錬鉄の英雄 プリズマ☆シロウ   作:gurenn

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はい、という訳で(どういう訳だ)、今回は妹達の、妹達による、妹達の為の妹戦争です。
読みは、せいまいせんそうかっこしんです。

今回は、事案発生? って感じです。
それではどうぞ。


聖妹戦争(真)

【士郎視点】

 

さて突然だが、皆は『キス』という行為についてどう思うだろうか? キス、口付け、接吻等々。言い方は世の中に色々あるが、それは一般的に、親しい異性に対する愛情表現を意味する行為だ。

 

では次に『人工呼吸』という行為については? これは行為そのものはキスと同じだが(正確には口と口とを付ける訳ではないんだが)、愛情表現ではなく人命救助。助ける為の行為だと言える。

 

しかし、ここで問題になるのが、行為そのものは端から見ると同一であるという点だ。特に、相手が異性であれば尚更に。純粋に相手を助けたいと思っていても、他人には誤解を与えてしまう点。

 

もしも救助の必要が理解できなければ、100%誤解を与えてしまうだろう。そして、その必要性を相手に説明する事ができないとしたらどうか。詰みである。どうしてこんな事を考えているか。

 

その理由は……

 

「ほらお兄ちゃん♪ は・や・く♪」

 

「だからさせないって言ってるでしょ!」

 

「クロ、それ以上士郎さんに近付かないで」

 

「……このロリコン&シスコン……」

 

「セラ、誤解だ!」

 

「あらあら♪」

 

「楽しそうだね」

 

今まさに、衛宮家のリビングで繰り広げられているこの状況のせいである。目を閉じたクロが俺に唇を突き出して首に腕を回し、甘えた声を出す。そして、イリヤと美遊が、そんなクロを止める。

 

セラは俺に冷たい視線を向けて、掃除機を振りかざして迫ってくるし、アイリさんはそんなセラに両手を突き出して必死に命乞いをする俺を楽しそうに見てくる。どうやら助けてくれないらしい。

 

リズもリズで、そんな俺達を横目で見て、淡々と感想を言うだけだ。こら、晩御飯の前にポテチを食べるんじゃない、ポテチを。そう言いたいが、今は目の前にいるセラさんを宥めなければ……

 

一体どうしてこんなカオスな状態になったのか。それは1時間前に遡る。そう、辛くもバゼットを追い返したその翌日。俺達衛宮家一同は、向かいにある崩壊したエーデルフェルト邸を訪れた……

 

…………………………………………………………

―1時間前―

 

「もう工事始まってるんだね」

 

「あらあら。本当に、見事なまでにぺしゃんこになっちゃったのねー。あははははははははは♪」

 

「お、奥様! 笑うところではありません!」

 

「やほーい♪」

 

「お見舞いに来たぞ」

 

瓦礫を撤去している重機が二機と、数人の作業員が見える旧エーデルフェルト邸。アイリさんは、相変わらず一般人とはかけ離れた感性を持ってるようで、潰れた屋敷を見て朗らかに笑っている。

 

「なんでも、ボイラーの爆発事故があったとか」

 

周囲の住人にはそう説明していた。セラは、そう言いながら美遊にお見舞いの品を渡した。本当の原因を知ってる俺は、苦笑を浮かべるしかない。それから俺達は、ルヴィアの無事を確認した。

 

「おほほほ、あの程度の損傷を引きずるほどヤワではなくてよ。今は、あのマッシブ女にどう恩を返すか考えるのが楽しくて楽しくて。とりあえず屋敷の損害分を協会に請求しつつ、まわりまわってヤツの負債になるようにネゴと根回しを……」

 

「いやぁ、お元気そうでなによりです!」

 

怖いよルヴィア。バゼットに対する恨み言を延々と呟きながら、全身から炎を吹き出すルヴィア。そんなルヴィアを見たイリヤが怯えている。どれだけ陰湿でタチの悪い仕返しをしているんだよ。

 

「衛宮君、ちょっと……」

 

その後、クロがルヴィアに泊まる場所の話をしていた時だった。全員の注意がそっちに向いている隙に、遠坂が俺の肩を叩いた。振り向くと、遠坂が申し訳なさそうな顔で俺を皆の輪から離した。

