錬鉄の英雄 プリズマ☆シロウ   作:gurenn

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またお待たせして申し訳ない。
ハロウィンイベントのせいなんです。
再臨素材をできるだけ手に入れたくて。
そのお陰で、大分レベルが上がりました。

と、この辺にしておきますか。
それではご覧ください。


姉妹 その壱

【士郎視点】

 

7月17日、月曜日。今日は海の日だ。イリヤ達の誕生日まであと3日。空は雲一つない快晴だ。そんな休日に、俺はイリヤ達の誕生日プレゼントを買おうとしていた。まあ、今日しかないしな。

 

色々と大変な問題が山積みの状態だけど、妹達の誕生日だけは兄として何よりも優先して祝わないといけない。そんな訳で、協会の刺客とか九枚目のクラスカードとかの事は、ひとまず忘れよう。

 

「いってきます」

 

「はい、いってらっしゃい」

 

セラといつものやり取りをして、外に出る。昨日の一件については、2時間の正座とお説教で一応許してもらえた。もっとも、イリヤ達とのキスの事は黙っているけど。もしバレたら殺されるな。

 

そんな事を考えて恐怖に震えながら、俺は目的地である駅へと向かう。時間はまだ大丈夫だよな、と腕時計を確認しながら。待ち合わせをしているから、遅れないようにしないと。あと30分か。

 

「よし、大丈夫だな。15分前には着けそうだ」

 

待ち合わせをしている人達の事を思い出す。あの二人は性格的に、時間をしっかりと守りそうだ。特に一方は待ち合わせ時間よりも前から待っていそうだし、待たせないようにしないといけない。

 

「もう一方はもう一方で、待たせたら機嫌が悪くなりそうだしなぁ。考えるだけで恐ろしい……」

 

それに、今日あの二人を会わせるのは当人達には秘密にしているから、なおさら俺が遅れてしまうのはまずい。今日の事は元々、あの二人の微妙な距離を縮める事が目的だし。上手くいくかな……

 

「まあ、考えても仕方ない。なるようになるさ」

 

この時の俺は、あまりに暢気だった。この考えがどんなに甘い認識だったのかを、俺はこの後に嫌という程思い知る事になる。なんて言うと深刻な問題に聞こえるかもしれないが、そうじゃない。

 

世の中には、色んな家族関係があるって事だ……

 

…………………………………………………………

 

「桜」

 

「あ、先輩! こんにちは」

 

「ああ、こんにちは。悪い、待たせたか?」

 

「いいえ、私が早く来すぎただけですから」

 

待ち合わせ場所に着いてみると、やはりそこにはすでに待ち合わせ相手がいた。予想通りの相手、間桐桜が。改めて腕時計で確認してみると、待ち合わせ時間の15分前。何分前から居たんだ?

 

「さっき来たばかりですよ」

 

腕時計を確認する俺を見た桜が、クスクスと右手を口元に当てておかしそうに笑いながら言った。桜らしい、上品で女の子らしい笑い方だ。そんな仕草を見た俺は、なんだか照れ臭い気分になる。

 

「あ~……改めて、今日は悪いな桜。せっかくの休日を潰しちまってさ。本当に良かったのか?」

 

「はい、全然大丈夫です。特に用事もありませんでしたから。いつも先輩には色々お世話になっていますし、少しでも恩返しできたらなと、今日は張り切ってきました。なので、任せてください」

 

「そうか。なら、遠慮なく頼らせてもらうぞ」

 

「はい。頼っちゃってください」

 

むん、と両拳を胸の前で握って、おどけた感じに気合いを見せてくる桜。本当に良い娘だよなぁ、桜は。俺が気を使わなくていいようにしてくれてるんだろう。俺の方こそ、なにか礼をしないと。

 

「それで先輩、どこに行くんですか?」

 

「ああ、ちょっと待ってくれ。まだ……」

 

「お、お待たせ、衛宮君。って……え?」

 

「え……」

 

