錬鉄の英雄 プリズマ☆シロウ   作:gurenn

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さあ、いよいよバーサーカー戦です。

そして、ここから原作と展開を変えます。

それではどうぞ。


不死身の狂戦士

【士郎視点】

 

俺はまた、夢を見ている。前回も見た荒野だ。無数の剣が突き立っている荒野。視線を動かして、あの丘を探した。そしてそれは、すぐに見つかった。前回とは違って、俺は意識的に丘を目指す。

 

その丘に、あの男が立っていた。向こうも、俺が来る事を分かっていたらしい。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、『早く来い』と言っているようだった。何の用かも分かってるか。

 

無数の剣が突き立った荒野を突き進む。その剣一本一本に、無念と後悔の念を感じる。そう、今の俺と同じ念を。その事に苦い気持ちになりながらも、俺はその剣の念を感じ取り心に刻んでいく。

 

丘の麓に辿り着いた。見上げると、さっき見た時と変わらない表情で俺を待ち構える男が見える。俺は改めて決心して、無数の剣が突き立つ丘を登る。このままじゃいけない。駄目なんだ……

 

『……どうして俺が来たのか、分かってるよな?』

 

『……分かっている』

 

短いやり取り。それで十分だった。何故か、多くを語る必要はなかった。俺はこいつの事を誰よりも理解できるような気がした。そして、逆も同じだとも。こいつも、俺の事を理解してるんだ。

 

『このままじゃ駄目なんだ。俺は、もっと強い力が欲しい』

 

『……それは何故か、聞いてもよいか?』

 

『言わなくても分かるだろ?』

 

『分かるとも。だが、お前の口から聞かねばならん』

 

『……イリヤが……妹が、今深く傷ついている。俺が弱かったせいで……』

 

『……』

 

俺は男に訴える。イリヤが、泣いている。ごめんなさいと、謝り続けている。部屋に閉じ籠って、出てきてくれない。森の一件のせいだ。でもあれは、イリヤは悪くない。俺のせいなんだ。

 

『俺がもっと強かったら、あんな事にはならなかった』

 

『そうだな』

 

『俺がアサシンを倒せていたら、イリヤはあんな力を使わずに済んだんだ!』

 

そう、その筈だ。イリヤを守るなんて大口を叩いて、その結果があれだ。これでは、何の為に力を手に入れたのか分からない。イリヤに助けられて、その結果泣かせてしまうなんて最悪だ。

 

『俺には分かる! アンタなら、アサシンを倒せていただろ?』

 

『……可能だ』

 

『俺は、その力が欲しい!』

 

『……』

 

『どんな事になっても構わない。ただ、もう二度とイリヤを泣かせたくないんだ』

 

『いいだろう』

 

『……え?』

 

『今度は、このオレが力を貸してやる。次の敵は、お前が倒せ』

 

『……分かった。ありがとう』

 

目的は果たした。意識が浮上していくのを感じる。目が覚めるんだろう。目が覚めたら、また戦いが待っている。あの状態のイリヤがどうするかはまだ分からないが、今度こそ守ってやる。

 

誓いをここに―――俺は次の戦いに赴くのだった。

 

…………………………………………………

 

「……よし、行くか」

 

ベッドから起き上がり、体に巻かれた包帯を取り去る。部屋から出て、隣の部屋に行く。イリヤがいるか、それともいないか。最後に確認しておこうと思ったから。その部屋の扉をノックする。

 

「イリヤ……いるか?」

 

返事はない。だけど、部屋の中で何かが動いた音がした。どうやら、イリヤはいるらしい。でも、まだ俺と話してはくれないようだった。この様子では、これからの戦いには参加しないのかな。

 

「……俺、行くよ」

 

『っ!?』

 

「イリヤの分まで、戦ってくるから」

 

『……どうして? 凛さんとルヴィアさん、それと美遊がやってくれるって言ってたよ』

 

イリヤが答えてくれた。声は震えてるけど。怖いんだな。もう何年もの付き合いになるから、俺はイリヤの気持ちが手に取るように分かる。俺と話してくれなかったのも、それが原因だな。

 