 

「なんだよ、どうした遠坂?」

 

「ええ、衛宮君に言わないといけない事がね」

 

一体どうしたんだ? 遠坂らしくもない。遠坂は本当に申し訳なさそうな顔をしてる。そんな遠坂を見て、俺はなんとなく嫌な予感がした。そんな俺の予感は、見事に的中してしまう事になった。

 

「実は、クロの魔力供給用の衛宮君の血。瓦礫の下に埋まっちゃってて、すぐには取れないのよ」

 

「なっ!?」

 

「しかも、注射器もあの下に埋まっててね。普通の一般人の血液じゃ、あの娘の魔力を補給する分には全然足りないから、輸血パックの血を使う事もできない。さらに悪い事に、クロは今魔力不足の筈よ。バゼットとの戦いで消耗しているから」

 

「大変じゃないか!」

 

魔力不足。クロにとってそれは死活問題だ。消滅の危機を意味するからだ。ちらりと、横目でクロ達の様子を見る。どうやら、美遊一人だけウチに泊まりにくるという事が決まったみたいだけど。

 

クロはいつもと変わらないように見える。だけど遠坂の見立ては信用できる。表向きは大丈夫そうでも、本当は辛いのを我慢して隠しているのかもしれない。俺やイリヤに心配をかけないように。

 

「バゼットに呪いを掛けた時に使った血は、元々衛宮君に届けようとしてた物なの。だから手元にあったんだけど、保管してたやつは、今は取りに行けない場所にあるのよ。本当にごめんなさい」

 

「……」

 

「今朝早く屋敷の被害状況を調べてみて、初めて分かったのよ。昨日は大丈夫だと思ってて……」

 

「いや、遠坂のせいじゃないよ」

 

そう、遠坂を責めるのは間違っている。あの状況でクロ用の血まで守るなんてできっこない。遠坂は精一杯やってくれた。もし遠坂があの時電話に出てくれなければ、俺は絶対間に合わなかった。

 

「でも、一体どうするの? かなり消耗している筈だから、多分少量の血じゃ足りないと思うわ」

 

「そりゃ、クロが助かるなら幾らでも……」

 

「馬鹿言ってんじゃないわよ! あんたがやばくなったらなんの意味もないって分からないの? クロがそんな事望む訳ないでしょうが。ちょっとは心配するこっちの身にもなれってのよ! 前回のあれで、イリヤが大泣きしてたでしょうが」

 

「う……それはだって……でもさ……」

 

「でももだってもないわよ。とにかく、限界まで血を飲ませるのは禁止よ。分かった、衛宮君?」

 

「わ、分かった……」

 

そう言われてしまうと頷くしかない。遠坂の言葉でイリヤの泣き顔を思い出してしまったからだ。あの時は本当に大変だった。わんわん泣きながらすがり付き、俺の胸を叩くイリヤを宥めるのは。

 

「でも、じゃあどうすればいいんだ?」

 

「……方法は一つしかないわね」

 

「まさか……」

 

クロを助ける方法を聞く俺に、遠坂は苦渋の決断を下すような表情でそう言ってくる。おいおい、まさかと思うが、あの方法じゃないだろうな? それは、別の意味でやっちゃいけない方法だろ。

 

「クロにキスするのよ」

 

「やっぱりそれかああああ! 駄目だろ、色んな意味でそれだけは。ほ、他の方法はないのか?」

 

「衛宮君、これが一番手っ取り早い方法なのよ。お手軽で特に危険もないしね。最善策は、もっとやっちゃいけない事だし。いいじゃない、こんなの人工呼吸と同じよ。人命救助よ、人命救助」

 

「いや、そうは言うけどさ……」

 

もっとやっちゃいけない最善策ってなんだよ? そう思ったけど、聞くのが怖いのでやめておく。遠坂が言っている事は正論なんだけど、やっぱりどうしても抵抗がある。だって、相手は妹だぞ?