桜に、まだ待ち合わせをしている奴がいるという事を話そうとしたその時、その待ち合わせ相手が後ろから声を掛けてきた。その声を聞いた俺と桜は振り向き、彼女と桜がお互いを見て固まった。

 

「「……」」

 

もう一人の待ち合わせ相手、彼女は遠坂凛。二人はしばらくの間固まっていたが、やがて桜が無言で頭を下げた事で止まっていた時間が動き出す。再起動した遠坂が、俺の首根っこを掴んできた。

 

「ちょっと、これはどういう事よ衛宮君! なんで(あの子)がいる訳!? 説明しなさいよ! 今すぐに、速やかに、迅速に説明しなさい!」

 

「ぐうっ……! と、遠坂っ……絞まってる……首絞まってるから……頼むから落ち着いて……」

 

俺の首根っこを引っ張って引き寄せた遠坂は、桜に背を向けて小声で俺に尋問を開始した。前後にガクガクと揺すられ、首も絞まった俺はまともに声を出せない。堪らず、遠坂の手をタップする。

 

「……説明しなさい……!」

 

「げほ、ごほっ。と、遠坂。目が据わってるぞ」

 

なんとか首を放してもらえたが、俺を見る遠坂の目は冷静さを取り戻してはいない。返答を間違えたらどうなるのか、考えるのも恐ろしい。爆弾の処理をするような気分になりながら、説明した。

 

「さ、桜にも頼んだんだ。できるだけ多く、参考になる意見が欲しかったからな。前もって言わなかったのは悪かったよ。でも、別に良いだろ?」

 

「ぐっ……まあ、良いけど……」

 

「……あの、私邪魔でしょうか?」

 

「べ、別に邪魔じゃないわよ……」

 

俺の説明を聞いた遠坂は、苦虫を噛み潰したような表情で納得した。その表情を見る限り、心の中では納得していない感じだが。そんな遠坂の様子を察したんだろう。桜が気まずそうな顔になる。

 

だけど、そんな桜が言った言葉は否定する辺り、遠坂も本気で嫌だとは思っていないんだろうな。早速微妙な感じになる二人に、俺はこれからの事を考えてため息をつく。思ったより大変そうだ。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「……ええ」

 

「……はい」

 

ああ……二人ともさっきまでの笑顔が消えてる。お互いを見ないように視線を斜め下に逸らして、沈んだ声で俺の言葉に同意する二人。そんな二人に挟まれた俺は、無理やりに明るい声を出した。

 

「た、楽しみだなぁ。なあ二人とも」

 

「……そうね……」

 

「……そうですね……」

 

まったく同時に、暗い声で返事をする二人。息が合っているのかいないのか。早まったかなぁ? そんな二人を見た俺は、顔を引きつらせながら、内心でそう思わずにはいられなかったのだった。

 

「……それで、どこに行くの?」

 

「あ、ああ。電車で隣町まで行くぞ」

 

「隣町ですか?」

 

「ああ。イリヤ達に、どんなプレゼントを買うのかを見られる訳にはいかないからな。実は今日、イリヤ達も、この近くの店に新しい水着を買いに来ている筈なんだ。だから、念の為ってやつさ」

 

そう。だからこそ今日しかない。イリヤ達に用事がある今日こそ、イリヤ達に隠れてプレゼントを買うチャンスなんだ。他の日だと、前の森山の時みたいに尾行されてしまう可能性があるからな。

 

やっぱり誕生日当日までは、どんなプレゼントかは明かさない方が良いだろう。ベタだが、それがサプライズってやつだ。そんな俺の言葉を聞いた二人は、納得したように頷いた。よし、行こう。

 

…………………………………………………………

 

「さて、どんな物が良いと思う?」

 

電車で隣町にやって来た俺は、両隣にいる二人にそう聞いた。年頃の女子が喜びそうなプレゼントが分からないのは本当だったし、この二人の会話の切っ掛けになるかもしれないと思ったからだ。

