錬鉄の英雄 プリズマ☆シロウ   作:gurenn

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また遅くなりまして……
クリスマスイベントとダウンロード記念が……

なんて言い訳は置いておいて、続きをどうぞ。


兄妹

【士郎視点】

 

「……はあ……」

 

「む、どうした衛宮。悩み事か?」

 

「……まあ、ちょっとな……」

 

7月18日、火曜日。イリヤ達の誕生日まであと2日に迫っているこの時。俺は自分の席で、深いため息をついていた。そんな俺の様子を心配したのか、親友である柳洞一成が声を掛けてきた。

 

「なにがあったのだ?」

 

「……」

 

本気で俺の事を心配してくれてるのは分かったんだが、俺はこの悩みを打ち明ける事を躊躇った。何故ならこれを深く説明すると、俺の今一番隠したい秘密を話す事になるからだ。それは駄目だ。

 

「……えっと、ちょっと妹と喧嘩をな」

 

「なに? 衛宮がか!?」

 

深く深く黙考して、話せる範囲で話す。すると、一成は信じられないという顔をして驚いた。まあそうだろう。俺は今まで、妹であるイリヤと喧嘩した事は一度もない。それはかなり有名な話だ。

 

一成も当然それを知ってるから、こんな顔になるのは仕方ない。そんな一成の反応に、俺は苦笑を返す事しかできない。これは少し言葉を間違えたかもしれないな。でも、どう説明すればいいか。

 

「まあ、喧嘩っていうか、ちょっとだけ気まずくなってるというか……詳しくは話せないんだよ」

 

「むう……」

 

この説明で納得できる筈もないだろうけど、俺はこれ以上の事は話せなかった。そんな俺の返しに腕を組み、渋面で唸る一成。それを見て心苦しくなりながら、俺は今朝の事を思い出していた……

 

…………………………………………………………

―1時間ほど前―

 

「ふぁ~……おはよう」

 

「おはようございます、イリヤさん」

 

「ふっ、毎朝毎朝起きるのが遅いわね」

 

「うるさいなぁ、クロだって最初の内は遅かったでしょ。しかもお兄ちゃんのベッドで寝てたし」

 

「あれは、かなり早く起きて潜り込んでたのよ」

 

「二度とさせないからね?」

 

毎朝行われるそんなやり取り。イリヤは、クロといつものように言い合いながら自分の席に座る。もはや日常になっているそんな光景を見て笑みを浮かべながら、俺もイリヤに朝の挨拶をした。

 

「おはよう、イリヤ」

 

「っ!? うっ、うん! おはようっ!」

 

ところが、俺が声を掛けたその瞬間、イリヤは顔を真っ赤にして固まってから、ぎこちない返事をして顔を逸らした。その顔はまだ真っ赤のまま。あまりの過剰反応に、俺は固まってしまった。

 

「……イリヤ?」

 

「なっ、なに!?」

 

「……いや、なんでも……」

 

駄目だ。俺が声を掛けると、イリヤはかちこちに固まってしまう。そんなイリヤの不審な様子に、セラが首を傾げて俺に視線を向けてくる。その目は『一体なにをしたんですか?』と言っている。

 

それに俺は、『いや、俺にもなにがなんだか』と返すけど、次の瞬間に思い至った。一昨日、俺はイリヤとキスをしてしまった。完全に事故だったんだが、確かに口と口のキスをしてしまった。

 

昨日はイリヤと直接話さなかったから、この事態に気付けなかったんだ。だけど、セラにキスの件(それ)を説明する事は、俺の死を意味する。結局俺は、適当に笑って誤魔化す事しかできなかった……

 

どうすればいいのか分からなくて、俺はイリヤと気まずい空気のまま朝食を食べ、学校に行く時間になった。いつものように一緒に学校に行く事になったけど、やっぱりイリヤは俺の顔を見ない。

 

「……」

 

「まったく、キス程度で大袈裟なのよ」

 

「なっ!? クロ、お前……!」

 

「っ!?」

 

俺達の様子をずっと見ていたクロが、軽いため息をついてからとんでもない言葉を言った。それを聞いたイリヤは顔を再び真っ赤にして走り去ってしまった。呼び止める事もできない程の速さだ。

 

「さすがだな……」

 

イリヤの足の速さを知っている俺は、思わずそう言っていた。見る見る遠ざかっていく背中は、角を曲がって見えなくなる。やっぱり一昨日のキスが原因だという事は分かったけど、どうしよう。

 

「クロ、あのな……」

 

「ふう。そんなに深刻に考える必要はないわよ、お兄ちゃん。あの子はただ照れてるだけだから」

 

あまりイリヤをからかうのはやめろ、と言おうとすると、クロは再び軽いため息をついてからそう言ってきた。そんなクロの言葉に、俺は少し目を見開いた。照れてる、だって? どういう事だ?