 

「クロの魔力供給は、あんたが責任を持ってやるって約束でしょ? イリヤとか美遊にも任せられないって言ってたのはあんたじゃない。魔術回路があるあんたなら他の人間よりも効果的だしね」

 

「う……」

 

そうだけどさぁ……クロは俺が助けたかったし、イリヤと美遊に不本意なキスもさせたくないし。俺なら普通の人間より魔力効率が良いと、遠坂とルヴィアにも言われたし。でも、キスは流石に。

 

「言っておくけどね、私だってなんとも思わない訳じゃないのよ? ただ、私の感情よりもクロの命の方が大切だって言ってるの。今回こんな事になっちゃったのは、私の責任でもあるしね……」

 

遠坂は、本当に不本意そうな表情でそう言った。やっぱり遠坂も女子だから、妹とのキスには抵抗があるんだろうな。普段から学校でも、クラスの女子達からシスコンだと睨まれる事があるし……

 

「とにかく! クロの命の為にも、さっさとキスしちゃいなさい。人命救助なんだから、今回の事は私の中ではノーカンって事にしておくから!」

 

「……本当か? シスコンだとか思わないか?」

 

「思わない! だから早く終わらせなさい」

 

「……分かったよ」

 

はあ、なんでこんな事になったんだ。色んな意味でイリヤと美遊にはこの事は話せないな。余計な心配をさせる訳にはいかないし、二人が遠坂みたいに納得して理解してくれるかも分からないし。

 

二人に不本意なキスもさせたくない。なら、俺がその役を引き受けるしかない。遠坂が言っているとおり、これは人工呼吸みたいなものだ。断じてキスではない。俺は、そう自分に言い聞かせる。

 

遠坂との話が終わったのと同時に、向こうの話も終わったようだ。美遊を連れて家に戻るとセラに言われて、俺は緊張しつつ皆の後に続く。そして俺は、最後尾のクロに意を決して話し掛けた。

 

「クロ」

 

「ん? なあに、お兄ちゃん?」

 

「魔力、足りないんじゃないか?」

 

「……バレちゃった?」

 

やっぱり、そうか。どうやら、遠坂の推測は正しかったらしい。俺は儚げな笑みを浮かべるクロに告げた。魔力供給用の血が、今は取りに行けない場所にあると。俺がそう告げると、クロは……

 

「そっか。どうしよ……」

 

少し困った表情で笑った。でも、俺にはその笑顔に不安と恐怖の感情が隠れているのが分かった。当然だ。魔力不足はクロにとって、消滅の危機を意味する。怖くない筈がない。だから、俺は……

 

「そ、それでだな。今すぐ俺が魔力供給をしようと思うんだ。家に帰ったら、俺の部屋に行こう」

 

「えっ? う~ん、お兄ちゃんの気持ちは嬉しいんだけど、今の魔力の状態だとちょっとの血じゃ足りないと思うの。お兄ちゃんにまたあんな怪我をさせる訳にはいかないし。だからそれは……」

 

「ああ、だからな。その……安全な方法で……」

 

「安全な方法?」

 

「えっと、つまり……キスで、さ……」

 

恥ずかしい! 人工呼吸だ、人命救助だと自分に言い聞かせたのに、いざ口にすると、キスという単語だけ小声で言ってしまう程恥ずかしかった。俺が赤面しながら告げたその言葉に、クロは……

 

「キスしてくれるの、お兄ちゃんが!」

 

「こ、こらっ! そんな大声で言ったら……」

 

満面の笑みで、そして周囲一帯に響き渡る大声で喜んだ。俺は慌ててクロの口を塞いで、恐る恐る前方を見た。するとそこには、非常に冷たい視線が3つ。真っ直ぐに俺を射抜いていた。ひっ!?

 

「……今、なんて言ったの?」

 

「良く聞こえませんでした。士郎さん、今クロが言った事は本当なんですか? 答えてください」

 

「……ロリコン&シスコン……」

 

「い、いや、違う。違うんだ……」

 

イリヤと美遊とセラ。3人の視線が、俺の全身をグサグサと射抜く。特に、セラ。俺に事情を確認する事もなく、変態を見る目を向けてくる。俺に弁解もさせてくれないらしい。ま、待ってくれ!