「そうだな。確かに、俺がやらなくてもいいかもしれない。あの三人になら、安心して任せられるかもしれない。でも、それじゃ俺が満足できない。これは、何も立派な志って訳でもないんだ」

 

そう、これは立派な志ではない。ましてや、正義の為なんかでもない。これは、俺の心を満足させる為の戦いだ。カードを放っておけば、俺の大切な人達が危ない。だから、『俺が』守りたい。

 

「それに、このまま俺がリタイアしたら、イリヤが自分を責め続けてしまうだろ?」

 

『!?』

 

「俺は何ともない。この程度、大した事ないんだ。それを証明してくるよ」

 

俺が何ともないと証明できれば、イリヤも自分の力に怯える事もなくなる筈だ。その為にも、今回の敵は俺が倒さなくちゃいけないんだ。きっとそれが、何よりの証明になると思うから。

 

『……どうして?』

 

「決まってるだろ? それは、俺がイリヤのお兄ちゃんだからだよ」

 

『あ……』

 

「あの日、お前のお兄ちゃんになった時から、俺はずっと変わらない。だって、お兄ちゃんが妹を助けるのは当たり前だろ? 例えどんな奴が相手だって、伝説の英雄が相手だって、俺が守る」

 

『お兄ちゃんっ……』

 

「行ってくる。イリヤを怖がらせてる奴を、俺がやっつけてきてやるからな」

 

言いたい事は全て言った。だから、俺は行くんだ。イリヤの部屋の扉から離れて、俺は下に降りていく。一階に降りると、玄関に立っている人影がいた。その姿を見て、俺は笑ってしまった。

 

「……またどこかへ?」

 

「ああ。ちょっと、妹を怖がらせてる奴を倒しにな」

 

「……また熊ですか?」

 

「いや、伝説の英雄」

 

玄関に立っていたのは、我が家の家政婦さんだった。険しい顔をして、今日こそはどこへも行かせませんと言いたげなセラに、俺は軽い調子で答える。そう答えた瞬間、セラは呆気に取られた。

 

「大したシスコンですね」

 

「はは、否定できないかな?」

 

「昔を思い出しますね。イリヤさんをいじめていたいじめっ子を殴りに行った時とか」

 

「ああ、そんな事もあったっけ」

 

そう、俺にとっては、それと大差はない。今回はちょっと、敵が強すぎるけどな。セラは、まさか俺が本当に伝説の英雄を倒しに行くとは思ってないだろうなあ。そんな事を考えて、俺は笑う。

 

「……ご武運を」

 

「ああ」

 

でも、セラの声は真剣だった。まさかセラは、信じているんだろうか。って、そんな訳ないよな。普通に考えて、本気で言っているとは思えない内容だろうし。セラに見送られて、外に出る。

 

「……星が綺麗だな」

 

夜空を見上げて、そう呟く。これから死闘が始まるなんて、想像もできない星空だ。でも、きっと今回も強敵との死闘があるだろう。何故か俺はそう確信していた。それは不思議な予感だった。

 

「もしもし、遠坂か? 今どこだ?」

 

『ちょっ、衛宮君貴方、まさか来るつもり!?』

 

「ああ、行くよ」

 

『貴方、まだ怪我が……』

 

「大した事ない。だから、場所を教えてくれ」

 

『……はあ、もう好きにしなさい。場所は……』

 

遠坂に電話を掛けて、場所を聞き出す。アーチャーのカードを握り締めて、俺は教えられた場所に向かって走った。きっとこいつも力を貸してくれる。さっき、夢の中でそう約束してくれたから。

 

本当なら、俺みたいなガキの我儘で力を借りていい奴じゃない。何となくそれが分かる。それでも応えてくれた。そんなあいつの力を、俺は巧く使えるだろうか。いや、使わなければならない。

 

「イリヤの為に!」

 

最後に、決意を込めてそう叫んだ。

 

…………………………………………………

 

「なあ遠坂。クラスカードって、あと何枚あるんだ?」

 

「二枚よ。時計塔が確認したカードは、全部で八枚。サーヴァントの基本クラスが七枚、そして、基本クラスのどれにも該当しない特殊なクラス、エクストラクラスが一枚。これは詳細不明」

