錬鉄の英雄 プリズマ☆シロウ   作:gurenn

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タイトルで分かる通り、遠坂姉妹の話です。
前回と同じく独自設定があるのでご注意下さい。
それでは、どうぞ。


姉妹 その弐

【士郎視点】

 

「えーいっ!」

 

暗いトンネルの中にイリヤの声が響き渡る。なぜ俺達がこんなトンネルの中にいるのかというと、最後のクラスカードを回収する準備の為らしい。らしいというのは、俺には分からないからだ。

 

魔術的な理由というか、鏡面界の性質というか。そんな説明を遠坂達がしてくれたが、魔術の素人の俺達にそれを理解する事はできなかった。まあ遠坂達も、それは承知している様子だったけど。

 

とりあえず、カードが実際にある場所まで地面を掘っているという状況だった。9枚目のカードは地面の中にあるという話だ。そこまで掘り進めてから、いつものように鏡面界に接界(ジャンプ)するらしい。

 

「ルヴィアさ~ん、今ので良かったの~?」

 

「ええ、十分ですわ」

 

「ルヴィアさん。こっちも、一番岩盤が固そうな所を崩しておきました。あとは機械で掘れます」

 

「ご苦労様」

 

「魔法少女が揃いも揃って、安全メットを被って地面を掘るなんてね。魔法少女感とか、0よね」

 

「本当だよな……」

 

クロの言う通り、魔法少女の格好をしたイリヤと美遊が、安全第一と書かれたメットを被ってる姿は非常にシュールだった。その手に持ってるのがスコップではなく、魔法のステッキだもんな……

 

『あははは、士郎さん。どうでもいいですけど、スコップとステッキってなんだか似てますよね』

 

「本当に、心底どうでもいいな」

 

ルビーのくだらない言葉を冷静に受け流す。俺も慣れてきたものだよ。イリヤ達の安全確認の為に来てる筈なのに、なんで喋るステッキにツッコミ入れてるんだろうという脱力感はあるけどな……

 

「この先に9枚目のカードがあるのね」

 

そんな俺達の横で、クロがトンネルの暗闇の先を見ながら呟いた。その言葉につられて、俺もその方向を見てみる。俺達の視線の先には、不気味な暗闇が広がっていた。一体どんな敵がいるのか。

 

俺達がそんな不安感を抱いた時、なにやら横からジャラジャラという音が聞こえてきた。なんだ?

 

「ちょっと、起動用の宝石が無駄になるでしょ」

 

「あ~ら、なんと言う貧乏人根性なのでしょう。使っているのは、わたくしの宝石ですわよ?」

 

「そういう問題じゃない! 無駄な金がただ目の前で消えてくっていうのに耐えられないのよ!」

 

「お~っほっほっほ! 実に貴女らしいですわ。自分のお金でもないのに執着するとは! 貴女のようなさもしい者を、お金の亡者と言うのです。実に見苦しくて惨めで、見ていられませんわね」

 

「な、なんですって~!?」

 

「相変わらずだね、凛さん達は……」

 

「そうだね……」

 

「進歩がないわね、ホントに」

 

まあ俺はこの二人がいつも通りで安心したけど。特に遠坂は、あの日から会ってなかったからな。遠坂と桜が姉妹だと判明した、あの日から。そこまで考えてふと違和感を感じたが、なんでだ?

 

待てよ、もう一度良く思い出せ俺。まず、今日は8月3日だよな。うん、間違いない。夏休みから約2週間あまりが経過していた。つまり俺が遠坂と会ったのは、2週間以上前の筈だ。なのに……

 

「なあ遠坂。俺達って、どれくらいぶりだっけ」

 

「は? なによいきなり。17日くらいでしょ」

 

だよな。ルヴィアとのいつもの喧嘩を終えた遠坂に確認してみるが、やはり俺と同じ認識らしい。なんで俺はそれに違和感を覚えたんだ? 少しの間考えてみるが、結局違和感の正体は分からず。

 

「う~ん、まあいいか」

 

分からないなら分からないで、特に問題はない。それよりも、せっかく遠坂に会えたんだからあの話を聞くべきだろう。何度か電話したけど、遠坂はあの話をしようとすると誤魔化して逃げたし。

 

「なあ遠坂。遠坂と桜の話だけど……」

 

「あ、もう用は終わったから帰っていいわよ」

 