 

「この前イリヤさんのおでこにキスをした時も、いつかやると思ってましたが……またですか?

 

「だから違っ……またってなんだよ!」

 

最後の言葉が非常に恐ろしい声だった。セラの中の俺って、どんな奴なんだよ? 拳をバキバキと鳴らしながら、セラがにじり寄ってくる。そしてそんなセラの両脇には、イリヤと美遊がいる。

 

「お兄ちゃん?」

 

「士郎さん?」

 

「シ・ロ・ウ?」

 

「ご、誤解だーっ!」

 

…………………………………………………………

―現在に戻る―

 

とまあ、こういう訳である。クロの状態を3人に説明する訳にもいかず、誤解を解く事ができないから、イリヤと美遊はキスをさせまいと阻止しているという訳だ。さて、困ったぞ。どうすれば。

 

「クロ、お兄ちゃんに近付かないで」

 

「キスなんて、絶対させない」

 

「ふふん、残念でした。今回は私からじゃなくてお兄ちゃんからキスしようって言ってくれたの」

 

「シロウ?」

 

「いや、違う。違わないけど、違うんだ!」

 

確かに俺から言った。だけど、それはあくまでも人工呼吸のようなものであってだな。と言いたいけれど、それは言えない。セラにどこまで話していいかも分からないし。さっきからこの調子だ。

 

そう言えばだけど、セラは魔術の事を知っているんだろうか? 考えてみれば、アインツベルンは魔術師の家系。そしてセラはそのアインツベルンのメイドだと言っていた。なら、関係者なのか?

 

「一体なんですか? 人の顔をじっと見つめて。もう見苦しい言い訳はやめたのですか? という事はつまり、自分の罪を素直に認めて観念したという事で宜しいですね? 大変()い心掛けです」

 

「宜しくないよ! ほ、ほらセラ。そろそろ夕飯の準備をする時間だろ? ちゃんとメイドの仕事をしないといけないんじゃないか? ほら早く」

 

「ちっ、仕方ないですね。シロウ、後でゆっくりとこの話の続きはしますからね。良いですね?」

 

「ら、了解(ラジャー)……」

 

怖いよセラ。俺にそう念を押すセラの瞳は、やると言ったらやるという凄みがあった。俺は結局、セラが魔術の事を知っているのかどうかという事を聞けなかった。今はそんな場合じゃないしな。

 

「ほらほら、お兄ちゃんが私とキスをしたそうな顔してるじゃない。だから、そこを退きなさい」

 

「お兄ちゃん……」

 

「士郎さん……」

 

「なっ!? なんて事を言ってるんだよクロ! そんな顔はしてない。してないぞ、二人とも」

 

クロのとんでもない言葉に、イリヤと美遊が光彩の消えた目を向けてくる。くっ、どうすれば? こうなったらもういっその事、事情を話すか? いやいや、それは駄目だ。確かに誤解は解ける。

 

だけど、話したら二人は、自分達がキスをすると言い出すかもしれない。二人は女の子だ。男の俺よりも、ファーストキスは大事だろう。できれば二人には、本当に好きな人とさせてあげたい。

 

クロはもう藤村先生とかとキスをしているらしいけど、イリヤと美遊はまだだろう。ならやっぱり俺がやるしかない。再度そう確認した俺はソファから立ち上がって、クロの手を握って2階へ……

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃんが、どうしてもクロとキスしたいって言うなら……まず私にして!」

 

「なっ!? イリヤまでなにを……」

 

「そうだね。士郎さん、私にもしてください」

 

「なんでそうなる!?」

 

あれ? なんだかおかしな事になってきたぞ? イリヤも美遊も、一体なにを言っているんだ? 謎の迫力を発する二人の少女達が、俺の前に立ちはだかって目を閉じる。どうしてこうなった?