 

「どうせお兄ちゃんの事だから、イリヤは大切なファーストキスをお兄ちゃんに奪われて怒ってるとか思ってるんでしょう? どう? 違う?」

 

「違うのか?」

 

「もう……!」

 

クロの言葉は、今まさに俺が考えている事だったんだけど、クロは呆れた表情を浮かべて怒った。イリヤの為に怒るその姿は、まるで姉のようだ。なんて言ったら、きっとイリヤは怒るだろうな。

 

「お兄ちゃんが考える事は大抵違うから、深刻に悩む必要はなし。特に女の子の事はね。あの子の事は、私に任せて。という訳で、先に行くわね」

 

「あ、クロ! ……クロも速い……」

 

言いたい事を言って、クロはイリヤの後を追って走り去る。その速さはイリヤに負けず劣らずで、あっという間に見えなくなった。それにしても、俺が考える事は大抵違うって、酷い言い草だ……

 

「……学校、行くか……」

 

イリヤの態度とクロの言葉に少しへこみながら、俺は気を取り直して学校へと向かう。とぼとぼと歩く俺の姿は、周囲にはどう見えてるんだろう。そんな微妙に情けない事を考えていた時だった。

 

「あっ……!」

 

「ん?」

 

前方から、驚いたような声が聞こえてきたのは。その声に反応して、俯いていた顔を上げてみた。するとそこには、ここ最近でもう随分と見慣れた女の子がいた。何故か固まるその子に挨拶する。

 

「美遊、おはよう」

 

「っ! お、おはようございます士郎さんっ! えっと、その……わ、私……し、失礼します!」

 

「え、美遊? ちょっと待っ……速っ!」

 

ところが、俺が挨拶をした瞬間、美遊は真っ赤になって逃げるように走り去ってしまった。その姿はまさしく、脱兎のようだった。あまりにも訳が分からないその反応に俺はポカンとしてしまう。

 

なんなんだ、今のは? イリヤとクロに勝るとも劣らない速さはさすがという感じだが、意味不明すぎて首を傾げるしかない。呼び止めようとして伸ばしていた右手を、空しい気分で下げた時……

 

『おい、見たか今の?』

 

『ああ。衛宮の奴、女子小学生に逃げられたぞ』

 

『しかも、顔を真っ赤にしてたな』

 

『おいおい、一体なにをしたんだよあいつ……』

 

『あんな小さくて可愛い子に……』

 

『俺知ってるぞ! あの子、確か衛宮の妹の友達だよ。前見た時は、あの可愛い妹と一緒に……』

 

『ロリコン……』

 

『ロリコンだ……』

 

『シスコンの上にロリコンか……』

 

『ロリコン&シスコン……』

 

「なっ!? ち、違う!」

 

周囲にいた登校中の同級生に、とんでもない誤解をされてしまっていた。慌てて誤解を解こうと声を張り上げるが、時すでに遅し。俺を見る同級生の視線は、最低の変態野郎を見る目付きだった。

 

『よし、言いふらそうぜ!』

 

『『『おーっ!』』』

 

「待て! 待ってくれ!」

 

必死に呼び掛ける俺の叫びは、ただ空しく周囲に響き渡るだけだった。どうしてこうなったんだ。色んな事が起きすぎて、上手く処理しきれない。イリヤの事だけでも悩んでいるっていうのに……

 

「この上、美遊の謎の反応とロリコン&シスコン疑惑。誰かに相談する事もできないだろ、これ」

 

まあ、噂の方はまだいい。大変不本意な事だが、前から似たような噂はあったからな。俺の気分の問題を無視すれば、今までよりも少しだけ過ごし難くなるだけだ。うん、そう思う事にしよう。

 