 

「どれにも該当しない……どんな相手なのかも分からないって事か」

 

「そう。今回相手にするのは、バーサーカー。狂戦士のクラスよ」

 

狂戦士か。他の基本クラスは全部回収してるから、今回は敵がどんな奴か推測できる所がいいな。ある程度の対策が立てられる。遠坂は、多分今回の敵は物理攻撃しかしてこないと言った。

 

「狂戦士ですもの。魔術は使ってこないと思うわ」

 

「そうか」

 

「……士郎さん、本当に来るんですか?」

 

遠坂と話していると、美遊がそんな事を言い出した。その表情は、かなり不安そうだ。俺の事を心配してくれているんだろう。やはり、この娘は優しいな。だけど、俺の答えは決まってる。

 

「行くさ。イリヤの恐怖を取り除く為にも、そして美遊を守る為にもな」

 

「……え?」

 

「美遊が一人で背負い込む事はない。イリヤの事も、俺の事もな」

 

「あ……」

 

やっぱりそうか。美遊は、これ以上自分以外が戦わなくていいようにしてる。イリヤが戦わなくていいように。俺が戦わなくていいように。でも、それは美遊みたいな子供が背負う事じゃない。

 

俺は美遊の事も守りたい。もう随分昔の事のように思えるが、俺はそう約束したんだ。あの不思議な夢の事を、俺は忘れていない。あの夢があったから、俺は今こうしていられる気がする。

 

このカードを手にできたのも、全てはあの夢のお陰。そんな気がする。だから俺は、美遊の事も守らなければいけないんだ。俺は、そう確信している。強張った顔をしている美遊の頭を撫でる。

 

「子供が無理して背負い込もうとしなくていい。美遊の周りには、一緒に背負ってくれる人が何人もいる筈だし、これからも増えるだろう。きっと、これから何人もな。それを忘れないでくれ」

 

「っ……」

 

「いい言葉だと思うけど、アンタにだけは言われたくない気もするわね」

 

「同感ですわ」

 

「ちょっ、いい所なんだから余計な事言うなよ!」

 

涙を流す美遊と、俺を茶化す遠坂とルヴィア。いい所で締まらないな。さて、そろそろこの辺にして行くとしようか。俺はアーチャーのカードを取り出して変身する。そして、鏡面界に飛ぶ。

 

狂戦士との、死闘の始まりだった。

 

…………………………………………………

 

「……あれが……」

 

思わず、呆然とそう呟いた。美遊達も、その敵に絶句している。廃ビルの屋上、給水塔の横にいたそいつは、あまりにも圧倒的な存在感を放っていた。それはもしかしたら、セイバー以上か。

 

その体躯はあまりにも巨大で、まるで岩のよう。実際の大きさは2メートル超といった感じだが、その存在感のせいでその十倍はあるように見えた。まさに巨人だ。その手には、無骨な剣。

 

まるで巨大な岩を切り出したような、斧のような剣を持っていた。その男の全身は黒く、盛り上がる筋肉が鋼の鎧のように見えた。そして、何よりもその顔と目。まさしく狂戦士に相応しい。

 

その目に睨まれただけで、重苦しい戦慄に押し潰されそうになる。考えるまでもない。こいつは、化け物だ。全員がそれを悟った。悟らされた。瞬時に、どう戦うべきかを俺達は考えた。

 

「遠距離攻撃か!?」

 

「そうしたいけど、この空間の狭さじゃ無理よ!」

 

あんな化け物に、接近戦を挑まなければならないなんてな。俺はそう心で毒づきながら、白と黒の双剣を作り出した。あの巨体なら、恐らくそんなに速くはないだろう。そう思った時だった。

 

「なっ!?」

 

コンクリートが爆発したような音がしたと思ったら、俺の目の前に筋肉の塊がいた。驚愕に目を見開く暇もなかった。奴が岩のような拳を振り上げていたからだ。俺は即座に剣で受け流す。

 

「くっ、逸らしてなおこの威力か」

 