 

「二人とも、やるわね」

 

「うふふ、その調子よイリヤちゃん。さすが私の娘ね。ほらシロウ、早くキスしてあげなさい?」

 

「アイリさんまでなに言ってるんですか!」

 

「シロウ、何度も言ってるでしょ? 私の事は、ママと呼びなさい。もしくは、母さんでも可♪」

 

「こんな時に言う事ですか!」

 

「それと敬語。これも何度も言ってるわよ?」

 

「ああもう、少しは空気を読んでくれ!」

 

「その調子よ♪ その勢いで、ママって……」

 

「この歳で言えるかーっ!」

 

この人に頼った俺が馬鹿だった。アイリさんの事を母さんと呼べないのは、色々と複雑な心情からなんだけど、今はそれどころじゃないんだよ! じりじりと迫ってくるイリヤ達がいるからな。

 

「落ち着け、二人とも。な?」

 

「私達にはできないの?」

 

「酷いです、士郎さん」

 

「うっ……」

 

ああもう、どうすればいいんだよ! 涙目になるイリヤ達の姿に罪悪感が湧いてくる。魔力供給をしたいだけなのに、どうしてこんなにややこしい事態になったんだろうか? 俺は頭を抱えた。

 

「……こうなったら、力ずくで……」

 

「……そうだね……」

 

「え?」

 

イリヤ達の様子がおかしい。今、二人の口から、ものすごく不穏な単語が聞こえたような気が……

 

「逃げるわよ、お兄ちゃん!」

 

「ちょっ、クロ!」

 

「逃がさないよ、クロ!」

 

「待ちなさい!」

 

俺達は、ドタバタと2階に行くのだった……

 

…………………………………………………………

【イリヤ視点】

 

後になって思い出すと、きっとこの時、私は冷静じゃなかったんだろうと思う。多分、美遊も同じだったんじゃないかな。そうじゃないと、きっとお兄ちゃんに、キスして、なんて言えなかった。

 

お兄ちゃんがクロにキスする、なんて言葉を聞いてしまったら、冷静でなんていられる訳がない。クロとお兄ちゃんが、お兄ちゃんの部屋に入ってドアを閉めた。でも、それは無駄だよ、クロ。

 

《……あ、しまった。そう言えば、お兄ちゃんの部屋って、ドアに鍵が掛からないんだったわね》

 

《俺のプライバシーって……》

 

そういう事だ。私は、お兄ちゃんの部屋のドアを開けようと手を掛けた。でも、開かない。多分、二人が内側から手で押さえているんだろう。私も美遊と二人でドアを開けようとして手を掛ける。

 

「くっ、開かない!」

 

「向こうにはクロがいる。英霊の力で押さえられているから、このままじゃ無理かもしれない」

 

「そっか。この、開けなさいクロ!」

 

《ふふん。精々、そこで頑張っているといいわ。さあお兄ちゃん。これでもう邪魔は入らないわ》

 

《うっ……待て、心の準備が……》

 

「あーっ! こうなったら……ルビー!」

 

「サファイアも!」

 

『お任せあれー♪』

 

『はあ、仕方ありませんね……』

 

クロが英霊の力を使うなら、こっちも本気でやるしかない。ルビーに呼び掛けると、ルビーは私の髪の中から飛び出して、私を転身させてくれた。魔法少女の姿にはならずに、服はそのままで。

 

隣では美遊も私と同じ状態になっていて、私達は頷き合った。そして、魔力を筋力強化だけに集中させて、思いっきりドアを開く。いつかのドッジボール対決を再現する事になり、ドアが開いた。

 

「うわっ!?」

 

「ちっ、転身なんてズルいじゃない! しかも、2対1とか。あともうちょっとだったのに……」

 

「そこまでよクロ! さあお兄ちゃん!」

 

「観念してください!」

 

「待て、二人とも……!」

 

クロとくっついているお兄ちゃんに、私と美遊は飛び掛かった。魔法少女の力を使ったまま。その勢いは自分の想像より凄くて、私達はお兄ちゃん達に重なる形で激突して、ベッドに突っ込んだ。

 

「いたたたた……もう、イリヤ! 貴女ねえ! ……って、ああああーっ! なにしてるのよ!」

 

「うぅ……はっ!」

 

『美遊様……』

 

『おおっ、これは!』

 

あれ? どうなったんだろう。勢い良くベッドに突っ込んだ衝撃で、今の自分の状況が良く分からない。ただ、私の唇に暖かくて柔らかいなにかが当たっているみたいだ。口で呼吸ができない。

 

「……んっ!? んんーっ!?」

 

「っ!?」

 

あまりにも近くにあった事で、良く見えなかったお兄ちゃんの顔。それを認識した事と、お兄ちゃんのくぐもった声で自分の状況を理解した私の頭は真っ白になる。キスしてる? お兄ちゃんと!