それよりも、問題は美遊だ。あの謎の反応は一体どういう事なんだろうか? 学校へと向かう足を止めずに、深く考えてみる。すると一つだけ思い当たる事があった。それは今の俺の悩みの元……

 

「イリヤとのキスか……?」

 

イリヤとキスをしてしまった時、その場面を美遊に見られてしまっていた。あれを見た美遊はどう思っただろうか? まさかとは思うが、美遊も俺をシスコンだとか思っていたりしないだろうか。

 

「いやいや、まさか美遊がそんな……」

 

そうは思うが、絶対ないとは言い切れない。前にイリヤとキスをしてたと誤解された時も、美遊に冷たい目で見られた事があるし。寝惚けたイリヤにキスをされそうになって、後ろ姿を見られた。

 

「くっ……!」

 

あの時の事を思い出して、軽く死にたくなった。あの時は完全に誤解だったが、今回は本当にキスしてしまったし。いや、事故だったんだけど! 心の中でさえ言い訳してしまう自分が情けない。

 

「もしくは……」

 

女の子にとって、ファーストキスは特別だ。美遊だってそう思っているだろう。だから、イリヤの大切なファーストキスを奪ってしまった俺に複雑な感情を抱いてる可能性もある。これはまずい。

 

「早く、なんとかしないと……」

 

怒ってるのか? 軽蔑はされてないと思いたい。美遊は優しい子だから、親友のイリヤの為に俺に怒っている可能性は高い。そうだとすると、一刻も早く謝るしかないな……イリヤにも美遊にも。

 

俺は、そう結論付けたのだった。さっきのクロの言葉を信じるならそんな俺の考えは間違っていたんだが、この時の俺には分からなかった。これが皆に鈍感と言われる最大の理由だという事も……

 

…………………………………………………………

―現在に戻る―

 

とまあ、これが今の俺の悩みの元だ。こんな悩み一成に相談できる訳がない。妹とキスしたなんて誰かに聞かれたらどうなるのか。ただでさえ今はロリコン&シスコンの噂が広がってるだろうに。

 

「……考えるだけで恐ろしいな……」

 

「?」

 

その光景を想像してしまった。その瞬間、きっと噂は噂でなくなり、真実となってしまうだろう。戦慄混じりに呟いた俺の言葉に一成が首を傾げるがそんな事に構っている余裕は俺にはなかった。

 

「本当に大丈夫か、衛宮?」

 

「えっと、まあ大丈夫だ。多分……」

 

本当は大丈夫じゃないけど、こう言うしかない。だけどこれは、今はどうしようもない事だ。家に帰ってから、イリヤに謝るしかないんだからな。俺はそう思う事にして、暗い気分を切り替える。

 

「そうだ、一成」

 

「どうした?」

 

「明後日から夏休みだろ?」

 

「そうだな。それで?」

 

「ああ、それでなんだけどさ……一成は明後日になにか予定があったりするか? 家の用事とか」

 

「いや、特になにも無いが」

 

「そうか。それならさ、悪いんだけど俺の用事に少し付き合ってくれないか? 海に行くんだが」

 

「海? 夏休み初日にか?」

 

気分を切り替えた時、一成に頼みたい事があった事を思い出した。そう、それは妹達の誕生日の時の引率。イリヤ達だけじゃなく、その友達数名も参加する事になったからな。俺だけでは少ない。

 

「7月20日は、イリヤの誕生日だろ? それで今年は海で誕生会をする事になったんだが……」

 

俺は、一成に説明した。イリヤだけじゃなくて、クロと美遊の誕生日祝いも兼ねている事。そしてイリヤの友達も参加する事。俺の話を聞いた一成はやはり快く承諾してくれた。本当に良い奴だ。

 

「急な話ですまないな。ここ最近、色々と厄介な問題が続いてさ。まあ、もう解決したんだけど」

 

これは半分は本当で、半分は嘘だ。色々と厄介な問題が続いたのは本当なんだけど、まだ解決した訳じゃない。だけど、この問題は魔術の事が関係しているから、一成に説明する事はできない。

 

「なに、構わんさ。衛宮にはいつも生徒会の雑務を手伝ってもらっているからな。その恩返しだと思えば、この程度の事は引き受けて当然だろう。それに妹を大切にするのは良い事だと俺は思う」

 

「一成……」

 