 

「う~ん……予算はどれくらいあるの?」

 

「一応、イリヤの誕生日プレゼントの為に貯めてはいたんだけどさ……二人も追加されたからな」

 

だから今年は、セラに頼み込んで少し小遣いを前借りしてきた。その為の条件として、俺が家事をする当番の日を減らされたけどな。そう言うと、二人とも首を傾げた。まあ、変な条件だよな……

 

「あの、どうして家事を減らされたんですか? 普通、増やされるものだと思いますけど……」

 

「そうよね。その条件じゃあ、その人が苦労するだけじゃない。衛宮君にとっては得しかないし」

 

「……まあ、色々あるんだよ」

 

二人の言葉はもっともだ。普通なら、こんな条件はあり得ないだろうな。だけど、セラには十分にあり得る条件だった。そして、俺としてもあまり嬉しくない。俺達の奇妙な関係は説明が難しい。

 

「取り敢えず、一万五千円まで買える。小学生の誕生日プレゼントとしては、十分な額だと思う」

 

「……一人五千円か。まあ、十分かしらね」

 

「そうですね」

 

セラと俺の関係については説明を省き、俺は二人にそう伝える。二人の同意を得られた事で、ホッと安堵する。これでも足りないと言われたらどうしようかと思ってたからな。杞憂だったようだ。

 

「その予算を考慮すると……」

 

「やっぱり、可愛いアクセサリーなんかが良いと思います。ペンダントとか、ブレスレットとか」

 

「まあ、その辺りでしょうね」

 

「アクセサリー? う~ん、ちょっとイリヤ達には早すぎないか? まだ小学生なんだしさ……」

 

遠坂達の提案に、俺は少し眉をひそめる。だってそうだろ? そういうのは、もうちょっと大きくなってからの方が良いんじゃないか? 俺はそう思ったんだが、遠坂達は俺を見てため息をつく。

 

「衛宮君あなた、イリヤ達を子供扱いしすぎよ。あの子達だって、立派な女の子なんだからね?」

 

「そうですね。私もそう思います」

 

「うっ……そ、そうか」

 

遠坂は、心底呆れたという表情を隠しもせずに。そして桜は少しだけ困ったような表情になって。同時に俺の考えを否定した。例えまだ10歳だとしても、イリヤ達はもう立派な女の子なんだと。

 

俺としては、可愛いぬいぐるみとかが良いんじゃないかと思っていたんだが。そう言うと、二人は揃って首を横に振った。それは、あまりにも子供っぽすぎる、と。そうなのか。知らなかった……

 

「今時、それで喜ぶのは小学校低学年までくらいじゃないかしら。人によりけりだとは思うけど」

 

「私達を相談役にしたのは正解でしたね、先輩」

 

「うぅ……」

 

どうやら、俺一人だけで選んでいたらイリヤ達をがっかりさせていたらしい。面目ない。どうやら俺は、自分で思っていたよりもずっと、女の子の事をまったく分かっていなかったって事らしい。

 

「まあイリヤ達なら、衛宮君が選んでプレゼントしてくれた物ならなんでも喜ぶでしょうけどね。でも、心の底から喜ばせたいなら、本当に欲しい物をあげた方が良いって事よ。分かった?」

 

「わ、分かった……」

 

「ふふ。それじゃあ決まりですね。アクセサリーショップに行きましょう。あれでしょうか?」

 

桜が指差した先を見てみると、確かにそれっぽい感じの店が見えた。駅前にある結構大きな店だ。そこへ向かう俺達だが、周囲の視線が痛い。特に男達の視線は、もはや物理的な力があるようだ。

 

まあ、その気持ちは分かる。俺はそんな事を思いながら、両隣にいる二人をチラ見する。雰囲気は正反対だが、二人ともかなりの美少女だ。そんな二人に挟まれている俺が、どう見られるのか。

 

