大きく吐き出して了承する。将来のため、データを取るのもまあありだと、最終的に判断した結果である。これも甘さなのだろうかと、ふとそんな事を思う秋雅であった。

 

 




 これでようやくヴェルナの話は終わり。予想以上に長くなってしまった。次はスクラだけど、こっちよりは多分短くなると思います。ちなみに最後のあれは後々にでも使う予定。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。