俺は、一成の言葉に胸を熱くする。危うく、涙を流しそうになった程だ。最近、周囲にはシスコンだと冷たい視線を向けられてきたからな。だからこそ余計に、一成のこの言葉は嬉しかったんだ。

 

「ありがとう、一成」

 

「ふっ。毎年、妹の誕生日を祝っていただろう。最近はそんな事をする奴は、中々いないと聞く。世間の目や自分の体裁などの為にな。しかし家族を大切にするのは間違った事ではない筈だろう」

 

「そうだな」

 

「俺は、そんな衛宮を好ましく思っている。その手伝いができるのなら、俺としても嬉しいさ」

 

「……」

 

感謝で言葉が出ないとはこういう事を言うんだと俺は知った。そうだ、俺は間違っていない。家族を大切にする事は、決して間違いなんかじゃないんだから。一成の言葉で俺は改めてそう思った。

 

…………………………………………………………

 

「ただいま」

 

一成との朝の会話から時は流れ、俺は自分の家に帰ってきた。あれから、当たり前のように噂の事で大変だったがそれは割愛する。今はそれよりも大切な事があったし、気にしないと決めたから。

 

一成の言葉で改めて自分の信念が間違っていないと確認できたし、このままイリヤの問題を放っておいたら大切な誕生会が台無しになってしまう。なによりもイリヤ達の心からの笑顔を見る為に。

 

「今日中に許してもらって、明日は美遊だ」

 

まず、イリヤはもう帰ってきているのかと玄関の靴を確認する。セラ達に聞かれる訳にもいかないからな。そこにある靴は、小さな物が3つだけ。どうやらセラ達は出掛けてるらしく、好都合だ。

 

「だけど、3つ? イリヤとクロで2つだから、友達が来てるのか? ……待てよ、もしかして」

 

ある可能性に思い当たり、俺は慌てて靴を脱いでリビングを目指した。扉を開くと、そこには……

 

「あ、お兄ちゃん。お帰り」

 

「「あ……」」

 

「やっぱり、美遊だったか」

 

その可能性が一番高いから、当たり前ではあったんだけど、今は美遊もイリヤと同じように俺とは気まずい感じになっていたから少し意外だった。現に、俺の姿を見た二人は気まずそうにしてる。

 

クロだけはいつも通りで、俺から顔を逸らす二人を見て軽いため息をついた。そして、二人の背中を軽く押して俺の前に立たせた。どうやら、俺とちゃんと話せとイリヤに学校で言ってたらしい。

 

「ほら、早くしなさいよ」

 

「わ、分かってるけど……」

 

「美遊も、ほら! なんで美遊までそんな状態になってるか知らないけど。ホントめんどくさい」

 

「う……」

 

「待て。美遊の方は、クロも知らないのか?」

 

「知らない。だって美遊が話さないんだもん」

 

クロの話によると、イリヤと今回の件を話してる最中に美遊の様子がおかしい事に気が付いたが、美遊はなにも言わなかったらしい。それでも俺の事が関係していると察して、連れてきたらしい。

 

「イリヤのついでって事で丁度良いでしょ?」

 

「まあ、俺も美遊と話したかったけどさ……」

 

確かに、丁度良いと言えば良いのかもしれない。明日話す予定だったけど、明日美遊に会えるとは限らない訳だし。今の美遊は、向かいに住んでるという訳じゃないからな。その事を考えると……

 

「うん、これで良かったかもな」

 

「でしょ? 明後日にはもう誕生会だし」

 

「……だよね……」

 

「……うん……」

 

クロの言葉を聞いたイリヤと美遊が、沈んだ顔で同意する。俺としても、その意見に同意だった。どうやら全員が同じ考えらしい。俺は改めて二人に向き合い、二人も俺の顔を真っ直ぐ見てきた。

 

「イリヤ、あのさ……」

 

「お、お兄ちゃん。私……」

 

「な、なんだイリヤ?」

 

「お兄ちゃんこそ……」

 

まずはイリヤに謝ろうと思って話し掛けたけど、イリヤと言葉が重なってしまった。タイミングが完全に同時だった。こういう所はさすが兄妹って感じだけど、今は困る。余計に気まずくなった。

 

「もう! じれったいわね!」

 

「「う……」」

 

呆れたようなクロの叫びに、俺とイリヤが同時に気まずい声を出す。こういう悪い所も、俺達兄妹は良く似ていると言えるだろう。重要なのは血の繋がりではなく一緒に過ごした時間だと分かる。