誤解なんだけどなぁ、とは思うけど、そんな事は彼らに分かる筈がない。俺は改めて、二人の様子を見てみる。遠坂はいつもの私服姿。赤い上着と黒いプリーツスカート。遠坂に良く似合ってる。

 

そして、桜も何度か見た事がある私服姿だ。薄紅色のカーディガンと、薄黄色のロングスカート。こちらも桜の大人しい雰囲気に良く似合ってる。これは睨まれるよな、と俺は納得してしまう。

 

だけど、そんな二人の雰囲気は、あまり良い感じとは言えない。最初に比べれば大分雰囲気が和らいだが、未だに二人の間には会話はない。俺には話し掛けるけど、お互いの事は見ようとしない。

 

間に俺を挟んでいる時点で、二人がお互いに距離を縮めようとしてない事は明白だった。これでは遠坂も呼んだ意味がない。内心で困り果てながら俺は、昨夜遠坂に電話をした時の事を思い出す。

 

クロの魔力供給を終え、セラの説教を乗り越えたその後の事。身も心も疲れ果てながら、俺は遠坂に電話した。クロの魔力供給を無事にやり終えた事を報告するついでに、今日の約束をしたんだ。

 

その時は機嫌が良さそうだったんだよな。なのに今はこんな調子だ。一体なんなんだろうか、この二人は。二人の様子を交互に見ていると、奇妙な事が分かった。二人の様子は微妙に違う感じだ。

 

桜はおどおどしながらも、時々こっそりと遠坂の様子を伺っている。遠坂に気付かれないように。そして、口を少し開いては閉じて、顔を伏せる。どうやら遠坂に声を掛けようとしているようだ。

 

さっきまではお互いに歩み寄ろうとしていないと思っていたが、どうも桜の方は違うらしい。どう声を掛けて良いのかが分からないという感じだ。その表情は、様々な感情が入り交じっていた。

 

この感じは、俺にも覚えがある。イリヤと初めて会った時、俺とイリヤもこんな様子だった。でもこの桜の様子は、その時の俺達よりもさらに複雑な感情を読み取る事ができた。これは、恐れか?

 

一方で遠坂の方は、桜の事を一切見ない。多分、桜の視線を感じている筈なのに。やはりこの二人にはなにか複雑な事情がありそうだ。二人の様子を観察してみて、改めてそう確信した。よし……

 

「あのさ……」

 

「……着いたわよ」

 

「え? ……あ、うん」

 

「入りましょうか」

 

意を決して遠坂に事情を聞こうとしたが、目的の店に到着してしまったらしい。くっ、タイミングが悪い。絶妙なタイミングで話を中断させられ、俺は話を続ける事ができなかった。う~ん……

 

「仕方ない、今はプレゼントを買うのが先だ」

 

「それが目的でしょうが。行くわよ」

 

そうだけど、そうじゃないんだよ。遠坂の言葉に心の中でそう返しながら、アクセサリーショップの中に入る。店内は外観の通りに広くて、様々なアクセサリーが並べられていた。これは凄いな。

 

「でも、やっぱり俺にはどれが良いのかさっぱり分からないな。一体、どれを買えば良いんだ?」

 

色々あるのは分かるが、女の子が喜びそうな物は分からない。品揃えが多いのも考えものだよな。俺のそんな言葉を聞いた二人は、それぞれ店内を見回して頷く。なにか良い考えが浮かんだのか?

 

「手分けして良さそうな物を探しましょう」

 

「それが良いと思います」

 

「わ、分かった」

 

そういう事になった。二人を仲良くさせる計画は後回しにするしかないか。遠坂が右側を、そして桜が左側を見て回る事になり、俺は適当に探してみろと言われた。そう言われた俺は、少し悩む。

 

「……遠坂、一緒に見て回ってもいいか?」

 

「え? ……まあ、いいけど……」

 

どうせだったら、遠坂に二人の事情も聞いてみた方が良いと思った俺はそう提案した。イリヤ達のプレゼント選びのついでだ。そんな訳で、遠坂と一緒に店内を歩いて、目についた物を手に取る。