拳を受け流した両手に、凄まじい衝撃が響いた。この威力、あのセイバー以上だ。しかも、魔力のブーストとかはなく、単純な膂力でだ。とんでもない力だった。しかも、この手応え……

 

「冗談抜きに、鋼を叩いたみたいだ」

 

「衛宮君、何とか頑張って! 美遊、援護よ!」

 

「はい!」

 

どうやら、俺はこいつを引き付ける役目のようだ。敵は、左の拳を流された格好で少し動きを止める。この隙に接近しようとしたその時、敵は縦に一回転した。予想外のその動きに、俺は驚く。

 

「なっ、く!」

 

左の踵落としが、頭上から降ってきた。何とか双剣で受け止めるが、凄まじい衝撃。動きが止まって、少し後ろに下がる。まずい。そう思った時、敵はすでに右手の斧剣を振りかぶっていた。

 

「【砲射(シュート)】!」

 

背筋を凍らせたが、美遊が魔力砲を撃ち込んで、助けてくれた。魔力砲が命中した敵が少し後ろに下がり、動きを止める。その隙を逃さず、俺は双剣を渾身の力で打ち込んだ。だが、それは……

 

「嘘だろ!?」

 

およそ肉体に打ち込んだ感触ではなかった。敵の攻撃を受け止めた時の感触と同じ。鋼を叩いたみたいな感触で弾かれてしまった。幾らなんでも、英霊化してる俺の全力の攻撃が効かないなんて。

 

「衛宮君、下がって!」

 

「くっ」

 

遠坂の指示に、俺は咄嗟に後ろに飛んだ。次の瞬間、一斉に撃ち込まれる攻撃の嵐。美遊の魔力砲だけでなく、遠坂とルヴィアも攻撃に参加したようだ。俺も、追加で【赤原猟犬(フルンディング)】を撃ち込む。

 

「こんな事って……」

 

「無傷……?」

 

だが、それでも掠り傷一つ付けられない。少し後ろに下がっただけだ。そして、奴は俺達を睨み付けて咆哮を上げた。その肉体が、さらに一回り大きくなったような気がした。赤黒く色付く。

 

「……幾らなんでも、こんなのってありか?」

 

俺の呟きは、全員の心を代弁していた。こっちの攻撃は効かず、向こうの攻撃は一発でもまともに受けたら即終了。こんなの、反則すぎるだろ。このままじゃ勝てない。それは明白だった。

 

「考えてる暇もないか!」

 

『―――――ッ!』

 

バーサーカーが再び咆哮を上げて、こっちに突っ込んできた。美遊達の攻撃が雨あられと命中するが、やはりまったく効いている様子がない。意に介さずに、真っ直ぐに突っ込んでくる。

 

『駄目です、効いている様子はありません! 全て体表の表面で弾かれている感じです!』

 

全員が横に飛んで攻撃を躱した時、サファイアがそう叫んだ。確かに、そんな感じだ。今までの敵にも、こちらの攻撃を弾かれる事はあった。それは例えば、キャスターでありセイバーだ。

 

だけどあれは、魔術や魔力によるものだった。だけど、こいつはそんな感じじゃない。やつらとの決定的な違い。それは……攻撃は当たってはいるが、その全てが弾かれているという事だった。

 

「それって、まさか……」

 

『はい。間違いないでしょう……恐らく、一定ランクに達しない全ての攻撃を無効化する鋼の鎧。それが、敵の宝具です。牽制や足止めの類は、あの敵には全て無意味という事になりますね』

 

「……」

 

あの肉体そのものが、無敵に近い鎧。そういう事だ。サファイアの言葉に、全員が言葉を失った。そんなの、殆ど反則じゃないか。だけど、現実に存在している以上、打開策を講じなければ。

 

「取りあえず、一番威力がある攻撃をしてみる!」

 

俺はそう言って、双剣を投げ捨て、一本の剣と弓を作り出す。呪文を唱え、弓に番えると同時に形を変える。今の俺にできる最大の攻撃。これでノーダメージだったら、最後の手段に出る。

 

「【偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)】!」

 