 

「この、離れなさい!」

 

「い、イリヤ……」

 

「……」

 

頭がほけーっとして、なにも考えられない。私のファーストキスは、こうして終了したのだった。

 

…………………………………………………………

【美遊視点】

 

「……」

 

あれから数時間後。今は深夜。イリヤは、あの後ずっとぼけーっとしていて、誰がなにを言っても反応しなかった。そして私は今、イリヤ達と一緒のベッドに横たわっていた。まったく眠れない。

 

イリヤ達を起こさないように、静かにベッドから起き上がった。そして、イリヤとクロの安らかな寝顔をちらりと見てから部屋を出る。少し迷ってから、私は意を決してある部屋へと向かった。

 

寝る前まで、イリヤ達と好きな人の話をしていた事を思い出してドキドキしながら、その部屋の前にたどり着いた。そして、中の住人を起こさないように静かにドアを開けて、私は部屋に入った。

 

その人はベッドに横たわっていた。この時間なら当たり前の事なんだけど、それを確認しないと、これからやろうとしている事ができない。その人が眠っているすぐ横に立って、寝顔を覗き込む。

 

「……士郎さん

 

小声でその人の名前を呼ぶ。心臓が爆発しそうな程に高鳴って、顔が熱い。あの後、クロとキスをした士郎さんは事情を説明してくれた。そんな事は冷静になればすぐに分かった事情だったけど。

 

クロに魔力供給をするという事で、士郎さん的には人工呼吸のようなものだったらしい。いつもの血が、バゼットに屋敷を破壊された事で確保できなくて、仕方なくキスするしかなかったという。

 

そんな事も考える余裕がない程に、動揺していた自分。そして寝る前の会話のせいで、嫌でも自覚してしまった。私は、この人の事が好きだ。他の誰でもない、この人の事が。そんな事は、自分で分かっていたつもりだった。でも、違ったんだ。

 

「……お兄ちゃんと同じ人だからじゃない」

 

私の大好きなお兄ちゃん。一番大切な家族。私の為に全てを懸けて戦ってくれた人。その人と同じだけど違う人。お兄ちゃんの姿を重ねて、好きだと思っていた人。でも、そうじゃなかったんだ。

 

一緒に過ごした時間で、私はいつの間にかこの人自身の事を好きになっていたんだ。その事を自覚してしまった。そして、自覚してしまった以上、このままなにもしない訳にはいかなくなった。

 

「……イリヤとも、クロともしたんだ」

 

だったら、私も……爆発しそうな心臓にクラクラしながら、私は士郎さんに顔を近付けていった。

 

「……んっ……」

 

頭が真っ白になる。きっとイリヤもこんな気持ちだったんだろうなと、どこか冷静な心が告げる。そして多分、クロも……本当の意味で二人と同じ気持ちになった私は、そう理解する事ができた。

 

「……お休みなさい、士郎さん。大好きです」

 

今はまだ、面と向かって本人に言えない気持ちだけど、いつか言えたらいいな。そう思いながら、私は士郎さんにそう告げて静かに部屋を後にするのだった。心臓の音が、やっぱりうるさかった。




血は繋がってないからセーフ?
でも、年齢が問題だ。
限りなくアウトに近いセーフ。
いや、限りなくセーフに近いアウト?
もしくはただのアウト(笑)。
さてどれでしょう?

美遊が、プリヤ士郎に恋してると自覚しました。
今までは兄と重ねてましたが、これからは違う。
しかも、イリヤとクロは親友ですからね。
荒れますよ、これは。

クロ視点が中々入らないのはネタバレ防止です。
クロの今の状態とか、プリヤ士郎の秘密とか。
クロ視点はいつ入るのか、お楽しみに。

それでは、感想待ってます。
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