 

「これは……うわ、一万円!? 高いな」

 

「そう? そんなもんでしょ」

 

適当に手に取ったペンダントの値段を見た時の、俺達の反応の違い。自分の知らない常識を、見せ付けられた気分になる。俺には見た目から値段が想像できない。地味目なペンダントだったのに。

 

「ペンダントなら、これとか安いわよ」

 

「……二千円か。確かにこれなら……」

 

「でも、色があの三人には合わないかもね」

 

「色、色か……」

 

そういうのも重要なのか。確かに、少し派手な色はイリヤ達には合わないかもしれないな。小学生だし、もっと目立たない感じの色の方がいいか。とすると、金属の鎖じゃない物が良さそうだな。

 

「あんまり大人っぽいのも駄目ね」

 

「まあ、そうだな」

 

その意見にも同意する。そうなると、この辺の物はやめておいた方がいい。この辺の物は少し大人向けのデザインが多いからな。イリヤ達よりも、遠坂と桜に似合いそうだ。っと、そうだった……

 

「……なあ、遠坂」

 

「なによ?」

 

遠坂と桜を思い浮かべた事で、もう一つの目的を思い出した俺は、少し躊躇いながらも遠坂に声を掛けた。次の棚のアクセサリーを見ながら。遠坂は視線を棚に向けたまま、気のない返事を返す。

 

「……遠坂と桜って、どんな関係なんだ?」

 

「っ!?」

 

完全に油断してたんだろう。棚に向けていた顔を勢い良く振り向かせ、遠坂は俺の顔を見てきた。遠坂はしばらくの間驚いた表情で固まり、やがて苦い表情に変わって俺の顔から視線を逸らした。

 

「……やっぱり今日、衛宮君はその為に私と(あの子)を呼んだのね? ……ったく、このお節介焼きが」

 

「悪い。なにか複雑な事情があるって事は前から分かってたんだけど。だけど、なんかさ……」

 

「……」

 

遠坂と桜が辛そうな顔してるから、と告げると、遠坂は軽いため息をついて表情を少し和らげた。そして、また視線を棚に戻して歩き始める。特になにかを見ている訳じゃなく、流し見している。

 

「……妹」

 

「え?」

 

俺の方を見ないまま、遠坂が小声で呟く。妹? その言葉の意味を聞こうとしたその時、再び遠坂は口を開いて俺に告げてきた。驚愕の真実を……

 

「妹なのよ、あの子。私のね」

 

「え……」

 

今、遠坂はなんて言ったんだ? 妹? 桜が? 誰の? 遠坂の? いや、待て待て。桜は慎二の妹だろ? 名字だって間桐だし。遠坂じゃない。でも、もしもそうなら遠坂と慎二も姉弟なのか?

 

「違うわよ。なんで私が慎二なんかと姉弟にならないといけないのよ。あの子は養子よ、養子!」

 

「ああ、そういう事か。でも、なんで?」

 

「……それは……」

 

「先輩、良さそうな物がありましたよ」

 

遠坂が明かした事実に納得して、いよいよ核心に迫ろうとしたその時、遠坂の前方から桜のそんな声が聞こえてきた。もう少しで事情が分かりそうだったけど、仕方ないか。まずはこっちからだ。

 

「どれだ?」

 

「こっちです」

 

「……ふう」

 

桜に案内されてその棚に向かう。そこには、綺麗なブレスレットが並んでいた。桜が示してくれた物は、確かにイリヤ達に似合いそうだ。地味目な色合いながらも飾りが可愛く、種類も複数ある。

 

「どうですか?」

 

「良いじゃない。あの三人に似合いそう」

 

「そうだな。それぞれに、違うデザインの飾りのやつを買えるし値段も手頃だ。これにするか」

 