「いや、だから遠坂と桜の話を……」

 

「はいはい、イリヤ達も解散よ、解散。さっさと帰って、遊園地に行ってきなさい。丁度ルヴィアからタダ券貰ったんだから、衛宮君とか連れて」

 

「そうだ、聞いてよお兄ちゃん。ルヴィアさんが遊園地のチケットくれたんだよ。お駄賃として」

 

「あ、ああ、良かったな。だけど俺は……」

 

「じゃあね」

 

くっ、やっぱり遠坂はこの話になると誤魔化して逃げるな。トンネルの奥へ消えていく遠坂の背中を眺めながら、俺はため息をつく。こうなったらもう仕方ないな。桜の方に話を聞くしかないか。

 

部活の朝練で、毎日のように会ってはいたけど、何故か桜にあの話を聞く事ができなかった。あの話をすると、桜の笑顔が曇ってしまうような気がして。だけど、このままで良い訳がないんだ。

 

遠坂も桜も、本当は仲良く話したい筈だ。二人は家族なんだから、間違いない。どんな事情があるかは知らないけど、家族が嫌いな人間が、いる訳がないんだ。少なくとも、俺はそう信じている。

 

それに、遠坂と桜の態度を見ていても、お互いに嫌っていない事は間違いなかった。特に桜の方は遠坂と話したそうにしてたし。遠坂にしたって、桜の事を俺に聞いてきた事があった。ならば……

 

明日の朝練の時に、桜と話してみよう。イリヤ達と一緒に家に帰りながら、俺はそう決意した。

 

…………………………………………………………

 

「桜、ちょっといいか?」

 

「はい、なんですか先輩?」

 

明けて翌日。部活の朝練が終わってから、俺は桜に話し掛ける。笑顔で振り返った桜の姿を見て、少し躊躇してしまうが、昨日の決意を思い出して気合いを入れる。ここで引いてはいけない、と。

 

「少し話があるんだ。ついてきてくれるか?」

 

「はい、勿論いいですよ」

 

ここでは人目がある。踏み込んだ質問をする事になるだろうから、桜を連れて移動する。弓道場を出て夏休み中で誰もいない筈の校舎の中に入り、さらに念を入れて、いつもの屋上に上がった。

 

「それで先輩、なんの話ですか? こんな所まで来たという事は、重要な話みたいですけど……」

 

「ああ。桜と……遠坂の話だ」

 

「っ……」

 

遠坂の名前を出した瞬間、桜の笑顔が凍り付く。悲しそうに眉尻を下げてしまった桜の顔を見て、やっぱりこうなってしまったかと唇を噛む。桜はしばらく俯いていたが、やがて力なく笑った。

 

「先輩は、どこまで知ってるんですか?」

 

「遠坂と桜が、実の姉妹だって事しか知らない。遠坂はそれ以上教えてくれないんだ。桜がなにかの事情で間桐に養子に出されたとは聞いたけど」

 

「そうですか……」

 

俺が遠坂から聞いた事実を告げると、桜は静かに目を閉じてそう呟いた。その様子はまるで、遠坂と共に在った過去を思い出しているようだった。一体、この二人にどんな事情があるのだろうか。

 

そう思った時、ふとある事に気付く。待てよ? 遠坂と桜は実の姉妹。そして、遠坂は魔術師だ。思い出せ。確かバゼットとの戦いの時に、遠坂は言っていた。冬木の管理者たる遠坂がどうとか。

 

それはつまり、遠坂の家は魔術師の家系という事になる。魔術師の家は代々、魔術を受け継ぐともルビー達から聞いたし。という事はもしかして。何故この可能性にまったく気付かなかったのか。

 

そう。もしかしたらだが、桜は魔術師なのか? 魔術師でないにしても、魔術を知ってるのでは?