 

「イリヤ」

 

「わ、分かってるってば! 今言うから」

 

「いや、俺から言う」

 

「え?」

 

「でもお兄ちゃん。ちゃんと分かってる?」

 

「そのつもりだ」

 

「……ホントに?」

 

くっ、クロが全然信用してないって顔をしてる。朝の事といい、クロの中の俺の評価って一体? そう思ってしまうが今は気にするな。軽い咳払いをして気を取り直し、イリヤの顔を見つめる。

 

「イリヤ……」

 

「はっ、はい!」

 

「ごめん!」

 

「……え?」

 

「……もう……」

 

「士郎さん……」

 

あれ? なんだこの反応? 俺がイリヤに謝った瞬間、緊迫していた空気が悪い感じに弛緩した。イリヤは訳が分からないという顔をしているし、クロは額に手を当てて呆れてる。美遊も同じだ。

 

「な、なんで謝るの?」

 

「いや、なんでって……大切なファーストキスを俺に奪われて怒ってるんだろ? だから……」

 

「……」

 

「だから違うって言ったでしょうに……」

 

「イリヤ……」

 

俺が理由を説明したら、イリヤはガックリと肩を落として俯いてしまった。そして、クロと美遊がそんなイリヤに同情の視線を向けた後、俺の事を視線を細くして睨んできた。いや、なんでさ……

 

「……ぷっ……」

 

「ふふふ……」

 

「ホントに、お兄ちゃんってば……」

 

しばらく沈黙が場を支配したが、やがてイリヤ達は肩を震わせて笑い始めた。その笑い声は呆れたような響きを含んでいて、さっきまであった軽い不満が消えていた。一体、どうしたんだろうか。

 

「本当に、お兄ちゃんって感じだね」

 

「まったくよ。呆れを通り越して感心するわね」

 

「士郎さんらしいと思う」

 

おい。なんか良く分からないが、絶対誉められてないだろ。だけど、さっきまで場を支配していた気まずい空気が消えている。イリヤもクロも美遊も全員が笑顔だ。俺は訳が分からないけどな。

 

「なんかもう、真剣に意識するのが馬鹿馬鹿しくなっちゃったよ。すっごく恥ずかしかったのに」

 

「まあ、こうなる気はしてたけどね」

 

「私も」

 

「なんなんだよ、皆して。説明してくれよ」

 

イリヤ達だけ納得して、完全に元に戻られるのは俺がスッキリしない。だけど3人は俺の顔を見て笑みを浮かべ、また笑い続ける。どうやらイリヤ達の中では、もう全て解決してしまったらしい。

 

「もういいよ。気にしない事にしたから」

 

「真剣に考えるだけ無駄だしね」

 

「いや、でもさ……そうだ、美遊は?」

 

そう言われても中々納得できない俺は、謎の反応をしていた美遊に問い掛ける。イリヤ達の心情は分からなくなってしまったが、まだ美遊がいる。この後は、美遊にも謝る予定だったんだけど……

 

「う~ん……私も、もういいです」

 

「いやいや、そんな……」

 

「はいはい、この話はもうおしまい」

 

「美遊、せっかくだから今日も泊まる?」

 

「……そうだね。そうしようかな」

 

「待ってくれ。せめて詳しく説明を……」

 

俺の抗議は、空しく響いた。俺を無視して、3人はイリヤの部屋に上がっていく。その様子は非常に仲が良い姉妹のようだったけど、残された俺はまったくスッキリしない。俺の手が宙をさ迷う。

 

「……なんだったんだ、一体?」

 

俺の方こそ、今日1日の悩みを無駄にされた気分だった。こうして、訳が分からない内に始まった妹との気まずい空気は、訳が分からないまま終結してしまった。俺の心の、モヤモヤを残して……




プリヤ士郎の鈍感さは、ラノベ主人公並み。
意識して気まずくなるのも馬鹿馬鹿しい。
イリヤ達はそういう結論になりました。
ちなみに美遊はこの後、イリヤ達に話しました。
その描写は割愛する事にしましたが。

いや、オリジナル話は難しい。
改めてそれを実感しました。
前回もそうでしたが、中々筆が進まない。

と、愚痴はここまでにして。
感想を待ってます。

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