値段は一つ3200円。どのデザインにするかは俺が選ぶ事になった。遠坂曰く、最後は俺自身が選ばないと意味がない、との事だった。その言葉には俺も同意見だったから、俺は少し考え込む。

 

「……よし」

 

「へえ。衛宮君にしては良い選択ね。あの子達にぴったりのデザインだわ。きっと喜ぶわよ」

 

「そうかな」

 

「はい、私もそう思います」

 

イリヤには五芒星を。美遊には六芒星を。そしてクロには、ハートの形の飾りを選んだ。選んだ形はそれぞれ、ルビーの形、サファイアの形、クロの服の形(英霊の時の)をイメージして選んだ。

 

遠坂はそれが分かっているらしく、そう言った。桜はそんな事は知らない筈だけど、単純に俺の選んだデザインを肯定してくれた。俺は二人に礼を言い、三つのブレスレットを手にレジに向かう。

 

「あ……二人は先に店を出ていてくれ」

 

「なんでよ」

 

「いや、ちょっとな。頼む」

 

「分かりました。そうします」

 

レジに向かう途中で、ある事を思い付いた俺は、二人を先に外に出した。そして二人が店を出る姿を見届けてから、ある場所へと向かう。そして、目的の物を選んでから、改めてレジに向かった。

 

…………………………………………………………

 

今日の目的である誕生日プレゼントを買った後、また電車で冬木の町に帰ってきた。空を見上げてみると、もう夕方らしく、赤くなり始めていた。腕時計を見てみる。結構時間が経ってたんだな。

 

「改めて、今日は本当にありがとな、二人とも。二人のお陰で、イリヤ達に喜んで貰えそうだ」

 

「どういたしまして」

 

「まあ、これくらいならお安いご用よ」

 

「それでさ、二人にもお礼をと思って……」

 

俺は改めて二人に礼を言ってから、さっき買った物を渡した。二人は驚いた表情を浮かべてから、顔を赤くしてそれを受け取った。そして店員さんに包んで貰ったそれを、二人は同時に開けた。

 

「これ……」

 

「……良いんですか?」

 

「ああ。気に入らなければ使わなくていいから」

 

「い、いえ! 凄く嬉しいです……」

 

「……ありがとう」

 

二人に渡したのは、遠坂と見ていたペンダント。先端の飾りがそれぞれに似合いそうな物を選んだつもりだ。遠坂には十字架。桜には花の形。二人は姉妹という事らしいから、飾り以外は同じだ。

 

「大切にしますね。それじゃあ、今日はこれで」

 

「私も……」

 

「あ、遠坂。さっきの話を……」

 

「ごめんなさい。その話は、また今度ね」

 

「あ……」

 

嬉しそうな笑顔を浮かべて、桜は帰っていった。その姿を見送った俺は遠坂に向き合ったが、遠坂はそう言って足早に去っていった。深く関わって欲しくないという事か。あの二人が姉妹、ね……

 

「う~ん……計画失敗、なのかな、これは」

 

まあ、一歩前進したと思っておくか。俺は前向きにそう思う事にした。あまりしつこく聞くと益々意固地になるかもしれないし。今日のところは、二人の関係を聞けただけでよしとしておこうか。

 

また次の機会がある。去っていく遠坂の後ろ姿を眺めながら、俺はそう思った。そして、遠坂とは反対方向に歩き出した。イリヤ達が待っている、我が家へ。この手に妹達のプレゼントを持って。




クロの服装ですが、腹出しの部分は原作の服と同じ感じのデザインだと思ってください。

そして、タイトルを見れば分かると思いますが、凛と桜の姉妹の話はまた続きます。
桜も原作とはまた違う関わりになる予定なので、この二人のイベントもお楽しみに。

それと最後に、海の日の日時は今年、2017年の日にちを採用しています。
fateの原作と同じなら2002年? ですけど、明確な年数は分からないので。
何故なら、2002年だとイリヤ達の誕生日の日が海の日になってしまうからです。
それでは困るのでこうしました。

それでは、感想を待ってます。

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