 

「私と姉さんは、仲は良かったと思います」

 

驚愕の事実(まだ確定した訳じゃないが)に俺が固まっていると、桜が静かに語りだした。おっとまずい、今は桜の話に集中しよう。確定してないのに、桜は魔術を知ってるのか、とは聞けない。

 

「喧嘩らしい喧嘩もした事はありませんでした。そんな私達でしたから、家の事情で離ればなれになる時はとても悲しかったですし、寂しかった。まだとても小さい頃でしたし、当然ですよね」

 

「桜……」

 

その時の事を思い出しているからだろうか。桜の表情はとても寂しそうで、俺は掛けてあげる言葉が見つからない。もし俺だったらどうだろうか。仲が良かった兄弟と離れなければいけなくて。

 

それは子供の自分にはどうしようもなくて。自分に置き換えてみて、その時の桜の気持ちを改めて理解する。もしイリヤと離ればなれになったら、と考えると、胸を引き裂かれるような気分だ。

 

「会いに行ったりとかは……」

 

「できませんでした。姉さんは遠坂の家を継ぐ為に色々と忙しかったですし、私も私で、間桐の家に馴染むのに大変でしたから。それに姉さんは、自分だけ家に残った事に負い目があったらしく。私を見ると避けるようになってしまいました」

 

「ああ……」

 

なるほど。その態度が今も続いてるという訳か。この前の出来事を思い出し、桜の話に納得する。確かにあの時、遠坂は桜の事を避けていた。最初に弓道場に来ていた時も、そんな感じだったな。

 

「ようやく間桐の家にも馴染んで、姉さんも家の事が落ち着いた頃には、姉さんはロンドンに留学してしまいました。私達が元のような関係に戻る事ができないまま。ふふ、上手くいきませんね」

 

「桜は……今のままでいいのか?」

 

「……」

 

寂しそうに笑う桜をこれ以上見ていられなくて、俺はつい聞いてしまった。聞いてしまってから、自分の迂闊さに気付く。いい訳ないじゃないか。桜の表情と言葉を考えれば、それは明白だった。

 

「過ぎてしまった時間が、いつの間にか私達の間に深い溝を作ってしまったようです。なんとか溝を埋めたいと思っても、姉さんが私を避けている現状ではどうしようもありません。それに……」

 

「……それに?」

 

「怖いんです……もしかしたら、溝を埋めたいと思っているのは私だけなのではないかと。姉さんにとってはもう私なんて妹でもなんでもないのではないかと思うと怖くて、踏み込めないんです」

 

「そんな訳ないだろ!」

 

「でも……でも……」

 

とうとう泣き出してしまった桜。桜だって、本気でそんな事を思ってる訳ではないだろう。でも、不安はどうしても消せなくて。桜は、ずっと苦しんでたんだろう。なにをやってるんだよ、遠坂。

 

遠坂にも色々難しい問題とか、抱えてきた苦しみとかもあるんだろう。でも、妹を泣かせるなんて絶対にしてはいけない事なんだ。それは兄であれ姉であれ同じ。たとえどんな事情があってもだ。

 

「……落ち着いたか?」

 

「……はい。申し訳ありませんでした先輩」

 

しばらく背中をさすっていると、桜は落ち着きを取り戻す。そして、儚げな笑みを浮かべる。その笑みはまだ完全なものではなかったけど、さっきまでの痛々しい泣き顔よりは全然マシだった。

 

「遠坂と話したいんだよな?」

 

「……そう……ですね……」

 

俺の確認に、桜は躊躇いながらも頷いた。俺は今の桜の気持ちを、痛いほど理解できた。きっと、この前の俺と同じ感じなんだろう。怖いのは今も変わらない。でも確かめてみたいという気持ち。

 

そんな気持ちを、桜はずっと抱えてきた。それはつまり、桜にとって遠坂が、それだけ大切な存在だという証だった。俺にとっての家族のように。それが分かるからこそ、俺は桜にこう言うんだ。

 

「なら、俺が遠坂と話してみるよ」

 

「え……でも……」

 

「大丈夫だ。きっと遠坂だって、桜と昔のように話したいと思っている筈だ。俺はそう信じてる」

 

「先輩……ありがとうございます」

 

俺がそう言うと、ようやく桜はいつもの柔らかい笑顔を見せてくれた。これは責任重大だな。絶対に失敗はできない。だけど俺は、今の自分の言葉に絶対の自信を持っていた。何故ならあの日……

 

『衛宮君は、あの娘の家族とかどんな感じなのか知ってるかしら? ……家族との関係とか……』

 

弓道場で桜を見ていた時、遠坂は桜の家族関係を気にしていた。それはつまり、遠坂が今も桜の事を大切に思ってるという証だろう。でも今さら、なにもなかったようには振る舞えないんだろう。

 