美遊が引き付けてくれている間に、俺は必殺の意を込めて矢を放った。その矢は、敵の胸の中央に命中し、大爆発を起こした。閃光に目を細めながら、敵の姿が現れるのを待った。すると……

 

「倒した……?」

 

遠坂の呟きが聞こえた。俺達の視線の先には、確かに胸が抉れた敵が膝をついている。だけど、俺は警戒を緩めなかった。何故なら、敵はまだカードになっていないからだ。つまりそれは……

 

「そんな!?」

 

バーサーカーの腕が、ピクリと動いた。やはり。次の瞬間、奴は天に向かって吼えた。もう、何度驚かされただろう。奴の胸の傷が、煙を上げながら治っていく。まるで、逆再生のようだった。

 

「……まさか、蘇生能力……」

 

ルヴィアの呟きは、絶望に満ちていた。そういう事なんだろう。こいつは、死んでも生き返る能力を持っているんだ。一体どこまで反則じみているのだろう。まさに、不死身の英雄だった。

 

「だったら、もう一撃ぶち込んでやる!」

 

蘇生中で動けない敵に向かって、俺は再び【偽・螺旋剣】を放った。だが、敵はその矢を右手で掴んで止めてしまった。ならばと、俺は剣に魔力を送って爆発させた。さながら、剣の爆弾だ。

 

「……おいおい、こいつ……」

 

だけど、駄目だった。そこには、もう完全に傷が治った化け物がいた。今の爆発は、直接命中したのと変わらない威力だった筈だ。それなのに、今度は無傷。一体どうなっているんだよ?

 

『……恐らく、これもあの宝具の能力です。同じ攻撃には耐性が付くんでしょう』

 

「……嘘だろ?」

 

サファイアの言葉は、実質的な敗北を意味した。あの防御と蘇生能力、さらに同じ攻撃への耐性? そんな奴、どうやって倒せばいいんだ? 全員がそう悟ったのが分かった。こうなったら……

 

「撤退よ! こんな奴、対策しないと勝てっこないわ!」

 

遠坂の叫びに、ルヴィアが頷いた。それが最善なのは、俺にも分かった。だけど俺は、心の中で別の決意を固めた。ここで撤退する事の意味が分かっているからだ。現状では勝ち目がない。

 

なら、次はイリヤにお呼びが掛かるだろう。それだけはさせられない。ビルの壁面に、美遊が穴を開けて、遠坂達が飛び込んでいく。俺も、その後に続いた。最後の手段を実行する為に。

 

バーサーカーが壁面を殴り壊して、窮屈そうに後を追いかけてくるが、狭さのせいであのスピードを発揮できていない。俺達はその隙に奥に進み、敵との距離を十分に引き離す事に成功した。

 

よし、ここまでくれば……

 

「ここで良いわッ! サファイア!」

 

『はい! 限定次元反射路形成、鏡界回廊、一部反転します』

 

サファイアの声が響き渡る。魔法陣が俺達の足元に輝き、全員が美遊の周りに集まる。俺はその様子を冷静に見ていた。もう何度も聞いたサファイアの言葉。タイミングは絶対に外さない。

 

『【離界(ジャン)】……』

 

ここだ。俺は、美遊の手からサファイアを奪った。そして、美遊を後ろに突き飛ばす。

 

「なっ!?」

 

衛宮士郎(エミヤ シロウ)!?」

 

「えっ……」

 

『士郎様ッ!?』

 

そして、サファイアを手にした俺だけが魔法陣から外に出た。

 

「ごめんな。後は俺に任せてくれ」

 

驚愕の表情を浮かべる三人に、俺は静かに告げた。そして、全員の姿が消え去った。これでいい。これで俺は、思う存分戦える。誰の邪魔も入らずに。手にしたサファイアが、何か叫んでいる。

 

「……さあ、始めようぜバーサーカー」

 

次の瞬間、天井を破壊して降りてきたバーサーカーに、俺は告げる。ここからは、俺達の戦いだ。




イリヤの為に、そして美遊の為に怪物バーサーカーに単身挑む士郎。

次回、プリヤ士郎が大暴れします。お楽しみに。

それでは、感想を待ってます。

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