遠坂は、素直じゃない性格をしてるしな。まあ、それで桜を不安にさせていたら駄目なんだけど。どんなに強く想っていても、言葉にしないと絶対に伝わらない。これも先日、俺が実感した事だ。

 

母さんの想いを理解したあの一件。あれで俺は、大切な事を学んだんだ。あれから俺はできるだけ自分の想いを言葉にして、イリヤ達に伝えようと思うようになった。まだ言えた事は少ないけど。

 

だから俺は、遠坂達にもそれを知って欲しかったのかもしれない。後はなによりも、お互いに大切に想う姉妹の間にある溝を埋めたかった。余計なお節介と遠坂に文句を言われるかもしれないが。

 

…………………………………………………………

 

「来てくれたんだな、遠坂」

 

「……ったくもう。あんな電話で素直に来る奴は滅多にいないわよ。一方的に呼び出したりして」

 

朝練が終わった後、俺は遠坂を呼び出した。遠坂が言う通り、かなり一方的に。だけどそれは……

 

「俺だって、あんな事はしたくないさ。だけど、ちゃんと話をしたくても強引に誤魔化して逃げる遠坂が悪いんだぞ? 桜の名前を話題に出すと、絶対に話をしようとしなかったのは誰なんだよ」

 

「それは……」

 

遠坂としてもそれを指摘されると痛いんだろう。気まずそうに目を逸らす遠坂の姿に、俺はため息をついた。そうやって逃げてる間に桜がどれだけ不安になっていたのかを、教えてやらないとな。

 

「なあ、遠坂。俺は、遠坂達の家の事情は詳しくは知らないし、聞くつもりもない。だけど、桜がどんな気持ちでいるのかは知ってる。さっき桜に直接聞いたからな。だから言わせてもらう……」

 

「……あの娘は、なんて?」

 

「怖いって……遠坂が、もう自分の事を妹だと思ってないのかもしれないと思うと、怖くて怖くてたまらないって言っていた。だから遠坂になにも聞けなくて、踏み込んでいけないんだって……」

 

「そんな事は……!」

 

「ないんだろ? そんな事は知ってるよ。でもな遠坂。心の中でどれだけ強く想っていても、本人に直接言わないと、絶対に伝わらないんだぞ? 特に不安を抱え込んでしまう桜みたいな娘には」

 

「そうね……その通りだわ。でも私だって……」

 

「ん?」

 

桜の気持ちを遠坂に語り終えると、遠坂は表情を暗くして俯き、小声でなにかを呟いた。なので、もう一度言って貰おうと近付いてみた。すると、遠坂が勢いよく顔を上げて、俺の顔を見てきた。

 

「私だって、怖かったんだから!」

 

「っ!?」

 

悲鳴を上げるような遠坂の叫びに、俺は固まる。あの遠坂が、怖かっただって? 今までの遠坂を思い出して驚く。だけど、すぐに考えを改める。そうだよな。遠坂にだって、怖い事はあるよな。

 

そんな俺の考えを肯定するように遠坂は続けた。

 

「あの娘が私を嫌いになってるんじゃないかって考えると怖くて、足がすくんじゃうのよ! 家の事情だから仕方ないって自分に言い聞かせても、あの娘の顔を見るとそんな理屈忘れちゃうし!」

 

「遠坂……」

 

「だって、私の存在が桜を追い出したんだもの。私がいたから、桜は家にいられなくなって……」

 

「待ってくれ。なんでそんな話に……?」

 

一体どういう事だ? さっきは聞くつもりはないと言ったけど、さすがにこれは意味不明すぎる。俺が聞くと遠坂は少し躊躇う様子をみせたけど、やがて諦めたようにため息をついて語り始めた。

 

「衛宮君、魔術師についてどこまで知ってる?」

 

「どこまでって……ほとんど知らないぞ」

 

「そう。お母さんには聞かなかったのね。まあ、彼らはもう魔術師の家を捨てたんだものね……」

 

「どういう事だ?」

 

「ほとんどの魔術師の共通の目的はね、『根源』へと至る事なの。まあ、これについては説明すると結構長くなるし、今回の話にはあまり関係ないから説明は省く事にするわね? それでね……」

 

遠坂は語る。魔術師達は代々、根源へと至る為に子孫に自分達の魔術を伝えてきた。根源へと至る事はあまりにも困難であり、人の一生をかけても達成する事はできない事が多いから、だそうだ。

 

「だから次の世代に魔術を伝える。これは当然の事だから分かるでしょう? だけど魔術師の世界には、それにあたって1つのルールがあるのよ」

 

「ルール?」

 

「一子相伝。つまり魔術師は、複数の子供に魔術を継がせる事はないのよ。どこの家系でもね」

 

「なんでさ?」

 

遠坂の説明に、意味が分からなくて首を傾げる。だってそうだろう。あまりにも非効率的すぎる。そんなに達成が困難な目的なら、むしろより多くの人間に魔術を伝えた方がいいに決まっている。

 

「『魔術刻印』が原因よ」

 

「魔術刻印?」

 

「簡単に説明すると、先達の魔術師達が一生涯をかけて研鑽した、魔術の研究成果を記録してきた魔術書といったところかしら。だから魔術を継承するというのはね、この魔術刻印を継承するって事なの。自分の血を継いだ子供に移植するのよ」

 

「へえ」

 

「それでね? ここで本題に入るんだけど。その魔術刻印は、複製したりする事ができないのよ」

 

「あ、つまりそういう事なのか」

 

「そういう事よ」

 

遠坂が長々と説明してくれた事を理解した俺は、ようやくさっきの一子相伝というルールの理由を理解した。つまり魔術の継承は、最大1人が限度という事か。でも、それなら子供が二人いたら?

 

「その場合、道は2つに1つよ。まず1つ、1人に魔術刻印を継承させて、もう1人は魔術の事を一切教えずに、普通の子供として育てる。そしてもう1つは……他の魔術師の家に養子に出すの」

 

「っ!?」

 

遠坂が言った言葉に、俺は目を見開く。ちょっと待ってくれ。養子に出す? それってまさに……

 

「そう。桜は、そのもう1つの道の為に間桐の家に養子に出されたのよ。間桐の家は、後を継げる人間がいなかったからね。慎二には魔術の才能がなかったから。反対に桜はかなり才能があった」

 

「待て待て待て。え? じゃあ桜は、魔術師って事なのか? っていうか、間桐って魔術師?」

 

「落ち着きなさい。まず、桜は魔術師じゃない。引き取られたすぐ後に、間桐の魔術師は何者かに殺されたっていう話だから。つまり、間桐の家は今は魔術師の家系じゃないっていう事になるわ」

 

あの娘の事については色々と調べたから、と遠坂が言った。それを知ったのはこの町に帰ってきてからの事らしいけど。子供の頃ではそれを調べる事はできないだろうから、それは納得だった。

 

「桜に直接聞くのも、怖くてできなかったし」

 

「……それは分かったよ。だけどさ、もう1つの道を選ぶ事はできなかったのか? そうしてれば桜は、養子に出されなくても良かった筈だろ?」

 

「言ったでしょ? 魔術師達にとって、根源へと至る事は悲願なの。お父様もそれは同じだった。だから桜に魔術を学ばせたかったのよ。あの娘の才能は、それだけ素晴らしかったという事よ」

 

「……」

 

桜の意思が一番大事だろ、と俺は思ったが、魔術を知らない俺とは価値観が違うという事だろう。魔術師は人でなしが多いとルビーが言ってたが、こういう事なのかもしれない。大変なんだな。

 

「遠坂のお父さんは、今は?」

 

「……亡くなったわ」

 

「……そうか。悪い……」

 

「いいわよ。もう昔の事だし」

 

二人の事情を改めて理解した俺は、軽いため息をついた。本当に複雑な事情があったんだな……

 

「まあ、それはともかく。桜の気持ちはもう理解しただろ。なら、もう怖がる必要はないだろ?」

 

「……そうね。努力してみるわ」

 

「そうしてくれ」

 

驚愕の事実が幾つも出てきたが、結局のところ、後は二人に任せるしかない。これ以上は無粋だ。この時の俺はそう思っていた。まさかあんな事が起こるなんて、今の俺には分かる筈もないから。




この作品では、蟲爺はキリツグが殺っています。
なので、桜は蟲に襲われていません。
トッキーも、何らかの不幸があった設定です。
優しく平和な世界がプリヤ時空ですから。
さて、桜がこの後どうなるのか……
それは今後を見てください。
最後の日常編は、次回で終わります。

その後は、一気にギル戦に行きます。
いよいよツヴァイ編も最終局面です。
お楽しみに。

それでは、感想待ってます。
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